賃貸物件を借りる際の「敷金」とは、大家さんに預ける保証金のような役割を持つお金で、家賃を滞納した場合や退去費用が発生する場合の支払いに充てられます。契約書に特に記載がなく家賃滞納や退去費用も発生しなかった場合には、原則として敷金の全額が退去時に返還されることとなっています。
しかし何らかの理由により、敷金の一部が返還されないケースや、全額返還が受けられないケースも存在します。本記事では、敷金が返ってこない理由と返還までの流れ、敷金をより多く返還してもらうための対策などについてご紹介します。
敷金は退去から1ヵ月〜2ヵ月で全額返還されるのが原則
敷金は賃貸物件を借りる際の保証金の役割を果たすお金で、居住中や退去時にトラブルがない限り、退去から1ヵ月〜2ヵ月で全額返還されるのが原則です。ただし法律で敷金の返還時期については明確に定められているわけではないので、返金のタイミングは大家さんによって変動することがあります。
また、ご自身の使い方が原因で物件に汚損が発生した場合には、ハウスクリーニング代が敷金から差し引かれて、残金のみが返還されるケースがあります。そもそも入居時に敷金を預けていない場合には、退去時に返還されるお金も存在しないので、間違えないようにしましょう。
そもそも敷金とは?
ここでは賃貸物件を借りる際の「敷金」の役割や、礼金との違いについて詳しくご説明します。
敷金の役割
敷金は、借主が貸主に対して物件の入居時に預ける保証金で、借主が物件に住むにあたって金銭的な損害を発生させた場合に、その費用を敷金から差し引く仕組みとなっています。例えば、ご自身が住んでいる賃貸物件で壁に穴を開けてしまった場合、その修繕費用に敷金が充当されます。家賃を滞納して、大家さんに迷惑をかけてしまった場合にも、滞納した家賃分が敷金から差し引かれることになります。なお、敷金の相場は賃貸物件の家賃の1ヵ月分が目安です。
敷金と礼金の違い
敷金は大家さんに預ける保証金であるのに対して、礼金は大家さんにお礼の意味を込めて支払い、退去時に返金されることはない性質があります。新築物件などでは礼金を設定していることが多く、入居時に1ヵ月分の前家賃と、1ヵ月分の敷金、そして1ヵ月分の礼金の支払いが求められることもあります。なお、地域によっては礼金というシステムがなく、礼金0円が当たり前となっているエリアもあります。
敷金・礼金ゼロの物件も増えている
近年では初期費用を安く見せてより多くの入居者を集めるために、敷金・礼金をゼロとしている物件も増えてきています。入居者にとっても初期費用が安くなるため選ぶメリットは大きいですが、退去費用が発生する場合に敷金からの充当がないため、退去費用の支払いが大きな負担となる可能性があります。そのため敷金・礼金ゼロの物件を借りる場合には、退去費用が高額になりやすい点に注意しましょう。
敷金が返ってくるまでの時期・流れ
次に、退去から敷金返却までの流れや時期についてご紹介しましょう。
退去時の立ち会いで修繕費を見積もり
原則として全額返金される敷金が、何らかの事情で差し引かれる場合には、退去時の立ち会いで不動産会社から案内されるケースが多いです。立ち会いの際に修繕費やハウスクリーニング代の見積もりが行われ、どれだけの原状回復費用がかかるか、敷金から差し引かれてどれだけ返金されるかを計算します。
敷金精算書が届く
退去後1ヵ月以内を目安に、退去費用の内訳が記載された「敷金精算書」が新居の住所宛てに届きます。敷金精算書には、修繕費やハウスクリーニング代の内訳が載っているため、内容に不明点や疑問点がないかチェックしておきましょう。また、退去からしばらくしても敷金精算書が届かない場合には、不動産会社に問い合わせておくと安心です。
敷金が振り込まれる
敷金精算書の内容にて、退去後1ヵ月以内を目安に指定した口座に敷金が振り込まれます。敷金を返還する期日については法律で定められていないため、管理会社や大家さんの対応によっては返金タイミングが遅れることもあります。退去から1ヵ月経過しても連絡がない場合には、一度不動産会社に相談してみましょう。
敷金が返ってこないケースとは?
入居時に預けた敷金は、退去後に全額が返金されるのが原則です。しかし次のようなケースでは、敷金が賃貸物件の修繕費・ハウスクリーニング代に充てられて、返還されない可能性も出てきます。それぞれどのようなパターンが当てはまるのかを解説します。
入居後の汚れ・キズが多い場合
入居していた賃貸物件で、ご自身の使い方に原因がある汚れ・キズが多く残っている場合、汚れ・キズを修繕するための費用として敷金が差し引かれることがあります。例えば、ペットによる粗相や壁・床のキズ、室内でタバコを吸っていたことが原因のヤニ汚れ、錆や油汚れを放置したことによる住宅設備の劣化などが挙げられます。
ただし、誰が住んでも同じように劣化するものに関しては、入居者負担ではなく大家さんの負担となるため、修繕費用が敷金から差し引かれることはありません。例えば、壁や床の日焼けや家具を設置していたことによる床の凹みなどが挙げられます。こうした「通常損耗」や「経年変化」と呼べるものに関しては、修繕費用を負担する必要がないことを押さえておきましょう。
特約事項が記載されている場合
賃貸契約書の特約事項として、退去時に「畳の表替えは入居者負担とする」といった記載があるケースがあります。こうした特記事項が明記されている場合、その条件に合意して賃貸物件を借りていたとみなされ、使い方や汚損の程度に関わらず表替えのための費用が請求される可能性が高いです。そのため賃貸物件を借りる際や退去費用を見積もる際には、契約書の内容を充分に確認することが大切です。
敷金が返ってこない場合の対処法
ご自身が原因で残ってしまった汚れ・キズがなく、特約事項でも触れられていないにもかかわらず、敷金が返ってこない場合にはどうしたら良いのでしょうか。ここでは返還されるべき敷金が返ってこない場合の対処法について解説します。
管理会社や大家さんに問い合わせる
返還されるべき敷金が返ってこない原因として、管理会社や大家さんの手続きミスが考えられます。敷金の返金手続きが行われていなかったケースや、振込先が間違っていたケースなども疑われるため、まずは管理会社や大家さんに問い合わせてみるのが確実です。手元に敷金精算書が届いている場合には、その内訳についても確認しておくと良いでしょう。
消費生活センターに相談する
不当な理由によって敷金が返還されないままとなっている場合には、消費者生活センターなどの窓口へ相談すると良いでしょう。管理会社や大家さんと争う形となったとしても、消費者生活センターが味方となってくれます。その際には、ご自身から問い合わせた内容や敷金精算書について、しっかりと記録に残しておくことが大切です。
少額訴訟を起こすという方法も
万が一、敷金が返還されずに管理会社や大家さんも争う姿勢を見せている場合には、法的手段に訴えることも可能です。敷金の返還トラブルでは、簡易裁判所にて「少額訴訟」を起こし、裁判所の判断を仰ぐケースもあります。基本的には話し合いで解決するのが望ましいですが、こうした手段もあることを覚えておくと良いでしょう。
敷金の返還トラブルを防ぐためには?
敷金の返還トラブルは、入居時や退去時にチェックすべきポイントを押さえておくことで、トラブルに巻き込まれるリスクを抑えることが可能です。ここでは敷金の返還トラブルを防ぐ3つの方法を解説します。
契約書の内容をチェックしておく
賃貸物件を借りる際の契約書では、敷金の扱いやハウスクリーニング代などの特約事項について、充分に確認しておきましょう。退去時に敷金がハウスクリーニング代に充当されるなどの記載がある契約書にサインした場合、その通りに契約を遂行する義務が発生するため、敷金を無理やり返還してもらうことは不可能です。
入居前の写真・動画を残しておく
入居時には部屋の状態について写真・動画で記録を残しておくと、前の入居者に責任がある汚損なのか、ご自身に責任がある汚損なのかを判断する証拠となります。万が一、敷金の返還トラブルが発生した場合にも、その記録を提出することにより、ご自身に責任や過失がないことを証明することができます。入居時に目立つ汚れやキズ、水漏れなどがないか、しっかりとチェックしておきましょう。
退去時の立ち会いで疑問点を解消する
賃貸物件の退去時の立ち会いは義務ではありませんが、敷金の返還トラブルを避けるためにもできるだけ立ち会うようにするのがおすすめです。敷金が差し引かれる可能性のある汚損については、立ち合いの際に不動産会社から指摘があることが多いので、前述した写真・動画を見せるなどしてご自身の過失ではないことを証明できると良いでしょう。
敷金をより多く返してほしい場合の対策
最後に、敷金の返還トラブルを避け、より多くの敷金を取り戻すための対策について、3つご紹介していきます。
落書き・キズなど故意や過失によるキズに気をつける
賃貸物件は大家さんの所有する大切な資産であり、その部屋の一部を借りさせてもらっている状態のため、部屋の扱いには充分に配慮しながら生活しましょう。契約書で禁止されているペット飼育・喫煙などをしないことはもちろんのこと、子どもの落書きや引っ越し作業でのキズを防ぐことも大切です。
日頃からこまめな掃除や手入れを行う
エアコンからの水漏れを放置していたことによる壁・床の腐食や、キッチンのシンクのサビを放置していたことによる腐食などは、高額な修繕費用が請求される原因となります。そのため部屋の設備は日頃から丁寧に手入れを行い、汚れやホコリが溜まらないように注意しましょう。
気になるキズや故障については大家さんに相談する
入居中に大きなキズや設備の故障があった場合には、できるだけ早めに管理会社や大家さんに相談することをおすすめします。キズや故障によって生活が不便になることを防げるほか、誠実に対応することで管理会社・大家さんからの印象も良くなるからです。キズや故障を隠したり、ごまかしたりすると、強制退去や高額な退去費用の原因になるためご注意ください。
おわりに
敷金は原則として、退去から1ヵ月〜2ヵ月程度で全額が返金されるのが一般的です。しかしご自身の責任や過失による部屋の汚損がある場合や、特約事項で敷金の返還について定められている場合には、敷金の一部または全額が返ってこないケースもあります。
敷金が返ってこない場合には、まず敷金精算書の内容をチェックして、管理会社や大家さんに問い合わせてみるようにしましょう。敷金の返還トラブルを防ぎ、より多くの敷金を返してもらうためには、日頃から部屋を丁寧に利用し、キズ・故障があった際には速やかに相談することが大切です。
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