葬式をしないことは可能だろうか、と考える方もいらっしゃるでしょう。葬式は、しないという選択もできます。ただし火葬は行う必要があるため、故人を何らかの形で見送らなければなりません。このコラムでは、葬式をしないメリットやデメリット、葬式をしない方法や手順、注意点について解説します。経済的、精神的な負担を減らすため葬式をしたくないと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
- 葬式はしなくても良いが、火葬はしなければならない
- 火葬のみの「直葬」は、従来の葬式の10分の1程度の費用で可能
- 菩提寺がある場合は、葬式をしないと納骨させてもらえない可能性があるため、注意が必要
葬式はしなくても法律上は問題ない
葬式をしなければならないと定めた法律はありません。つまり、葬式をしなくても法律上は問題ないです。
ただし、人が亡くなったら遺体を速やかに、かつ適切に処理しなければ、遺体を故意に放置したとして死体遺棄罪などに問われてしまう可能性があります。よって火葬や土葬は必須です。
日本では、土葬は法律のうえで禁止こそされていないものの、土葬ができる墓地はわずかしかありません。よってほぼ100%が火葬となります。
ほんの20年前までは、人が亡くなったら葬式をするのが当然と考えられていました。しかし最近では、葬式をせずに火葬のみを行う「直葬」(ちょくそう)を選ぶ方が、都市部を中心に増えてきています。直葬は、病院から安置施設などへ遺体を移動させた後、葬儀式場へ移動せずに直接火葬場へ運び、荼毘に付すものです。
直葬に近い言葉に「火葬式」があります。火葬式は直葬をベースとし、火葬場へ向けて出棺する前に簡素なお別れの儀式を行うものです。
葬式はくだらない?火葬のみを選ぶ理由
最近では葬式をせず火葬のみで済ます直葬の割合が5~10%にもなっているとみられています。なぜ葬式をしない方が増えているのでしょうか。主に、以下の3つの理由が挙げられます。
お金をかけたくない
従来の葬式には100万円単位のお金がかかります。日常の買い物からはかけ離れた、大きな出費に。それほど大きなお金をかけたくないという理由から、葬式をしないことを選ぶ方がいます。
葬式をしなければ、式場利用料や祭壇費用、僧侶のお布施など、葬式費用の主な部分を削減できるでしょう。必要になるのは、火葬に関わる最低限の費用です。遺体の搬送費用、棺、安置施設の利用料、自治体等で定められている火葬場利用料など、必要最低限の費用で済みます。
従来の葬式にこだわりがない
現代では仏教離れが進み、無宗教葬を選ぶ方も増えてきました。日本人が従来の葬式にこだわりを持たなくなってきたのも、葬式をしないことを選ぶ方が増えた理由です。
以前であれば、葬式をしないなどと言おうものなら「葬式をしなければバチが当たるかも」「僧侶に読経してもらわなければ成仏できない」と反対する親族がいましたが、今ではあまり見かけません。葬式の形式が自由に選べるからこそ、葬式をしないことを選ぶ方も増えているのです。
家族や参列者への負担を減らしたい
葬式を行うとなると、遠方の方や足の不自由なお年寄りに参列を強いてしまう恐れがあります。また、家族としても参列者への対応に追われ、満足に故人とお別れができなくなるかもしれません。家族や参列者への負担を減らすために、葬式をしないことを選ぶ方がいます。
まして近年のコロナ禍においては、葬式が「密閉・密集・密接」の「3密」を生じさせやすい空間として認識されていました。葬式には、特に免疫力の弱いお年寄りが多く集まる傾向があります。葬式で集団感染を起こしてはならない、と人数の少ない葬式や直葬をあえて選んだ方もいました。
葬式をしないメリット
葬式をしないメリットは、経済面、体力面、精神面など、あらゆる面での負担が削減されることです。遺族の負担が少なくなれば、より故人とのお別れに集中できます。
費用が大幅に軽減する
葬式をする場合、主に以下のような費用が必要になります。
- 祭壇料
- 式場利用料
- 親族控室料
- 通夜ぶるまい(通夜の食事代)
- 精進落とし(葬儀後の食事代)
- 位牌
- お布施
- 会葬礼状
- 司会依頼料
- 搬送費用
- 棺・棺用布団・仏衣
- 骨壺
- 遺影写真
- ドライアイス(遺体冷却用)
もしも葬式をしないと決めたら、太字部分の費用が必要なくなります。火葬に必要な最低限の出費で、故人を見送ることができるでしょう。
香典が発生しない
葬式をしないと決め、かつ香典を辞退したら、香典のやりとりは発生しません。香典のやり取りがなければ、遺族の負担が減ります。
香典を受け取れば、受け取った香典金額にふさわしい香典返しを準備し、相手へ発送しなければなりません。死後の手続きで忙しい遺族にとって過大な負担となってしまいます。香典自体が発生しなければ事務作業が省かれ、遺族の時間と心にゆとりが生まれるでしょう。
遺族の対外的な対応に関する負担が少ない
葬式をするとなると、遺族は各方面に訃報を出すことに始まり、弔問に訪れた方の接待、通夜や葬式のときの挨拶や会食でのもてなしなど、対外的な対応に追われます。「おもてなしでクタクタになり、故人の顔を見るのも忘れていた」という感想もしばしば見受けられるほどです。
葬式をしなければ、遺族は対外的な対応に追われることなく、故人との最期の時間をたっぷり取ることができます。気の置けない方たちだけで過ごすので、精神的な負担は最小限になるでしょう。
参列者の負担が少ない
参列者の中には、遠方から訪れる方や足腰の不自由な高齢者もいるでしょう。特に年配者には「葬式に出て、義理を果たさなければ」という考え方がまだまだあり、辛くても頑張って出かけてしまうことになります。
一方、葬式をしなければ、移動が困難な参列者が無理をすることもなくなります。
葬式をしないデメリット
葬式をしないことには、デメリットもあります。「こんなはずではなかった」と後悔しないよう、あらかじめデメリットと対策を確認しておきましょう。
周囲からの理解を得にくい
葬式をしない選択をする方は徐々に増えていますが、まだスタンダードとはいえません。よって親族の中には、葬式をしないことに抵抗を感じる方もいらっしゃるでしょう。喪主が葬式をしないと決めても、親族から反対される可能性があります。
なぜ葬式をしないという結論に至ったのか、詳しく丁寧に説明し、親族みんなに納得してもらうのが大事です。親族の誰かが納得しないまま火葬だけの見送りとしてしまうと、以後わだかまりが生じる恐れがあります。
気持ちの整理をするのが難しい
葬式をしないと告別の時間が少ないため、充分に別れを惜しむことができず気持ちの整理をするのが難しいかもしれません。
葬式がない分、棺の側で遺族と思い出話をする時間をしっかり設けましょう。故人の在りし日のアルバムを持ち出し、遺族みんなで眺めながら話をすれば、豊かなお別れの時間が作れます。
弔問客の対応が必要になる場合がある
葬式をしないと、「香典を持参したい」「遺影を見てお線香をあげたい」などの理由で弔問客が遺族宅を訪れることがあります。遺族は死後の手続きで忙しいなか、弔問客の対応をしなければなりません。
葬式は費用がかかり、参列者への対応も煩わしいものですが、故人に別れを告げたい方たちを一挙に集める場と考えれば効率的な手段です。特に故人や喪主の交流範囲が広い家は、後でパラパラと訪れる弔問客に対応するよりも、葬式で一度に対応してしまった方が、負担が少ないかもしれません。
菩提寺への納骨ができない場合がある
火葬のみでお坊さんを呼ばないお別れを選ぶと、菩提寺への納骨ができない場合もあります。菩提寺があるということは、菩提寺が属する宗教宗派を信仰しているということであり、よって、菩提寺の宗教宗派に則った葬式をしたうえで寺院墓地に納骨するのが暗黙の了解とされています。
もし葬式をしないで火葬をし、遺骨を菩提寺に持っていった場合、ご住職から「ウチの儀式作法で葬式をし直さなければ納骨は認めない」と言われてしまう恐れがあるのです。菩提寺のある方は、火葬のみでもどこかの場面で読経してもらえないかと相談してみましょう。
葬式をしないで火葬のみ行う場合の費用相場は?
もしも葬式しないで直葬を選ぶとしたら、全体の費用相場は20万円~30万円。僧侶に読経を依頼する場合は別途お布施代が、また火葬後に会食を設ける場合も別途飲食費用がかかるでしょう。
費用相場の中には火葬場の利用料も入っています。東京都は民間の火葬場が多く、火葬料金が高くつく傾向にあります。東京以外は市区町村営の火葬場が主で、利用料が無料の場合もあります。ただし故人あるいは遺族が、利用する火葬場がある市区町村の住民でない場合は、火葬料が高くなることが多いため気をつけましょう。
一般的な葬式の相場はお布施を含めるとおよそ200万円で、親族中心とした小規模な葬式でも100万円程度の出費となることが珍しくありません。葬式をしなければ、一般的な葬式の10分の1程度で済みます。
さらにお墓を作らないとなれば、費用の削減効果はかなりのものになるでしょう。
葬式をしない場合の手続きはどうする?
葬式をしない場合、火葬までの流れは以下のようになります。必要になる手続きを含めて解説しましょう。
「直葬」や「火葬式」を扱っている葬儀社に依頼
病院などで臨終が告げられたら、「直葬」や「火葬式」など葬式をしない見送りの形を扱っている葬儀社に依頼します。葬儀社が、遺体を搬送する車で病院まで迎えに来てくれます。
搬送車を稼働させる時点で料金が発生するため、葬儀社を選ぶ時はなるべく慌てず、数社を比較してから決めるのがおすすめです。
火葬までの間、自宅や安置施設に遺体を安置する
葬儀社の車が到着したら、霊安室から遺体を移動させます。ほとんどが自宅や葬儀社所有の安置施設に移動することになるでしょう。
葬儀社所有の安置施設を利用する場合は、料金が発生します。
火葬日程を決めて訃報を出す
葬儀社に火葬場の空き状況を確認してもらい、遺族の希望と照らし合わせて火葬日程を決定します。なるべく早くと考える方もいるかもしれませんが、火葬は法律により死後24時間が経過していないとできませんので注意しましょう。
火葬の日程が決まったら訃報を出します。火葬に参加してもらいたい方には、火葬日程を含めて案内しましょう。火葬に参加しない親族には、故人の逝去を伝えたうえで葬式をしない事情を話します。
この時点であまり広範囲に訃報を出してしまうと、弔問客の対応に追われてしまう可能性もあります。親族の他は、忌引きを申請する必要のある勤務先、学校など最低限にとどめましょう。
火葬日時が決まり次第、役所で死亡手続きを行います。死亡届を提出し、火葬埋葬許可証を受け取ります。届出人は遺族ですが、葬儀社が有償で代行してくれるケースがほとんどです。
納棺を行う
故人を棺に納める儀式を納棺といい、納棺を行うのは多くの場合火葬の前日です。
故人を棺に納める際は、葬儀社進行のもと遺族が中心となって故人の手足や顔を拭き清め、納棺後は故人に持たせたい思い出の品を棺に入れます。
納棺は、遺族が立ち会わず葬儀社に一任することも可能です。また、出棺前に納棺を行うことで印象的なお別れの場を演出してくれる葬儀社もあります。
出棺・火葬
火葬時間に間に合うよう、安置場所を出発します。出棺の際には、葬儀社進行のもと簡易的なお別れの時間が設けられます。故人と最期のお別れになるため、心残りのないよう声がけをしたり、思い出の品を持たせたりしましょう。
火葬場に到着したら焼香後すぐに火葬となり、火葬時間はおよそ1~2時間です。火葬後、骨壺に故人の遺骨を納めたら解散です。
以上のように、葬式をしないと決めても、臨終から火葬までにはたくさんのことをこなす必要があります。火葬が終わると遺族は疲れてしまいがちですが、まだお墓を決めていない場合は、お墓の購入も考えなければなりません。
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葬式をしない場合の注意点
葬式をしない場合、どんなことに注意しておけば、後のトラブルを防げるのでしょうか。ポイントとなるのは、以下の2点です。
家族で話し合う
葬式をしなくて良いかどうか、本人を含めて生前に家族間で話し合っておくのが大切です。親族が反対しても、本人の遺志であれば優先してもらえる可能性が高いため、本人の意向をしっかり確認しておきましょう。
遺骨の供養方法を決めておく
菩提寺がある場合は、火葬のみでも構わないかどうか、事前に必ず聞いておきましょう。安置場所や火葬炉の前で読経してもらうことで、納骨を許可してもらえる可能性があります。
まだお墓がない場合は、できれば本人の意向を聞いて、供養方法をあらかじめ決めておくのがおすすめです。葬式をしないなら、新たにお墓を求める時は無宗教でも契約できる墓を選びましょう。
おわりに
葬式をしなくても違法というわけではありませんが、火葬は必須です。葬式をしないと決めたなら、できれば本人が生存中に親族や菩提寺の了承を取っておきましょう。トラブルなく人生最期の見送りができます。
また、「自分のときは葬式をしてほしくない」と考えているとしたら、なるべく早く身内に伝えておくのが大切です。菩提寺やもめそうな親族にはご自身から話しておくと、「本人がそう言うのなら」と、了承してくれる可能性が高くなります。
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