返済中の住宅ローンがある方のなかには、金利が高いと感じて借り換えを検討している方も多いのではないでしょうか。住宅ローンの借り換えどきを知るには、そのメリットや注意点を押さえておくことが重要です。このコラムでは、どんなタイミングが借り換えに動くべきポイントなのかを具体的に解説します。
コラムを読むことで返済負担を抑えながら有利に住宅ローンを利用するコツが理解できますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 金利が低下しているときや残高が1,000万円以上、返済期間が10年以上あるなら借り換え検討のタイミング
- 借り換えには、返済負担の軽減だけでなく、金利上昇のリスクがなくなることや団信を見直せるメリットもある
- 借り換えには30万~80万円の費用がかかるため、事前に総支払額を計算することが大切
- 金利タイプの理解や総支払額の把握が借り換えには不可欠であり、専門家の助言を受けるのがおすすめ
住宅ローン借り換えのタイミングはいつ?
住宅ローンの借り換えとは、現在のローン契約を見直し、別の金融機関で新しいローン契約を結ぶことをいいます。基本的には、現在の元利金の支払いより負担を減らすために行いますが、どのタイミングが借り換えに最適なのでしょうか。
ここでは、4つのポイントに分けて詳しく解説します。
ローンの金利が下がったとき
住宅ローン借り換えのタイミングとして最もイメージしやすいのは、国内のローン金利が下がったときでしょう。ご自身の現在の借入金利よりも、別の金融機関が低い金利を提供していれば、借り換えを実行するタイミングです。
それぞれの借入状況によりますが、一般的に借り換えメリットがあると判断する目安は、1%以上の金利差がある場合といわれています。
金利動向を見極めるうえでポイントになるのは、日本銀行の金融政策。景気が悪化して経済を活性化する必要がある場合、日銀は低金利政策をとり、逆に景気が過熱してきた場合は金利を高くして引き締めに動きます。金利変動のタイミングを見逃さないよう、常に経済情勢に注意を払うことが重要です。
ローン残高1,000万円以上、返済期間10年以上のとき
住宅ローンの借り換えを検討する際、ローン残高や返済期間も重要。特に、ローン残高1,000万円以上かつ返済期間が10年以上残っている場合には、借り換えのメリットを得やすくなります。借り換え額が少額であったり、返済期間が短すぎたりすると、低い金利の契約に移行したとしても、借り換えには手数料などの費用がかかるため、恩恵が限定的になってしまうからです。
例えば、金利2.5%から1.0%のローンに借り換えたケースを見てみましょう。【1】残高1,500万円、返済期間15年の場合と、【2】残高700万円、返済期間7年の場合の借り換え効果を計算すると次のとおりです。返済方法は元利均等返済とします。
残高1,500万円、返済期間15年 | 借り換え前(金利2.5%) | 借り換え後(金利1.0%) |
毎月の返済額 | 100,018円 | 89,774円 |
総返済額 | 18,003,240円 | 16,159,320円 |
残高700万円、返済期間7年 | 借り換え前(金利2.5%) | 借り換え後(金利1.0%) |
毎月の返済額 | 90,924円 | 86,318円 |
総返済額 | 7,637,616円 | 7,250,712円 |
借入残高1,500万円、返済期間15年では、借り換えによって総返済額が約184万円減るのに対し、借入残高700万円、返済期間7年の場合は約380,000円しか減りません。借り換えには手数料などの費用がかかりますので、効果はマイナスになることもあるでしょう。
希望の条件に合った金融機関が見つかったとき
住宅ローンを借り換えるタイミングのひとつは、希望の条件に合った金融機関が見つかったときです。
返済中の住宅ローン金利よりも1%以上低い金利の銀行を見つけたり、住宅ローン契約者に万が一のことがあった場合に保障を受けられる団体信用生命保険の内容が充実している金融機関を見つけたりした場合などです。諸費用が安価だったり、優遇金利キャンペーンを行ったりしているケースも借り換えのチャンスでしょう。
こうした条件が良い金融機関への借り換えは、月々の返済額の軽減や保障の強化など、さまざまなメリットが期待できます。住宅ローンについて定期的に情報収集を行い、最適なタイミングを逃さないように意識することが重要です。
固定期間が終了し、金利が上がったとき
住宅ローンの固定期間が終了する時点も、借り換えを検討するタイミングとなりえます。例えば、借入から10年間は固定金利とする特約を結んでいる場合です。この10年固定のケースでは、経済情勢によっては特約が終了する11年目から一気に金利が上昇する可能性もあるでしょう。
このような状況を避けるためには、固定期間が終了する前に11年目以降の金利条件を確認し、借り換えの可能性を考えることが重要です。固定期間終了前に余裕をもって借り換えシミュレーションを行うことで、金利の変動リスクを回避し、家計負担を減らすことが可能となります。
住宅ローン借り換えのメリット5つ
住宅ローンの借り換えには数々のメリットがあります。ここでは、借り換えを行うことで得られる5つの効果を詳しく解説しましょう。
月々の返済負担が少なくなる
住宅ローンを借り換える最も大きな目的は、月々の返済負担を少なくすることでしょう。金利の低い住宅ローンに乗り換えることで、利息の支払い額が減り、総返済額が少なくなります。
借り換えに伴って返済期間を延ばすことで、月々の支払額をさらに抑えることも可能です。返済期間を長くすればその分総返済額は増えますが、収入が減少しているときや教育費などが増えている場合などは、毎月の返済が減るのは家計にとってメリット。
家計の負担軽減を実現しつつ、余裕を持った資金計画を立てることが可能です。
総返済額が減らせる
総返済額を減らせることも、住宅ローン借り換えのメリットとなります。金利が比較的高い時期に住宅ローンを借りた場合、低金利の経済環境下で借り換えを行うことで、利息負担が大きく削減され、総返済額の軽減につながるでしょう。この効果は特に、残高が多く、返済期間が長く残っているローンに対して顕著です。
金利上昇のリスクがなくなる
変動金利タイプを利用している場合の金利上昇リスクは、住宅ローンを組む際の懸念材料の一つです。
しかし、住宅ローンの借り換えに合わせて固定型に変更することで、その不安を解消することも可能です。変動金利は金利が上昇すると返済額も増加しますが、固定金利の場合、借り換え時点の金利が長期間適用されるため、急な金利上昇による返済額の増加を心配する必要がありません。
リフォームローンが借りられる
住宅ローンの借り換えメリットには、リフォームローンが借りられることもあります。リフォームローンは、住宅の増改築や修繕などを行う費用をまかなうためのローンです。
一般的には住宅ローンよりも金利が高い傾向があります。しかし、借り換えを行う際に住宅ローンと一緒に借りることで、低い金利を適用できる可能性があるのです。家計負担を抑えながら住まいの価値向上を図ることができる有効な手段となりえるでしょう。
団体信用生命保険の保障見直しができる
団体信用生命保険の保障見直しができる点も、住宅ローンの借り換えメリットとなります。団体信用生命保険は団信と略され、住宅ローン利用者が亡くなったり高度障害の状態になったりした場合にそなえる保険です。住宅ローンの借り換えに伴い新たな団信に加入することで、がんや急性心筋梗塞、脳卒中といった通常の団信では保障されない疾病も含む充実した内容に変更できる可能性もあります。
ただし、団信の加入には年齢制限がある場合が多く、一定の年齢以上では新たな保険に加入できないこともあります。借り換えを検討する際には、団信の条件を事前に確認することが重要です。
住宅ローン借り換えの注意点
次に、住宅ローンの借り換えを行う際の注意点を解説します。返済負担の軽減や条件の改善につながる借り換えを成功させるには、必要となる費用や手続き面など気をつけるべき点について知っておくことが大切です。
諸費用が発生する
住宅ローンの借り換えを行う際は、諸費用が発生することを念頭に入れておく必要があります。借り換えを行う金融機関によって異なり、総額で300,000~800,000円を目安としておきましょう。
諸費用には、借り換え前の住宅ローンの完済に伴う費用と、新たに借りる住宅ローンに関する費用があります。
借り換え前の住宅ローン完済に伴う費用
繰り上げ返済手数料 | 0~30,000円程度 |
抵当権抹消費用 | 20,000~30,000円 |
繰り上げ返済手数料は金融機関によって異なり、無料の場合や30,000円程度などさまざまです。抵当権抹消費用は、登録免許税(一つの不動産につき1,000円)と司法書士報酬を含みます。
新たに借りる住宅ローンに関する費用
事務手数料 | 30,000~数十万円 |
保証料 | 数十万円 |
抵当権設定費用 | 数十万円 |
印紙税 | 数万円 |
新たに住宅ローンを借りる際に支払う事務手数料は、定額のケースと借入金額に一定割合をかける定率のケースがあります。定額なら30,000~50,000円程度が多く、定率なら借入金額の2%(借入金額2,000万円なら400,000円)程度と高めに設定する代わりに後述の保証料を不要とするケースも。
保証料は返済不能となった場合に肩代わりしてくれる保証会社に支払うもので、金融機関ごとに異なります。金利に上乗せされるケースもあるため、借り換えを行う金融機関に確認してください。
抵当権設定費用は、登録免許税と司法書士報酬です。登録免許税は借入金額の0.4%となっており、3,000万円のケースだと120,000円となります。司法書士報酬は70,000~90,000円が目安。印紙税は住宅ローンの契約書に記載する借入金額によって変わり、1,000万円超5,000万円以下の場合20,000円となっています。
参照元:財務省「登録免許税に関する資料」登録免許税の概要
国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」第1号文書から第4号文書までの印紙税額の一覧表
さまざまな手続きが必要になる
住宅ローンを借り換える際には金融機関の審査や契約に必要な書類の準備など、さまざまな手続きが求められることにも注意しましょう。
具体的には、役所で住民票や所得証明書を取得したり、審査や契約手続きで金融機関に出向いたりする必要があります。借り換え実行が決まった後には、現在、借りている金融機関に対する繰り上げ返済の手続きや、新たな金融機関での口座開設などの手続きも必要です。
再度審査が必要
住宅ローンの借り換えを行うには、新たな金融機関で再度住宅ローンの審査をしてもらう必要があります。一方で、現在のローンが審査を通過したといっても、借り換えどきに必ず通るとは限りません。
住宅ローンの審査では、現在の就業状況や収入など、融資をする時点の経済状況がチェックされます。特に、転職したばかりだったり、収入が減少したりしている場合、審査を通過できないリスクが増すでしょう。団体信用生命保険に入りなおすことになるため、健康状態によっては加入できずに融資を受けられなくなったり、受けられても保障内容が悪化したりするリスクもあります。
住宅ローン控除が減ってしまうことがある
住宅ローンの借り換えを行う際には、住宅ローン控除の取り扱いにも注意してください。住宅ローン控除とは、入居年から10年間または13年間、年末のローン残高に対して0.7~1%分が税金から控除される仕組みです。
新たな住宅ローンが借り換え前のローンを返済するためであることが明らかな場合は、住宅ローン控除は引き継がれますが、借り換え後の返済期間が10年未満となる場合は、控除を受ける資格が失われる点に気をつけましょう。
また、借入前のローン残高より、諸費用を含めるなどの理由で借り換え後の住宅ローン残高が多くなってしまう場合は、控除額の調整が必要。借り換えによって控除額が少なくなる可能性もあるので、事前にシミュレーションをするのが大切です。
住宅ローン借り換えの失敗を防ぐコツ
住宅ローンの借り換えで注意すべき点の確認を怠ると、借り換えが逆効果となるリスクもあります。ここでは、住宅ローンの借り換えの失敗を防ぎ、成功につなげるコツを3つ紹介しましょう。
諸費用を含めた総支払額を計算する
住宅ローンの借り換えを検討する際、まずは諸費用を含めた総支払額を計算して明確に把握することが大切です。借り換えの際の諸費用はこのコラムの「住宅ローン借り換えの注意点」で解説したように、300,000~800,000円ほどと金融機関によって幅があります。仮に借り換えによって金利が低下して月々の返済額が減ると感じても、諸経費を加算すると、元のローンの支払い額を超えてしまうケースもあるでしょう。
例えば、借り換えによって総返済額が700,000円軽減されるとしても、諸費用で800,000円かかればトータルではマイナスに。借り換えによる本当のメリットを評価するには、諸費用を含めた総支払額の把握が必須です。
金利タイプをしっかりと理解しておく
住宅ローン借り換えの際、金利タイプをしっかりと理解し、それぞれの特性を検討することも重要です。金利には「変動」「固定」「固定特約」と3タイプあり、それぞれメリットとデメリットがあるため、ご自身の考え方やライフプランに合わせた金利を選ぶことをおすすめします。
変動金利はその名のとおり、金利が変動するタイプ。低金利時には有利となる一方、金利が上昇すると返済額も増えるリスクがあります。低金利のときに早く返済したい、あるいは将来も低金利が続く、または金利が下がると考えられるなら変動金利を選択しましょう。
固定金利は金利が一定であるため、金利上昇のリスクがなく、返済計画が立てやすいです。しかし、初めから金利がやや高めに設定される傾向がある他、金利が下降する局面では不利となります。今後、金利が上昇すると考える場合は固定金利を選択するのが有効。過去、金利が高い時期に固定金利で借りた住宅ローンがある場合は、低金利環境で借り換えメリットが大きくなるでしょう。
固定特約は、借入から3年、5年、10年などの期間を選んで、その期間を固定金利とするタイプ。特約期間終了後は、変動金利とするか再び固定特約とするか選べるのが一般的です。
プロにアドバイスしてもらう
住宅ローンの借り換えをするには、諸費用を考慮した効果を把握することや、経済環境とご自身のライフプランに照らし合わせた金利タイプを選ぶなど、考えるべき点が多数あります。借り換えるべきか、やめるべきか悩む点が多いため、検討する際には住宅ローンのプロからアドバイスしてもらう方法も有効です。
住宅ローンの返済軽減についてお悩みなら、お金に関するさまざまなニーズを解決できる「iYell(いえーる)」の「住宅ローンの相談窓口」がおすすめ。iYellはクレディセゾングループと提携している他、国内100社以上の金融機関と業務提携しています。各金融機関の審査基準を踏まえながら、借り換えを検討している方に最適なプランを提案できるでしょう。
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おわりに
住宅ローンの借り換えは、家計負担を軽くして安心して暮らしていくための有効な手段となりえます。しかし、借り換えを成功させるには綿密な準備と計画が大切。借り換えをするタイミングをつかむには、金利動向だけでなく、費用や手続きの手間、金融機関の審査など、さまざまな要因を考慮することが重要です。
変動金利と固定金利といった金利タイプの違いを理解する必要もあり、個人のライフプランや金融状況に最適な選択を行うことも重要でしょう。これらをスムーズに進めるには、「iYell(いえーる)」の「住宅ローンの相談窓口」やクレディセゾンのフラット35の借り換え専用ページなどで専門家のアドバイスを活用するのがおすすめです。このコラムを参考に、ぜひ借り換えを成功させてください。