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年金生活は苦しい?老後貧困の原因・対策について考える

年金生活は苦しい?老後貧困の原因・対策について考える
セゾンのくらし大研究 編集部

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豊かなくらしに必要な「お金」「健康」「家族」に関する困りごとや悩みごとを解決するために役立つ情報を、編集部メンバーが選りすぐってお届けします。

人生100年時代が到来しています。高度経済成長期(1970年代〜)のように60歳定年まで1社で勤めあげ、そこから退職金と年金生活を送る生活モデルはすっかり過去のものとなりました。公的年金の受給額低下と受取開始の引上げ、退職金制度の廃止など、老後を迎えるにあたって懸念事項は次々と出てきます。本記事はそのなかでも最大のリスクと考えられる、老後貧困の原因と対策について考えます。

この記事を読んでわかること

老後貧困はどのような原因によるものなのかを可視化し、対策を考えます。 老後の生活費が不足しそうな場合、現役時代からどのような準備が効果的なのかをお伝えします。 公的年金の仕組みについて解説し、今後どのように変わっていきそうかを予測します。 公的年金の繰り上げ、繰り下げの仕組みや、在職老齢年金の法改正について解説します。 なぜ企業は退職金を出さなくなったのか、また代替策としてどのような仕組みがあるのか考えます。

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老後貧困の現状

1.老後貧困の現状

老後貧困という言葉には、いま実際に高齢期を迎えている方々が生活に苦しむ場合と、現在の現役世代が老後を迎えた際に(現在の高齢期に比べて)安心できなくなるという二面があります。

まず前者についてです。厚生労働省の発表した国民生活基礎調査(2021年)によると、高齢者世帯の50.4%が生活が苦しい(大変苦しい+やや苦しい)と感じています。

参考:厚生労働省|「2021年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況P12

生活が苦しいとは、毎月入ってくる収入+それまでの資産からの生活費組入れに対し、月次の支出が同等かそれ以上であることに起因します。

生命保険文化センターが行った調査によると、夫婦2人で老後生活を送るにあたって、最低日常生活費は月額232,000円です。またゆとりある生活費は平均379,000万円と報告されています。先の厚生労働省の調査における「生活が苦しい」という意見がゆとりある生活費に対して不足しているのか、最低生活費に対して不足しているのかにより、印象は変わります。

なお、人生100年時代という言葉のもと、この生活費が100歳まで必要だと総額いくら必要なのかを試算してみましょう。あらかじめ必要となりそうな金額を想定してから、下の表を見てください。

種類 期間 総額
最低日常生活費232,000円 40年間(60歳から100歳まで) 1億1,136万円
ゆとりある生活費379,000円 40年間(60歳から100歳まで) 1億8,192万円

最低日常生活費で1億円を超える統計は、想定以上ではないでしょうか。

個人型確定拠出年金(iDeCo)による給付金など、人によって事情は異なります。ただいえるのは、老後になって資産の目減りだけで悠々自適に暮らせる感覚には該当しない、と考える方が多いということです。

さらに分析すると、この統計の前提が変わるケースがあります。それは単身世帯の高齢者についてです。

高齢者世帯は増加、約半数が単身世帯

日本における高齢者世帯(65歳以上の者のいる世帯)は全体の約5割(2021年)です。この高齢者世帯のうち、単身世帯が全体の49.3%(内訳/男性:35.7%、女性64.3%)という現状があります。

参考:厚生労働省|「2021年 国民生活基礎調査の概況」I 世帯数と世帯人員の状況P4・5

高齢者世帯において単身世帯が増加するのは大半が死別と考えられます。単身世帯になると月次の生活費が減る一方、年金受給額も2人から1人分となるため、生活設計の再構築が必要です。

男性よりも女性の貧困率が高い

単身世代が増える際の課題は、女性に老齢厚生年金の受給権がない場合が多い点です。女性は老齢基礎年金のみで生活しているケースが多い現状があります。これは現役時代の保険料納付に理由があります。

女性は男性より第3号被保険者(被扶養者)の割合が多くなっているためです。第3号は配偶者の加入している第2号被保険者の保険料のなかに基礎年金拠出金として納付しているため、第3号被保険者自身は年金保険料を納めていません。

そのため、第3号被保険者は老齢基礎年金のみの受給となります。具体的には65歳以上の女性の平均年金月額は96,000円で、男性より63,000円低くなります。

また現役世代に配偶者が会社勤めではなく、自営業や農業などの国民年金受給者だったケースでは、夫の死後は基礎年金のみになります。また前提として、女性の方が男性より平均寿命が長いことも理由のひとつです。

参考:厚生労働省年金局|「令和元年公的年金加入状況等調査結果の概要」P3
   厚生労働省|「公的年金受給者に関する分析」P3

年金生活の高齢者が多い、年金支給額も減っている

なお老後、公的年金のみで生活している方は、年金受給者の24.9%を占めます。年金収入が総所得の80~100%未満を占める世帯33.3%を含めるとで、全体の58.2%を占めるという統計が出ています。

すでに高齢世帯になってから年金受給額を増やすことは難しいため、現役世代で将来「自分は国民年金分しか受け取れない」と懸念がある方はねんきん定期便などを確認しましょう。

受給想定額が生活費をどこまでカバーできるのか、早い段階から想定しておくことが大切です。試算によっては公的年金の受取開始を数年単位で動かせる年金の繰り上げ受給、繰り下げ受給を検討しましょう。

参考:厚生労働省|「国民生活基礎調査の概況」(2021年)厚生労働省|「年金額の推移」(2017年まで)厚生労働省|「令和5年度の年金額改定についてお知らせ」

老後貧困に陥りやすい方の特徴

ここからは貧困に陥りやすい方の特徴を考えます。可視化することによって、どのような状況を回避すれば良いのかが見えてきます。

これまで年金を納めていなかった方

まずはこれまで年金を納めていなかった方です。現役時代、年金の保険料が未納であると老齢年金が受け取れないので貧困になりやすいです。公的年金を満額受給するのは40年、受給資格を得るには10年の受給期間が必要です。若い頃に支払う余裕が無かったという方は追納や、付加年金の活用などを検討しましょう。

現役時代の賃金が低い方

厚生年金においては現役時代の賃金により保険料が変わるため、高齢期後の受給額も応じて変化します。実際に現役時代に賃金水準の低い世帯は年金の給付水準が低くなるという調査結果が厚生労働省から発表されています。

年金未納と同様、ご自身および家族がいくら貰えるのかを想定し、老後の生活プランを組み立てることが大切です。

参考:厚生労働省|いっしょに検証!公的年金

自営業者や就労期間が短かった方

国民年金の受給者は自身の年金状況を確認しておくことが大切です。現役時代、自営業が中心であった方、アルバイト・パートなどの非正規労働が中心であった方、就労期間が短かった方などは、公的年金の給付水準が低いという統計があります。

具体的に見ていきましょう。厚生労働省の「公的年金受給者に関する分析」によると。正社員中心の方の平均年金月額が166,000円に比べて、パート中心の方は90,000円、自営業中心の方は82,000円となっています。

参考:厚生労働省|公的年金受給者に関する分析P2

高齢者が貧困になる原因は?

3.高齢者が貧困になる原因は?

続いて高齢者が貧困になる原因を考えていきます。

住宅ローンの支払いが長引く

住宅購入時の年齢が上がると住宅ローンの支払いが長引きます。以前は60歳から65歳の定年までに住宅ローンの返済を終えることを前提にライフプランを組みましたが、昨今の晩婚化による子育て年齢の変化で、この前提が変わってきました。

また現役時代には住宅を購入せずに賃貸物件で生活する方も、50代を超えて住宅購入する考え方の方も増えてきています。これは当然ながら、住宅ローンの支払いが高齢期を迎えても続くことに繋がります。

子どもの教育資金の出費が大きい

教育費まわりも変化します。厚生労働省「出産に関する統計」によると平成27年以降の第一子の出産時の母親の年齢は30.7歳です。なかには40歳を超えて出産する方も珍しくはなくなっています。

40歳で出産とすると、子どもが大学に通う22年後は62歳です。すでに定年を迎えている場合もあるでしょう。定年を迎えても、引き続き子どもの学費がかかるケースが多くなっています。教育費がかかる分、預貯金ができないまま、定年を迎えてしまう傾向があります。

退職金が少ない

続いて退職金です。勤務先の方針により当初の想定よりも退職金が少なく、定年後の老後資金が不足する懸念があります。そもそも退職金を支給しない企業も増えています。

背景には終身雇用制度が過去のものとなり、同一の企業に40年近く勤める方の絶対数が減少しました。また会社内で福利厚生に投下する資金の優先度が下がっているのも背景のひとつです。

参考:厚生労働省|退職手当制度がある企業の割合

家の維持費がかかる

高齢期になり家賃支払いは厳しいので家を買おうという(不動産会社の)メッセージが目に止まります。住宅ローンを返済したあとの持ち家は確かに家賃負担がなく、物件も資産となるメリットがあります。一方で持ち家の場合は、固定資産税や家の修繕費が必要となります。住宅ローン返済後、持ち家にも引き続き必要となるコストがあることを想定できておらず、老後貧困につながる要因となります。

家計の見直しが不充分

これらに共通していえることは、家計の可視化が不足していることです。定年を機に家計の見直しが不充分であると、収入と支出のバランスがとれず、老後貧困につながります。

老後、生活資金が足りない場合の対処法

4.老後、生活資金が足りない場合の対処法

では老後貧困の可能性がある場合は、具体的にどのような対策を考えれば良いのでしょうか。

年金生活者支援給付金制度を利用する

最初にお伝えするのは年金生活者支援給付金制度です。一定の要件を満たすと受給の対象となります。

・年金生活者支援給付金制度とは

年金生活者支援給付金制度は消費税引き上げ分を活用し、公的年金等の収入が一定額以下の方に支給する給付金制度です。

(支給要件)

(1)65歳以上の老齢基礎年金の受給者
(2)同一世帯の全員が市町村民税非課税
(3)前年の公的年金等の収入金額の、その他の所得との合計額が881,200円以下

これらの条件を満たした方に、月額5,140円を基準として算出した以下の(1)(2)の合計額が支給されます。

(1)保険料納付済期間のある方 5,140円×保険料納付済期間(月数)/480月
(2)保険料免除期間のある方 11,041円×保険料免除期間(月数)/480月

参考:厚生労働省|「年金生活者支援給付金について」、厚生労働省|「よくあるご質問」

生活困窮者自立支援制度を利用する

給付金制度以外にも、衣食住、就労などを支援する制度があります。ご自身だけでやり繰りをしなければいけないと高利率でのローンを借りるよりは、一度これらの支援制度に相談してみましょう。

全国各地に、生活自立センター、自立支援相談窓口などが設置されている。

参考:厚生労働省|「生活困窮者自立支援制度」

固定費の見直しを検討する

もちろん継続的な家計改善も重要です。まずは支出を減らせないか考えましょう。自動車の所有を止めてカーリースにしたり、格安携帯に乗り換えるなど、先入観を持たなければ減らせる固定費はあります。また食費と交際費は変動費のなかでも、もっとも削減できる部分です。家計の見直しを専門とするファイナンシャルプランナー(FP)に相談することも効果的です。

定年後も働き続ける

高齢期の収入は年金だけではありません。昨今はシニア世代の雇用も促進されています。さまざまな紹介サービスも生まれていますので、経験を活かして短時間でも働き、収入につなげましょう。

資産運用にチャレンジする

資産運用を始めるのも遅くはありません。手元に余裕資金があるのならば、インフレに弱い預貯金を投資信託などへ投資して、運用益を目指してみましょう。運用益が非課税になるNISAという制度も始まっており、2024年からより使いやすくなった新制度への移行も予定されています。

リースバックで自宅を売却する

最後は不動産です。子どもたちを育てた自宅をどうしようとお考えでしょうか。老後の資金作りには、自宅を売却して現金化し、その後も住み続けられるサービスである「リースバック」もおすすめです。資金を調達できるうえ、住み慣れた家で生活し続けることができます。老後生活に余裕がほしい方は、是非一度問い合わせてみましょう。

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おわりに

老後資金が足りないと判明したときにどうするかをお伝えしました。老後の生活費は収入が見込める早い時期に可能な動きをしておくことがポイントです。ただ、実際に高齢期になってからでも、打てる手はたくさんあります。家計のやりくりから公的制度、実家の処理にいたるまで複数の選択肢を検討しながら、安心した毎日を過ごせるようアクションを起こしていきましょう。

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