「住宅ローンがあるけど引っ越したい」と考えているものの、そもそもそれができるのか、できる場合にはどのような手順で行えばいいのか疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
住宅ローンが残っている状態での引っ越しは通常の引っ越しと流れが異なります。そこで本記事は、住宅ローンがある状態で引っ越す方法や注意点を解説します。
本記事を読んでいただければ、ご自身の経済状況に合わせた最適な選択ができるでしょう。
この記事を読んでわかること
住宅ローンが残ったままの引っ越しは可能です。しかし、新居を新たに購入するのか、現在の住宅を賃貸に出すのかなどによって方法は異なります。住宅ローン控除の適用を受けている方は、適用除外になる可能性もあるため、各種条件を踏まえて判断しましょう。住宅ローンがある状態で新居を購入するには、ダブルローンや住み替えローンといった選択肢があります。ただし、返済負担が増えることに加え、スケジュール設定が重要になるため、不動産会社や金融機関と相談をしながら進める必要があります。
住宅ローンがあるけど引っ越したい!方法とは?
結論として、住宅ローンが残ったままの引っ越しは可能です。しかし、新居を新たに購入するのか賃貸に出すのかなどによって方法は異なります。本章では住宅ローンがある状態での引っ越し方法を以下の3つに分けて解説します。
- 引っ越しをしても住宅ローンを支払い続ける
- 家を売却して引っ越す
- 賃貸物件にしてご自身は引っ越す
住宅ローンが残っているが自宅を売りたい、引っ越したいという方は、ぜひ参考にしてください。
引っ越しをしても住宅ローンを支払い続ける
前提として、住宅ローンを支払い続ければ家を残したまま引っ越しが可能です。そのため、賃貸物件や実家に住む場合はすぐにでも引っ越しができます。
ただし、賃貸物件に引っ越す場合は住宅ローンと家賃の二重払いになるため、金銭的な負担が生じる点に注意しましょう。また、金融機関によっては住所変更通知などが必要になる場合があります。
家を売却して引っ越す
新たに新居を購入する場合や、賃貸物件に引っ越す場合は、ローンや家賃の二重払いになるため、金銭的な負担が生じます。そのような状態を避けるには、家を売却してから引っ越しましょう。
しかし、家を売却するには住宅ローンの残債を一括返済しなければなりません。住宅ローン残高が売却価格を下回るアンダーローンの場合は売却資金で住宅ローンを完済できますが、住宅ローン残高が売却価格を上回るオーバーローンの場合、自己資金を入れて住宅ローンを完済する必要があります。
自己資金が足りない場合は、親族からの借入や贈与なども検討しましょう。ただし、贈与は金額によっては税金が課される点に注意が必要です。売却後の生活に支障が出ないためにも、全体的な資金計画を立てる必要があります。
自宅を賃貸物件にしてご自身は引っ越す
マイホームを賃貸物件にして引っ越す方法もあります。
- マイホームを手放したくない
- 将来的に戻る可能性がある
- 収益不動産を所有したい
このように考える方は、自宅を賃貸物件にする方法を検討しましょう。しかし、賃貸物件にする場合は住宅ローンを投資用ローンに切り替える必要があります。住宅ローンはご自身が住むためのローンであり、金利が低く設定されているためです。
本来と違う用途で使用する場合は、必ず金融機関に相談しましょう。切り替え手続きを行わずに賃貸として貸し出すと一括返済などのペナルティを受ける恐れがあります。
住宅ローン控除を利用したまま引っ越しできるケースとは
住宅ローンを利用してマイホームを購入する場合、住宅ローン控除の適用を受けている方も多いでしょう。住宅ローン控除は原則として継続して住むことが条件となるため、転居すると住宅ローン控除が適用されなくなります。
しかし、なかには転居しても住宅ローン控除の適用を受けられるケースがあるため、本章で詳しく解説します。
転勤で引っ越しが必要になった場合
住宅購入後に転勤となり、マイホームから引っ越す必要が生じる場合もあります。その場合、納税者本人の単身赴任であれば継続して住宅ローン控除の適用が受けられます。
家族全員で引っ越す場合は住宅ローン控除の適用がなくなるため注意しましょう。なお、家族全員で引っ越した場合も、マイホームに再び戻ってきた際に住宅ローン控除の残存期間があれば、再度適用されます。
転地療養が必要になった場合
転勤だけでなく、転地療養が必要になった場合も継続して住宅ローン控除が適用されます。
ただし、転勤同様に納税者本人が転地療養し、家族は継続してマイホームで生活する場合に限られます。
住宅ローンを残して新たにローンは組める?
自己資金が潤沢にある方を除き、住宅の購入では住宅ローンを組むのが一般的です。そのため、新たに住宅を購入する場合、住宅ローンを組みたいと考えている方が多いでしょう。
そこで本章では、現在の住宅ローンを残した状態で新たにローンを組む方法を紹介します。具体的には以下のとおりです。
- ダブルローンを利用する
- 住み替えローンを利用する
順番に見ていきましょう。
ダブルローンを利用する
ダブルローンとは、マイホームの住宅ローンを支払っている状態で新居の住宅ローンを新たに組むことを指します。このように2軒分の住宅ローンを組むことは可能ですが、返済負担が重くなるため、金融機関の審査が厳しい傾向にあります。
具体的にチェックされるポイントは返済比率です。返済比率とは年収に占めるローン返済額の割合を指します。金融機関によっても異なりますが、返済比率は30〜35%で設定されるのが一般的です。
年収500万円の方であれば、年間の返済額を150〜175万円以内に収める計算となります。1つ目の住宅ローンで返済比率が上限に近い場合、ダブルローンは難しいと考えましょう。
なお、2つのローンを返済し続けるのは困難であるため、先に新居を購入し、後から旧居を売却する際に用いられるのが一般的です。
住み替えローンを利用する
住み替えローンとは、新居の購入時に現在の住宅ローン残高を上乗せしてローンを組む方法です。
例えば、旧居の売却価格が2,000万円で住宅ローン残高が2,300万円の場合、新たに組む住宅ローンに差額の300万円が上乗せされます。
住み替えローンを利用することで、オーバーローンの場合でも引っ越しができます。
住宅ローンのことはプロに相談する
住宅ローンがある状態での引っ越しは資金計画が重要です。ダブルローンや住み替えローンなど、ご自身に合った手段を考えなければなりません。
しかし、どの方法が最も適しているのか判断するのは難しいでしょう。そこでおすすめなのがiYellの住宅ローンの相談窓口での相談です。
クレディセゾングループが提携する「iYell」は、国内100以上の金融機関と提携しており、お客様の最適なご提案が可能です。専門の知識を持ったプロのローンアドバイザーに無料で相談したい方は、ぜひiYellの「住宅ローンの相談窓口」をご利用ください。
ダブルローンのメリット・デメリット
住宅ローンがある状態でもダブルローンを組むことで、新居の購入・引っ越しができます。
本章ではダブルローンのメリット・デメリットを詳しく解説します。
メリット
ダブルローンのメリットは以下のとおりです。
- ご自身のタイミングで新居を購入できる
- 空き家の状態で売却できる
ダブルローンを組む場合、新居購入のタイミングに縛られることはありません。通常の住み替えの場合は、旧居を売却して得た資金をもとに新居を購入するため、売却ありきの住み替えになります。ダブルローンであれば気に入った新居を見つけた際にすぐに購入できます。
また、旧居を空き家の状態で売却可能です。通常の売却は居住しながらの売却となるため、内覧のたびに部屋を片付けたり、家にいなければならなかったりとストレスを感じてしまう方も多い傾向にあります。
一方、空室での売却は鍵を不動産会社に預けておくことで、内覧時の手間がかかりません。購入検討者も空室のほうが部屋全体を確認できることに加え、売主に気を遣うことなくゆっくりと内覧できるのが特徴です。
デメリット
ダブルローンのデメリットは以下のとおりです。
- 審査基準が厳しい
- 返済の負担が増える
- 旧居の住宅ローン控除が適用されなくなる
先述のとおり、ダブルローンは返済負担が重くなるため金融機関の審査が厳しくなります。返済比率に余裕のある方でなければ借り入れをするのは難しいでしょう。
なお、住宅ローン控除は住んでいる家に適用されるものであるため、旧居の住宅ローン控除は適用されなくなります。住宅ローン控除をダブルで利用できる訳ではない点に注意しましょう。
住み替えローンのメリット・デメリット
ダブルローンを組むのが難しい場合は、住み替えローンを検討しましょう。
本章では住み替えローンのメリット・デメリットを詳しく解説します。
メリット
住み替えローンのメリットは以下のとおりです。
- 自己資金が少なくても新居を購入できる
- ダブルローンよりは返済負担を抑えられる
オーバーローンの状態で売却するには、自己資金を入れて住宅ローンを完済しなければなりません。しかし、住み替えローンでは足りない部分を上乗せして住宅ローンを組めるため、自己資金が不足している方でも住み替えられます。
また、2軒分の住宅ローンを組むダブルローンに比べて、部分的に上乗せして借りる住み替えローンは返済負担を抑えやすい点もメリットです。
デメリット
住み替えローンのデメリットは以下のとおりです。
- 購入と売却を同時に行わなければならない
- 金利が高い
住み替えローンは旧居の残債を新居の住宅ローンで完済する仕組みであるため、購入と売却を同じ日に行う必要があります。そのため、買主との諸条件の調整やスケジュールの点で慌ただしくなる傾向にあります。
事前の準備が重要であるため、不動産会社と相談しながら住み替えの計画を立てましょう。
また、通常の住宅ローンよりも金利が高くなる傾向にあります。金融機関やタイミングによっても異なるため、複数の住み替えローンを比較検討して判断しましょう。
住宅ローンが残っている場合に引っ越す際の流れ
住宅ローンが残っている状態で引っ越す流れは以下のとおりです。
- 自宅を査定する
- 売却するか賃貸にするか検討する
- 銀行に相談する
- 売却や賃貸の手続きに入る
- 売却の場合は住宅ローンを完済後、抵当権を抹消する
順番に見ていきましょう。
自宅を査定する
マイホームの売却価格が住宅ローン残高を上回るのか下回るのかで今後の動きが異なります。
オーバーローンの場合は自己資金を入れて住宅ローンを完済する、住み替えローンを利用するなど、方法を考えなければなりません。今後の方向性を定めるためにもまずは査定を依頼しましょう。
なお、査定は複数の不動産会社に依頼するのがおすすめです。査定価格は不動産会社によって異なるため、相場を把握するためにも複数社に依頼しましょう。
売却するか賃貸にするか検討する
査定を依頼してマイホームの価格を把握したうえで、売却するか賃貸に出すかを検討しましょう。
マイホームの価格が住宅ローン残高を上回っていれば、売却によってまとまった資金を得られます。一方、賃貸であれば収益不動産となるため毎月安定的な収入を得られる可能性があります。
遠方に引っ越す場合は管理の手間なども踏まえて考えましょう。
金融機関に相談する
売却、賃貸いずれにしても、住宅ローンの関係上金融機関に相談する必要があります。
売却する場合は住宅ローン完済のための手続きが必要になるため、必要書類を受け取りましょう。賃貸に出す場合は投資用ローンへの変更など、各種手続きが必要になるため、金融機関の案内に沿って手続きを進める必要があります。
売却や賃貸の手続きに入る
金融機関に相談をして許可が出れば、売却や賃貸の手続きに入ります。
査定時に相談した不動産会社に具体的な手続きの方法を案内してもらいながら進めていきましょう。なお、売却の場合はすぐに買い手が見つかるとは限りません。
一般的に引き渡しまで含めると3ヵ月〜半年程度はかかるため、余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。
売却の場合は住宅ローンを完済後、抵当権を抹消する
売却する場合は、住宅ローン完済後に抵当権を抹消します。
自己資金がある場合は事前の完済・抹消も可能ですが、買主から受領する売買代金で完済するのが一般的です。
そのため、不動産の引き渡し時には以下の手続きをまとめて行います。
- 売買代金(残代金)の受領
- 住宅ローンの完済
- 抵当権の抹消
- 所有権移転登記
なお、手続きは金融機関や司法書士が行うため、引き渡し日当日に売主が行うことはほとんどありません。売主は事前の手続きが重要になるため、不動産会社の案内に従って必要書類などを準備しましょう。
住宅ローンを残したまま引っ越す際の注意点
住宅ローンが残っている状態で引っ越す場合は、以下の点に注意しましょう。
- 住宅ローンを借りている金融機関に秘密にしない
- 住宅ローン控除は使えなくなる
- 住宅ローンの残債を確認する
- 売却が先か購入が先か決める
それぞれについて解説します。
住宅ローンを借りている金融機関に秘密にしない
住宅ローンが残っている状態で引っ越す場合は、住宅ローンを借りている金融機関に相談しましょう。
金融機関によって住所変更届などの提出を求められる場合があります。また、無断で賃貸に出すなど、ルール違反のことを行うと一括返済を求められる恐れがあります。
住宅ローン控除は使えなくなる
住宅ローン控除は住んでいる家に適用されるため、単身赴任などの特別な事情を除き、引っ越すと適用されなくなります。
これまでの控除が適用されなくなり、所得税や住民税が増える恐れがあるため注意しましょう。
住宅ローンの残債を確認する
ダブルローンを組んで新居に引っ越す方や、賃貸物件に引っ越す方は住宅ローンの残債を確認しておきましょう。
ダブルローンや家賃の支払いで返済負担が増えるため、繰り上げ返済などを検討するのがおすすめです。今後のライフプランやライフイベントを踏まえて長期的な資金計画を立てましょう。
売却が先か購入が先か決める
住宅ローンが残っている場合、売却と購入のどちらから進めるかを決める必要があります。
売り先行であれば売却に時間をかけられるため、高値での売却が期待できます。急いで売る必要がないため、次の家もじっくりと選べるでしょう。また、購入に充てられる資金が明確になるため、今後の資金計画を立てやすいのが特徴です。
一方、買い先行は仮住まいなどをすることなく新居へ引っ越せます。ただし、二重ローンになる場合もあるため、資金の潤沢さが求められると考えましょう。
おわりに
住宅ローンが残ったままの引っ越しは可能です。しかし、新居を新たに購入するのか、旧居は賃貸に出すのかなどによって方法は異なります。
まずは、マイホームを売却するのか、将来的に戻ってくることを踏まえて残しておくのかを考えましょう。その後新居の購入や賃貸物件への入居など、かかるべき費用をもとに資金計画を立てる必要があります。
売却や購入はタイミングも重要であるため、不動産会社と相談をしながらご自身に合ったプランを考えましょう。