近年の日本は、格差が非常に厳しい状態になってきています。一昔前の日本の高齢者の多くは、ゆとりのある老後を送っているように見えました。しかし現在の高齢者は経済的に苦しく、老後破産し生活保護で生きていかなければならない方も増えているようです。このコラムでは、格差社会と老後破産、その原因と対策について解説いたします。
格差社会とは
格差社会とは、簡単にいうと「貧富の差の大きい社会」のことです。富裕層がたいへん裕福であり、低所得者層の所得との差が激しい、社会的な二極化が進んだ社会のことを指します。
もちろん格差というのは、お金に関することだけでなく教育や情報など、さまざまな状況において生じる差により、階層化された社会のことも含みます。教育や情報などの格差が、最終的に社会的な地位を変えることができない状況を作り出し、それが結局のところ貧困層につながっているものと考えます。
特に資本主義社会においては、国民全員が同じ所得になることは不可能であり、所得の差はあって然るべきといえるでしょう。しかし格差社会の場合その差があまりにも大きく、階層として固定されてしまうので、努力をしても貧困層から簡単には抜け出せない状態になります。そのため、社会的課題として格差社会と呼ばれているのです。
現在の日本における格差
日本も例外ではなく格差社会は広がっています。しかし「日本は他の国に比べて中間層が多くて生活しやすい国だ」と思っている方が多いのも事実です。「自分は低所得者であるが、日本自体はまだ平等な国である」という認識は根強く残っているようです。
厚生労働省の調べを見ると、2014年以降、非正規雇用労働者の割合は、雇用労働者の37%以上を占めています。また正社員として働く機会がなく、非正規雇用で働いている者(いわゆる不本意非正規雇用)の割合は、非正規雇用労働者全体の11.5%(2020年平均)となっています。
国民の所得の格差を測る指標のひとつに「ジニ係数」というものがあります。「ジニ係数」とは、所得格差の度合いを0から1までの数値で表したもので、完全に平等に所得分配ができている場合は0であり、0に近づくほど平等、1に近づくほど不平等で格差が大きいことを意味しています。
厚生労働省が3年に1度行う所得再分配調査の2017年度調査によると、日本における世帯単位でみた、年金等の社会保障や税による再分配後の所得のジニ係数は0.3721でした。OECD加盟国主要16ヵ国中では、アメリカ、デンマークに次ぎ3番目に格差が大きい国となっています。
出典:厚生労働省ホームページ 平成29年所得再分配調査結果について
日本はアメリカ、中国に次ぐ世界第3位の経済大国にもかかわらず、所得格差が大きく、日本における格差社会は深刻な問題といえるでしょう。
格差社会はなぜ生まれるのか?
日本で格差社会が生まれるのには、いくつかの原因があります。
1番の大きな理由といわれているのが、雇用の問題です。施行当時、労働派遣法は業種が限定されていました。しかし、1999年の労働者派遣法の大規模な規制緩和により現在は原則自由化されています。もともと日本の社会保障というものは、正規雇用を前提に作られた制度です。企業側は安価で人材確保ができるようになりましたが、非正規雇用の場合に所得だけでなく社会保障の面でも大きな格差が拡大することになりました。
また少子高齢化が進み社会保障費が増大したことが、低所得者層には負担になっています。それに伴い、さらに貧困になる世帯が増え、子どもを学校以外の習い事や塾などに通わせることのできない家庭が増え、教育格差へとつながっていきました。教育格差により子どもたちの将来の選択肢が狭まり、非正規雇用につながるという負の連鎖が格差社会拡大の原因となっているのです。
日本では特に高齢者の貧困が大きな問題になっています。少子化が進み労働者が少なくなっているのに対し、高齢者はどんどん増加していることが原因です。また高齢者夫婦だけ、または高齢者単身で暮らしている世帯が増えています。これは1人当たりの家賃や水道光熱費など生活費が高くなることを意味し、それは高齢者の貧困へとつながります。
老後破産とは?
老後破産とは老後の年金生活において収入以上の支出が続き、生活資金に困って破産すること、または実際には破産をせずとも、せざるを得ないような状況に陥ることを指します。
現在正規雇用で働いていて、すでにある程度の貯蓄がある方は、ご自身とは無縁だと思われるかもしれません。しかし老後破産とは必ずしも所得が少ない世帯や年金の少ない世帯にだけではなく、実は誰にでも陥る可能性がある問題でもあります。
まずは、どのくらいの高齢者が老後破産状態に陥っているのかを把握しましょう。
・高齢者の生活保護受給者の割合
生活保護とは、さまざまな理由により生活が困窮している方が最低限の生活ができるように支援する国の制度です。内閣府調べの「高齢期の暮らしの動向」によると、2018年における65歳以上の生活保護受給者は104万人で、65歳以上の人口に占める生活保護受給者の割合は2.93%でした。
実は、障害者や傷病者、母子世帯、失業中の人などの生活保護受給者数は、2014年以降減少傾向にあるのですが、高齢者世帯の生活保護受給者数だけは増加し続けているのです。
老後破産の原因
続いて、老後破産の原因について見てみましょう。
1度老後破産状態になると、その後の立て直しが難しくなります。老後破産になる原因を早めに知り、老後に向けて対策を立てておきましょう。
ある日突然大病を患う
病気やケガは誰にでも起こりえることで、ご自身の努力で完全に回避できることではありません。年を重ねると病気になる頻度が高くなります。入院にかかる費用は自己負担となり、先進医療が必要な大病を患った場合に公的医療保険では賄いきれないこともあります。
老後に大病を患い医療費が膨れ上がり老後破産に陥るというのは、非常に多い原因の1つです。
長生きのリスク
病気で老後破産に陥らないように、健康に気を付けて生活することで90歳を過ぎても元気でいられるかもしれません。それは本来なら幸せなはずです。しかし、長生きするとそれだけ生活費が必要になります。つまり、長生きが老後破産の原因となってしまう可能性もあるということです。
生活水準を落とせない
年金の受給額は、定年前の所得よりも少なくなることが一般的です。収入が少なくなるのに合わせて生活水準を落とすことができれば良いのですが、定年前と同じ感覚で生活費を使えばすぐに赤字となり、今までの貯蓄を取り崩すようになってしまいます。
老後の資金計算をしてこなかった
老後を見据えて貯蓄をしてきたにもかかわらず、老後を迎えてから生活に困窮し、生活保護を受ける方が増えているそうです。特に定年後にも住宅ローンが残っている場合は、老後破産に陥る原因となります。
これは、老後に必要な資金をしっかり準備できていないかったことから起こります。住宅ローンが定年後に完済できるか正確に把握できていないと、老後破産リスクが高まるのです。
家族の介護
ご自身や配偶者の介護が必要になる場合は、介護費用がかかります。症状が重く在宅介護が十分ではなくなってきた場合、デイサービスや介護施設を利用する必要性も出てきます。介護施設は入居費用が高額なうえ月額費用もかかるため、長期で利用することになると相当な出費となり、余裕があると思われた貯蓄もすぐに底をついてしまう可能性があります。
独立しない子どもの扶養
子どもの教育費には、相当なお金がかかります。1人の子どもが、幼稚園に入園してから大学を卒業するまでには2,000万円ほどかかるといわれています。そのため子どもがいる場合、なかなか貯蓄ができない家庭が多いです。
また最近は晩婚化が進んでいて、定年を迎えても子どもがまだ高校生や大学生という家庭も少なくはありません。独立していない子どもが家にいる状態で老後を迎えるケースがあります。また自立しない子どもも増えています。どちらにしても、夫婦2人の生活費だけでなく、子どもの生活費も負担することになると年金だけではとても足りないため、貯蓄を使い続ける結果、老後破産に陥る原因となります。
個人事業主は老後破産しやすい
個人事業主は収入が安定しておらず、受給できる年金が少ないことから、老後破産する方が多い傾向にあります。個人事業主が加入する国民年金は、厚生年金よりも積み立てる負担が小さいのですが、その分年金額が低くなります。大半の個人事業主は年金だけでは老後に生活をすることが難しいので、事業を継続せざる得ない可能性があるといわれています。
上記が原因となり老後格差へとつながる
上記のような原因で老後破産する方が増えているなか、老後の生活費としての資産に十分な余裕がある方もいるため、高齢者の中でも経済の二極化が進み、老後における格差社会が問題となっています。
「私は大丈夫だ」「先のことは不安で考えたくない」と思わずに、現実を知り、状況を打開するために老後の準備をすることが、老後における格差社会に立ち向かう方法であると考えます。
老後破産にならないために準備すべきこと
それでは、老後破産しないためにはどうしたら良いのでしょうか?老後に向けて準備すべきことがあります。全てを1度に始めるのは難しいと思いますので、1つずつ解決していきましょう。
老後の人生設計をする
老後破産に陥らないために最も重要なことは、老後に通常の生活を送るためにはいくらあれば足りるのかを計算してみましょう。老後になってしまってから真剣に計算しても、すでに手遅れである場合があるためです。
手始めに、現在の生活費を項目別に確認してみましょう。そして老後にかからなくなる費用や、逆に老後に増える可能性の高い費用を考え、老後のおおよその生活費を計算してみます。
この計算は、どのくらい貯蓄をすれば良いのか把握できるだけでなく、老後に対する意識が高まり、老後破産の危険性を回避することにつながります。
【項目別生活費】
①食費
定年前でも後でも食費は一番多い支出です。レシートを捨てずに計算しなければならないので、たいへんですが、かならず把握するようにしましょう。便利な家計簿アプリなどもありますので、活用することもおすすめです。
②教養娯楽費
教養娯楽費は旅行なども含まれ、定期的にかかる費用ではないため、数ヵ月では把握できず計算が難しいでしょう。まずは、動画配信サービスや放送受信料など定期的にかかっている支出から計算してみましょう。
➂交通・通信費
仕事に行かなくなることを考えると、老後の支出は少なくなります。しかし買物や病院など外出が増えると思いますので、老後も支出の割合としては低くありません。
④水道光熱費
働いていた頃より家にいる時間が長くなるため、節約することが難しい費用です。毎月の明細を保管し、しっかりと把握しておきましょう。
⑤住居費
すでに持ち家があるのか、賃貸で暮らしていく予定なのかで住居費の割合が異なります。定年後は住宅ローンが完済しているか否かでも変わってきます。
⑥教育費
教育費は子どもがいない、または定年後は子どもがすでに独立している世帯の場合、ほぼ支出がなくなります。逆に定年しても子どもがまだ学生の場合、今かかっていない費用が発生する場合もあります。現状と比べるのではなく、定年までの年数をきっちりと考える必要があるでしょう。
⑦被服及び履物費
服や靴の購入費のほか、クリーニング代などが含まれます。仕事をしていた頃とは違い、スーツ代やクリーニング代が減るため、老後の支出は低くなることが想定されます。
⑧医療費
医療費は個人によって差があります。しかし老後は若い頃よりは確実に病気になりやすいため、多めに見積もることをおすすめします。
⑨家具・家事用品費
家具・家事用品費とは、家具や電化製品、食器、洗剤、トイレットペーパーなどの消耗品にかかる費用ことです。それほど高額な支出ではないのですが、年を重ねたからといって減る費用ではないことも事実です。
⑩その他
その他というのは、生活費のうち、上記の①食料~⑨家具・家事用品費に分類されない商品やサービスへの支出で、交際費なども含まれます。
会社勤めが終われば、会社付き合いなどが減り、交際費が少なくなるように思われるかもしれませんが、歳を重ねていくにつれ冠婚葬祭に際して包む「慶弔費」というものが増えてきます。
定年前にできるだけ貯蓄する
あまりにも当たり前のことのように聞こえるとは思いますが、老後のために毎月コツコツと貯畜をしていくことは大切です。現在の生活費を見直し、なるべく早い段階から貯蓄を始めましょう。少しずつでも貯蓄を増やそうとすることで、経済観念もしっかりしてくるため、無駄な浪費自体を避けることにつながります。
住宅ローンは定年までに返済
住宅ローンは、購入のタイミング、設定した返済期間によりますが、定年後まで返済が続く方もいるでしょう。定年後、収入が年金だけになっても、それまでと同じローン返済額では老後の生活に困窮することになります。退職金を住宅ローンに回そうと考えている方も多いのですが、快適な老後を送るためには退職金は、なるべく老後の資金にすることを考えた方が得策です。できるだけ、定年までに住宅ローンを完済するようにしましょう。
住宅ローンが完済できていない場合は、住宅ローンの借り換えも考えてみることをおすすめします。「住宅ローンの借り換え」とは、現在の借入先と別の金融機関で新規にローンを借り入れて、返済中の住宅ローンを一括返済することです。現在より低い金利に借り換えることができれば、金利差分の総支払額を減らすことができます。
特に「固定金利タイプ」だと、金利変動がないため返済計画も立てやすいです。クレディセゾンでは住宅金融支援機構の提携商品であるフラット35を取り扱っています。借り換えでは、フラット35(保証型)を用意しております。8大疾病付団信と全傷害疾病付団信などの団体信用生命保険が充実しています。
また、リースバックという方法もあります。セゾンのリースバックとは、ご自宅を売却しても、引っ越しせずそのまま住み続けることができるサービスです。ご自宅をクレディセゾングループであるセゾンファンデックスへ売却することで、売却代金が一括で受け取れます。その資金をもとに既存の住宅ローンの返済に充てることも可能です。売却後は、賃貸として家賃を支払いながら、その自宅に住み続けることができますので、引っ越しのお手間なく慣れ親しんだ自宅で生活を送ることが可能です。
健康的な生活を送る
何歳であっても健康は大切なものですが、老後は特に健康面が生活費に大きく関わります。医療費が想定よりもかさむことで老後破産に陥ることがないように、若いうちから健康的な生活を送ることが重要です。
健康を目指し、普段から過度な喫煙や飲酒を避け、バランスのとれた食事、規則正しい生活、適度な運動などを心掛けるのが良いでしょう。
また健康であれば老後も働くことができ、年金と貯金のみに頼らないで生活を送ることができます。60歳までに老後資金を貯めるのが難しかったとしても、その後も働き続けることで経済的な悩みは軽減されるでしょう。
資産形成をはじめる
超低金利が続く昨今、貯金だけでは不安な方も多いと思います。資産形成を考えるなら、投資が有効といえます。ただし投資商品にはリスクがあるため、始める前に事前に学ぶことをおすすめします。
投資においては、長期投資、分散投資が必要といわれています。とくに、分散投資においては、有名な格言で「同じかごに卵を盛るな」という言葉に象徴されています。
長期投資、分散投資を心掛けるうえで、NISAやiDeCoの制度を活用した投資信託や株式投資(ETFも含む)などもそうですが、ポートフォリオ、投資先のリスク分散を考えるうえで、やはり現物資産としての不動産投資も考えるべきでしょう。
不動産投資といっても、いきなりアパートや小型マンション、個別性の強い戸建て物件で大きな利回りを狙おうとせず、今後も引き続き、しっかりと需要のある単身世帯向け、特に都心エリアでのワンルームマンションから始まるのが良いでしょう。単身世帯は、2020年の国勢調査の結果においても、増加傾向であり、全体の38.1%までに上昇しています。10人いたら約4人は単身世帯という状況です。この単身世帯のニーズをしっかりと捉えた不動産投資を行う方が手堅いといえるでしょう。
東京23区や横浜がある神奈川県などの都心エリアでは、コロナ禍である2021年も人口流入は増加しています。特に若い世代の単身世帯の方々にとっては、働くのも、遊びに行くのも都心圏内を生活拠点としておきたいニーズは引き続き強いといえるでしょう。
物件購入を検討する際は、そういった単身世帯のニーズに応える都心エリアでの物件供給を行っており、個々エリアの賃貸ニーズをしっかりと捉えている業歴が長い不動産会社を選ぶのが良いでしょう。
不動産投資は、ワンルームマンションを購入して終わりではなく、賃貸として貸し出していく息の長い長期投資です。長期投資には、しっかりとした賃貸管理ノウハウを持つパートナーが欠かせません。物件の良し悪しもそうですが、不動産管理の良し悪しもワンルームマンションの不動産投資においては外すことのできないポイントであり、そのような点も見極めたうえで始めてみるのも良いでしょう。
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おわりに
いかがでしたでしょうか。格差社会が進むなかで、楽しく老後生活を送るためには、年金とは別にある程度の貯蓄が必要であることがお分かりになったと思います。できるところから1つずつはじめて、楽しい老後生活に備える参考になれば幸いです。