ますます加速する高齢化社会において、急増しているのが高齢者になってから離婚をするシニア離婚です。なぜ長年連れ添った夫婦同士が高齢に差し掛かってから離婚をするのでしょうか。このコラムでは、シニア離婚のきっかけやメリット、円満にシニア離婚を成立させるためのポイントなどについて解説します。
シニアでの熟年離婚、なぜ起こる?そのきっかけとは?
高齢期に差し掛かってから起こるシニア離婚は、なぜその年齢になって離婚という選択肢を取るのでしょうか。離婚するほど一緒に居たくない、一緒に暮らす必然性がない場合、もっと早い段階で離婚すれば良いのでは、と疑問に思う方もいるでしょう。では、高齢期の夫婦はなぜシニア世代になって離婚するのでしょうか。
子どもの自立を迎えて
1つ目は子どもの自立です。離婚したくても離婚しない原因の一つに子どもの存在があります。夫婦であれば、夫婦共同の育児、あるいは夫が働いて生活費を稼ぎ、女性が専業主婦として子育てに専念できますが、夫婦がまだ若い段階で離婚をすると、どちらかが親権を持つことになります。
離婚後、すぐに再婚相手が見つかれば問題ありませんが、シングルファーザー・マザーとして、生活費の捻出・育児の両方を背負うことは、離婚前の何倍も負担がかかる生活になるでしょう。ひとりでの子育てで困窮してしまい、生活が破綻する例も少なくありません。
また、子どもが小さいときに離婚してしまうと、子どもにとってトラウマになってしまうこともありますが、子どもが大人になっていれば、親が離婚するといっても両親ふたりの気持ちを把握できるでしょう。
退職を迎えて
2つ目は退職金が入るタイミングを迎えるときです。離婚したいけどできない原因は、離婚後の経済面の心配です。特に長年にわたって専業主婦だった方は、離婚後の仕事先を見つけないといけませんが、高齢だとなかなか仕事を見つけるのは困難です。
しかし、配偶者が定年退職を迎えて退職金をもらった場合、そのときに離婚をすればそれを財産分与として受け取り、まとまった金額を得ることが可能です。そのため、退職金がもらえるまで離婚を我慢して、退職金が出たタイミングで離婚を切り出すパターンは多いといえるでしょう。
年金受給を迎えて
3つ目は年金受給のタイミングです。離婚時に年金分割を請求できます。夫が支払い続けた保険料の一部は、離婚時に請求をすれば分割されて配偶者にも受給できる仕組みになっています。これにより通常より多く年金が受給できるので、離婚をしてもある程度は生活が保障されるでしょう。
第二の人生の目処が立ったから
また、離婚前から離婚後の第二の人生生活を考慮して着々と準備をしている例もあります。配偶者の知らないところで資格の勉強をしている、夫以外の恋人と良い関係を築くなどをしている方もいるでしょう。そして、夫が退職したタイミングで離婚を切り出し、そのままスムーズに第二の人生に移行するという流れは、決して珍しくないシニア離婚のパターンです。数年、あるいは10数年かけてきっちりと計画を立てて、満を持してシニア離婚を決行する方もいるようです。
シニア離婚のメリット
シニアと呼ばれる年齢になってからの離婚はメリットがあるのか、と疑問に思っている方もいることでしょう。健康な若いときと比べてフィジカル面に衰えが来る年齢になったら、夫婦で支え合って生きていった方が無難なのではないか、と思う方もいると思います。
そのような考えがあるなかで、シニア離婚という生き方を選ぶ方が決して少なくないのは、何かしらメリットがあるという証拠です。果たしてシニア離婚には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
自分の人生を満喫できる
独身時代・結婚して家庭を持ってからの時代というこの2つの違いは、自分のために生きる・人のために生きることの目的の違いも一つあるといわれています。独身時代であれば自分で稼いだ収入はすべて自分のために使えます。また独り身のひとり暮らしであれば、すべて自分ルールで家でどんな過ごし方をしようが、何時に帰宅しようが誰も文句をいいません。
しかし、結婚して配偶者との共同生活になれば、自分ルールは通用しなくなります。また子どもの教育費、家のローンなど、家族のため、子どものためというシフトチェンジをしなくてはいけません。家庭を持つようになってから、それ以前に個人で楽しんでいた趣味ができなくなったという例もあります。
しかし、子どもの自立、家のローン完済などを達成すれば、それまでの負担はなくなりある程度の余裕が生まれ、残りの人生は自分の人生を謳歌に使いたいと思うのもあるでしょう。それまで我慢してできなかった趣味に打ち込んだり、新たな出会いによって数十年ぶりに恋愛をしたりと、離婚することによって新たな人生を満喫できます。
配偶者および配偶者の親の介護をしなくて済む
夫婦によっては配偶者の親が要介護のために、介護に追われるケースもあります。また、高齢に差し掛かって配偶者のどちらかが要介護になる可能性もあるでしょう。この場合、夫婦生活を続けていたら介護にかかりっきりになり心身ともに疲弊してしまいますが、シニア離婚をすればそのような負担から解放されます。
親戚付き合い、人付き合いをしなくて良い
離婚のメリットは、人間関係も清算できる点です。結婚をして生じるのは親戚の増加ですが、親戚のなかに苦手なタイプがいても、親戚である以上付き合いは避けられません。そのような付き合いを苦痛に感じている方もいるでしょう。しかしシニア離婚をすれば、夫婦の縁だけでなく親族ともその関係が絶たれるので、親戚付き合いをする必要がなくなり解放されます。
シニア離婚を円満に成立させるためのポイントとは
シニアに限らず離婚したい意思を切り出した際、配偶者がそれを拒否するパターンもあります。この場合、話し合いをしても合意が成立せず、その結果、裁判に発展することも珍しくありません。裁判を行うと時間もかかり、一連の手続きを弁護士に依頼したら費用もかかります。
離婚というものは、ただでさえあらゆる手続きを行う必要があるため手間がかかるものです。それに加えて裁判まで行うと、さらに大変な思いをして心身ともに疲弊するでしょう。では、少しでも苦労を軽減して円滑に離婚を成立させるには、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか。
説得力のある離婚の理由を考えておく
シニア離婚を成立させてそれぞれが新しい人生を歩むことが、どれだけ魅力的であるか、事前にまとめておくことが円満なシニア離婚の秘訣です。離婚において、夫婦ふたりの話し合いだけで離婚成立の合意に至る方法は協議離婚と呼ばれています。この協議離婚が成立しないとその次の手段となるのが、家庭裁判所を介した調停離婚・裁判離婚です。
裁判所を介した離婚は費用と時間がかかるので、なんとか協議離婚でシニア離婚を円満にまとめなくてはいけません。そのためにはいかにシニア離婚がお互いにとってメリットがあるものなのか、相手が納得してくれる情報を提供する必要があります。
夫婦を継続するより離婚して別々の人生を送る方がどれだけ今後メリットがあるのか、じっくりとそのメリットを配偶者に伝えましょう。また、別々に暮らす際、経済面の負担をどう処理していくか、財産分与や年金分割などの制度もわかりやすく伝えることが大事です。その際は離婚時の手続きなど一連の流れなども説明しましょう。
親戚の人にもしっかりと話をしておく
円満離婚をするためには、そのけじめとして親戚などにも報告しておくと良いでしょう。親戚や知り合いに内緒でいきなり離婚を実施すると、あまり良い印象にはならないでしょう。別に離婚は決して悪いことではないので、堂々と報告をすることが必要です。
報告する際は、配偶者にも伝えたとおり、なぜ離婚をするのか、そのメリットは何かということを、しっかりと伝えなくてはいけません。それをしないとずっと夫婦仲が悪くて嫌な別れ方をしたと誤解を受けます。あくまで円満離婚でお互いの合意で離婚することを強調することが大事です。
また、友人、知り合いなどへの報告も忘れないようにしましょう。シニア離婚の成立後は以前の人間関係を捨てて新たな人生を歩むという方でしたら、親戚や友人への報告はしなくても良いですが、そこまで縁を切る考えではない場合、最低限の礼儀として報告だけは済ませておきましょう。
すぐに決めずに時間をかけて進める
繰り返しますが、シニア離婚をする場合、あらゆる手続きや準備が必要なため、時間がかかります。離婚後の仕事に備えて資格取得などを検討している場合、さらに時間を費やすことになるでしょう。
なかにはシニア離婚を少しでも早く成立させたいからといって、あらゆる準備を一度にやってしまおうという方もいますが、一つずつ丁寧に進めていきましょう。なくなります。
シニア離婚を成立させるためには何をやるべきか、紙に書くなどして整理をして、一つひとつを時間をかけて処理するようにしましょう。そうすれば負担なく円満離婚が成立します。
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おわりに
シニア離婚は決して珍しいものではありません。シニア離婚は夫婦関係という長年の束縛から解放されて自由になれる、シニアの新しい生き方の一つです。離婚した場合、メリット・デメリットどちらが大きいかを考慮して、離婚するかどうか決めましょう。
また、シニア離婚を成立させるためには円満離婚を目指さないといけません。離婚が円満にならずにゴタゴタするのは、シニアほどの年齢にとっては心身ともにダメージを受けるでしょう。しっかりと前もって準備をして計画的に離婚を進めることが大事です。
シニア世代になってから可能性が広がるシニア離婚は、高齢化社会の新しい生き方として覚えておいて損はないでしょう。離婚に際して、一時的な費用について必要な場合は、セゾンファンデックスのかんたん安心ローンの活用もおすすめです。