神棚の正しい飾り方をご存じでしょうか。神棚自体は見慣れた存在でも「いざ自分が飾りつけをするとなると、どうすれば良いかわからない」という方は多いでしょう。初めて神棚を購入し、飾るのだとしたらなおさらです。この記事では神棚を飾るべき場所、飾りつけに必要な供物と飾り方、そして神棚のお手入れ方法まで解説します。神棚の設置方法についてもご紹介していますので、これから神棚を用意する方もぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
このコラムでは、神棚とは何かに始まり、その種類や配置に適した場所、正しい飾り方、お供え物の種類について解説しています。また神棚にお参りするときのマナーやお手入れ方法についても触れているため、家に神棚を飾って日々暮らすためのあらゆる作法を身につけることが可能です。また、神棚を設置したら気をつけたいことや飾り方のタブーについても触れていますので、神棚において知らず知らずのうちにマナー違反をおかすことがなくなるでしょう。神棚の取り替え時期や処分方法まで網羅しており、最後の手放し方まで押さえておくことができます。
神棚とは?
神棚とは、日本の神道における神様を祀るためにしつらえられた小型の神社です。棚上に置かれたミニチュアの神社に神様を象徴するお神札(おふだ)を飾り、まわりに供物などを捧げてお祀りします。
神棚は家内安全や家の繁栄を願って家ごとに作られるほか、商売繁盛を願って社屋内に作られることがあります。会社によっては、会社のそばに小さな鳥居と神社を設けて神様を祀っているケースもみられます。
また、ひとつの家に複数の神棚が作られている場合もあります。家内安全の神様と、家の商売である農業のための神様を祀るようなケースです。
神棚には毎日お供え物をし、祈りを捧げて日頃の感謝を伝えます。
神棚の種類
一般的な家に飾られる神棚には、主に以下の4つの種類があります。
三社造り
三社造りは最もスタンダードな神棚といえるでしょう。3つのお宮があり、それぞれにお神札を祀ります。
一社造り
お宮がひとつだけの神棚です。三社造りよりもリーズナブルで、少ないスペースであっても神棚を作ることが可能です。
お神札立て
お神札を立てて収納するための神棚です。お宮がなく、中にはまるでスマートフォンを立てかけるためのスタンドのようなスッキリとしたデザインのものもあります。壁に掛けるタイプも売られています。
モダンな神棚
三社造りや一社造りの神棚は荘厳な雰囲気が魅力ですが、現代的な住宅には馴染まないこともあります。洋風のインテリアにも馴染むようシンプルな仕様で作られているのが、モダンな神棚です。特に近年ではスタイリッシュなデザインの神棚が次々と生まれています。
神棚の位置に決まりはある?
神棚の位置には決まりがあります。具体的には、飾る「場所」と「方角」に気をつけなければなりません。配置に適した場所と適さない場所に分けて、具体的に解説します。
配置に適した場所
神棚の配置に適しているのは、高い場所です。お参りをするとき神様を見下げるようにするのは失礼に当たるためです。神様を見上げてお参りできるよう、神棚はなるべく目線よりも高い位置に設けましょう。
また、方角としては南向きか東向きが良いとされています。なぜかといえば、神棚の中心には天照大御神が祀られているためです。天照大御神は太陽の神様なので、日照時間の長い南か、太陽が昇る東に神棚を向けるのが望ましいとされているのです。
南向きにする場合は部屋の北側に設置し、神棚の正面が南を向くようにします。東向きの場合は部屋の西側に設置し、神棚の正面が東側を向くようにします。
なお、家族が毎日お参りしやすいよう、リビングなど家族みんなが集まる場所を選んで設置します。
配置に適さない場所
神棚の設置に最も適していない場所は、仏壇の真正面です。神道の神様と仏様は別の宗教で信仰されているものなので、神棚と仏壇を向き合わせて飾るのはタブーとされています。なお、どちらかに手を合わせたとき、もう片方にお尻を向けてしまうため良くないといういわれもあります。
また、祈りの対象となる天照大御神は太陽の神様なので、暗くジメジメした場所もふさわしくありません。とくに水回り周辺は神棚が汚れたりカビたりしやすく、洗面所やトイレの近くは穢れ(けがれ)を嫌う神様に適した場所とはいえません。1階に設置する場合、2階の真上にトイレや洗面所がある場所も避けます。
その他、人が出入りする玄関など扉の近くもやめておきましょう。部屋の奥のほうに上座を設けるように、大事な神様を部屋の奥にお迎えし、静かに過ごしてもらいます。
神棚に飾るもの
神様にふさわしい場所に神棚を設置したところで、いよいよお神札や供物を準備しましょう。神棚に飾るものについて、詳しくご案内します。
お神札
神棚のお宮の中に、三種類のお神札を納めます。
1つめは「天照皇大神宮」と書かれたお神札です。これは「神宮大麻(じんぐうおおぬさ)」と呼ばれる伊勢神宮のお神札で、日本各地の神社で配られています。
2つめは、氏神神社のお神札です。氏神神社とは、自分の家が氏子になっている神社のことを指します。どの神社の氏子でもないという場合でも、その地域をお守りしている神社は必ずあるため調べてみましょう。ご近所さんに尋ねたり、各都道府県の神社庁に連絡したりするのが近道です。
3つめは、自分が崇敬している神社のお神札です。個人的に信仰している神社があれば、そこのお神札を飾ります。崇敬神社はひとつでなくても構いません。「旅行して神社にお参りし、お神札も買ってきた」という場合も、崇敬神社のお神札として納めます。
神棚にはなるべく新しいお神札を飾りましょう。初詣の際などに神社へ古いお神札を持って行くと引き取ってもらえ、その場で新しいお神札を授かることができます。
神具
お宮の前には、神具を飾ります。神具とは神道の祭祀に用いられる道具のことで、神様に捧げるものという意味合いもあります。以下のような神具を用意しましょう。
神鏡
丸い鏡に白木の飾りがあしらわれた神鏡は、三種の神器のひとつです。神様を邪気や不浄から守るという意味合いがあります。
瓶子(へいじ)
瓶子は、御神酒(おみき)をお供えするための白い小さな陶器です。一対(2つ)を用意します。
水玉
水玉は、水をお供えするための白い小さな陶器です。本体は丸く、ふたは先端に向かってとがった形をしており、まんまるのどんぐりのような愛らしさがあります。
皿
米や塩をお供えするための白いお皿です。2枚用意します。
八足台
八足台は左右に4本ずつ、合計8本の足がついた棚台です。神棚においては瓶子や水玉、皿をのせておくための小さな八足台が売られています。ただし省略する家も少なくありません。
三宝(さんぼう)
三宝はお供え物を乗せるための四角い台です。とくに日常では八足台の代わりに瓶子や水玉、皿をのせておきますが、省略する家もあります。
榊立(さかきたて)
榊立は、榊をお供えするための陶器でできた白い一輪挿しです。榊とはツバキ科の樹木で、枝が神事に使われます。
神棚の正しい飾り方
神具を揃えたら、いよいよ神棚を飾っていきましょう。神棚の飾り方を、順を追って解説します。
初めて神棚を飾る場合
初めて神棚を飾るなら、お宮をのせる棚板や吊り棚を取り付けることから始めましょう。棚板を購入する際は耐荷重量に十分注意します。神棚用として販売されている棚を選ぶのが最も安心です。
賃貸の場合は、壁に穴を開けてしまうと退去の際に原状回復費用が割高になる可能性があります。賃貸規約をよく確認し、不安があれば不動産会社やオーナーに相談の上で、どのように神棚を飾るか決めましょう。
また、神棚の上に何かを置くのは良くありません。もし上階があるなら「雲」や「天」と書いた半紙を天井に貼ってから神棚を設置しましょう。「雲」や「天」と書かれた半紙を貼るのには、「この上には雲や空しかありません」という意味があります。
お神札の位置
お神札の並べ方には決まりがあります。三社造りの場合、中央のお宮に神宮大麻(伊勢神宮のお神札)を、向かって右のお宮に氏神神社のお神札を、向かって左のお宮に崇敬神社のお神札を納めます。
一社造りであれば、神宮大麻を一番手前に、そのすぐ後ろに氏神神社のお神札を納め、またその後ろに崇敬神社のお神札を重ねます。
神具セットの置き方
まず中央に神鏡を置きます。中央のお宮の手前に、お宮を守るような形で置きましょう。
お宮の左右脇には榊立を1本ずつ置き、榊立の内側に瓶子を1つずつ置きます。神鏡の前には水玉と2枚の皿を置きましょう。八足台や三宝に瓶子や水玉、皿を置くと丁寧です。
お供え物について
神棚のお供え物には、日常のためのものと特別な日のためのものがあります。それぞれ詳しく解説します。
基本的なお供え物
神棚に毎日お供えしたい基本的なものは、御神酒、水、米、塩です。とくに水、米、塩は毎日取り替えるのが良いとされています。
一対の瓶子に御神酒を入れ、水玉に水を入れます。2枚の皿にそれぞれ米と塩を入れますが、このときそれぞれ山になるように盛ると美しく飾れます。
お供え物の並べ方
お供え物の並べ方には決まりがあります。一列で並べる場合は、神棚に向かって左から「酒・水・米・塩・酒」の順番になるように並べましょう。中央がお米になります。
2列で並べる場合は、奥の中央に米を置き、その左右に酒を置きます。そして左手前に水、右手前に塩を置きましょう。
「米はいつも真ん中に置くんだな」「水が左で、塩が右なんだな」と覚えておくと便利です。
特別な時期のお供え物
より丁寧に神棚をお祀りしたいと考えたなら、毎月1日と15日には特別なお供えをしましょう。また、お正月のお供え物についてもご紹介します。
月次祭(つきなみのまつり、つきなみさい)
多くの神社で、毎月1日と15日を節目として月次祭が行われます。神社においては宗教儀式が行われますが、各家庭においてもお供え物をいつもより少し豪華にして神様へ感謝を伝える日とされています。
1日と15日には、米・塩・水・酒に加え、季節の果物や野菜をお供えしましょう。供え方としては、三宝に敷紙を敷いたうえで果物や野菜をのせるのが一般的ですが、三宝がない場合はお盆などで代用しても構いません。神棚にのりきらない場合は、神棚のすぐ下に棚を設けるか、床の間にお供えしましょう。
お正月
お正月は神道にとって年神様をお迎えする一大イベントです。神棚には、いつもの米・塩・水に加えてさまざまなお供え物を飾るのが良いとされています。
季節の果物や野菜の他、魚、昆布、干菓子、餅などを飾ります。餅は丸餅を大小二つ作り、重ねて鏡餅としましょう。神棚にのりきらない場合は神棚の真下に棚を作ったり、床の間にお供えしたりします。
また、御神酒をお屠蘇(とそ)用の銚子に入れて神様と同じお酒を皆で飲んだり、神棚にしめ縄を飾ったりするとよりお正月らしくなります。いつも神棚にしめ縄をつけている場合は、お正月を機にしめ縄を新しくしましょう。
お供え物の取り替え時期や処分はどうする?
お供え物は、できれば毎日取り替えるのが理想です。もし難しい場合は数日おきに替えましょう。少なくとも毎月1日と15日の月次祭には新しいものをお供えできるようにします。
お供え物はなるべく処分せず、調理などに使うのが望ましいとされます。ただし正月飾りをした後の果物や野菜など、傷んでしまってどうしても食べられないものは、お清めとして塩を振ってから処分しましょう。
神棚をお参りする時の作法
神社にお参りするときは「二礼・二拍手・一礼」が一般的な作法です。これは全国どんな神社でも共通のマナーです。
二礼とは、2回お辞儀をすること。ゆっくりと深く2回お辞儀をした上で、「パン、パン」と2回手のひらを合わせ拍手します。これを「柏手を打つ」といいます。その後、またゆっくりと深く1回だけお辞儀をします。これが神道の参拝方法です。
なお、神道のお葬式では「二拍手」のときに「パン、パン」と手のひらを打ち合わせません。打ち合わせるフリだけをして、音を鳴らさないようにします。もし神道のお葬式に参列する機会があったら、気をつけましょう。
神棚のお手入れの仕方や気をつけたいこと
神棚はお手入れをしないと、傷んだり汚れが目立ったりしてきます。神様をお祀りするためのものですので、きちんとお手入れしてキレイな状態を保ちたいですね。神棚のお手入れ方法や、気をつけなければならないことについて解説します。
神棚のお手入れ方法
神棚は無垢の木材がそのまま使われているため、傷つきやすく湿気を吸いやすいという難点があります。水拭きはやめて、柔らかいふきんでから拭きしましょう。こびりついた汚れを落とそうとしてゴシゴシこすると傷がついてしまうため、なるべく頻繁に埃を払い、汚れがつかないようにするのが理想的です。
神具のほとんどは陶器でできているため、水洗いができます。供物を交換するたびに洗って清潔を保ちましょう。
新しい神棚や神具に交換したときには、処分方法に悩みがちです。古い神棚については神社に相談し、お焚き上げをしてもらいましょう。神具は各自治体の処分方法に従って処分します。もし気が咎める場合は、塩を振るなどしてお清めしてから処分しましょう。
神棚を設置したら気をつけたいこと
神棚にはタブーがあります。以下に気をつけて行動しましょう。
長い間お参りしない
神棚には毎日お参りするのが理想的ですが、無理な場合は数日おきでも構いません。しかし、長くお参りしないままにするのはやめましょう。神棚は、神様に日頃の感謝を伝える場所です。自分自身がお参りすることで身を引き締め、心新たに一日を始められるよう、きちんとお参りをしましょう。
埃が積もったままにしておく
神棚に埃が積もったままにしておくのは、神様を大事にしていないことを表します。長くお参りしないことと同様に失礼な態度です。また、神道の神様はとくに穢れを嫌います。きちんとお手入れしてキレイな状態を保ちましょう。
神様と関係のないものを飾る
神棚は神聖なものです。しかし飾り棚として便利だからと、空いているところに写真を飾ったり、小物を飾ったりしている方はいませんか。神棚には、神様と関係のないものは飾らないようにしましょう。
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以上、ご紹介したように神棚は感謝の気持ちを持って日々お手入れすることが大切です。それは、お墓にも当てはまります。ご先祖様が眠っているお墓が汚れていたり、墓地が雑草で埋め尽くされていたりしたら、いたたまれない気持ちになってしまうでしょう。
しかし現実には、お墓参りを頻繁に行える方はあまりいません。特に遠方に住みながらも実家のお墓を引き継いだ世代には、お墓を手入れしたくてもできないもどかしさを抱えている方がたくさんいます。
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おわりに
神棚は神様を祀る場所であり、日々感謝の気持ちを持ちながらお参りする場所です。最近では伝統的な信仰を「迷信」と捉える方が増え、宗教離れが進んでいます。しかしその一方で「自分は生かされている」という謙虚な気持ちを忘れないためにも、何かしらの信仰が必要と考える方もいます。
神棚を自宅に迎えたり、代々引き継がれてきた神棚を自分で管理するようになったなら、なるべく正しい作法で毎日お供えしたり、お参りしたりしてみましょう。一日のルーティーンに、新たに「お供え」と「お参り」が加わることで、自分の内面に何らかの変化があるかも知れません。