市街化調整区域とは、農地や森林を守るために市街化を抑制する地域です。建築やリフォームができないなどと聞くことがありますが、本当でしょうか?市街化調整区域は利便性には欠けてしまうものの、緑が多く静かな住環境を期待できる開放的なエリアが多い傾向があります。このコラムでは市街化調整区域の特徴や注意点、家を建てる方法について詳しく解説します。
市街化調整区域とは市街化を抑制する地域
市街化調整区域とは都市計画法で市街化を抑制すると定められた区域で、農地や森林を守り無秩序な開発がされないように指定されています。市街化調整区域では原則として住宅や商業施設といった建物は建てられません。
なお、市街化調整区域とは反対に、すでに市街化されている区域や今後10年ほどで市街化を優先的にすすめる区域を市街化区域と呼びます。市街化調整区域と市街化区域でエリアの線引きを行うことによって、無秩序な開発が進むのを抑制しています。
市街化調整区域の3つのメリット
市街化調整区域は市街化を抑制する区域で、原則として住宅や商業施設は建てることができませんが、住むことに適していないわけではありません。 本章では市街化調整区域の3つのメリットについて解説します。市街化調整区域の特徴は以下の3つです。。
- 市街化区域よりも土地の価格が安い
- ランニングコストを抑えられる
- 静かな住環境が期待できる
それぞれについて解説します。
市街化区域よりも土地の価格が安い
市街化調整区域は、市街化区域よりも土地の価格が安いのが特徴です。 土地の価格は需要と供給で決まりますが、原則として住宅や商業施設を建てられない市街化調整区域では需要が限られているため、土地の価格が安い傾向にあります。
市街化調整区域は農地や更地としての取引が一般的であるため、利用用途が限られているため、市街化区域の土地よりも安価で購入できます。 市街化調整区域のなかでも市街化区域に近いエリアであれば、利便性は大きくは変わらないためお得だといえるでしょう。
ランニングコストを抑えられる
市街化調整区域メリットのひとつは、「固定資産税」や「都市計画税」などのランニングコストを抑えやすいことです。
日本国内に不動産を所有している方に課せられる固定資産税については、市街化調整区域内の土地や建物は「固定資産税評価額」が低く設定されるため、税額も低くなる傾向にあります。また都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てるため、市町村が都市計画区域内の土地や家屋に対して課税されます。市街化調整区域は開発が抑制されているため、区域内の土地や家屋は課税対象外です。
つまり、市街化調整区域は固定資産税の計算のもととなる固定資産税評価額が市街化区域よりも低いことに加え都市計画税がかからないため、年間のランニングコストを抑えられるのです。
静かな住環境が期待できる
市街化調整区域は、原則として住宅や商業施設が建てられないため、周囲に大規模な建物が建つ心配がなく、静かな住環境が期待できます。
また、市街化区域のように建物同士が隣接している訳ではないため、一つひとつの家が離れており、開放感のある住環境も手に入れやすいです。広い庭や畑などを利用し、家庭菜園やガーデニングなども楽しむのも良いでしょう。
市街化調整区域の5つの注意点
市街化調整区域内の土地や建物の購入を検討する際は、注意点も踏まえたうえで決めましょう。
市街化調整区域は市街化区域に比べて経済的で、静かな住環境が期待できるといった特徴がありますが、次のような注意点があります。
- 生活利便性が低い傾向がある
- インフラの整備が遅れがちになる
- 建築やリフォームに制限がある
- 住宅ローンが通りにくい傾向にある
- 売却するのが難しい
それぞれについて解説します。
生活利便性が低い傾向にある
市街化調整区域は市街化区域に比べ、生活利便性が低い傾向にあります。原則として住宅や商業施設は建てられないため、離れたスーパーまで日用品などを買いにいく必要があるかもしれません。 また、学校や病院が遠かったり、数が少なかったりする傾向があります。農地や森林が多いエリアであるため、市街化区域のような利便性はないでしょう。
インフラの整備が遅れがちになる
市街化区域は行政が優先的に水道やガス、電気などのインフラを整備しますが、市街化調整区域ではインフラの整備が遅れる可能性があります。また、エリアによっては自分でインフラを整備しなければならない場合があります。例えば、下水道や都市ガスが整備されていない場合は、浄化槽やプロパンガスで対応する必要があるため、コストが高くなってしまうでしょう。
建築やリフォームに制限がある
市街化調整区域では、新築時だけでなくリフォームやリノベーションといった改築、建て替え時にも開発許可が必要となることがあります。 そのため、新築ではない既存の物件に手を加えようとしても、行政からの許可が下りないため自由に工事ができない可能性があります。開発許可の基準などは各自治体によって扱いが異なるため、事前に確認しましょう。
住宅ローンが通りにくい傾向にある
市街化調整区域では、土地や建物といった不動産に関する住宅ローンが通りにくい傾向にあります。 市街化調整区域の不動産は価格が低いことから、住宅ローンの担保としての十分な価値を満たせないことが多い場合があります。
担保価値が低いと、仮に住宅ローンを回収できなくなった際に金融機関が不動産を差し押さえたとしても、残った住宅ローンのお金を取り戻せない可能性が高いため、積極的に融資してくれない傾向にあります。
市街化調整区域の住宅を購入したいものの、なかなか住宅ローンが組めずに悩んでいる方は「住宅ローンの相談窓口」にご相談ください。 「住宅ローンの相談窓口」では、幅広い条件の物件に融資を行っています。他の金融機関から融資を断られてしまった場合など、ぜひ一度お問い合わせください
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売却することが難しい
市街化調整区域の土地や建物は、売却が難しいことが多いです。利便性などの立地条件から購入を検討する方が少ないことに加え、住宅ローンを組める金融機関が少なく購入が難しいためです。 市街化区域の物件よりも安く購入できたとしても、売却が難しく時間がかかる傾向にある点とは覚えておきましょう。
市街化調整区域で家を建てる方法
市街化調整区域では原則として住宅は建てられませんが、一定の要件を満たすことで建てられます。具体的な方法は以下のとおりです。
- 都市計画法第34条を満たした土地に建てる
- ディベロッパーが開発した土地・住宅を購入する
- 市街化調整区域に指定される前から存在する中古住宅を購入して建て替える
都市計画法第34条を満たした土地に建てる
都市計画法第34条では、市街化調整区域で開発するための基準が設けられています。大まかな内容は次のとおりです。
- 市街化区域に隣接しているもしくは同一生活圏にある
- 近くに50戸以上の住宅がある
- 建築予定物が周辺地域の環境保全に支障を与えない
これらの基準の他にも、どのような条件があるかは自治体によっても異なります。あらかじめ窓口で確認しましょう。
ディベロッパーが開発した土地・住宅を購入する
ディベロッパーが開発許可を取り、大規模に開発した土地・住宅を購入するのもひとつの方法です。現在開発が行われているのであれば、新築を購入できます。ただし、市街化調整区域における大規模開発はそれほど多くないでしょう。 過去に開発が行われたエリアの中古物件を購入し、制限の範囲内でリフォームなどするのもよいでしょう。
市街化調整区域に指定される前から存在する中古住宅を購入して建て替える
市街化調整区域の土地には、農業従事者や親族しか建築できない場合があります。
しかし、市街化調整区域に指定される前から存在する中古住宅を購入し、一定の条件を満たすことができれば住宅ローンを組んで家を建てることが可能です。そのため、新築することにこだわらず、古くからある中古の建物を購入するのもひとつの方法といえるでしょう。
不明な点があれば自治体や専門家に相談する
市街化調整区域では、土地や建物の売買や建築に際し、複雑な規制が存在します。専門知識を持たない方がご自身で判断することは難しいため、自治体や専門家への相談をお勧めします。不明な点があれば、必らず相談しましょう。入念に確認すれば、購入した土地に思ったような建物を建築できない事態は避けられます。
また市街化調整区域の住宅を購入したいものの、なかなか住宅ローンが組めずに悩んでいる方は、幅広い条件の物件に融資を行っている「セゾンの住宅ローンの相談窓口」にご相談ください。
おわりに
市街化調整区域とは農地や森林を守り無秩序な開発がされないよう市街化が抑制されている地域です。
市街化調整区域は、市街化区域の不動産よりもコストが抑えられる、静かな住環境が期待できるといった特徴がある一方、利便性に欠ける、住宅ローンに通りにくいといった注意点もあります。
原則として住宅が建てられない市街化調整区域ですが、次のような条件を満たすことで建築が可能になります。
- 都市計画法第34条を満たした土地に建てる
- ディベロッパーが開発した土地・住宅を購入する
- 市街化調整区域に指定される前から存在する中古住宅を購入して建て替える
静かな住環境で生活したい方にとっては、市街化調整区域はまさに憧れのエリアといえるでしょう。市街化調整区域でマイホームを持つためには、希望条件に合う不動産会社を探すことが大切です。
市街化調整区域での売買や建築条件は細かく、自分で判断するのは難しい場合があります。条件にあてはまるのかわからない場合は、自治体や専門家に相談しましょう。
※本記事は公開時点の情報に基づき作成されています。記事公開後に制度などが変更される場合がありますので、それぞれホームページなどで最新情報をご確認ください。