親の所有する土地に家を建てるかどうかを悩んでいる方もいると思います。親の所有する土地だと、自分の所有する土地に家を建てる場合と異なる点も多いため、違いをよく理解してから建てることが大切です。
この記事では、親の土地に家を建てる方法とかかる税金、メリット・デメリットなどを解説します。親の土地に家を建てるかどうか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
この記事のまとめ
親の土地に家を建てる場合は、土地の購入にかかる費用を抑えられますが、自分の所有する土地に家を建てる場合とは異なる部分が多いので、どのようなメリット・デメリットがあるのかを事前に把握しておくことが大切です。
土地を有償・無償で借りるのか、土地を贈与するのかで異なる点も多いため、各パターンによる違いをしっかり理解してから土地をどうするのか決めましょう。
親の土地に家を建てる方法とかかる税金
家を新築する場合、まずは家を建てる土地を確保する必要があります。土地を確保する方法として、自分で土地を購入する方法と親が所有している土地を利用する方法などがありますが、親の所有する土地を利用することに何らかの問題点があるのか気になっている方もいると思います。
親の土地に家を建てる場合は、親の土地をどのように使用するのかによって土地の扱いが異なるので注意が必要です。以下の4つのケースの特徴をそれぞれ見ていきましょう。
土地を無償で借りて建てる
土地を無償で借りることを使用貸借と呼びます。所有者は親のままなので固定資産税や都市計画税も親負担です。そのため、土地にかかる費用を抑えることが可能です。
無償で借りたときにかかる税金
使用貸借によって借地を使用する権利の価格はゼロとして扱われます。そのため、子どもに贈与税が課されることは基本的にありません。
将来相続が発生した場合には、使用貸借されている借地権は相続税の課税対象となります。相続税を計算する場合は、他の方に貸し出している場合の借地権の評価額ではなく、自分で使っている場合の評価額となるので注意が必要です。
土地を有償で借りて建てる
土地を有償で借りる場合は、使用貸借ではなく賃貸借となるため、借地権という権利が発生します。
ただし、土地取引で権利金を支払うのが通例とされている地域においては、借地権の設定には毎月の地代以外にも権利金を支払う必要があります。権利金の金額が贈与税の基礎控除を超える場合には、贈与税が課される可能性があるので注意が必要です。
有償で借りたときにかかる税金
賃貸借の場合、地代や権利金を受け取る親の所得税や住民税の負担が大きくなります。また、地代や権利金を受け取ることにより預貯金が増えるため、相続税の課税対象となる資産も増える可能性がある点に注意が必要です。
しかし、土地に関しては借地権が設定されることで評価額が下がります。そのため、相続税の負担は軽減できるでしょう。
土地を贈与で譲り受けて建てる
上記2つは土地の所有権が親のままでしたが、土地を贈与で譲り受けてから建てる場合には所有権が自分に移ります。そのため、有償で借りた場合にかかった地代や権利金が発生しません。
そのため、親の土地を有償で借りたときに地代や権利金を受け取ることにより親の所得税や住民税の負担が大きくなるというデメリットは解消されます。
贈与を受けたときにかかる税金
贈与を受ける際、土地の評価額に応じた贈与税を負担することになりますが、相続時精算課税制度を活用すれば最大2,500万円まで贈与税を非課税にできます。
ただし、相続時精算課税制度を利用した場合、贈与税は非課税になりますが、相続時には相続財産に組み込まれて相続税を課されることになります。
また、所有権が自分に移ることで毎年固定資産税や都市計画税などが課される点に注意が必要です。
土地を親から格安で購入して家を建てる
土地を親から格安で購入した場合も、所有権を自分に移すことができます。土地の売出価格は自由に決めることができるため、市場相場よりも安く売却することに問題はありません。
ただし、市場相場よりも大幅にかけ離れた金額での売却はみなし贈与と判断される可能性があるので注意してください。
格安で購入したときにかかる税金
市場相場よりも大幅にかけ離れた金額で売却したことで、みなし贈与と判断された場合、市場相場と売却価格との差額が贈与税の課税対象となります。
また、売却代金を受け取った親は売却により譲渡益が発生している場合は譲渡所得税を課されます。みなし贈与と判断されるかどうかの判断は難しいため、気になる方は税理士といった専門家に事前に相談しましょう。
親の土地に家を建てる場合のメリット
親の土地に家を建てることは全ての方に最適な選択肢とは限りません。それ以外の選択をしたほうが良い場合もあるため、親の土地に家を立てるメリット・デメリットを把握した上で自分に合う方法を選択することをおすすめします。
親の土地に家を建てる場合におけるメリットを、ケース別に見ていきましょう。
土地を借りた場合
自分で土地を購入する場合、多額の費用を支払わなくてはなりません。特に地価の高い都市部では、土地を購入するのに数千万円の資金が必要です。
しかし、無償で借りることができた場合、土地の取得にコストがかかりません。仮に有償であっても設定価格が高額でなければ、家を建てるのに必要な土地を安く確保できます。
また、所有者ではないため、固定資産税や都市計画税などの維持コストを軽減できる点もメリットといえるでしょう。
土地を贈与または購入して家を建てた場合
通常住宅ローンを契約する場合は、土地の購入費用と建物の建築費用を合算した金額を借りるため、融資審査が厳しくなります。
しかし、生前贈与で土地の名義を親から自分に変更した場合には、土地の購入費用は発生しません。そのため、融資額が小さくなることで住宅ローンの審査に通りやすいでしょう。
また、購入の場合は一時的な支出は大きくなるものの、権利金や月々の地代を支払わずに済みます。土地を借りる期間が長期化することによるコスト増を回避できるでしょう。
親の土地に家を建てる場合のデメリット
親の土地に家を建てる場合、デメリットを把握しないまま建ててしまうと、後で想定外のトラブルに発展する可能性があるという注意点が挙げられます。
トラブルを未然に防ぐためにも、親の土地に家を建てるデメリットを把握しておくことが大切です。親の土地に家を建てる場合におけるデメリットを、ケース別に見ていきましょう。
土地を借りた場合
土地を借りた場合、相続が発生した際にトラブルに発展する恐れがあります。相続が発生した際は、相続人同士で遺産分割を行います。
例えば、親の遺産が不動産のみの場合や不動産が大半を占める場合には、土地の上に相続人のひとりの建物が建っているとトラブルに発展しやすいです。その理由は、各相続人が土地の権利を取得しても自由に使用できないためです。
現金化することもできなければ相続税の支払いも困難になり、兄弟姉妹といった相続人同士でもめる可能性があるので注意してください。相続トラブルを回避するためにも、誰が土地を相続するのかを生前に話し合い、遺言書に明記しておくことをおすすめします。
土地を贈与・購入した場合
親の土地を贈与した場合、贈与税を納めなくてはなりません。贈与税の税額は土地の評価額によって異なりますが、親から成人した子どもへの贈与の場合は10~55%の贈与税が課されます。
一方、相続時精算課税制度を利用すれば贈与税は免除されますが、贈与された財産を相続財産として最終的に扱うため、相続税は課されることになるので注意が必要です。
購入した場合、売却代金を受け取った親は売却によって譲渡益が発生すると譲渡所得税という税金が課されます。また、子どもは土地の購入によって自己資金が少なくなるので、将来的に資金不足に陥る恐れがあるので注意が必要です。
格安で購入した場合は要注意!
親子間の売買なので土地を格安で売買しようと考えている方もいると思います。しかし、市場相場と比べて大幅に安く売買した場合、みなし贈与と判断される可能性があります。
みなし贈与と判断された場合は買主である子どもには市場相場との差額分に贈与税が課されるので注意が必要です。また、親は売却によって譲渡益が発生した際に譲渡所得税が課されるということも覚えておきましょう。
親の土地に家を建てる際の住宅ローンに関するポイント
親の土地に家を建てる場合には、自分で土地を購入して家を建てる場合とは住宅ローンの扱いが一部異なる可能性があるので注意が必要です。
どのような違いがあるかポイントを詳しく見ていきましょう。
親がローンの連帯保証人になる可能性がある
親の所有する土地に担保設定がない場合には、親の土地でも担保価値に問題がなければ住宅ローンを利用することが可能です。ただし、契約時には親の土地を担保に入れることになります。
親は収入の有無に関係なく、担保提供者として連帯保証人になることを金融機関から要求される点に注意が必要です。
ローン返済中は土地や建物の名義変更はできない
抵当権が設定された土地の名義を返済途中に変更することはできません。ローン返済が終わらないと土地の名義を変更することができない点に注意してください。
また、自身の家が建っている状況でも、土地の所有者は親のままなので相続対象になります。相続が発生した場合、相続財産の大半を土地が占めていると遺産分割が困難であることを理由に相続問題に発展する恐れがあるので注意が必要です。
二世帯住宅なら親子リレーローンという方法も
親子リレーローンとは、親子で1本の住宅ローンをリレー形式で返済していく方式です。親の土地に建てる家が二世帯住宅の場合、親子リレーローンを利用できます。
子どもの年齢を基準に最長35年の住宅ローンを組めるので、返済期間を長期にすることで毎月の返済負担を軽減できるでしょう。
住宅ローンを組むときは専門家に相談するのがおすすめ
住宅ローンは返済期間が長く、借入額も高額なので、シミュレーションをしっかり行って無理のない返済計画を立てる必要があります。
しかし、人によって適切な返済プランは大きく異なるため、最適な返済プランを選択するためにも、住宅ローンの専門家に相談することをおすすめします。
住宅ローンについてお悩みの方はクレディセゾンとiYell(いえーる)が提携する「住宅ローンの相談窓口」にぜひご相談ください。
親の土地を担保提供する必要がある
親の土地に家を建てる場合、親の土地を担保提供する必要があります。そのため、既に他の抵当権が設定されている場合、新たに担保として提供することはできません。
また、親族といった第三者所有の不動産を担保として設定して組めるローンは不動産担保ローンで、基本的に住宅ローンではありません。金利が通常の住宅ローンと比べて金利が高めに設定されているケースが多いので注意が必要です。
土地を借りる場合と贈与の場合、どちらが良いか
親の土地に家を建てるにあたり、借りるのか贈与するのかどちらが良いか気になっている方も多いと思います。最後にどちらが良いのかを解説します。
一般的には相続を前提として借りて建てるほうがお得
有償で借りた場合、賃借権によって土地の評価額を下げることが可能です。その結果、相続発生時に土地の評価額を下げられるので相続税の負担を軽減できます。
権利金や毎月の地代を支払う必要はありますが、将来的な相続税の負担を軽減できることを考えると相続を前提として借りて建てたほうがお得といえるでしょう。
値上がりが予想される土地と相続税が発生する場合は例外
値上がりが予想される土地かつ相続税が発生する可能性の高い土地の場合は、相続時精算課税制度を利用して土地を生前贈与することをおすすめします。
その理由は、相続時精算課税制度は贈与時の土地の資産価値で贈与額を算出するためです。相続時の資産価値ではないため、値上がり分の相続税を抑えられます。状況に合う方法を選択しましょう。
おわりに
親の土地を借りて家を建てれば土地の取得にかかる費用を抑えられます。また、有償であれば将来の相続税の負担を軽減できるでしょう。
また、生前贈与だと相続時精算課税制度を利用することで贈与税の負担を軽減できます。このように選択する方法によって受けられる恩恵が異なるため、違いがよくわからず困っている方は、専門家に相談しながら自分に合う方法を選択しましょう。