「あまりお金をかけずに葬儀をしてほしい」「家族が『お金をかけない葬儀』を望んでいるけれど、どうしたらいいかわからない」このように悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そんな方のために、ここでは「火葬式」という選択肢を提示し、「火葬式とは何か」「火葬式のメリット・デメリット」「火葬式の流れ」「火葬式のマナー」「火葬式の費用」について解説していきます。
この記事を読んでわかること
「お金をかけずに小規模な葬儀をしたい」と考える方のために、「火葬式(直葬と呼ばれることもあります)という選択肢があります。これはもっともシンプルな葬儀の形式であり、時間的・体力的・金銭的な負担がもっとも軽い葬儀でもあります。ここではこの「火葬式」を取り上げて、「そもそも火葬式とは何か」「火葬式のメリット・デメリット」「火葬式の流れ」「火葬式におけるマナー」「火葬式にかかる費用」について解説していきます。
火葬式とは
「火葬式」は、あらゆる葬儀のなかで、もっともシンプルで簡潔な形をとります。一部の特例を除き、宗教者を招くことはなく、会食などもせず、通夜も葬儀・告別式も行わず、火葬炉の前でお別れするだけの簡素な葬儀の流れを取ることになります。一部の特例を除き、宗教者を招くことはなく、会食などもせず、通夜も葬儀・告別式も行わず、火葬炉の前でお別れするだけの簡素な葬儀の流れを取ることになります。
このようなかたちをとる火葬式は経済的な負担が少ないため、「家族に負担をかけたくない」「葬儀にお金をかけるだけの経済的余裕がない」という方によく選ばれています。
昔はそれほど一般的な葬儀形態ではありませんでしたが、近年は新型コロナウイルス感染(COVID-19)の影響もあり、広く知られるようになりました。
火葬式のメリット
ここからは、火葬式のメリットについて紹介していきます。火葬式のメリットは、以下のとおりです。
- 身内のみの少人数でお別れができる
- 費用を安く抑えられる
- 肉体的・時間的な負担が少ない
- 接待などの負担を抑えられる
- 参列者の負担も少ない
ひとつずつ見ていきましょう。
身内のみの少人数でお別れができる
従来型の葬儀は、友人や知人、会社関係者など多くの方を呼ぶのが一般的でした。しかし火葬式の場合は、身内のみの少人数でお別れをすることができます。このため、「気の置けない人だけで故人を見送りたい」と考える方によく選ばれるようになってきました。
なお火葬式は、限られた方だけで見送る「家族葬」の一種だといえます。しかし2日間に渡って行われる家族葬や、通夜は行わないものの宗教的儀式を伴う葬儀・告別式を行う一日葬に比べて、火葬式の方が参加する人数が少ない傾向にあります。
費用を安く抑えられる
火葬式は、ご家族が希望しない限りは、宗教者を呼ぶことはしませんし、会食も行いません。さまざまなデータがありますが、一般的に「葬儀の費用の4分の1近くが御布施であり、さらに4分の1近くが飲食費用である」といわれていますから、これを削減できることは非常に大きいといえます。
加えて、「不祝儀や供物・供花を受け取らない」とするのであれば、その返礼品の費用も必要ありません。
また葬儀にかかる費用は「葬儀の規模」に比例します。火葬式の場合はもっとも小規模な葬儀となりますから、葬儀にかかる費用自体も少なくなります。
「経済的な負担を抑えたい」と考えているご家族はもちろん、故人が「葬儀は簡潔にしてほしい」と希望していた場合にはこの火葬式が第一の選択肢となります。
肉体的・時間的な負担が少ない
火葬式は、肉体的・時間的な負担がもっとも少ない葬儀です。火葬式では通夜はもちろん、葬儀・告別式もしません。かかる時間は火葬~収骨の1時間〜3時間程度ですから、所要時間が非常に少ないのです。
そのため、「心身の調子が悪く、長く外にいることは厳しい」というご家族がいるご家庭でも選びやすい形式といえます。
接待などの負担を抑えられる
火葬式はごく限られた方だけしか参列しない葬儀の形式であるため、一般参列者の挨拶などを行わなくて済みます。これは喪主の負担の軽減につながります。
「挨拶が苦手である」「落ち込みが激しすぎて、他の人に対応する気力がない」という状態の方が喪主を務めることになる場合、一般葬では負担が大きすぎてしまうこともあります。しかし火葬式ならばこのような接待を行わなくてよくなるため、精神的な負担が非常に軽くなります。
参列者の負担も少ない
火葬式は喪家の負担が少ない葬儀の形式ですが、参列者の負担も少なくて済む形式でもあります。
一般葬の場合は儀式にかかる時間が長くなりますし、葬儀ホール→火葬場→法要ホール→会食会場(※法要ホールと一体になっていることもある)へと移動しなければなりません。
しかし火葬式の場合は、火葬場に集合して火葬炉の前でお別れをして、収骨を行うだけで終わります。
火葬式のデメリット
上記のようにメリットの多い火葬式ですが、デメリットもあります。
- お別れの時間が短い
- 弔問客があとから自宅を訪れることもある
- 周りから理解されない可能性がある
- 菩提寺に納骨を断られるケースがある
- 葬祭費が支給されないこともある
ここからは火葬式のデメリットについて解説していきます。
お別れの時間が短い
「火葬式では時間的な負担が少ない」としました。しかしこの「お別れ時間の短さ」は、メリットでありながらデメリットでもあります。故人とゆっくりお別れがしにくいため、「きちんとお見送りができなかった」という感覚を抱いてしまいがちなのです。
「故人の希望だから」としてその場では納得して火葬式を選んだとしても、あとから「満足にお別れできなかった」「お坊さんに供養してもらえば良かった」と後悔するケースがあります。
弔問客があとから自宅を訪れることもある
火葬式には、ごく限られた範囲の方しか参列できません。そのため、火葬式に参列できなかった方や、後で訃報を知った方が自宅に弔問に訪れる可能性もあります。
故人を悼んでわざわざ足を運んでくれるということで、その気持ち自体は多くの方が好意的に受け止めることでしょう。
しかし一般葬を行った場合とは異なり、「多くの方が一人ひとり、個別に訪れる」ことなるため、スケジュールの調整が大変だったり、結局多くの時間を割くことになったりということもよくあります。
周りから理解されない可能性がある
「最後なのだから、しっかりとお別れしたかった」という不満が親族から挙がりやすいのが、火葬式のデメリットです。
また上でも述べたように、火葬式はごく少数の人数で行われるのが基本です。そのため、「肉体を持っている故人とお別れしたかったのに、呼ばれなかったからお別れができなかった」などのような不満が出ることもあり得ます。
菩提寺に納骨を断られるケースがある
「菩提寺に先祖代々の墓があり、故人がそこに入ることを希望している」という場合、火葬式にするかどうかの見極めを慎重に行わなければなりません。
火葬式では、基本的には宗教者を呼びません。つまり菩提寺側からすれば、「故人は仏弟子になっていないのだから、このお寺のお墓を使わせることはできない」と断られる可能性もあります
このような事態を避けるためには、お布施を包むことを前提として僧侶に声を掛けるようにすると良いでしょう。それが難しい場合には、できるだけ話し合いをするのが望ましいといえます。
また、割り切って「菩提寺にあるお墓は墓じまいして、ほかの埋葬方法を選ぶ」とするのも選択肢のうちのひとつです。
葬祭費が支給されないこともある
国民健康保険に加入している方が亡くなると、喪主に「葬祭費」が支払われます。この葬祭費の額は概ね50,000円程度です(※自治体によって違いがあります)。
ただ、火葬式の場合は「葬儀」をしたわけではないと判断されて、この葬祭費が支払われない可能性があります。
なお「火葬式をした場合に葬祭費が支払われるかどうか」の判断は、それぞれの自治体に委ねられます。そのため同じ県のなかでも、「〇〇区は火葬式でも葬祭費が支払われて、××区では葬祭費が支払われない」ということもあり得ます。
ただ、葬祭費が支払われなかった場合も、火葬式より一般葬をしたときの方が料金が高くつきます。そのため、「葬祭費が欲しいから」という理由で、火葬式ではなく一般葬に切り替えることは、金銭的には逆にマイナスになります。
火葬式の流れ
ここからは、火葬式の流れについて解説していきます。
遺体を搬送・安置する
火葬式はもっとも簡素で時間をかけずに故人をお見送りできる葬送の形式ですが、日本の法律では死後24時間以内の火葬を禁じています。そのため火葬式の場合でも、自宅などにご遺体を安置しなければなりません。
故人を自宅などにお連れするときは、葬儀会社の車を使います。そのため、病院などで臨終が告げられたら、葬儀会社に連絡をしてください。
なお火葬式の場合は、宗教的儀式は行わないことが原則であるため、枕経などは行われないのが一般的です。
葬儀会社と打ち合わせをする
葬儀会社のスタッフと、火葬の日程やプランについての詳しい打ち合わせを行います。「火葬式にしたい」という希望は、この時点で伝えても問題ありません。
自治体に死亡届を提出する
人が亡くなると死亡診断書(場合によっては死体検案書)・死亡届が出されます。これを地方自治体に提出して受理されると、火葬許可証が交付されます。この火葬許可証がなければ、火葬はできません。なおこの手続きは、葬儀会社で代行してくれます。
納棺・出棺する
逝去後24時間以上が経ち、火葬場のスケジュールが確保でき、火葬許可証を受け取れば火葬を行うことができるようになります。
遺体を副葬品とともに棺に納め(納棺)、その後、火葬場に向かって出発します。なお、納棺の際には、花で棺を満たすこともあります。
納棺は、葬儀会社のスタッフが行います。ただしプランによっては、家族も納棺に参加することができる場合もあります。棺を火葬場に運ぶ役目は葬儀会社(や葬儀会社と提携したドライバー)が担います。家族の車で棺を運ぶことはありません。
火葬する
火葬炉の前でお別れをして、火葬炉の中に棺を納めます。火葬が済めば火葬場のスタッフもしくは葬儀会社のスタッフが案内に訪れるので、それに従って収骨室に移動しましょう。なお火葬にかかる時間は45分~3時間ですが、もっとも多いのはおそらく1時間~2時間の範囲でしょう。
収骨室に行き、家族の手で骨壺に遺骨を入れていきます。なお火葬後には「埋葬許可証」が出されます。これは遺骨を埋葬するときに必要な書類で、多くの場合、骨壺と一緒に骨壺用の袋に入れられます。
火葬式の場合は、繰り上げ初七日法要(仏教の場合)や会食を行うことは原則としてありません。そのため、収骨が終われば、火葬場で現地解散となるケースが多いといえます。
火葬式のマナー
ここからは、火葬式に参列するときのマナーについて解説します。
服装
葬儀のときに着る服装は、次の3つに分けられます。
- 正喪服
- 準喪服
- 略喪服
略喪服は、一般葬の参列者の立場で、かつ通夜のときのみに許容される服装です。火葬式の場合は通夜も葬儀・告別式も行いませんが、「親族」という立場でなければ参列することがほとんどない葬送形式であるため、準喪服を着用するのが一般的です。男性はブラックスーツを選び、女性は黒無地のアンサンブルやワンピースを選びます。
男女ともに光沢のあるもの・殺生を連想させるものは避けます。女性は黒のストッキングを着用すると無難です。アクセサリーは真珠(ネックレスの場合は一連のみ)・結婚指輪は許容されますが、つけていかなくても構いません。
ただ、準喪服が基本であるものの、喪主などの立場なら正喪服を選んでもよいでしょう。また、「家族だけで、いつもの服装で送り出したい」ということであれば、略喪服を選択しても構いません。
なお子どもの服装は制服とします。制服がない学校ならば制服によく似たデザインのものを選びます。
持ちもの
光沢がなく、金属の使われていない鞄を選び、そこに白色無地のハンカチ(ワンポイントやレース程度ならば許容されます)を入れていきます。
火葬式の場合は原則として無宗教で行われるため、厳密には数珠は必要ありません。ただし慣習として数珠を持っていく場合もあります。
香典のマナーは?
自分が親族の立場であるのなら、一応不祝儀は持っていくとよいでしょう。ただし火葬式の場合は家族の意向で不祝儀を断る可能性も高いため、断られたら無理に渡すことはしないようにします。
また、火葬式では、供花や供物を受け入れないケースがほとんどです。これらを飾るスペースがないからです。
自身が喪家となった場合は、不祝儀を辞退するか辞退しないかをきちんと決めておきます。「この方からの不祝儀は受け取って、別の方からの不祝儀は受け取らない」というやり方は避けましょう。
また供物や供花は、親族だけでなく、会社関係などから送られてくる可能性もあります。ただ供物・供花は葬儀会社を通して送られてきますから、葬儀会社に「供物・供花は辞退する」という旨を伝えておけば、供物・供花の申し込みがあっても葬儀会社の方で断ってくれます。
火葬式の費用
最後に、火葬式の費用について見ていきましょう。火葬式の費用は、100,000円~300,000円程度が相場です。ただしプランによっては500,000円程度かかることもあります。火葬式の料金には、次が含まれています。
- 火葬料金
- 火葬が終わるまで待つための部屋の使用料金
- 棺や骨壺の料金
- 搬送費用
- ドライアイス
- 書類代行費用
「着替え」「お別れの花」などを火葬式の料金に含むかどうかは、葬儀会社によって異なります。葬儀会社は見積もりを出してくるので、「何が含まれていて、何が含まれていないか」をよくチェックしてください。
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火葬式は、家族の負担を最小限にしたいという方によく選ばれている形式です。火葬式はもっとも金銭的な負担が少ないからです。
ただ、さらに残される家族の負担を軽減したいということであれば、事前に葬儀の内容などについて専門家に相談をしておくと良いでしょう。「セゾンの相続 お葬式サポート」では、経験豊富な提携専門家のご紹介も可能ですので、事前の相談をお引き受けしています。
おわりに
「小さな葬儀」を望む人に注目されている「火葬式」は、現在では一般的な選択肢になりつつあります。葬儀の形式に「これが絶対的な正解」というものはありませんが、「金銭的な負担を小さくしたい」という方にとって、火葬式は理想的な選択肢のひとつとなるでしょう。