葬儀・葬送関連の言葉として、「祥月命日」というものがあります。これは故人の亡くなった月と日を示す言葉であり、故人の追悼を考えるうえで大切な日です。
今回はこの祥月命日を取り上げて、「そもそも祥月命日とは何か」「祥月命日に行うこと」「祥月命日のお供え物」「祥月命日の香典」などについて解説していきます。
この記事を読んでわかること
故人が亡くなった月と日を示す言葉として、「祥月命日」があります。祥月命日にはさまざまな追悼行事が行われます。たとえば、年忌法要などがこれに当たります。故人を悼み、故人を思い、故人を思いだすための日として、「祥月命日」があるのです。ここではまずは、祥月命日とは何かを詳しく解説したうえで、祥月命日に行うべきこと、祥月命日にお供えする物とその選び方や注意点、祥月命日の香典をどう考えるかなどについて解説していきます。
祥月命日の基本情報
ここでは、まずは祥月命日とは何かについてから解説していきます。
そもそも祥月命日とは?
「祥月命日」は、「しょうつきめいにち」と読みます。これは、故人が亡くなった月と、亡くなった日を示す言葉です。たとえば2021年の7月30日に亡くなった場合は、この「7月30日」がその方の祥月命日となります。
仏教では故人に関する追悼行事の年忌法要は、この祥月命日を基本として考えられます。
月命日と祥月命日の違いについて
祥月命日と似た言葉として、「月命日(つきめいにち)」があります。月命日とは、「その方が亡くなった日」を示す言葉です。たとえば上の例ならば、30日が「月命日」とされます。
月命日を選んで毎月追悼行事を行うケースは非常にまれですが、「少し離れたところに住んでいるが、最初の1年は月命日には必ず実家に帰って手を合わせている」などのように、「追悼行事」というかたちでなくても個々でこの日に向き合っている方はいます。
祥月命日の由来について
さて、実はこの祥月命日はかつては「正月命日」と呼ばれていました。正月命日の読み方は祥月命日と同じで、「しょうつきめいにち」と読みます。しかしこの「正月」という言葉は、1月の「正月(しょうがつ)」を示す言葉と同じ字面であるため、しばしば勘違いされていました。
そのため、時代が現代に近づくに従い、正月の「正」という字に祥月の「祥」をあてるようになってきました。
現在では、「しょうつきめいにち」は広く「祥月命日」と表記され、「正月命日」とされることはほとんどありません。
この記事でも祥月命日と表記していきます。また、特段の事情がない限り、信仰しているのは仏教であるとして解説していきます。
祥月命日に行う供養とは?
ここからは、「祥月命日に行う法要」について解説していきます。
法要とは、故人を思い、故人を悼み、故人のために行う追善供養のことをいいます。これは仏教において広く見られる宗教的儀式ですが、浄土真宗の場合のみ解釈が異なります。
浄土真宗は「念仏を唱えて仏様を信じれば、それだけですぐに成仏できる」と考えます。そのため、追善供養の考え方はありません。ただ浄土真宗でも、「祥月命日の法要は、仏様に感謝するためのもの」と考えていて、祥月命日の法要自体は否定していません。
そのためここでは、宗派の別なく、「祥月命日の法要」について取り上げていきます。
年忌の祥月命日には法要を行う
仏教では、1・3・7・13・23・27・33・50年目などの節目の年のタイミングで、故人の祥月命日に合わせて特別な法要である年忌法要を行います。
なお、「法要はここまでとして、これ以降は法要はしません」とすることを「弔い上げ」といいます。
かつて弔い上げは三十三回忌あるいは五十回忌を基本としていましたが、今では十三回忌などのタイミングで行うこともあります。
また現在は、「23年目は省く」などのように、個々の判断で年忌法要をパスすることもあります。加えて地域や宗派による違いも見られるため、「必ずこのタイミングで行う」というものではありません。
また法要は祥月命日に行うことを基本としますが、祥月命日が平日の場合は、その前の土日に行うのが現在では一般的です。なお祥月命日の法要は、前倒しにすることはあっても後ろ倒しにすることは避けた方が良いでしょう。
仏壇やお墓にお参りして、お供えをする
祥月命日は、年忌法要にあたる年でも、またあたらない年でも、仏壇やお墓に丁寧にお参りをすると良いでしょう。
手を合わせることはもちろん、仏壇やお墓の掃除をこの祥月命日にするのも良いものです。また、それらが終わったら、お供えもしましょう。
「お供え物」については後述します。
卒塔婆を立てることもある
「卒塔婆」とは、サンスクリット語の「ストゥーパ(お釈迦様の遺骨を納めた塔のこと)」から来た言葉です。
これもまた追善供養のうちのひとつなのですが、同時に仏様への手紙という側面も持っています。ちなみにお墓参りできないときでも、寺院に頼めばこれを作ってくれます。
なお、浄土真宗の場合は、「追善供養」という考え方自体がないので、卒塔婆を用いることは基本的にはありません。
祥月命日法要(年忌法要)の御布施
祥月命日に僧侶に来てもらう場合は、御布施を払う必要があります。
その相場と渡し方について解説していきます。
御布施の相場
「御布施は心を表すものであるから、明確な決まりはない」とされてはいるものの、やはり「相場」はあります。
一周忌や三回忌などの年忌法要の場合の御布施は30,000円~50,000円程度が相場です。
今では、年忌法要でない年でも僧侶に読経してもらうという家庭はそれほど多くはないかと思われますが、その場合は10,000円~30,000円程度をお包みします。
なお、車で移動することが必要な寺院の僧侶に依頼する場合は、別途御車代が必要です。
- 寺院に赴き、祥月命日の法要を行ってもらう
- 喪家が送迎をする
- 寺院と会場(喪家など)が徒歩圏内
上記の場合は、御車代は必要ありません。
また、年忌法要で食事の席を設ける予定ですが、僧侶が参加しないという場合は「御膳料」として食事にかかる料金(5,000円~20,000円)を包みます。
御布施の渡し方
祥月命日の法要のときの御布施は、表書きに「御布施」と書きます。法要なので、薄墨ではなく濃墨を使います。
「水引はいるのか、いらないのか」は専門家の間でも見解に違いがありますが、「水引なしで、白い封筒に入れる」というやり方の方が主流です。迷った場合は無地の封筒を選ぶと良いでしょう。
御布施は、ふくさに包んで持ち歩きます。
法要の始まる前あるいは終わった後にお渡しすると良いでしょう。
法要が始まる前に渡す場合は「本日は〇〇の〇回忌法要のためにご足労賜りまして誠にありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします」と挨拶してお渡しします。終わった後に渡す場合も同じように述べ、最後に「本日はありがとうございました」とすると良いでしょう。
祥月命日法要(年忌法要)の香典
ここからは、祥月命日法要に関する「香典」について解説していきます。
香典の相場
祥月命日に法要が行われる場合は、参列者は香典を包みます。香典の表書きは「御仏前」とするのが一般的です。
また、「御供物料」でも構いません。相場は5,000円~50,000円です。関係性や会食の有無によって異なりますが、「会食がある場合は、プラス20,000円程度」と考えておきましょう。
水引は、黒白あるいは双銀を使うのが一般的です。ただし弔い上げの場合のみ、「ここまできちんと供養をしてきました」という意味で、紅白の結び切りの水引を選ぶ場合もあります。
香典の渡し方
香典は必ずふくさに包んで持っていきます。香典は、むき出しで運ぶことはしません。ふくさの色は寒色系という決まりがありますが、紫色でも構いません。紫色は慶弔どちらでも使えますから、新しく買い求めるのであれば紫色のものが良いでしょう。
年忌法要の場合は葬儀のときとは異なり、喪家以外の方が受付に立つことはほとんどありませんから、お渡しする場合は喪家(とりわけ施主)に直接渡すと良いでしょう。
お供え物を選ぶ際に注意したいこと
祥月命日の法要に招かれた場合、お供え物を持っていくこともあるでしょう。
その場合に注意したいことについて解説していきます。
重さや大きさに注意
重過ぎる、大き過ぎるものはご家族の負担になってしまうので避けるべきです。
特に自宅以外での法要の場合で、自家用車を用いない場合は持ち帰るときが大変なので控えましょう。
肉・魚・酒はNG
肉・魚などは殺生を連想させるため、仏教の法要ではNGとされています。年忌法要の場合はすでに忌明けを迎えていますが、お供え物として出すことは控えるべきです。果物やお菓子などが望ましいので、これらを選ぶようにしましょう。
お酒は考え方が分かれる
「祥月命日の法要に、お酒はOKかNGか?」は専門家によって判断が分かれます。故人が好きだった場合はこれをお供え物にするのも良いとする一方で、仏教徒は酒はたしなまないとする説もあります。
また、「残されたご家族がお酒を好きかどうか分からないからNG」とする説もあります。
このどれが正しいかは判断ができないところですが、迷った場合は避けるようにしましょう。
日持ちする物かどうかに注意
祥月命日の法要では、喪家はたくさんのお供え物を受け取ることになります。そのため、日持ちするものを選ぶのが原則です。
またお菓子の場合は、個別包装のものが喜ばれます。
簡易包装はNG
お供え物には必ず包装することがマナーです。
表書きは「御供物」とし、黒白の水引をかけるのが一般的です。
お供えに適した花とは?
祥月命日法要に限ったことではありませんが、葬送の場では「花」をよく用います。
ここでは花をお供えする理由や花の選び方、造花の可否について見ていきましょう。
花を供える理由
花は、故人にその香りを届け、故人に寄り添うために捧げるものです。
また、足を運んでくれる方の心を清らかにさせるためとも解釈されています。
祥月命日法要では仏壇とお墓にお参りすることが多いと思われますから、2箇所分のお花を用意しましょう。
どんな花を選べば良い?
仏教の葬送儀礼では、特に菊が「お供えの花」として愛されています。ただし菊以外でも、淡い色で香りが強くない花ならば良いとされています。また、花粉が落ちすぎるものは避けます。
一般的にばらなどの棘のある花や華やかすぎる花は避けるべきとされていますが、故人がこれを愛していた場合で、かつ喪家側がお供えする分には問題視されることはないでしょう。
造花は控えたほうが良さそう
現在は「造花で作った葬儀用の祭壇」なども出てきていますが、一般的に造花は葬送の場では控えるべきとされています。
現在は年中花が手に入る環境ですから生花をお供えして、造花はやめておくのが無難です。
お困りのことがあれば「セゾンの相続」へご相談ください
故人の祥月命日は、その人を悼むうえで重要なものです。ただ、祥月命日法要を行う場合は、不明な点や不安な点も多く出てくることでしょう。その場合は、「セゾンの相続 お葬式サポート」へご相談ください。経験豊富な提携専門家のご紹介も可能ですので、さまざまな悩みにお応えします。
おわりに
「祥月命日」とは、故人の旅立った月日を表す言葉です。この日には仏壇やお墓に丁寧にお参りをしたり、お供え物をしたりします。
また1周忌や3回忌などの区切りの年では、「祥月命日の法要」を営む家庭が多いといえます。この場合喪家側は寺院に対して御布施を渡し、参列者は喪家に香典をお渡しすることになります。
お供え物は、肉や魚、簡易包装の物はNGです。花は、淡い色で香りの弱いものを選びましょう。