「孫がかわいがっていたカブトムシ、どう供養してあげたら良い?」「昆虫の葬儀を通じて、命の大切さを知ってもらいたい」このように感じたとき、選択肢に入ってくるのが『昆虫葬』という様式です。
昆虫葬とは、飼っていたペットの昆虫が死んでしまったとき、その亡骸を人間と同じように弔うことをいいます。 この昆虫葬が今静かなブームになっており、昆虫好きの子どもたちが命と向き合う貴重な機会になっています。このコラムでは、そんな昆虫葬がどんなものなのかをご紹介します。
飼っていた昆虫が死んでしまったとき、子どもにはどう接すべき?
子どもや孫が昆虫好きで、飼育ケースで大切に飼っているという方は多いでしょう。そんな大切なパートナーである昆虫が死んでしまった時、真っ先に考えたいのは子どもの心のケアです。
お世話していた昆虫が動かなくなってしまえば、子どもにとってはショッキングな思い出として記憶に残ります。
子どもや孫が「死」を理解するには時間がかかることがあり、大人にとってもどう言葉をかけたら良いのか分からなくなることもあるかもしれません。まずはそうした子どもの心をケアしてあげることが大切です。
そしてケアの方法のひとつとして、昆虫葬を検討してみることをおすすめします。
子どもにとってはかけがえのない命
これを読んでいる方ご自身も経験があるかもしれませんが、子どもにとっての昆虫や小さな動物は、かけがえのない存在です。
もちろん人間の家族や犬、猫といったペットも平等なひとつの命ではありますが、子どもが自身で捕まえて大切に飼っている昆虫は、特に思い入れのある生き物となります。
そんな子どもにとっての宝物が死んでしまった時、燃えるゴミに出してしまうのは抵抗があるでしょう。 私たちの子ども時代には、庭にお墓を作って埋めてあげて弔う方法もあったかもしれません。
そうした方法で葬式を行うのももちろんひとつのやり方ですが、「もっと子どもに命に向き合ってもらいたい」「人や犬、猫と同じように弔ってあげたい」と思うのであれば、昆虫葬を提案してみても良いでしょう。
昆虫が最愛のペットでもある
私たち大人にとっては、ペットといえば犬や猫、あるいはハムスターやウサギなどを思い浮かべるかもしれません。 しかし、まだ幼い子どもの心からすれば、自身で捕まえた昆虫はどんな動物よりも愛すべきペットに映るのではないでしょうか。
カブトムシやクワガタ、セミ、バッタ、トンボなど。
「たかが虫」と切り捨てることは簡単ですが、何気ない言葉で子ども心に大きな傷となってしまう可能性もあります。 私たち大人の常識を子どもにも求めるのではなく、子どもの立場を考え、大切な家族を一緒に弔ってあげる心を持つと良いでしょう。
昆虫葬とは?鳥葬やペット葬、プランター葬との違い
「昆虫葬」という言葉からすると、なんだかおどろおどろしい光景を思い浮かべる方もいるかもしれません。鳥葬やペット葬、プランター葬との違いから考えてみましょう。
鳥葬
鳥葬とは、チベットやモンゴルで伝統的に行われている葬儀の一種です。遺体をハゲワシに食べさせる方法で、人の生命を自然に返す輪廻転生の考え方が根本にあります。
ちなみにチベットは樹木が少ない土地柄であり、固い土壌も相まって、火葬や土葬の文化が育たなかったとされています。現代の日本ではあまり馴染みはありませんが、「昆虫葬」と聞いてこの鳥葬を連想した方もいるようです。ただ、それはまったくの誤解で、昆虫葬は単に昆虫のお葬式であると覚えておくと良いでしょう。
ペット葬
昆虫葬は、ペット葬の一種と考えることができます。
ペット葬は、犬や猫などの一般的な愛玩動物の葬儀という意味で使われています。シェアリングテクノロジー株式会社が行った調査によれば、葬儀依頼が寄せられる動物のうち、60.9%が犬、29.2%が猫でした。
なかにはトカゲ・カメ・ヘビの葬儀依頼も発生するようですが、昆虫の葬儀依頼はまだまだ少ないようです。
参照元:【調査】ペット葬儀の利用実態からわかる現代のペットとの「お別れ方法」
しかし子どもにとっては、カブトムシやクワガタも、犬や猫と同じくひとつの大切な命です。今後「昆虫も大切なペットであり、家族の一員」という認識が広まり、昆虫のお葬式もペット葬の一種として当たり前に浸透していくのが理想的でしょう。
プランター葬
プランター葬とは、犬や猫などのペットを埋葬する方法のひとつです。ペットの遺体や遺骨を植木鉢に埋め、そこで草花を育てることをいいます。
近年では庭がない自宅に住む家族も増え、「ペットの亡骸を自然に還したいが、埋められる場所がない」と悩む方も多いようです。そのような方々にとってのひとつの選択肢として、身近にあるプランターに亡骸を埋めて供養するという方法が広まりつつあります。
犬や猫などの大きな動物になると、自然に還るまでの時間が長くなり、異臭や虫の発生の原因になる可能性があります。一方で昆虫の場合であれば自然に還る時間も短く、大きな懸念点にはならないでしょう。
昆虫のお葬式のひとつの方法として、このプランター葬を検討してみるのも良いかもしれません。
犬や猫の葬儀と一緒?昆虫葬ならではの特徴
昆虫葬を利用してみたいと思ったときに気になるのが、具体的にどのようにお葬式をするのかという点でしょう。
「昆虫葬」という言葉は、『愛ペットセレモニー尼崎』という兵庫県のペット葬儀社が新聞・テレビの取材を受けたことにより、全国区へと広まりました。
同社のWEBサイトによれば、昆虫葬は実際に葬儀社への持ち込み、または郵送キットによる郵送で受付も可能とのことです。遠方に住んでいる方にとっても、郵送キットを使うことで気軽に昆虫葬を利用できるのではないでしょうか。
対応可能な昆虫は、以下のとおりです。
- カブトムシ
- クワガタ
- セミ
- トンボ
- 蝶
- てんとう虫
- ホタル
- 玉虫
- バッタ
- カマキリ
他にもコオロギなど、さまざまな昆虫の葬儀に対応しているので、「我が家の虫だけ受け付けてもらえなかった」という状況になる可能性は低いでしょう。
合同法要と昆虫合同供養も行ってくれるため、子どもの教育にとっても、昆虫との別れを通じた貴重な経験になるのではないでしょうか。
火葬?埋葬?かかる費用は?昆虫葬を依頼したいと思ったらときに考えたいこと
『愛ペットセレモニー尼崎』が実施している昆虫葬は、火葬ではなく埋葬です。昆虫は燃やしてしまうと骨が残らないので、埋葬でのお葬式となります。昆虫葬の費用は、葬儀社への持ち込みで1件3,300円、郵送キットを使って発送する場合は、送料込みで4,950円となっています。
公式WEBサイトから申し込むことができる他、Amazonでも発送キットが販売されているため、さまざまな支払方法にも対応しています。
- 亡骸はどう保管しておけばいい?
- 不要になった飼育ケースやエサも一緒に供養できる?
- お参りに行くことは可能?
上記のように、昆虫葬を利用する際に気を付けておきたいこともまとめましたので、依頼する際の参考にしましょう。
亡骸はどう保管しておけば良い?
死んでしまったカブトムシやクワガタの亡骸は、きれいにして保管してあげましょう。ブラシなどを使って汚れ・土などを落とし、乾燥剤と一緒にビニール袋に保管します。水分が多いと腐敗が早く進んでしまうため、なるべく乾燥した状態で発送まで保管しておくのが理想的です。
不要になった飼育ケースやエサも一緒に供養できる?
「飼育ケースやエサと一緒に供養してあげたい」
そうした気持ちが強いかもしれませんが、昆虫葬では亡骸以外の供養は受け付けていません。 というのも、昆虫葬は火葬ではなく、埋葬を行うことが理由です。亡骸を飼育ケースやエサと一緒に火葬し、天国へと送り出すわけではないため、飼育用品の処分にも非対応です。
お参りに行くことは可能?
兵庫県尼崎市にある『愛ペットセレモニー尼崎』に足を運ぶことで、お参りが可能です。葬儀社があるのは、JR尼崎駅からほど近い位置にあります。 大阪駅からは電車で5分でアクセスできますので、孫と一緒にお参りしたいと思った際にも安心ではないでしょうか。
おわりに
昆虫葬は、子どもにとっての大切なペットである昆虫を弔い、命の大切さを教育する貴重な機会です。
庭に埋めて供養したり、プランター葬で自然に還るのを待つという手段もありますが、人と同じようにお葬式をしてあげることで子どもにとっても良い影響が生まれることでしょう。
まだまだ昆虫葬に対応する葬儀社は多くありませんが、今後全国に広まっていく可能性もありますので、選択肢のひとつとして検討いただけると幸いです。