金融機関から融資を受けることで自己資金以上の金額を運用できる点が不動産投資の魅力の一つですが、金利の水準は重要な検討事項です。運用金額が大きいだけに、不動産投資において、0.1%の金利変動でも利回りに大きな影響を与えます。
本記事では、これから不動産投資を始める方のために、不動産投資ローンの金利について解説します。金融機関別の金利水準や金利を抑える方法を知ることで、不動産投資の成功に近づくことができます。
不動産投資ローンは、多くの金融機関が扱っており、金融機関によって金利のタイプや金利水準が異なります。金利を抑えるためには、取引実績のある金融機関や低金利ローンを提供する金融機関を選択することが重要です。しかし、金融機関によって審査基準や審査対象物件が異なるので、各金融機関の特徴を理解する必要があります。不動産投資を行う際は、不動産投資ローンの種類と金融機関の特徴を覚えてからにしましょう。
不動産投資ローンの基礎知識と特徴をおさらい
はじめに、不動産投資ローンについて説明していきます。
不動産投資ローンとは
不動産投資ローンとは、投資用不動産の購入資金を融資するためのローンです。投資対象が主にアパートやマンションであるため、アパート・マンションローンとも言われています。
購入する不動産の価格にもよりますが、不動産投資は3,000万円以上の金額で運用することも珍しくないため、全額一度に手出しできる方は多くありません。
そのため、不動産投資を行うときは不動産投資ローンを活用することが一般的なのです。
住宅ローンとの違い
不動産を取得するという意味では同じ住宅ローンは、不動産投資ローンとよく混同されます。
不動産投資ローンは、事業収益を得る「投資目的」で不動産を取得するために活用されるローンであるのに対して、住宅ローンは「居住目的」で不動産を購入するためのローンです。
不動産投資を行う場合は当然不動産投資ローンを利用することになるので、住宅ローンの金利水準や審査基準を参考にしないように注意しましょう。
不動産投資ローンの返済原資
不動産投資ローンの返済原資は、主に投資物件から得られる家賃収入です。具体的な計算例を用いて説明しましょう。
【具体例】
投資物件:1DKのアパート(5階建て・1階部分)
物件価格:2,000万円
頭金:400万円
ローン借入額:1,600万円
ローン期間:25年
金利:2.5%(固定金利)
月々の家賃収入:8万円
①ローンの月々の返済額
年利2.5%、25年返済で1,600万円を借りた場合、月々の返済額は約71,600円となります。
②家賃収入と返済額の比較
月々の家賃収入:80,000円
月々の返済額: 71,600円
差額: 8,400円
この例では、毎月の家賃収入80,000円のうち、71,600円がローンの返済に充てられ、残りの8,400円が手元に残ることになります。
③諸経費の考慮
ただし、実際には以下のような諸経費も考慮する必要があります。
- 固定資産税:約3,000円/月
- 管理費:約4,000円/月
- 修繕積立金:約2,000円/月 これらの経費を差し引くと:
8,400円 – (3,000円 + 4,000円 + 2,000円) = -600円 この計算例では、毎月600円の赤字となります。
④空室リスクの考慮
さらに、1ヶ月の空室が発生した場合:
年間の赤字:600円 × 12ヶ月 + 80,000円 = 87,200円
このように、具体的な数字を用いて計算することで、不動産投資の収支がより明確になります。実際の投資では、このような詳細な計算を行い、長期的な収支計画を立てることが重要です。また、将来の家賃上昇や固定資産税の変動なども考慮に入れる必要があります。
不動産投資ローンの審査基準
「借主本人に関する資産項目」は住宅ローンと同様に、年収、勤務先、勤続年数、資産状況などがあります。
特徴的なのは「物件に関する審査項目」です。取得する物件の賃貸需要がなければ返済原資となる家賃収入も見込めないため、近隣の類似物件を参考にしながら想定利回りや空室リスクなどを評価します。
不動産投資ローンは本人の信用力に加えて、投資物件の収益性も評価される点に留意しましょう。
不動産投資ローンを取り扱う金融機関
不動産投資が一般的になった背景として、身近な金融機関が不動産投資ローンを取り扱っていることが挙げられます。
- メガバンク・都市銀行
- 地方銀行
- 信用金庫・信用組合
- ノンバンク
上記の金融機関であれば、不動産投資ローンを扱っているケースがほとんどです。
金融機関によって審査基準は異なり、メガバンクは金利が低い傾向にありますが、その分審査難易度は非常に高く、審査期間も長いケースが多いです。
地方銀行や信用金庫・信用組合は地域密着型の営業をしているため、審査難易度はメガバンクより低いですが、金利がやや高い傾向にあります。
ノンバンクとは、銀行のように預金サービスを提供せずに、融資サービスに特化した金融機関です。金利は少し高い傾向にありますが、審査基準が柔軟である点が魅力です。
このように、不動産投資ローンは金融機関によって条件が異なるので、活用する際は比較検討することが大切です。
不動産投資ローンを検討したら金利に注目しよう
不動産投資ローンを利用する際に、まず注目すべき点は金利です。
金利が0.1%変わるだけで不動産投資の運用パフォーマンスは大きく変動するため、金利は少しでも低い条件で借りるべきでしょう。
返済原資である家賃収入は簡単に上げることはできませんが、金利は事前に比較検討することで少しでも低い金融機関を探すことはできます。
金利のタイプや金融機関によって金利が異なるので、詳しく見ていきましょう。
不動産投資ローンの金利は固定と変動の2タイプ
不動産投資ローンの金利は、固定金利と変動金利の2つのタイプがあります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを見ていきましょう。
固定金利の特徴
固定金利とは、融資開始時点から完了時点まで利率が一定のタイプの金利です。固定金利ローンを契約した時点で、利子を含めた返済総額が決定するため、収支計画が立てやすいメリットがあります。
しかし、固定金利は実際の金利相場よりも高く利率が設定されていることが多いため、利息負担が大きくなる点がデメリットです。
メリット | デメリット |
---|---|
・金利変動による返済額増加のリスクがない ・収支計画が立てやすい | ・変動金利に比べて金利水準が高い ・提供している金融機関が少ない |
変動金利の特徴
変動金利とは、融資開始時点から決められた一定期間毎に利率を見直すタイプの金利です。固定金利と比較して金利が低い点がメリットですが、金利相場が上昇すると利率が高くなるリスクがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・固定金利に比べて金利水準が低い | ・金利が上昇すると返済額が増加する ・返済計画が立てにくい |
このように固定金利と変動金利は一長一短であるため、ご自身にあった金利のタイプを選択するとよいでしょう。
金融機関別の不動産担保ローンの金利傾向や特徴
不動産投資ローンの金利水準は金融機関によって異なりますが、金融機関の種類によって概ね次のような傾向や特徴があります。
金融機関 | 特徴 |
---|---|
メガバンク・都市銀行 | ・金利が低い ・審査が厳しい |
地方銀行 | ・銀行によって条件がさまざま |
信用金庫・信用組合 | ・対応エリア(地域)の物件に特化 ・金利はやや高い |
ノンバンク | ・審査が柔軟 ・金利はやや高い |
【金融機関別】不動産投資ローンの金利水準
それでは実際に、各金融機関の具体的な不動産投資ローンの金利水準を見ていきましょう。
銀行
金融機関 | 商品名 | 金利 |
---|---|---|
みずほ信託銀行 | 賃貸マンション・アパートローン「プロデュース II」 | 固定金利型11年~15年:年4.15% 短期プライムレート連動型:年2.475% |
りそな銀行 | りそなアパート・マンションローン(保証会社非保証) | ローン基準金利:年2.475% |
スルガ銀行 | 投資用不動産ローン | 変動金利:年1.5~4.1% |
福岡中央銀行 | アパートローンV | 変動金利:年1.5〜2.5% |
オリックス銀行 | 不動産投資ローン | 固定金利期間特約付変動金利型:年2.3〜3.5% 変動金利型:年2.675〜3.675% |
信用金庫・信用組合
金融機関 | 商品名 | 金利 |
---|---|---|
あすか信用組合 | 不動産投資ローン | 変動金利:年1.8~2.8% |
青和信用組合 | アパートローン | 変動金利:年3.3%〜 |
巣鴨信用金庫 | すがも新型アパートローン | 固定金利型:年1.575〜3.6% 変動金利型:年1.0〜2.475% |
豊田信用金庫 | アパートローン | 固定金利型:年2.85〜3.25% 変動金利型:年2.475% |
大阪協栄信用組合 | 不動産投資ローンLargeコース | 変動金利:年3.5〜6.0% |
ノンバンク等
金融機関 | 商品名 | 金利 |
---|---|---|
セゾンファンデックス | 不動産投資ローン | 変動金利:3.75〜4.55% |
SBIエステートファイナンス | 不動産活用ローン(フリーコース) | 実質年率15.00%以下 |
三井住友トラストL&F | アパートローン |
さまざまな金融機関が不動産投資ローンを取り扱っていますが、おすすめはセゾンファンデックスの不動産投資ローンです。
首都圏、近畿圏、愛知県や札幌市など幅広いエリアに対応していることに加えて、年収や職業が銀行基準に満たない方でも柔軟に利用することができます。
対象物件も築古・狭小物件、借地権付き建物とほかの金融機関では審査対象外の物件も審査可能であるため、申請条件に不安のある方に特におすすめのローンです。
不動産投資ローンの月々の返済額をシミュレーション
不動産投資を検討する際、ローンの返済計画を立てることは非常に重要です。ここでは、具体的な数字を使ってシミュレーションを行い、月々の返済額や総返済額を計算してみましょう。
【シミュレーション条件】
融資希望額 | 8,000,000円 |
返済期間 | 20年(240回) |
ボーナス併用払い | なし |
金利 | 年3.75%(固定金利) |
【計算結果】
- 毎月の返済額:47,990円
- 総返済額:11,517,600円
- 総利息額:3,517,600円
【計算方法】 元利均等返済の計算式:毎月の返済額 = 借入金額 × {金利 / 12 × (1 + 金利 / 12)^返済回数} / {(1 + 金利 / 12)^返済回数 – 1}
この計算結果から、以下のことがわかります。
- 20年間で毎月約48,000円の返済が必要です。
- 借入額8,000,000円に対し、利息として3,517,600円を支払うことになります。
- 総返済額は借入額の約1.44倍となります。
【シミュレーションの活用方法】
- 収支計画の立案: 月々の家賃収入から返済額を差し引くことで、実際の収支を予測できます。例えば、月の家賃収入が70,000円の場合、返済後の手取りは約22,000円となります。
- リスク評価: 空室期間や金利上昇などのリスクを考慮し、返済に余裕を持たせる計画が立てられます。
- 投資判断: 総返済額と予想される総家賃収入を比較することで、投資の採算性を判断できます。
【注意点】
- このシミュレーションは固定金利を前提としていますが、変動金利の場合は定期的に見直しが必要です。
- 実際の返済額は、金融機関の審査結果や物件の評価によって変わる可能性があります。
- 返済期間を延ばすと月々の負担は減りますが、総利息額は増加します。
より詳細なシミュレーションや個別の状況に応じたアドバイスが必要な場合は、セゾンファンデックスなど金融機関や不動産投資の専門家に相談することをお勧めします。また、オンラインの返済計算ツールを活用するのも効果的です。
このシミュレーションを参考に、ご自身の投資計画に合わせた綿密な資金計画を立ててください。
不動産投資ローンの適用金利を低くするポイント
不動産投資のパフォーマンスを上げるには、少しでも金利の低いローンを利用することが重要ですが、どのように金利を抑えればよいのでしょうか。
不動産投資ローンの金利を抑える3つのポイントをお伝えします。
低金利の金融機関から検討する
不動産投資ローンの金利を低くするには、低金利の金融機関から検討することが重要です。
金融機関のなかで低金利なのはメガバンクですが、審査が厳しいので活用できないケースがあります。
次に地方銀行、もしくは信用金庫・信用組合ですが、地域が限定されていたり金利のタイプが限定されていたりする場合があります。
ノンバンクは金利がやや高い場合があるものの、審査が柔軟に行われる点が魅力です。
金融機関を選択する際は、金利の低さを重要視しつつ、審査の柔軟性を考慮したうえで決定すると良いでしょう。
取引したことがある金融機関に相談する
過去に取引したことがある金融機関に相談すると、有利な条件の金利が適用できる場合があります。
金融機関としても、返済の見通しが不透明な新規の申込者より、すでに取引があり返済実績のある方が返済の目処が立ちやすく、金利を低く設定することができます。
取引実績のある金融機関がある場合、その金融機関の不動産投資ローンを検討対象に含めることが望ましいです。
事業計画書を丁寧に作る
事業計画書を丁寧に作り込むことも、金利を低くするポイントの一つです。
不動産投資における事業計画書とは、不動産投資の収支計画や購入する物件の概要、自身の属性情報を盛り込んだ提案書であり、主にローンを申請する金融機関に提出します。
収支計画を具体的に記載した事業計画書を金融機関に提示することで、信用力の向上につながり、金利を有利な条件で適用できる場合があるのです。
おわりに
不動産投資ローンは、投資家にとって重要な資金調達手段です。本記事では、不動産投資ローンの基礎知識から金利の種類、金融機関別の特徴、さらには金利を抑えるコツまで幅広く解説しました。
ポイントをまとめると以下のようになります。
- 不動産投資ローンは投資目的の融資であり、住宅ローンとは異なります。
- 金利には固定金利と変動金利があり、それぞれに長所と短所があります。
- 金融機関によって金利水準や審査基準が異なるため、比較検討が重要です。
- 金利を抑えるには、低金利の金融機関の選択、取引実績の活用、綿密な事業計画書の作成が効果的です。
不動産投資を成功させるためには、ローンの選択が非常に重要です。わずかな金利の差が長期的には大きな影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。
読者の皆様へのアドバイスとしては、以下の点に注意することをおすすめします。
- 複数の金融機関の商品を比較し、自身の状況に最適なローンを選択してください。
- 金利だけでなく、融資条件や返済期間なども総合的に判断しましょう。
- 専門家のアドバイスを積極的に求め、不明点は必ず解消してから契約しましょう。
- 将来の金利変動や空室リスクなども考慮に入れ、余裕を持った計画を立てることが大切です。
不動産投資は長期的な視点が必要です。十分な準備と慎重な判断により、成功への道を歩んでいただければ幸いです。不動産投資ローンの選択に悩んだときは、本記事を参考にしながら、ご自身に最適な選択をしてください。