近年、不動産投資が注目されています。将来もらえる年金に対する不安が指摘される中、年金だけで暮らしていけるのか疑問に思っている方も多いためです。物価高で生活費は上昇する一方で、年金が増えることは期待しにくいこともあります。生活の安心を考えるなら、不動産投資が選択肢のひとつです。
本記事では、不動産投資が年金対策として適している理由や、成功させるためのポイントを解説します。初めての方が不動産投資を始める流れも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 不動産投資は、将来の年金代わりとして期待できる投資方法。
- 長期間安定して家賃収入を得られる可能性があ、節税対策に活用できる点などが注目されている。
- 投資の種類には「区分」「一棟」「戸建」の3種類がある。
- 年空室リスクや滞納リスク、修繕リスクを把握することが大切。
- 計画的な資金繰り、慎重な物件選び、金利上昇の可能性も念頭に置くことも意識する。
年金対策としての不動産投資
年金対策としての不動産投資とはどういうことでしょうか。まずは、不動産投資が年金対策になる仕組みを説明します。さらに、年金対策として不動産投資が注目されている理由や、年金対策として知られる個人年金保険との違いも解説します。
不動産投資が年金対策になる仕組み
不動産投資とは、購入した土地や建物を賃貸して家賃収入を得ること、もしくは、物件を売却して購入額との差益を得ることです。
定期的な収入を得る年金の代わりとしては、前者の購入した不動産を貸して家賃収入を得る方法が想定されます。
購入時に融資を受ける場合、元利金の返済が終われば、物件から得られる家賃収入の多くが手元に残ります。つまり、建物が存在し続け、入居者がいる限り、定期的な収入が見込めるのです。
不動産投資が年金対策として注目されている理由
不動産投資が年金対策として注目されているのは、現行の年金制度に不安が指摘されているからです。厚生労働省によると、モデル世帯の年金額は次のとおりとなっています。
2023年度の年金額の例
厚生年金 ※夫婦2人分の老齢基礎年金を含むモデル | 月額224,482円 |
国民年金 ※老齢基礎年金(満額)1人分 | 月額66,250円 |
一方、2022年の総務省・家計調査報告で、65歳以上の夫婦のみの無職世帯についてみると、可処分所得が214,426円だったのに対し、消費支出は236,696円でした。高齢夫婦のみの無職世帯では、可処分所得よりも消費支出の方が多く、年金だけで生活するのは難しいことが明らかになっています。
2023年度は物価高を反映して前年度より年金は若干引き上げられましたが、近年は減少傾向でした。少子高齢化で現在の年金制度が将来も維持できるのかどうかも不安視されています。
年金は今後引き下げられる可能性もないとはいえません。多くの人々が安心して老後を過ごすための対策のひとつとして、不動産投資が注目されているのです。
参照元:厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」|総務省「家計調査報告」
個人年金保険とどちらがおすすめ?
老後の年金対策として知られる方法のひとつに、個人年金保険があります。個人年金保険は、老後に資金が必要となることに備え、公的年金を補完するため個人が任意で加入する保険商品です。
契約者は保険料を一定の年齢になるまで払い、受取開始時期になると、あらかじめ決めた期間まで、または終身にわたり年金を受け取ります。
契約時に受け取る年金額が確定する定額型と、投資信託などの運用成績次第で受取額が増減する変額型があります。
不動産投資は、物件を所有し、入居者がつく限りは賃料収入を得られますが、受け取る金額が確定しているわけではありません。人口減少や競合物件の存在などにより、家賃減額を余儀なくされる場合もあるでしょう。
ただし、不動産投資は知識や経験を積むほど、物件選択や維持管理面などで熟練度が増します。物件選びの際に将来性のあるエリアを見出したり、競合物件にない価値を生み出したりすることで、より大きな効果を得られる可能性があります。
さらに、不動産投資には、融資を受けて資産運用できる点や節税対策としても活用できるなど、個人年金保険に比べて多くの利点があります。次章以降で、不動産投資が年金対策に適している理由を詳しく解説します。
不動産投資が年金対策に適しているのはなぜ?
不動産投資が年金対策に適している理由について、収入や自己資金、節税といった観点に分けて解説します。
長期的に収入の期待ができる
不動産投資が年金対策に適している理由のひとつに、長期的に収入が期待できることが挙げられます。投資は、暗号資産やFXのように高いリスクを受け入れる代わりに高収益が期待できる「ハイリスクハイリターン」と、定期預金や国債のようにリスクは低いものの利益も低い「ローリスクローリターン」に大別できます。
多額の投資を必要とする一方で、知識と経験を積めばリスクを抑えながら高い収入を得られる不動産投資は、これらの中間に位置する「ミドルリスクミドルリターン」の投資であるといえます。
土地や建物は、資産として長期間保有できるのが一般的です。物やサービスの価格が上昇を続けるインフレ下では、現金の価値は低下しますが、不動産を保有しているとインフレとともに価値が上昇する可能性が高く、資産の目減りを防ぐことも期待できます。
一方で、不動産の値動きは株式や暗号資産などに比べると緩やかです。リスクを管理しながら安定したリターンを得られるのが不動産投資であるといえます。土地は供給量が限られており、適切な管理と活用を行えば、長期間にわたって安定した収入源となるでしょう。
定期的な家賃収入を得られる
不動産投資のもうひとつの魅力として、定期的に収入を得られる点があります。入居者がいて空室にさえならなければ、毎月決まった時期に家賃が入ってくる仕組みだからです。
家賃収入から、管理費や修繕費、ローンの元利金返済分などを引いた残りが、所有者の手取り収入です。借入総額や返済期間、金利にもよりますが、元利金は支出の大きな部分を占めます。ローンを完済すれば、家賃収入の多くを手残りにすることができます。
自己資金が少なくても投資を始められる
自己資金が少なくても投資を始められることも、不動産投資が年金対策に適している大きな要因です。
不動産投資を始めるには、一般的に大きな資金が必要とのイメージがあるかもしれません。しかし、実は少ない自己資金でも始めることは可能です。手持ち資金が不動産の購入代金に届かない場合でも、銀行など金融機関からの融資を活用できるからです。
融資を利用することで、数百万円の自己資金で数千万円する物件を購入して不動産投資を始めることができます。少ない資金で大きなリターンを得られる可能性があるのが、不動産投資の魅力です。
不動産投資は節税対策にもなる
不動産投資の利点に、節税対策となる点も挙げられます。ひとつは、損益通算が認められていることです。損益通算とは、不動産所得や事業所得など、ある所得金額の計算で生じた赤字額を、全体の所得を計算する際にほかの所得金額から差し引ける制度です。
不動産投資では、家賃収入から固定資産税やローン金利、管理費、修繕積立金などの費用を経費として収入から差し引くことが認められています。
加えて、建物や設備の減価償却費が大きな役割を果たします。減価償却費は、実際はお金が減るわけではないものの、比較的大きい金額を経費として計上できるため、不動産所得の利益を抑える効果があるのです。
これにより購入初期は赤字になることも多く、利益が出ているほかの所得から差し引ける損益通算が適用され、所得税や住民税の節税につながります。
相続税を納める必要がある方も、不動産投資で節税が可能です。現金を相続する場合と比べ、不動産を相続する方が納税の基礎となる財産の評価額を抑えられることなどがその理由です。
現金や金融資産は時価がそのまま評価額となりますが、土地は国税庁が算定した路線価などに基づいて評価され、建物は固定資産税評価額が基礎となります。いずれも時価より低く設定されるのが通常です。
不動産投資の種類
次に、不動産投資の種類について紹介します。一般的な不動産投資は次の3種類があります。
- 区分投資
- 一棟投資
- 戸建投資
ひとつずつ解説します。
区分投資
区分投資は、分譲マンションの一室を購入して入居者から家賃を得る投資手法です。建物管理はマンション管理組合が担うため手間がかからず、一室のみの所有であるため管理もしやすいです。ワンルームマンションは面積が狭く、さらに管理の労力が少なくなりますので、年金対策をしたいと考えている初心者にも取り組みやすい手法になります。
投資額も数百万円からと手ごろです。大都市の駅近くなどでは入居者の確保もしやすく売却しやすいメリットもあります。管理に手間がかからないことから、会社員の副業として考えている方に向いている投資だといえるでしょう。
ただし、入居者が退去すると収入がゼロになるリスクには注意が必要です。毎月のローン返済や管理費、修繕積立金が収支を圧迫するうえ、利回りは大都市圏で3~4%程度が多く、一棟投資や戸建投資に比べると低めです。
一棟投資
一棟投資は、アパートやマンションの建物全体を所有し、複数の部屋をテナントに貸し出す形態です。
建物が大きく、部屋数が多ければ多いほど、家賃収入が増えます。一部で空室が生じても全体でみるとカバーできる可能性もあるのが利点です。その分、ワンルームマンションなどの区分投資と比べて、初期費用は数千万円以上と大きくなります。都市部の場合、利回りは6~8%程度が多いです。
区分投資や戸建投資と比べて建物規模が大きいだけに、運営中の修繕やリフォーム費用など維持費が膨らむ可能性があります。年金対策としてのマンション経営に一定以上の資金を充てられる方や、不動産投資の経験がある方、大きなキャッシュフローを目指す方に適している手法といえるでしょう。
戸建投資
戸建投資は、一軒家を購入して賃貸用とする投資手法です。戸建ては立地によっては狭い物件でも入居者が見つかる可能性が高く、都心部や人気の住宅地では特に需要を見込めます。プライバシーの確保を好む方や、子どもがいる家族層などが入居者として想定されます。
戸建投資の場合、購入しやすい築古物件になると、耐用年数の関係で金融機関からの評価が低く、融資を受けるのが難しいのがデメリットです。
さらに、戸建ては区分投資と同様、空室になると収入が全くない状況になります。安定した賃料収入を得るためには、立地や間取り、清潔感など、退去してもすぐに入居者を見つけられる物件の魅力が必要です。
年金対策のための不動産投資物件選びのポイント
年金対策として不動産投資を考える場合、さまざまなリスクを押さえておくことが大切です。家賃収入を得るためには管理費や修繕費などのコストがかかります。
空室が長期化するリスクを回避するため、経年劣化してきた場合、あるいは入居者を確実に獲得したいと考えた場合などは、家賃を下げざるを得ないこともあるでしょう。
安定した収入が必要な年金の代わりとして不動産投資を行うなら、賃貸需要が高い地域の物件を選ぶことが重要です。
都市部や交通の便が良い地域、商業施設や病院が近い地域などは、常に一定の需要を見込めるため、投資リスクを軽減できます。戸建てやワンルームマンション投資など、リスクの小さい投資から始めることもおすすめです。
規模の小さい物件から無理なく買い進め、経験と知識を少しずつ積み重ねていくことが重要です。
年金対策のための不動産投資を成功させるには?
年金は将来の暮らしを安定させるためのものです。一定のリスクもある不動産投資を年金対策として成功させるため、気をつけておくべきことを解説します。
不動産投資のリスクを把握する
年金対策のための不動産投資を成功させるには、リスクを把握することが大切です。不動産投資のリスクとしては、主に次のパターンがあります。
- 空室リスク
- 滞納リスク
- 修繕リスク
空室リスクは不動産投資で最も注意が必要です。入居者がいなければそもそも収入が途絶えます。築年数が経過すると建物の老朽化が進み、空室リスクが高まります。人口減少で入居率が下がることもあり得るため、数十年後の人口動態なども見据え、将来性のある地域や建物の選択が重要となるでしょう。
入居者から家賃が入ってこなくなる事態が、滞納リスクです。入居者が家賃を滞納すると、収入が途切れるだけでなく、回収のため法的手続きをとることなどで想定外のコストが発生するケースもあります。滞納が発生した場合は長期間放置せず、早めに対応することが大切です。
物件の修繕リスクも意識しなければなりません。建物は経年とともに劣化します。室内の床や壁、水回りだけでなく、外壁や屋根、給排水管といった修繕も収益を圧迫する要因になります。年金対策として不動産投資を行う場合は、管理が行き届いた物件を購入することや、適切な管理をしてくれる管理会社を選ぶことが重要です。
資金繰りは計画的に行う
不動産投資の成功には、計画的な資金繰りが欠かせません。賃貸経営を行っている間は、家賃収入だけでなく、支出、つまり維持管理費やローンの返済などもしっかり把握して計算に含めましょう。
このほか、空室の長期化を避けるための入居促進に向けた費用、固定資産税、所得に対して課税される所得税や住民税なども忘れずに計算に含めるようにしてください。
物件選びは慎重に行う
不動産投資を成功させるには、物件選びを慎重に行うことが求められます。本業がある方は物件選びに時間を充分にかけられないかもしれませんが、不動産投資を成功させるためにも、必ず複数の物件を比較検討することが大切です。
利回りだけでなく、立地条件や築年数、競合する物件、人口動態なども考慮に入れることで、安定収入を期待できる物件を見つけやすくなるでしょう。
仲介してもらう不動産会社も1社に依存することなく、複数社を訪問することをおすすめします。いくつかの不動産会社を比較することで、ご自身にとって最適な物件やサービスを見つけられる可能性が高まります。
金利上昇のリスクも忘れずに
金利上昇リスクも念頭においてください。不動産投資では、融資を受けて購入資金の一部とするのが一般的です。日本では日本銀行の大規模金融緩和の影響で超低金利が続いていますが、変動金利でローンを組むと、将来的に金利が高くなる可能性もあります。
毎月の資金繰りを圧迫し過ぎないよう、過度な借り入れを控えることや、金利によっては借り換えを検討するなど、経済情勢をにらみつつ、適切な対応が必要です。
不動産投資を始める流れを確認しておこう
不動産投資をスタートするには、まず、購入までの流れを把握するのが大切です。ここでは、物件を探し、頭金を用意して収支計画を立てるまでを解説します。
物件探しをする
不動産投資は物件探しから始まります。エリアや人口動態、築年数、価格など、さまざまな判断基準を元にご自身の考えに沿った物件を探しましょう。
物件のエリアは、将来的な人口の増減や経済状況を予測し、賃貸需要が安定していそうな地域を選ぶことが重要です。大学や病院など、一定の需要が見込める施設が近くにあるエリアは有望です。
築年数も物件の価値と連動します。新築物件は価格が高いものの、建物や設備は新しいため、維持管理のコストを抑えられます。中古物件は、価格は抑えられる一方、大小の修繕費用が発生するリスクに注意が必要です。
交通の便や周辺施設も重要な選定基準です。駅が近く交通利便性が高い物件、スーパーや学校など生活に欠かせない施設が近くにある物件は、入居者の需要が高く、安定的に収益を生み出してくれる可能性があります。
頭金を用意する
不動産投資に頭金は不可欠です。不動産投資で融資を受ける際、1、2割の頭金を求められることが多いです。また、自己資金はできるだけ多い方が、金融機関から承認を得やすく、毎月の元利金返済を減らせます。
空室による収入減や想定外の修繕費などが発生するため、不動産賃貸経営は予定したキャッシュフローを得られるとは限りません。充分な頭金を入れて毎月の元利金返済の割合を下げておくことで、月々の返済負担を軽減できるでしょう。
さらに、自己資金を多く持っているほど金融機関からの信用力も上がるため、金利や融資期間など借入条件が改善される効果も期待できます。
融資を受ける場合には、都市銀行や地方銀行、信用金庫などが対象になりますが、選択肢のひとつとしてセゾンファンデックスの不動産投資ローンもおすすめです。銀行の融資条件に合わなかったケースや、頭金を抑えたいケースなどに柔軟な対応が期待できます。
収支計画を立てる
不動産投資を行うにあたって、収支計画を立ててください。不動産投資を始めると、ローンの返済以外にもさまざまな支出が発生します。
管理費や固定資産税などの定期的にかかる維持費のほか、修繕費や空室を埋めるための広告料なども想定しつつ、将来的なお金の出入りを予測することが重要です。最終的に物件購入を決める際には、長期の見通しを立てて無理なくローン返済をしていけるものを選ぶようにしてください。
おわりに
不動産投資は年金対策の有力な手段として注目されています。しかし、成功するには知識と慎重な計画が欠かせません。物件を購入するエリアの人口動態や立地条件、築年数、価格などを考慮しつつ、将来の需要や成長性を見極める目が重要です。
適切な額の自己資金を用意し、綿密なシミュレーションを通じて将来のキャッシュフローを予測しながら、想定外の支出に備えてください。年金代わりとなる安定的な収入を得るため、不動産投資の利点とリスクを学び、将来に向けた対策を講じましょう。