給与・退職金の減少や老後への不安などから、近年資産運用を始める方が増えています。しかし、資産運用をスタートしてみたものの「株式投資の配当金はいつ入る?」「どの銘柄を選ぶべき?」など、始めたからこそ浮かぶ疑問点が増えたという声も少なくありません。そこでこのコラムでは、資産運用の中でも株式投資の配当金に注目して、詳しくご紹介します。株式投資を始めた方やこれから始めたい方はぜひご覧ください。
この記事を読んでわかること
株式投資には値上がり益、株主優待、配当金という3つの利益があります。なかでも配当金は企業が得た利益を株主に現金配当する方法で、毎年一定額の収入が見込めるため、堅実な株式投資が行いたい方に向いています。配当金は年に1~2回、各企業が定める「権利確定日」の2~3ヵ月後にもらえることが一般的です。なお、配当金をもらうには権利確定日の2営業日前である「権利付き最終日」までに株を購入する必要があります。この日を過ぎると、その期の配当金は受け取れないため注意が必要です。近年はクレジットカードで株式投資が行えたり、1株ごとに購入できたりするサービスもあるため、初心者でもスタートしやすいでしょう。
まずは基礎知識を解説!配当金とは?
配当金とは、株式投資で得られる利益の一つです。ここではまず、株式投資の利益や配当金の仕組みについて詳しく見ていきましょう。
株式投資における3つの利益
株式投資には、主に3つの利益があります。
値上がり益
値上がり益とは、購入時よりも高い値段で株を売却したときに得られる、差額分の利益のことです。例えば、100,000円で買った株が1ヵ月後に150,000円になったタイミングで売却すると、50,000円分の値上がり益を得られます。キャピタルゲインとも呼ばれており「株価が低いときに買って高くなったら売る」というのが基本的な考え方です。
メリットは、大きな利益を短期間で得られる可能性があることが挙げられます。一方で、株価を読み間違えると大きな損失が出やすいことがデメリットです。こうした特徴から、株式投資の中でもハイリスク・ハイリターンが許容できる方に向いているといわれています。
株主優待
株主優待とは、自社の株を購入した株主に対し、その企業が優待品を贈る制度のことです。例えば、大手テーマパークでは株主優待として入場チケットを発行していたり、全国規模のジムでは無料の施設利用券を贈呈していたりします。株主優待を導入するのはあくまで任意ではありますが、上場企業のうち1,400社以上が活用している制度です。
近年の動きでは、公平性を保つために株主優待の廃止を決める企業が相次いだ一方で、個人投資家の比率を増やしたいなどの理由から株主優待を新設するところも増えています。長く保有すると優待品がさらにプラスされる企業もあるため、資産運用を楽しく続けたい方に向いているといえるでしょう。
配当益
配当益とは、企業が事業活動などで得た利益の一部を、株主へ還元する仕組みのことです。一般的には現金で支払われる「現金配当」が多いため配当金とも呼ばれますが、企業の中には自社の株式を新たに発行する「株式配当」を行うところもあります。日本企業の多くは、本決算時に年1回もしくは中間決算と本決算時で年2回、配当益を支払うところが多いでしょう。
ただし、配当益の有無や金額は企業の業績や財務状況などによって決まります。そのため、企業の業績が悪化している場合は配当益を支払わない可能性もあります。つまり、配当益はもらえることが確約されているわけではないのです。とはいえ、業績が安定している企業であれば配当が減ることは少ないため、堅実にお金を増やしたい方に向いている仕組みといえるでしょう。
配当金とは?
配当金とは企業の利益状況に応じて株主に支払われる現金配当のことです。インカムゲインとも呼ばれており、継続的な収益が見込めるため、値上がり益と比べるとローリスク・ローリターンといえます。ただし、その特性から収益率には上限があり、高配当と呼ばれる銘柄でも年間の配当利回りは4〜8%程度であることが多いでしょう。短期間で大きな収益を出すことは難しいですが、手堅く安定した資産運用をしたい方に向いています。
なお、各企業の配当金の情報は「四季報」などで確認することが可能です。証券会社で口座を開設すると、公式Webサイトの個別銘柄のページから四季報を閲覧し、企業概要や財務状況など配当金に関する情報を得ることができます。また、企業の四季報をまとめた情報誌も発行されているため、株式購入の参考にできるでしょう。
配当金はいくらもらえる?
配当金がどのぐらい受け取れるかは、事前にある程度知ることができます。算出方法は、証券会社や各企業の公式Webサイトなどで1株あたり配当金がいくらもらえるかを確認し、持ち株数に掛けるだけです。以下の表で、各企業の株を100株保有していた場合の配当金を算出してみましょう。
<配当金の算出例:100株保有していると仮定>
企業名 | 1株あたりの年間配当金 | 計算式 | 配当金 |
トヨタ自動車株式会社※1 | 52円 | 100株×52円 | 5,200円 |
武田薬品工業株式会社※2 | 180円 | 100株×180円 | 18,000円 |
日本たばこ産業株式会社(JT)※3 | 188円(予想) | 100株×188円 | 18,800円 |
2022年12月14日時点の情報で作成
※1 参照元:トヨタ自動車株式会社
※2 参照元:武田薬品工業株式会社
※3 参照元:日本たばこ産業株式会社
企業業績による増減はあるものの、株を保有していることで一定額の収入が毎年得られることは、配当金のメリットといえるでしょう。
配当利回りとの違いは?
配当金がいくらもらえるかは、配当利回りからも予想できます。配当利回りとは、株価に対する配当金の割合を予想したもの。
パーセンテージが高いほどより多くの配当金をもらえる可能性があります。証券会社の公式Webサイトなどに各企業の配当利回りが掲載されているため、購入前に確認すると良いでしょう。なお、配当利回りは次の計算式で算出されています。
1株あたりの配当金÷株価×100
例えば、1株あたりの株価が1,000円で配当金が50円の企業の配当利回りは「50÷1,000×100」で5%です。また、株価から1株あたりの配当金を知りたいときには「1,000円×5%」で計算すれば算出できます。ただし、配当利回りはあくまで確認した時点での予想のため、決算時に変動する可能性がある点に注意しましょう。
株の配当金はいつもらえる?もらうための条件もチェック
株式投資で配当金をもらうためには、一定の条件をクリアする必要があります。ここでは、配当金が支払われるスケジュールやもらうための条件を詳しく見ていきましょう。
配当金がもらえる日
配当金は、各企業が定める権利確定日から2~3ヵ月後に支払われます。支払われる回数は企業によって異なり、年に1回のところもあれば年2回支払うところもあります。
そのため「配当金の支払い日がいつか知りたい」「配当金がいつ口座に振り込まれるかを知りたい」という方は、ご自身が保有する株式を発行する企業の公式Webサイトなどで情報を確認すると良いでしょう。企業によっては、支払い時期を明示しているところもあります。
配当金をもらうための条件
その期の配当金をもらうための条件は、権利付き最終日までに株を購入することです。権利付き最終日とは、配当や株主優待などの権利を得られる購入締め切り日のことで、この日までに株を買っていれば株主名簿に登録され配当金が得られます。一般的に、権利確定日の2営業日前が権利付き最終日です。そのため、配当金の権利を得たい場合は、この期限までに株を購入しましょう。
<権利付き最終日前後のスケジュール:権利確定日が平日(水曜日)の場合>
29日(月) | 権利付き最終日 | 配当金や株主優待などの権利を得られる購入締め切り日 |
30日(火) | 権利落ち日 | この日に購入しても権利は得られない |
31日(水) | 権利確定日 | 株主名簿に記載される日 |
なお、土日祝日は営業日にカウントされないため、休日を挟む場合には次のようなスケジュールとなります。
<権利付き最終日前後のスケジュール:権利確定日が休日(日曜日)の場合>
27日(水) | 権利付き最終日 | 配当金や株主優待などの権利を得られる購入締め切り日 |
28日(木) | 権利落ち日 | この日に購入しても権利は得られない |
29日(金) | 権利確定日 | 株主名簿に記載される日 |
30日(土) | ||
31日(日) | (本来の権利確定日) |
すでに株を購入している方は権利付き最終日まで保有すれば、翌営業日の権利落ち日に売却してもその期の配当金は得られます。こうした仕組みがあるため、権利付き最終日までは株の購入が増えて株価が上昇し、権利落ち日には売却されて株価が下落する動きも見られやすいでしょう。
配当金の代表的な受け取り方法
配当金は、以下の4つの方法で受け取ることができます。ご自身の目的に合った受け取り方を選びましょう。
銀行口座で受け取る
配当金を銀行口座で受け取りたい方は「登録配当金受領口座方式」を選びましょう。この方式を選択すると、複数の証券会社に口座を開設していても、指定した一つの銀行口座にすべての株の配当金が振り込まれます。一つの証券会社に届け出ると、証券保険振替機構が同一の株主であると判断するため、証券会社ごとに受け取り方を設定する必要もありません。
「配当金を一つの銀行口座で管理したい」「配当金を生活費に回したい」という方におすすめの受け取り方法といえるでしょう。ただし、この方式では非課税制度であるNISA(ニーサ)で買い付けていても、配当金は非課税になりません。また、証券会社によっては振込先にゆうちょ銀行が選べないことがあるため注意しましょう。
郵便局窓口で受け取る
配当金を現金で受け取りたい方は、郵便局または指定金融機関の窓口にて配当金を受け取る「配当金領収証方式」がおすすめです。株の発行会社から郵送される「配当金領収証」の表面に受領印を押し、ゆうちょ銀行などに持参すると配当金を現金で受け取れます。金融機関によっては、運転免許証などの本人確認書類が必要なこともあるため、事前に確認しておくと安心でしょう。
なお、配当金領収証方式の場合、払渡期間が設けられています。この期間を過ぎてしまうと、信託銀行などで改めて手続きをする必要があるため注意が必要です。また、領収証を紛失したり配当金を受け取らずに除斥期間を過ぎてしまったりしたときは、その期の配当金が無効となります。そのため、配当金領収証が届いたら、できるだけ早めに配当金を受け取ったほうが賢明でしょう。
証券会社の口座で受け取る
非課税制度のNISAを利用して配当金を受け取りたい方は「株式数比列配分方式」がおすすめです。この方式を選ぶと、証券会社に預けている株の数量に応じて、それぞれの証券口座で配当金が受け取れます。支払開始日に自動で入金されるため、配当金を確実に受け取れる方法です。
なお、個人の配当金には20.315%の課税がかけられますが、株式数比列配分方式を選ぶとNISAの非課税枠を利用することができます。配当金を再投資したいときにも、口座を移し替える必要がないため手間がかからない点がメリットです。
ただし、複数の証券会社に口座があり、そのうち一つでも株式数比列配分方式を採用していないところがあるとこの方式を選べません。また、信託銀行などの特別口座で株式を保有している場合もこの方式が使えないことに注意しましょう。
銘柄ごとに指定した口座で受け取る
株の銘柄ごとに口座を分けて管理したい方は「個別銘柄指定方式」がおすすめです。この方式を選ぶと、A社の配当金はB銀行に、C社の配当金はD銀行へなど銘柄ごとに金融機関が選べます。
ただし、複数の証券会社で同じ銘柄の株を保有している場合は、配当金を受け取る銀行口座を証券会社ごとに指定することができません。また、株式数比列配分方式などから個別銘柄指定方式へと変更する場合は「配当金受領方式廃止届手続き」や「株式配当金個別銘柄振込指定書」などの提出が必要です。このように手続きに手間がかかるため、株券の電子化が進むにつれてこの方式を選ぶ方は減っています。
高配当な株を見つけるポイント
せっかく株式投資を行うなら、高配当が見込める株を購入したいと考える方も多いと思います。一般的に高配当と呼ばれるのは、配当利回りが4%以上の株です。4%を超える配当利回りがあれば、もらえる金額も大きくなり資産も増えやすいでしょう。
また、利益が出た場合に配当金をどれだけ支払ったかを示す「配当性向」も企業の評価に使える基準です。この割合が大きな企業は、株主に多くの配当金を還元しているため、高配当な株が見つけやすいでしょう。さらに、リスクを軽減する上では、次のポイントに注目することも大切です。
- 稼ぐ力が安定している時価総額上位500社から探す
- 売上高と利益が前期の実績よりも伸びている企業を探す
- 利回りが高すぎる銘柄は急落のリスクがあることも考えておく
基本的な考え方としては、一時的な高いリターンよりも、長期間安定して利益が出せるような株を選ぶことがポイントです。その中で、配当利回りが4%を超えるものが選べれば、堅実な株式投資が行いやすいでしょう。
おわりに
株式投資は、単なる投機的な行為ではなく、長期的な資産形成の有効な手段の一つです。本記事で解説した配当金は、特に安定した収入源として注目されています。
近年の低金利環境下では、預貯金だけでは資産が増えにくい状況が続いています。そのため、リスクを適切に管理しつつ、株式投資を通じて資産を増やす戦略が重要性を増しています。
配当金投資の魅力は、以下の点にあります。
- 定期的な収入が得られる可能性
- 長期保有による複利効果
- インフレへの対策
ただし、投資にはリスクが伴うことを忘れてはいけません。自身の財務状況や投資目的を十分に考慮し、適切な銘柄選びと分散投資を心がけることが大切です。
幸いなことに、テクノロジーの進歩により、株式投資の敷居は大きく下がっています。1株から購入できるサービスや、クレジットカードを使って投資できるプラットフォームなど、初心者でも始めやすい環境が整っています。
これらのツールを活用しつつ、本記事で学んだ配当金の仕組みや高配当株の選び方などの知識を生かし、自身に合った投資戦略を構築していくことをおすすめします。短期的な利益を追うのではなく、長期的な視点で着実に資産を育てていく姿勢が、将来の経済的な安定につながるでしょう。