無縁仏とは、供養や管理をしてもらえないご遺体やお墓のことです。お墓の継承者を立てられないと、先祖代々のお墓がそのうち無縁仏になってしまうリスクが高くなります。「お墓を継いでくれる子どもがいない」「子どもにお墓のことで迷惑をかけられない」とお悩みの方に、無縁仏にならない方法をご案内します。墓じまいや永代供養などの選択肢を知れば、安心して老後を迎えることができるでしょう。
この記事を読んでわかること
このコラムでは、亡くなってからご自身のお墓を無縁仏にしないための方法がわかります。供養されない、掃除をしてもらえないお墓は荒れ果て、やがて「無縁仏」と呼ばれるように。そうならないためには、生前にきちんと墓じまいを行ったり、ご自身のお墓の永代供養を契約したりといった準備が必要です。そういった準備に必要な手続き、金額のことについても詳しく解説しているため、ご自身も遺される家族も安心の弔い方を見つけられるでしょう。
無縁仏について
「無縁仏」と聞いて、何を思い浮かべるでしょう。お墓でしょうか、ご遺体でしょうか。身寄りなどなく引き取り手のないご遺体を無縁仏と言い表すこともありますが、このコラムでは、主にお墓としての無縁仏を取り扱います。
お墓としての無縁仏は、管理や供養をしてもらえなくなったお墓のこと。まずはその意味と、よく混同される永代供養との違いについて解説します。
無縁仏とは
無縁仏とは、継承者が管理できなくなり、放置されてしまったお墓を指します。誰も手入れせず、お参りにも訪れないで長い期間が経ったお墓が無縁仏です。
お墓が無縁仏になると雑草に覆われ、墓石のひび割れや傾きがそのままになり、だいぶ荒れ果てた印象になります。無縁仏を見かける方は「故人が気の毒だ」「お墓を継いだ方は一体何をやっているのだろう」と寂しい気持ちになってしまいます。
無縁仏は見た目が寂しいだけではなく、霊園の管理者にとってやっかいなお墓となります。無縁墓のほとんどが年間管理料は支払われず、霊園側が管理費の請求をしようとしても継承者の連絡先がわからず、また、勝手に墓石を撤去して新しい契約者を呼び込むわけにもいかないためです。
無縁仏の増加に対応しようと、平成11年には「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」の一部が改正されました。継承者が一定期間以上管理費用を支払わず放置した場合、霊園側は未払いの事実を官報に掲載し、かつ該当するお墓のある場所に立て札を設置。そしてそのまま1年が経っても縁故者が現れなかった場合は、墓地の整理が可能になりました。
参照元:「墓地、埋葬等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について」
無縁仏と永代供養の違いは?
無縁仏と似た言葉に「永代供養」があります。永代供養とは、親族などの継承者ではなく霊園やお寺など墓地の運営管理者などが管理や供養を担ってくれるお墓のことです。お墓掃除や草木の手入れ、お盆やお彼岸など節目の供養を霊園やお寺に任せることができ、お墓周りはいつもきれいです。
無縁仏は本来管理すべき親族などの継承者がお墓掃除や供養をせず、放置された結果荒れ果ててしまったお墓を指しますから、無縁仏と永代供養はまるで違います。
かつて永代供養墓といえば「身寄りのないご遺体(=遺体としての無縁仏)を葬る墓」という印象が強いものでした。この場合の永代供養墓は、誰も弔うことのない遺骨を霊園やお寺が供養してくれるお墓という意味です。よって永代供養墓には寂しく暗いイメージがつきまといがちでした。
今や永代供養墓は「霊園やお寺が管理供養してくれるお墓」という意味はそのまま、現代のニーズに合わせて「継承者を必要としないお墓」として明るいイメージにアップデートされ、人気の形となっています。
なぜ無縁仏になる?
無縁仏は誰も墓参りに訪れず、遺骨の引き取り手も現れないお墓です。それではなぜ無縁仏になってしまうのでしょうか。主に次の3つのケースが考えられます。
お墓を引き継ぐ方がいない
お墓を引き継ぐ方がいないと、管理や供養をするべき方がそもそもいないため、ほどなくして無縁仏になってしまいます。最後の管理者が、継承者がいないという問題を解決せずに亡くなってしまったケースが考えられます。
お墓の継承者が管理しない
継承者がいるお墓でも、無縁仏になる場合があります。自宅からお墓が遠いなどの理由でお墓参りに行けない期間が長くなると、お墓の周りが草で覆われたり、墓石のひび割れや傾きが目立ったりするようになります。管理費用を納め続けていても、お墓の見た目は無縁仏化します。
管理料などの支払いをしていない
継承者がお墓参りを続けていても、年間管理料の支払いを怠っていると、霊園やお寺側からすれば無縁仏と見なされてしまいます。管理費の滞納が重なると、先述したように法令に則り墓石を撤去されてしまう可能性があるのです。
無縁仏にならないためにできること
ご自身が亡くなったら、お墓を管理してくれる身内はいるでしょうか。「思い当たらない」方は、お墓が無縁仏になってしまう可能性があります。元気なうちに、次の2つの対策のうちいずれかを行いましょう。
お墓の管理を親族に依頼する
先祖代々のお墓がある方は、親族の誰かにお墓を引き継いでもらえないか考えてみましょう。例えば、兄弟姉妹のうちでまだお墓を設けていない方はいませんか。お墓の引き継ぎをしっかりと行えば、無縁になるのは防げます。なるべくご自身よりも年下の方に依頼できると安心です。
墓じまいをする
親族の誰かにお墓を引き継ぐことができないなら、墓じまいをするのが有効です。墓じまいとは、今あるお墓を撤去して更地にし、霊園やお寺に返還すること。誰も管理する方がいないお墓を無理に残して無縁仏化させるよりは、墓じまいをした方が、残る家族や霊園、お寺を困らせずに済みます。
墓じまいの後に選択可能な方法は?
墓じまいの後には、お墓から取り出した先祖の遺骨を供養する必要があります。また、お墓がない以上はご自身の遺骨をどうすべきか考えておかなければなりません。その場合の4つの選択肢をご案内します。
永代供養の合葬墓
親族などの縁者に限らず、多くの方の遺骨と一緒に眠る大きなお墓を「合葬墓(がっそうぼ、がっそうはか)」もしくは「合祀墓(ごうしぼ、ごうしはか)」といいます。
ほとんどの合葬墓は継承者のいらない永代供養墓です。縁故者が管理しなくても霊園やお寺がお墓周りをきれいにしてくれ、お盆やお彼岸などの節目には合同供養祭が行われます。
合葬墓は比較的安価に遺骨を供養できる方法です。一体100,000~300,000円ほどが目安。先祖の遺骨を供養する場合は、ひとつの骨壺に複数の遺骨をまとめることができればより費用を節約できます。
永代供養の納骨堂
納骨堂とは、複数の骨壺を収容している屋内施設のことです。納骨堂の中には、永代供養の仕組みを利用している施設もあります。最初の数年は個別にお参りできる小さなスペースを設け、契約期間が過ぎたら合葬となるパターンと、初めから合葬となるパターンとがあります。
「最初の数年はお墓参りをしてくれる方がいる」のであれば、期間限定型の個別スペースを利用するのがおすすめ。ただ、個別スペースを契約すると期間が長くなるほど費用も高くなります。期間限定型の個別スペース付き納骨堂であれば費用は700,000~1,500,000円、最初から合葬するのであれば100,000~300,000円が目安です。
自然に還る樹木葬
樹木葬とは、「先祖代々之墓」などと刻まれた墓石ではなく樹木をお参りの対象とするお墓です。墓石を使わないため割安となり、ほとんどが継承者のいらない永代供養墓です。費用相場は300,000~1,500,000円と幅があり、個別のスペースが小さい方が安価です。
樹木葬ではほとんどが骨壺のまま埋葬するのではなく遺骨を土中に直に埋葬する、自然に還る弔い方として、近年注目を浴びています。
自然に還る海洋散骨
海に遺骨を撒くことを海洋散骨といいます。大いなる自然へと還っていけるイメージから、海にロマンを感じる方を中心に人気です。また、「お墓はいらない」と考える方も注目する弔い方です。
遺族が散骨に立ち会う立会散骨は150,000~300,000円、散骨事業者に遺骨を預けて散骨してもらう委託散骨は50,000~100,000円程度の費用がかかります。1体当たりの費用ではありますが、先祖の遺骨がたくさんある場合はひとつの骨壺に複数の遺骨をまとめるようにすると節約できるでしょう。
墓じまいの流れ
墓じまいは、労力も費用もかかります。なるべく元気なうちにやっておいた方が、負担を重く感じずに済むでしょう。墓じまいの流れは以下のとおりです。
親族と菩提寺の住職に事前に相談する
まずは周りの方に「墓じまいをしたいと思うが、どうか」と相談することから始めます。お墓参りの場所がなくなるわけですから、親族の中には反対する方がいるかもしれません。親族の気持ちを無視して勝手に墓じまいを始めると、トラブルになる可能性があります。
また、これまでお世話になった霊園や菩提寺には「無縁仏になるのを防ぎたいので墓じまいをしたい」と相談しましょう。お寺にとって、墓じまいは檀家を失うことにつながります。先祖のお墓を守ってきてくれたことに対して感謝の気持ちを伝えながら話をするようにしましょう。
お墓の解体・撤去をお願いする依頼先を見つける
お墓を解体・撤去し、更地にしてくれる石材店を探します。霊園やお寺に提携先の石材店がある場合は、提携店にお願いしましょう。石材店に現地を確認してもらい、見積もりを取り寄せ、見積額に納得したら正式に発注します。
改葬許可証を受け取るための手続きをする
お墓から遺骨を取り出し、他のお墓に埋葬することを「改葬」といいます。改葬のためには改葬許可証が必要に。樹木葬や永代供養墓へ埋葬する時も必要となります。散骨のためには必ずしも必要ではありませんが、撤去作業を行う石材店や散骨事業者に提示しなければならないケースもあるため、発行しておいた方が良いでしょう。
改葬許可申請は、お墓のある自治体の役所で行います。必要書類は以下のとおりです。
- 埋蔵証明書
今のお墓に遺骨が埋葬されていることを証明する書類です。今あるお墓の管理主体である霊園やお寺からもらいます。 - 受入証明書
遺骨の受け入れを許可することを示す証明書。遺骨の受け入れ先である永代供養墓や樹木葬墓地の管理主体からもらいます。散骨する時は特に必要ないとする自治体も多いですが、散骨の場合でも受入証明書が必要な自治体もあるため確認が必要です。 - 改葬許可申請書
各自治体によって申請書のフォーマットが違います。役所のWEBサイトからフォーマットをダウンロードできることが多いため、調べてみましょう。
以上3つの書類を役所へ提出し、改葬許可証を発行してもらいます。申請は郵送で行える自治体もあるため、遠方で手続きしづらい方は問い合わせてみるのがおすすめです。
遺骨を取り出す
お墓を撤去する前に先祖の遺骨を取り出します。遺骨を簡単に取り出せない構造の場合は石材店に相談し、立ち会ってもらいましょう。
また、簡単に取り出せる場合も無断で行わず、霊園の管理事務所やお寺に予定を申し出るのがマナーです。後に解説する「閉眼供養」を、このタイミングで行うケースもあるためです。
お墓を解体・撤去してもらう
遺骨を取り出したら、石材店にお墓を解体・撤去してもらいましょう。解体前には、墓石をお参りの対象からただの石に戻す「閉眼供養」を行います。お墓の前で僧侶に短い読経をしてもらう法要です。御布施が必要になりますが、墓じまい全体の費用にもかかわってくるところなので、詳しくは次項で説明します。
墓じまいにはどれくらい費用がかかる?
墓じまいは少なくとも200,000円、多ければ100万円を超える費用がかかります。お墓の規模や立地、先祖の遺骨の数などによって費用が変動しますので、以下の内訳を確認しながらだいたいの金額を見積もってみてください。
お墓の撤去・解体・整地費用
石材店に支払う費用です。お墓の撤去・解体・整地費用は、1平米当たり100,000円が目安。ただし重機が入らない狭い道の奥にある墓地や、危険な作業を伴う崖地などは作業費用が割高になる傾向があります。必ず石材店に実際の墓地を見てもらい、見積もりをもらいましょう。
各種証明書発行費用
埋蔵証明書・受入証明書・改葬許可証と、改葬のためには3つの書類が必要で、それぞれの書類を発行するための費用が発生。いずれも数百円ですが、郵送を依頼する場合は郵送料も負担する必要があります。全部で2,000円から3,000円程度と把握しておきましょう。
御布施
今までお世話になったお寺に対し、お礼の気持ちで御布施を納めます。お墓を撤去する時「閉眼供養」を行いますが、この御布施を通常の法要よりも少し多めにすることで気持ちを伝えるのが一般的です。法要の御布施の相場は30,000円程度ですが、墓じまいの閉眼供養では100,000~200,000円ほどがひとつの目安となります。
なかには「離檀料」といって、檀家を離れる時の御布施の金額を定めているお寺もあります。格式の高いお寺ほど離檀料が高額になる傾向があるといえます。
なお、民間霊園や公営霊園などお寺が直接管理運営していない霊園の場合は、御布施を多めに包んだり離檀料を納めたりする必要はありません。
先祖の遺骨を供養するための費用
先にも少し触れましたが、先祖の遺骨を供養するための費用も発生します。先祖の遺骨を永代供養とする場合、1体100,000~300,000円が相場です。
散骨の場合は立ち会う必要のない委託散骨で50,000~100,000円が相場となります。ひとつの骨壺に複数の遺骨をまとめることで節約できる場合があるため、永代供養を依頼する霊園や散骨事業者に相談してみましょう。
墓じまいに関することはセゾンの相続へ
墓じまいにはお金がかかりますし、親族を説得するのに苦労することもあります。また、先祖の遺骨を永代供養にすべきか、散骨すべきかと悩む方もいることでしょう。専門家の手を借りれば、墓じまいに関するさまざまな悩みが解決します。
「セゾンの相続 お墓探しサポート」では、墓じまいを含めたお墓、葬儀、相続など終活全般の知識豊富な専門家のご紹介が可能です。あなたの悩みに寄り添いながら終活をサポートいたします。
「墓じまいの悩みが解決したかと思ったら、相続面でもどうすれば良いかわからないところがある」など、終活には広範囲の知識が必要です。どうかひとりで悩まず、まずはご相談ください。
おわりに
「無縁仏になりたくない」あるいは「先祖のお墓が無縁仏になってしまったら申し訳が立たない」と考えるのであれば、お墓を継続させるために親族を頼るか、墓じまいを選択しましょう。「墓じまい」というと寂しいイメージがありますが、永代供養など「お墓を無縁にしてしまわないための手段」と捉えれば、積極的に手続きを進められます。
また、どのタイミングで墓じまいをするかは子世代ともじっくり話し合うのがおすすめです。もしかしたら子世代は「先祖代々のお墓がなくなるのは悲しい」「自分の代で責任を持って管理したい」と考えているかもしれません。墓じまいは多大な労力を伴うものです。子世代さえ了解すれば、ご自身が存命中は親族を説得することなく、お墓の管理費用を支払うだけで済みます。ぜひ、本音で話し合ってみてください。