「人間ドックでは何の検査を受けたらいいの?」「検査の種類が多すぎてよく分からない」「自分に合った検査の選び方を知りたい!」など、人間ドックの検査について詳しく知りたいという方も多いのではないでしょうか。
人間ドックは基本的な検査だけでなくオプションも豊富なので、どれを受けたらいいのか迷ってしまいますよね。結論からいうと、人間ドックで受けた方が良い検査は人によって違うので、自身に合った選択をするのが重要です。
このコラムでは、人間ドックで受けた方が良い検査について、年代別・ケース別に解説します。また、オプションごとのおすすめの受診頻度も説明するので、ぜひ最後までお読みください。
1.人間ドックとは?健康診断との違いを解説
健康診断と人間ドックでは目的が異なります。健康診断は「体に異常がないか」「生活習慣病のリスクが高まっていないか」などを確認するもので、病気の予防が目的です。一方、人間ドックの目的は疾病の早期発見のため、健康診断よりも精密な検査が受けられるのが特徴です。
このように、健康診断と人間ドックでは目的が違いますが、主に下記の7大生活習慣病がターゲットの検査を行う点では共通しています。
- がん(悪性新生物・上皮内新生物)
- 心疾患
- 脳血管疾患
- 糖尿病
- 高血圧性疾患
- 肝硬変
- 慢性腎不全
7大生活習慣病の中でも、特に下記の3つが死因となる割合が高く、3大疾病と呼ばれています。
- がん(悪性新生物・上皮内新生物)
- 心疾患
- 脳血管疾患
2020年人口動態統計によると、3大疾病だけで全体の死亡率の50%を超える結果となりました。そのため、3大疾病を含む7大生活習慣病の検査は、命を守るのに役立つといえます。
疾病によっては進行が早く、気付いた頃には手遅れという場合もあります。病気にかかったとしても、早期発見できれば大事にならずに済みます。命を脅かす大病の早期発見という観点から、健康診断よりも精密な人間ドックを受けるのがおすすめです。
命に関わる疾病をしっかり調べるなら受けていただきたい人間ドックですが、費用が気になる方も多いでしょう。人間ドックの費用については、こちらをご覧ください。
関連記事:人間ドックの費用相場は?オプションや補助を活用して安く受ける方法を紹介
2.【年代別】人間ドックで受けた方が良いオプション検査
人間ドックでは、必須項目に指定されている検査のほかに、オプションを追加できます。年代によって受けた方が良い検査が異なるので、それぞれ紹介していきます。
ここでは、30〜60代におすすめのオプションを解説しますので、どの検査が自身に合っているか確認しましょう。
2-1.【30代】若年層の罹患率が高いがん検査
30代は、若い方が罹患しやすいがんに注意しましょう。男性の場合は、気になる疾病や生活習慣の乱れがなければ、人間ドックは必須項目のみで問題ありません。コンスタントに検査を受けることが重要なので、1年に1回の受診を心掛けましょう。
女性は、乳がんや子宮がんに対応した検査を追加するようにしてください。乳がんや子宮がんといった女性特有の疾患は、比較的若い方がかかりやすいのが特徴です。 希望の医療機関に男女共通のメニューしかない場合は、下記の検査を追加するようにしましょう。
- 乳房触診検査
- 乳房エコー検査
- 細胞診検査
- 経膣エコー検査
乳がんの有無は、乳房X線検査(マンモグラフィ)でも調べられますが、30代の方には向いていません。30代の女性は乳腺が発達しているので、乳房X線検査(マンモグラフィ)では乳がんが見つけにくいといわれています。比較的若い方には、乳房エコー検査がおすすめです。
また、性別問わず日本人の罹患率が高い、胃がんや大腸がんの検査を受けるのもおすすめです。胃がんは上部消化管内視鏡検査、大腸がんは大腸内視鏡検査でチェックできます。
2-2.【40代】生活習慣病や閉経に関わる検査
40代になると、飲酒や喫煙といった生活習慣による疾病を発症しやすくなります。そのため、できれば毎年1回は人間ドックを受けましょう。よく飲酒する方は、肝臓病や脂肪肝を招く危険性があるので、お酒が好きな方は腹部超音波検査を受けるのがおすすめです。
また、喫煙をしている方は肺に負担がかかるだけでなく、下記の疾病リスクが高まることが分かっています。
- がん
- 脳卒中
- 虚血性心疾患
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 2型糖尿病
- 歯周病
- 結核
このように、喫煙はあらゆる疾病に関わりますが、肺がんを特に警戒しましょう。肺がんは、胸部CT検査や喀(かく)たん細胞診検査で確認できます。また、脳卒中や虚血性心疾患は死因の上位を占める疾病なので、頚動脈エコー検査を受け、動脈硬化の進行度合いを確認しましょう。
女性で40代のうちに閉経を迎えた場合は、乳がんや子宮がんの検査のほかに、骨密度の測定をおすすめします。閉経すると、骨の形成を促す働きのある女性ホルモンの分泌が低下し、急激に骨密度が減ってしまいます。骨の丈夫さは、生活の質を維持するのに重要なので、まずは検査を受けて自身の骨の状態を確認しましょう。
2-3.【50代】がんや循環器系の疾病の検査
50代は、心疾患や脳血管疾患といった循環器系の疾病にかかりやすくなる年代です。そのため、頚動脈エコー検査で動脈硬化の進行度を確認し、必要に応じて心臓ドックや脳ドックを検討してみてください。
また、性別問わずがんにかかってしまう方が増えてくる年代なので、定期的な検査を受け続けることが重要です。男性の場合は、前立腺がんに注意しましょう。前立腺がんは転移しやすいため、PSA検査を受けて確認するのがおすすめです。
PSA検査は、前立腺がんになると血液中に流れ出るというたんぱく質を測る検査です。採血をするときに少し多めに血液を採取するだけで、手軽に受けることができます。
他にも転移しやすいがんとして、肺がんが挙げられます。タバコを吸う方や肺がんの家族歴のある方もリスクが高まってしまうので、胸部CT検査や喀(かく)たん細胞診検査でチェックしましょう。
2-4.【60代】死因上位の疾病と骨密度検査
60代になると、がんや循環器系の疾患のリスクがさらに高まるので、特定の臓器ではなく全身を検査するのが理想的です。日本では、1981年からがんが死因のトップになっているので、充分に警戒するようにしましょう。特に、罹患者が多く死因の上位でもある胃がんや大腸がんの検査を受けることをおすすめします。
また、がんの次に死因が多いのが心疾患や脳血管疾患です。これらの血管に関する疾病を早期発見するため、頚動脈エコー検査を受けて動脈硬化の進行度を確認しましょう。
さらに、60代になると性別問わず、骨や筋肉が弱くなる方が増えてきます。ちょっとした段差でもつまずきやすくなり、転んで骨折してしまうことも珍しくありません。転んだ際に脚の付け根を骨折してしまうと、寝たきりや要介護につながりやすくなってしまいます。そのため、骨密度を測定し、どれくらい骨がもろくなっているのか知っておくことが重要です。
3.【ケース別】人間ドックで受けた方が良いオプション検査
ここでは、人間ドックで受けた方が良いオプション検査をケース別に紹介します。場合によっては、年齢に関わらず受けた方が良い検査があるので、ぜひ確認してみてください。
3-1.女性の場合
女性の場合は、下記のような子宮がんや乳がんの検査を受けるようにしましょう。
- 乳房触診検査
- 乳房X線検査(マンモグラフィ)
- 乳房エコー検査
- 細胞診検査
- 経膣エコー検査
乳腺濃度は若い方ほど高く、高齢になると乳腺は萎縮してくるので乳腺濃度も低くなります。乳腺濃度が高い方は、超音波検査(エコー検査)を受けることで乳腺の重なった部分に隠れているしこりを見つけやすくなります。40歳以上の方は乳房X線検査(マンモグラフィ)が適用になる場合が多いといわれています。
また、女性は甲状腺の疾病にかかりやすいので、甲状腺ホルモン検査や甲状腺エコー検査を受けることをおすすめします。甲状腺は、機能が亢進しても低下しても悪影響を及ぼすことが分かっており、がんになってしまうことがあります。
閉経を迎えると、女性ホルモンの関係で骨が弱くなるのも女性特有の特徴です。骨が弱くなっている場合、転倒によって寝たきりや要介護につながるリスクが高まることが分かっています。そのため継続的に骨密度を測定し、リスクを自覚するだけでなく、身近な方に伝えて対策できるようにしましょう。
3-2.タバコを吸う場合
喫煙は、さまざまな疾病に関わることが知られています。また、下記のようなあらゆるがんのリスクも高めることも分かっています。
- 肺
- 口腔・咽頭
- 喉頭(こうとう)
- 鼻腔(びくう)・副鼻腔
- 食道
- 胃
- 肝臓
- 膵臓
- 膀胱
- 子宮頸部(しきゅうけいぶ)
喫煙されている場合は、特に肺がんのリスクが高まるので、胸部CT検査と喀(かく)たん細胞診検査を受けましょう。
胸部CT検査は、肺のX線画像を解析することで、早期の肺がんを発見できます。肺の断面像を合成できるので、正面から見たときに心臓や肋骨が重なる部位でも死角なく確認できるのが特徴です。喀(かく)たん細胞診検査はたんを調べることで、胸部X線検査では発見が難しい肺の根本にできるがんを見つけられます。
3-3.高血圧の場合
高血圧は、自覚症状がないまま動脈硬化が進んでいくことから、別名「サイレントキラー(沈黙の殺人者)」と呼ばれています。血管は全身に通っているので、動脈硬化が進行すると体全体に悪影響を及ぼします。
特に、心臓や脳の疾病には注意が必要です。心疾患や脳血管疾患といった血管が原因の疾病は、日本人の死因の上位となっています。このように、動脈硬化は命に関わるため、どれくらい進んでいるかの確認として頚動脈エコー検査を受けましょう。
さらにしっかり検査をしたい場合は、心臓ドックや脳ドックがおすすめです。また、動脈硬化は加齢によっても進んでいくため、高齢で高血圧の方は検査を検討してみてください。
3-4.がんの家族歴がある場合
がんの家族歴があると、罹患のリスクが高まってしまいます。家族歴によってリスクが高まるがんと、それを調べるための検査は下記のとおりです。
食道がん・胃がん | 上部消化管内視鏡検査 |
肝臓がん | 腹部エコー検査 腹部CT検査 腹部MRI検査 腫瘍マーカー検査 |
膵臓がん | 腹部CT検査 |
肺がん | 胸部CT検査 喀(かく)たん細胞診検査 |
子宮がん | 細胞診検査 経膣エコー検査 |
膀胱がん | 尿細胞診検査 膀胱内視鏡検査 腹部エコー検査 |
「がんの家族歴」と聞くと遺伝が要因と考えがちですが、生活習慣も重要な要素です。一般的に、子どもの頃に一緒に過ごした家族と同様の生活習慣が身に付きます。もし、ご家族のがんの罹患が生活習慣による場合、その子どもに当たる方もがんにかかりやすくなることが分かっています。
つまり、生活習慣の改善によってがんの罹患を防げる可能性があるということです。がんの家族歴がある場合は、定期的に検査を受けて罹患していないか確認するだけでなく、生活習慣の見直しにも取り組みましょう。
3-5.肥満あるいは太ってきた場合
肥満の方や最近太ってきた方は、高血圧や動脈硬化のリスクが高い傾向があります。肥満による高血圧は、下記が要因になっているといわれているので要注意です。
- 脂肪の増加による血管の圧迫
- ホルモンによる血管収縮
- ナトリウム過剰摂取による血液量の増加
体脂肪が増えると、血液に脂肪がたくさん流れてドロドロとした状態になります。その結果、心臓に負荷がかかってしまったり動脈硬化が進んでしまったりします。動脈硬化の進行度は頚動脈エコー検査で確認できるので、ぜひ受けてみてください。
また、食べ過ぎによって体脂肪が増えると、脂肪肝や胆石症にかかるリスクも高まります。定期的に腹部CT検査や腹部エコー検査でチェックしましょう。
このように、体に脂肪が多いとあらゆる疾病のリスクを高めてしまいます。疾病にかかり、本格的な治療が必要となる前に対策しましょう。
太りぎみな方は、メタボリックシンドロームになっている可能性があります。内臓脂肪が多く、下記の3つのうち2つ以上が正常の範囲から外れてしまう方は、メタボリックシンドロームと診断されます。
- 血中の脂質量
- 血圧
- 血糖値
メタボリックシンドロームの具体的な診断基準を下記に示しているので、自身が該当していないか確認してみてください。まだ人間ドックを受けたことがない方でも、健康診断の結果で調べられます。
- メタボリックシンドロームの診断基準
- 【必須項目】
- ・ウエスト周囲径(内臓脂肪蓄積)→男性の場合:85cm以上 女性の場合:90cm以上
- ・内臓脂肪面積が100cm2以上に相当 ※男女ともに共通
- 【選択項目】(3項目のうち2項目以上)
- ・高トリグリセライド血症 ≧150mg/dL かつ/または 低HDLコレステロール血症 <40mg/dL
- ・収縮期(最大)血圧 ≧130mmHg かつ/または 拡張期(最小)血圧 ≧85mmHg
- ・空腹時高血糖 ≧110mg/dL
肥満に関しては生活習慣によって改善できるので、適度な運動や栄養摂取を心掛けましょう。ただし、30~40代の女性で太ってきた場合は、甲状腺の機能が関わっている可能性もあります。生活習慣に問題はないという方は、甲状腺ホルモンの検査を受けるのがおすすめです。
4.人間ドックのオプション検査は毎年必要か?おすすめ頻度を紹介
人間ドックの基本項目だけでなく、オプション検査も毎年受ける必要があるのか気になりますよね。結論からいうと、毎年受けた方が良い検査もあれば、1年以上期間を空けてもいいとされるものもあります。検査ごとの受診間隔の目安を下記の表にまとめましたので、確認してみましょう。
毎年受けた方が良い検査 | 胸部CT検査 喀(かく)たん細胞診 乳房X線検査(マンモグラフィ) 乳房エコー検査 細胞診検査 経膣エコー検査 |
2年に1回は受けた方が良い検査 | 腹部CT検査 |
3年に1回は受けた方が良い検査 | 大腸内視鏡検査 心臓ドック 脳ドック |
ただし、人によって検査の必要性や重要性が異なるので、あくまでも目安として考えるようにしてください。
おわりに
人間ドックには基本の検査に加え、さまざまなオプションが用意されています。受けた方が良い検査は人によって異なるので、人間ドックを受ける前に自身の生活習慣や家族歴などから考えてみてください。
分からないことがあれば、人間ドックの受診を考えている医療機関で専門家に聞くことをおすすめします。自身に合った検査を選択し、上手に人間ドックを受けましょう。