5~6月になると、さまざまな色や花姿、香りを楽しめるバラ。バラは毎年交配されて新種が誕生するため、多種多様な品種があり通年を通して楽しむことができる植物です。
そんなバラは、素敵な花を咲かせるために、剪定を欠かさず行う必要があります。この記事では、バラの特徴をはじめ、剪定方法や時期について解説していきます。「きれいなバラを咲かせたい」と思っている方は、ぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
バラの剪定は夏と冬の2回行うのが基本です。バラの冬剪定は春に多くの花を咲かせるための作業であり、2~3月頃に行います。9月頃に行うバラの夏剪定は、樹高が高くなり乱れた樹形を整えることが目的のほか、秋にきれいな花を咲かせるための作業です。また、バラは四季咲きバラ・つるバラ・ミニバラなど種類によって剪定方法が多少異なるので、種類ごとのポイントもおさえておく必要があります。 ご自身でバラの剪定をするのが難しいと感じる場合は、剪定のプロに依頼することも視野に入れておくと安心でしょう。
バラの基本情報
まずは、バラの基本情報について詳しく解説していきます。
バラの特徴
バラ(薔薇)は、「花の女王」と表現される植物で、ヨーロッパからアジアといった北半球に広く分布しているのが特徴です。バラの多くは、アジサイやドウダンツツジなどと同じ落葉低木であり、種類によっては常緑や半落葉のバラもあります。バラは日当たりと風通しの良い環境を好み、育てるのに適した温度は20℃前後といわれています。
バラは赤い色をした花姿がイメージされやすいですが、クリーム色やオレンジ、グリーンなど色の種類が豊富にあるのも特徴のひとつです。また、バラは花の大きさにも違いがあり、巨大輪・大輪・中輪・小輪・極小輪(ミニバラ)があります。
バラの樹形
バラの樹形には3タイプあり、ここではそれぞれの樹形について解説します。
木立ち性のバラ(ブッシュ・ローズ)
ブッシュとも呼ばれる「木立性のバラ」は、枝が硬いので支柱などの支えがなくても自立できる樹形です。縦方向と横方向に枝を伸ばすタイプがあり、生育環境が良ければ春から秋まで、きれいな花を楽しめます。また、花の大きさは中型から大型のものまであり、多くの品種が存在します。木立性のバラはどんな場所にでも植えることができ、地植え・鉢植えともに可能です。
つる性のバラ(クライミング・ローズ)
クライミングとも呼ばれる「つる性のバラ」は枝が2m以上も伸びて、木立性のバラとは違い自立しない樹形です。つる性のバラは、壁やフェンス、アーチなどの構造物に枝を誘引することで、さまざまな形状に変えて楽しめます。つる性のバラも地植え・鉢植えともに可能ですが、地植えにすると根が良く張って大きく色鮮やかな花が咲くため、本来の魅力を発揮します。
半つる性のバラ(ジュラブ・ローズ)
ジュラブとも呼ばれる「半つる性のバラ」は自立するタイプのバラです。つる性のバラほどではありませんが、枝が木立性のバラよりもしなやかで1~2mほど長く伸びる樹形です。半つる性のバラは小さめの庭などスペースが限られた場所で小型のつるバラとして能力を発揮します。小型のアーチや低いフェンスなどに誘引するのに向いています。
バラの開花の特性
ここではバラの開花の特性について解説していきます。
四季咲き性
四季咲き性のバラは一年を通して楽しめるバラの品種です。しかし、「四季咲き=春夏秋冬」というわけではなく、厳密にいうと冬を除く春・夏・秋の3シーズンで花を咲かせます。四季咲きのバラはどのシーズンにもきれいな花が咲くように、剪定時期を少しずつずらすことにより一年中バラを楽しめるようになります。
一季咲き性
一季咲き性のバラは通年で花を咲かせる四季咲き性のバラとは反対に、一年に一度だけ開花します。日本では5月の初め頃に花を咲かせて、5~6月頃には美しく咲き誇り見頃を迎えます。一季咲き性のバラは開花時期が短い分、一年の間で栄養をたくさん蓄えて、力強く一斉に咲き始めるのが魅力といえるでしょう。
返り咲き性
返り咲き性のバラは一季咲き性のバラの中で夏や秋に再び花を咲かせるタイプで「繰り返し咲き」「二季咲き」とも呼ばれます。返り咲き性は咲き終わってしおれた「花がら」と呼ばれる部分を春の開花後に切り取り、その先から枝が伸びてもう一度開花する珍しい性質を持ちます。
バラは剪定しないとどうなる?
バラは枝を切ることできれいな花を咲かせるため、バラを適した時期に開花させるのに剪定は必要な作業です。バラは剪定を行わないと上へ上へと伸び続け、下の古くなった枝をそのままにすると花がつきにくくなります。
また、葉やつるが絡み合って風通しが悪くなることで、病害虫の被害を受けやすくなります。バラ剪定の目的はデザイニングでもあり、どの向きで花を咲かせるのかによってお手入れが変わるため、剪定はとても大切です。
バラの剪定時期
バラの剪定時期は、基本的に夏と冬の2回です。ここでは、バラの冬剪定・夏剪定について解説します。
バラの冬剪定
2~3月頃に行うバラの冬剪定は、春に多くの花を咲かせるための作業です。バラは基本的に外側につく外芽の上を切ります。そうすれば、切った先端に養分がめぐり、枝が外側に向かってのびのびと広がりながら育ちます。
なお、バラの冬剪定・夏剪定はどちらも元気な枝のみ行うのが基本です。なぜなら、バラは小さな枝や弱った枝などに対して強い剪定をすると、弱ってしまうことがあるからです。
バラの夏剪定
9月頃に行うバラの夏剪定は、樹高が高くなって乱れた樹形を整えることを目的とするほか、秋にきれいな花を咲かせるための作業です。全体の高さの半分より上にある枝を整えてスッキリさせていきます。
バラの剪定に必要な道具
バラの剪定に必要な道具は以下になります。
- 剪定バサミ
- ノコギリ
- 厚手の手袋
- ワイヤー
- 麻ヒモ
- ビニールタイ(ワイヤー入りのヒモ・結束バンド)
バラの剪定には欠かせない剪定バサミを用意し、トゲによる手のケガを防ぐために厚手の手袋を用意すると安心です。ノコギリは剪定バサミで切れない太い枝を根本から切断するときに便利なアイテムです。さらに、つる性のバラにはワイヤーや麻ヒモなど、誘引を行うために必要な道具も揃えておくとスムーズに剪定を行えます。
バラの剪定方法
ここからはバラの剪定方法についてポイントを含めつつ紹介します。
冬剪定
バラの冬剪定をする際のポイントは以下になります。
- 枝の途中から横や下へと出ている芽「外芽」の上を切り落とす
- 全体の高さの下から1/2~1/3の大きさになるように切り詰める
- ベーサルシュート(新しい枝)は30~50cmほどの高さで剪定する
冬剪定も夏剪定同様に外芽の上を剪定しますが、全体的に1/2~1/3の高さになるようにして樹高を低く切り詰めましょう。前の年の枝を残して、太い枝は長く、中くらいの枝は短めに切り落とします。
ベーサルシュートは30~50cmほどの高さで剪定するのがポイントです。また、弱っている枝・枯れている枝・細い枝は根本から切り落とすのが基本ですが、細い枝は品種によって残したほうが良い場合もあるため注意しましょう。
夏剪定
バラの夏剪定をする際のポイントは以下になります。
- 「外芽」の上を切り落とす
- 全体の2/3程度の高さで枝を切って揃える
- 剪定が終了した時点で葉が多くついている状態にする
バラは夏剪定も外芽の上を切り落としていきます。剪定バサミで枝先や蕾、花を丁寧に取り除き全体の2/3程度の高さで枝を切り揃え、丸い形に整えましょう。
枝がブラインド(花芽がつかない)を起こして5cm以上伸びている場合は、先端部分の枯れた枝や細い枝を根本から切り落とします。枯れている葉や黄色く変色した葉は取り除くようにして、剪定終了時点で葉が多くついている状態を保つのが夏剪定のポイントです。また、大きくて太い枝・2年以上前からある枝・前年からあるベーサルシュートは、残して剪定しましょう。
種類ごとのバラ剪定のポイント
バラは種類ごとに剪定の仕方が違います。ここでは、四季咲きバラ・つるバラ・ミニバラそれぞれの剪定ポイントについて紹介します。
四季咲きバラ
四季咲きバラの剪定は基本のやり方で進めていきます。元気で良い状態の芽は残して不要な枝や葉・内側に向かって伸びている枝を根本から切り落とします。樹形全体を見て不要と感じた枝を間引き、幹への風通しを良くしましょう。四季咲きバラは枯れた枝や弱った枝、細い枝などを剪定して、数年かけて枝の数を増やしていくことが大切なポイントです。
つるバラ
つるバラは切り落とす剪定というより枝を間引く作業が主になります。弱った枝・枯れた枝・短い枝を間引いていきます。つるバラの場合は冬に伸びる枝の方向を決める誘引作業を冬剪定と一緒に行いますが、寒いと枝が硬くなるため12月中には作業を終えるようにしましょう。
ミニバラ
ミニバラは切り戻し剪定を行っていきます。次の新芽や花を育てることや樹形を美しく整えるために、伸び過ぎた茎や枝を切り落とします。
ミニバラの1度目の剪定は、花が咲き終える5~8月頃のタイミングで行いましょう。5枚葉(一枝に5枚の葉がついている小さい枝)の付け根から、5~10mm上で茎を切り落とします。そして、8月下旬から9月下旬に2度目の剪定を行い、全体が2/3の高さになるように枝を切って揃えます。次の花が咲き終わる10~11月頃には、花をつけた枝の5枚葉上を全体の1/2くらいの長さで剪定しましょう。
休眠期に1/2の高さになるよう全体を調整して、春に向け元気な枝が伸びるようにサポートします。
花がら切り(花がら摘み)
花がら切り(花がら摘み)はバラの剪定方法のひとつであり、状態の良い花を長く咲かせるために行う作業です。バラの種類に関わらず、花が咲き終わりそうな時期を見計らって枝ごと切り落とし、新しい花芽を伸ばせるようにします。
一番花は3月頃から伸びた枝の半分ほどの位置で切り落とします。それ以降に咲いた花は前回切り落とした場所から伸びている枝の半分まで切り落としましょう。
シュートの処理方法
5~10月頃に発生するシュート(新しい枝)はバラが成長するうえで非常に重要な部分といえます。シュートには2種類あり、根本から伸びる枝「ベーサルシュート」と枝の途中から伸びる枝「サイドシュート」です。
シュートはどの枝よりも優先して栄養を摂るため、バラを上手に生育させるには適切な処理を行う必要があります。木立性のバラの場合、シュートは発生した時点で切り取りますが、小さくても多くの花をつけたいときは残しておくと良いでしょう。つるバラの場合は伸びたつるで好きな樹形のアーチを作れるので伸ばしておいても問題ありません。
つるバラの誘引
つるバラは冬剪定のときに誘引も同時に行います。まず、つるバラは弱った枝や枯れた枝などを間引いていきます。そして、残った太く長い枝をフェンスやアーチなどの道具を使って斜めや横方向へと広げながら誘引します。
なお、バラは品種によって性質が異なるため「どの構造物に咲かせたいのか」「どのように花を咲かせたいのか」など、条件によっても誘引の仕方が違うことを覚えておきましょう。
バラを剪定するときのポイント!
ここではバラを剪定するときのポイントについて解説します。
剪定前にバラの枝の水分を減らす
バラは剪定後の病気を予防するために、剪定する数日前から水やりの量を少なくして枝の水分を減らしましょう。バラは枝に水分が豊富にある状態で剪定を行うと、切断した後の湿っている切り口に病原菌が発生しやすくなってしまいます。
切り口は斜めにする
病原菌は枝の切り口の状態によって発生しやすくなるので注意が必要です。病原菌の発生を防ぐためには、枝の切り口に水分がついたままになるのを防ぐ必要があります。そのため、枝の切り口は水平ではなく斜めに切り、切り口に露や雨が溜まりにくい状況を作りましょう。
枯れた葉や枝を全て取り除く
栄養分がバラ全体に行き渡り、生長しやすくするためにも枯れた枝や葉はこまめに取り除くのが大切です。また、病気によって枯れかかっている枝や葉も見つけた時点で取り除くことで、他の部分に病気がうつるのを防げます。剪定する・しないに関わらず、日頃から枯れている部分は除去するようにしましょう。
バラに発生しやすい病害虫にも注意する
バラをきれいに咲かせるためには、病害虫に注意する必要があります。バラに発生しやすい病気には、うどんこ病や黒星病があります。害虫はアブラムシやバラゾウムシ、コガネムシなどです。バラに発生する病害虫は放置すると被害が広がり枯れる原因になります。
病気には殺菌剤、害虫には殺虫剤などご自身で行える対策もありますが、被害が拡大し過ぎて困っている場合はプロにお任せする方法もあります。くらしのセゾンの「害虫駆除」では、専門知識と資格を持つスタッフが対応してくれるので、バラの剪定に悩んでいる方は一度相談してみるのもおすすめです。
バラの剪定をプロに頼もう!
冬と夏に剪定をするのが基本のバラですが、品種によって剪定の仕方が少しずつ異なります。慣れるまで「上手に剪定ができない」「好みの樹形にできない」など、どうすれば良いか分からない方は、バラの剪定をプロに頼んでみましょう。
くらしのセゾンが提供する「庭木のお手入れ」では、経験豊富なプロの職人が剪定を行うので安心して任せられます。また、無料で見積もりをしてくれるので、気軽に相談することが可能です。
香りはバラの魅力のひとつ!代表的なバラの香りを紹介
バラはさまざまな色や花姿を楽しむことができますが、香りも魅力のひとつです。ここでは、代表的なバラの香りを紹介していきます。
ダマスク(クラシック・モダン)
ダマスク系はバラが持つ代表的な香りで、クラシックとモダンがあります。クラシックの香りは強い甘さと華やかさを併せ持ちます。モダンの香りはクラシックの香りを受け継ぎつつ情熱的で洗練され香り立ちが強いのが特徴です。
フルーティー
フルーティー系の香りはダマスク系の香りを変化させた成分を多く含有しています。さらに、ティー系の特徴成分がさまざまなバランスで含まれることで、アプリコットやピーチといった果実を連想させる香りになります。
ブルー
紫色から赤紫のバラを「青バラ」と呼び、品種が青バラ系のものは独特な香りを持つのが特徴です。ブルー系の香りはダマスク・モダンとティーの香り成分が主に混在して、他にはない強く芳醇な香りを作り出しています。
スパイシー
スパイシー系はダマスク系の香りが基調であるため、甘い香りの中にスパイシーな刺激を感じる香りが特徴です。強い甘さのバラではなく、すっきりして落ち着いている香りを好む人におすすめでしょう。
ティー
ティー系は名前のとおり紅茶を思い出させる香りが特徴です。ティー系の香り立ちは、そこまで高くはありませんが、上品で優雅な印象を与えます。拡散性があるので、現代のバラの品種で特に多い香りです。
ミルラ
ミルラ系はスモーキーさをバラに追加したような香りが印象的です。ハーブのアニスに似た雰囲気があり、バラの青くささも一緒に感じられます。落ち着いた香りが好みの方におすすめの品種です。
おわりに
バラの剪定はきれいな花を咲かせるために必要不可欠な作業です。バラは品種によって剪定の仕方が少しずつ異なるため、手間がかかると感じる方もいるかもしれません。
しかし、バラは剪定せずに放っておくと、樹形が乱れたり枯れてしまったりします。また、病害虫などが発生する原因にもなります。正しいバラの剪定を行い、美しい花を咲かせましょう。