ライフスタイルの変化や宗教への帰属意識の変化、また埋葬方法の多様化などにより、従来のような「先祖代々のお墓」の管理を難しく感じる方が増えるようになりました。
ここではそんな方のために、「そもそも『お墓の管理』とは何か」「お墓を管理できなくなったらどうなるのか」「お墓を管理できなくなった場合の対処方法」「墓じまいにかかる費用」について解説していきます。
「そもそも『お墓の管理』とはどのようなことを指すのか、なぜ必要なのか」がわかります。また、「お墓を管理する方がいなくなったらどうなるのか」「お墓を管理できなくなった場合はどうすれば良いのか」についても、併せて知ることが可能です。加えて、「それでは実際に墓じまいをするにはどうしたら良いのか」「墓じまいの費用」も解説していきましょう。
※本稿では、「改葬後の埋葬方法」についての詳細は触れません。
※先祖代々のお墓は、菩提寺にあるものとします。
そもそもお墓の管理とは?
「お墓を管理できなくなった場合にはどうすれば良いのか」について解説する前に、まずは「そもそも『お墓の管理』とは何か」について解説していきます。
お墓の後継者とは誰か、その決め方は?
先祖代々受け継いできたお墓や仏壇は、誰かが手入れをしないと荒れ果ててしまうものです。
またこれらはその性質上、分割して相続することはできません。そのため、誰か特定のひとりが面倒を見る役目を引き受けることになります。
かつてこの役目は、「本家の長男」が引き受けることが基本となっていました。しかし現在は、遺言書で指定された方や、家族間の話し合いで決めることが多くなっています。
お墓の維持や管理が必要になる
お墓や仏壇が、放置しておくと荒れ果ててしまうものであることは、すでに述べたとおりです。特にお墓は屋外にあるため、手入れや管理が必要となります。
放置してしまうと、ご自身たちの墓所が荒れるだけでなく、周りの墓所にも迷惑をかけてしまうからです。
費用負担や寺院との交流
先祖代々のお墓が菩提寺にある場合、その菩提寺との交流が求められたり、年会費を納めたりする必要が生じます。
また、場合によっては、「寄進」として、菩提寺自体が修繕などを行う場合はその費用を負担する必要が出てくることもあるでしょう。
お墓の管理には、時間や手間、さらには金銭的な負担も生じます。そのため、「親族全員、宗教への帰属意識が薄い」「家族・親族間での交流がそれほど積極的ではない」などの場合は、後継者の役目を押しつけ合いが始まることもあります。
しかし、「後継者がいないから」と放置しておくと、最悪のケースでは「お墓の撤去」に至る可能性があります(後述します)。
お墓の管理ができず放置したらどうなる?
「誰も後継者になりたがらないから」「子どもたち全員が遠方に住んでいて、誰もお墓を管理できないから」「そもそも菩提寺と関係を持ちたいとは思っていないから」などの理由で、お墓の後継者がいなくなった場合、どのようになるのでしょうか。
それについて解説していきます。
無縁墓になる
後継者が誰もおらず(あるいは誰もなりたがらず)お墓を放置しておくと、そのお墓は管理する方のいない荒れ果てた無縁墓となってしまいます。
無縁墓となった場合、先祖代々の墓所に雑草が生えることはもちろん、その雑草の種が他の墓所に飛んで行って迷惑をかける可能性が高いです。
また、墓石は長い年月に耐えられるようになってはいるものの、時間の経過とともに少しずつ劣化します。加えて屋外にあるため、自然災害の影響を受けやすいといえます。その結果として、お墓が破損したり、倒壊したりする場合があるのです。
管理料を滞納すると整理される
無縁墓になった場合でも、すぐにお墓が取り壊されるわけではありません。
そのお墓がある菩提寺はまずはそのお墓の持ち主であるご家族・ご親族に連絡を取ろうとしますし、その段階で管理料を支払い、手入れに赴けば大きな問題は起きないと考えられます。
しかしこの連絡が届かなかったり、届いても無視したりしていると、寺院側は官報を使ってこれを告知します。また、お墓にも立札を立てて、「管理費用を払うように」と呼びかけを行います。
それでもなお、これを無視していると、寺院側によって墓石を撤去・墓所の没収が行われるのです。墓所は「買った場所」ではなく、「使うことを許可された場所」であるためです。ちなみにこのようにして没収された墓所は、他の方に貸し出すことが可能になります。
このような措置が行われるまでの猶予期間は寺院によって異なりますが、5年程度がひとつの目安になるでしょう。
お墓の管理ができない場合の対処法
上記のように、「寺院による墓所の整理」を避けるためには、「お墓の管理ができない場合(子どもがいない、全員遠方に住んでいる、信仰している宗教が違うなど)の対処方法」について検討しなければなりません。
その場合の選択肢として出てくるのが、「墓じまいをしてから改葬する」というやり方です。
「墓じまい」とは、それまで使っていたお墓からご遺骨を取り出し、お墓を取り壊すことです。墓じまいのやり方や流れは後述しますが、正規の手続きを踏むことで、他の場所にご遺骨を移す「改葬」ができるようになります。
改葬先にはいくつかの選択肢があるのでご紹介しましょう。
「結婚して引っ越したが、その土地で長く暮らしていくつもりだ」ということならば、ご自身たち用にお墓を買って、そこに取り出したご遺骨を納める方法があります。
また、合葬という形で他の方のご遺骨と一緒に埋葬しても構いませんし、しばらくの間は家族だけで眠り、その後に合葬される形式を取る永代供養墓を選んでも良いでしょう。
自然を愛している方ならば、海洋葬や樹木葬などの自然葬を選ぶのもひとつの方法です。また、全天候型の納骨堂にご遺骨を納める方もいます。
なお、取り出したご遺骨を適切ではない方法で処分してしまうと、法律に違反すると判断される場合もあるので注意が必要です。
墓じまいの流れ
「管理が難しいので、墓じまいをする」と決めた場合の流れについて解説していきます。
家族や親族と話し合う
墓じまいを行う前に、まずは墓じまいを考えていることをご家族やご親族と話し合いましょう。
もしかしたら、お墓を継ぎたいという方が出てくるかもしれません。また、「墓じまいを行うこと自体には賛成だが、埋葬方法に希望がある」という方がいる可能性もあります。
葬儀や埋葬などは、一度行ってしまうとやり直しがきかない(あるいはやり直すことが非常に難しい)ものです。また、人それぞれで考え方が異なるうえ、正解があるものでもありません。全員が納得できるように、しっかりと話し合うことが重要です。
遺骨の移転先を探す
日本には、「火葬後、○年以内に埋葬しなければならない」という法律はありません。そのため、「お墓を買うためのお金が貯まるまで、手元供養を行う」「ご自身の気持ちに整理がつくまで、家で一緒に過ごす」などの選択が可能です。
しかし改葬する場合は、「移転先」をしっかり定めていないと墓じまいを行うことができません。そのため、墓じまいに先立ち、新しい受け入れ先を確保しておきましょう。これが決定していないと、行政手続き(後述します)ができないのです。
寺院に連絡する
墓じまいをする方向でご家族・ご親族の気持ちが固まり、ご遺骨の移転先も決まったのなら、現在のお墓がある寺院に連絡をしましょう。
行政手続きを行う
改葬のためには行政手続きを経なければなりません。これは、「現在のお墓がある寺院」と、「移転先の墓地」の両方とやり取りを必要とするので注意が必要です。
A:現在のお墓がある寺院
B:移転先の墓地
として解説していきます。
- Bから「受入証明書」を発行してもらう
この「受入証明書」とは、Bがご遺骨を引き受けることを約束することを証明する書類です。 - Aがある自治体の市役所で「改葬許可申請書」をもらう
Aの住所の自治体から、「改葬許可申請書」をもらいます。これは「改葬を許可してほしい」と申し出るための書類です。 - Aに「埋葬証明書」を発行してもらう
埋葬証明書とは、「たしかにここに現在ご遺骨が埋まっています」と証明するためのものです。なおこれをもらう際には、Aに今までお世話になったお礼を伝えると良いでしょう。 - 3つの書類をそろえて、Aの住所の自治体に提出する
「受入証明書」「改葬許可申請書」「埋葬証明書」の3つをそろえて、Aがある自治体の役所に申請することで、「改葬許可証」が発行されます。 - 「改葬許可証」をBに出す
改葬許可証を受け取ったら、それをBに提出します。こうすることで、ようやく改葬が可能になります。
墓じまいを行う事業者を探す
墓じまいをするに当たっては、もともとあったお墓を取り壊す必要があります。
この撤去作業は石材店でなければできないので、石材店に当たりましょう。なおこのときは、お墓を作った石材店に当たるのがもっとも適当です。
わからない場合は、寺院側に聞くと良いでしょう。
墓じまいを行う
行政手続きと寺院への通知が終わり、石材店とのスケジュールの調整がついたら、決めた日に墓じまいを行いましょう。
なお墓じまいを行う際に、閉眼供養(お墓や仏壇から魂を抜くこと。これにより、お墓が「手を合わせる対象」ではなく、「ただの石」になる)を行う場合もあります。
墓じまいにはいくらかかる?
墓じまいには、お金がかかります。ここでは墓じまいにかかる費用について解説していきましょう。
お墓の解体費用
墓じまいをするに当たって、必ず発生する費用として「お墓の解体費用」が挙げられます。
お墓の解体費用は墓石の大きさや立地条件、お墓のスタイルによって多少異なりますが、おおむね300,000円程度に収まることが多いです。
閉眼供養の費用
お墓を取り壊す時に閉眼供養をお願いするのであれば、そのための御布施が必要になります。
お布施は「心を表すもの」であるため、明確な金額が定められているものではありません。ただ、30,000円~100,000円程度がひとつの相場といえるでしょう。
また、「墓じまいをした後に、移転先で新たにお墓を開く」というケースで、かつ開眼供養(閉眼供養と対になる言葉で、「ただの石」に魂を入れて手を合わせる対象とするための儀式)を行う場合も、同等程度の金額がかかります。
ただしこの閉眼供養や開眼供養は、「必ず行わなければならないもの」ではありません。ご家族の宗教観などによっては、「行わない」という選択肢を取ることも可能です。
離檀料
先祖代々のお墓を取り壊し、菩提寺から離れ、檀家でなくなる場合は「離檀料」が必要になるケースもあります。
離檀料は寺院によって異なりますが、30,000円~200,000円程度がひとつの相場となるでしょう。ただし離檀料には法的な根拠はないため、高額すぎる離檀料を請求された場合は弁護士などの専門家に相談するようにしてください。
納骨先にて発生する費用
墓じまいから改葬に当たっては、「改葬先」を確保しなければなりません。そしてその「改葬先の確保」には、当然お金がかかります。
- 移転先でも従来型のお墓を作る……100万円~200万円程度
- 合葬にする……50,000円程度が相場で、多くの場合高くても200,000円を超えない
- 納骨堂……プランによって大きく異なるが、50,000(合葬)~100万円(家族型)程度
- 樹木葬にする……プランによって大きく異なるが、50,000円(合葬)~800,000円(家族型)程度
- 海洋葬にする……「船を個別でチャーターするか、乗り合いか、あるいは事業者に一任するか」によって異なるが、50,000円~200,000円程度
墓じまいにかかる費用は決して少なくはありません。そのため、事前にかかる費用を計算しておくと良いでしょう。
お墓にまつわる相談は専門家へ
墓じまいには、手間も費用もかかります。そのため、専門家に相談することが望ましいです。
セゾンの相続
「セゾンの相続 お墓探しサポート」では、墓じまいのご相談から、新しいお墓探しのサポートまでを行っています。「墓じまいをしたいけれど、どうやって進めたら良いかわからない」「墓じまいを考えているが、費用の面で不安が大きい」「家族にどうやって切り出したら良いか迷っている」など、墓じまいや改葬の不安を抱えている方は、お気軽にご相談ください。
おわりに
埋葬形態やライフスタイルが多様化していく中で、先祖代々のお墓を管理するのが難しいと感じる方も増えてきました。その場合の選択肢となるのが、「墓じまい、改葬」です。ただこれには多額の費用もかかるので、ご家族・ご親族と費用のことも含めてしっかり話し合いをすることをおすすめします。
また、ご自身の終活を考えるなら「ひとりのミカタ」がサポートします。「ひとりのミカタ」とはセゾンカードでおなじみのクレディセゾンのグループ会社「くらしのセゾン」が提供するおひとりさまの終活をトータルでサポートするサービスです。一人で抱え込まず、頼れる存在を見つけることが何より大切です。終活について不安を感じたら、まずは「ひとりのミカタ」に無料相談してみてはいかがでしょうか。
クレディセゾングループが提供する、おひとりさま総合支援サービス「ひとりのミカタ」は、入院や高齢者施設入居時の「身元保証」、もしものときの「緊急連絡先」、ご逝去後の「エンディングサポート(死後事務手続き)」など、おひとりさまの毎日の暮らしや終活のさまざまなお悩みごとを総合的に支援するサービスです。
お問い合わせいただいた方に、エンディングメモ付きサービス資料を進呈中!