「人生100年時代」といわれる昨今、老後生活への関心や心配は高まっています。また、2019年に金融庁が公表した「老後資金2,000万円 問題」もニュースで大きく取り上げられ、不安になった方も多いでしょう。
このコラムでは、老後に必要な資金はどれくらいなのか、老後に向けた貯蓄などの準備について解説いたします。老後について不安があるけれど漠然としていて、何から手を付ければ良いかわからない方、具体的にどんな準備を始めれば良いか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
老後の経済的な準備はできていますか?
歳を重ねるにつれて、老後が心配になってきますよね。そして最も重要な問題は、快適な老後を過ごすためにどれだけの資金が必要かということです。
2020年の日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳で、いずれも過去最高を更新しました。平均定年は60歳とした場合、定年後、女性は約27年、男性は約21年を老後と考えて生活費を準備しなければなりません。しかも、これはあくまで平均値に過ぎず、健康が続く限り、平均寿命をはるかに超える可能性も大いにあるでしょう。
老後の収入はどこから来るのでしょうか?さらに予期せぬ費用が途中で発生するとどうなるのでしょうか?日本では65歳くらいまでには定年退職したいと思っている割合が一番多いそうですが、最近では、経済的な必要性でしかたなく働き続けている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
定年退職後はいくらあれば十分か?
定年退職後、老後に必要な資金はいくらあれば十分なのでしょうか?
公益財団法人生命保険文化センターの令和4年度の調査によると「老後の生活費にいくらぐらい必要と考えるか?」という問いに対して「最低限必要な生活費」の平均値は23.2万円です。これは、快適な老後を送るために十分な資金というわけではありません。一方で、「ゆとりある老後生活費」は平均37.9万円でした。
「最低限必要な生活費」というのは、生きていくために必要な費用で、住居費、水道光熱費、交通・通信費、食費、被服・家事用品費、保健・医療費、税金、社会保険料などが当てはまります。一方で、教養娯楽費、交際費などは、最低限必要な生活費には分類されません。旅行、外食、友達付き合いなどはいっさい考慮されていない生活費ということになります。 また、急に大病を患ったらどうしますか?身内の冠婚葬祭は?などと考えると心配が増してきてしまうのではないでしょうか。
もちろん、ライフスタイルは居住地、健康、趣味、その他の要因に応じて人それぞれです。 このため、快適な生活を送るうえでの老後資金を見積もるのは簡単ではありません。定年後の生活のために十分な金額を見積もるひとつの方法として、定年前の収入の75%ほどを目安に生活設計すると良いといわれています。
参照元:公益財団法人生命保険文化センター|生活保障に関する調査/2022(令和4)年度
この75%という割合は、日本全国・全世代の平均生活費と高齢無職世帯の平均生活費との差から導き出したものです。つまり、日本の平均値にご自身の暮らしを合わせるのではなく、今までの暮らしから計算することが大切だということです。
定年前まで共働きだった夫婦を例に考えてみましょう。夫婦とも日本人の平均給与所得程度もらっていたと仮定します。男性の平均給与は約540万円で、女性の平均給与は約296万円なので、この夫婦は定年前に合わせて約836万円の給与所得がありました。
その75%は約627万円です。つまり、月額約52万円が、この夫婦の快適な老後生活の目安となります。
高齢無職世帯夫婦(夫65歳以上・妻60歳以上)の消費支出は月額平均約24万円ですから、この平均値とは28万円も差があり、平均の生活費で暮らしていくことは、この夫婦にとっては全く「快適」な老後とはいえません。
では、定年前の収入の75%を目指すにはどうすれば良いのでしょう?老後の資金を計算するためのいくつかのヒントと、より快適な老後を過ごすための注意事項などを以下にまとめました。
参考:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2019年(令和元年)Ⅱ 総世帯及び単身世帯の家計収支」
冠婚葬祭などの急な出費にも備えが必要
老後に必要な資金を準備していても急な出費は避けられません。冠婚葬祭や家電製品の故障による買い替え、家の修理など大きなお金が必要になる場合もあります。もちろん、そのための資金も準備できていれば安心ですが、そうでない場合にはどうすれば良いのでしょうか。
一時的な補填であればカードローンやクレジットカードのキャッシングなどの利用も検討しましょう。利用条件によっては、1か月間無利息になる場合などがあります。ただし、そのまま利用し続ければ利息も発生します。賢く計画的に利用しましょう。
クレディセゾンが取り扱っている「MONEY CARD」の特長は大きく2点あります。
1点目は、月々の返済額が4,000円から用意されています。利用残高に応じて月々の返済額を少額から選択することも可能です。2点目は、利率が融資コースに応じて低く設定されている点です。融資コースが200万円の場合は利率が8.47%、300万円の場合は6.47%とぐっと低くなります。(2024年7月現在)
早めに貯蓄を開始しよう
当たり前だと思われるかもしれませんが、老後のために貯蓄を始めるのが早ければ早いほど、より良い生活を送ることができます。幸せな老後への鍵の1つは、人生のできるだけ早い段階で貯蓄を開始することです。子育て、住宅ローンの返済、生活費が上昇している際に貯蓄をすることは難しい場合があります。しかし長期的に見ると、少しずつでも貯蓄をすることは、非常に重要です。
また基本的に老後の生活費の統計などは、基本的なライフスタイルの要因に基づいて計算されています。旅行、投資、子どものために何かを残すための費用は考慮されていません。考慮されていないことに使う分もプラスした資金を残しておくには、早期に貯蓄を開始することをおすすめします。最低限必要な生活費だけを考えるのではなく、予期せぬ事態なども念頭において、資金を用意しましょう。
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老後にかからない費用を計算する
老後のために貯蓄することは大切な準備のひとつですが、何のために貯蓄しているのかを正確に知ることが重要です。定年前に、老後の実際の収入と生活費に基づいて予算または支出計画を作成しましょう。
昼食に費やしたお金、毎日の通勤に費やしたお金、ビジネススーツや作業服に費やしたお金など、定年後に必要なくなる費用を忘れないでください。定年後の収入はあなたの在職中の収入ほどは多くないかもしれませんが、仕事をしていないからこそ使わない費用があります。
老後不要になる支出
老後不要になる主な支出は次のようなものです。下記を老後にかかる生活費から引いて計算することを忘れないようにしましょう。
- 仕事にかかわる衣服(ビジネススーツ、シャツ、靴、鞄、時計など)
- 仕事にかかわる交際費
- 子どもの教育費(独立している場合)
- 厚生年金保険
- 健康保険
- 雇用保険
ローンを返済する
ローンなしで定年を迎えることができれば、さらなる安心感をもたらします。定年後も借り入れを返済し続けることは、限られた資金で生活する老後の生活を圧迫してしまいます。したがって、定年が近づくにつれて、ローンの返済は最大の焦点となります。債務返済の最善策として、金利の高いローンの返済に注力することで、少しではありますが利息を軽減することができます。
その後、自動車ローン、住宅ローンが続きます。理想は、退職金に頼らずに返済することです。しかし、完済が無理だと分かれば、退職金で一括返済をすることも検討しましょう。
健康問題と医療費を考える
長寿国といわれる日本ですが、長生きすることが快適に生きることに比例するわけではありません。日本人は現在、100年前と比べると約2倍長生きになったといわれています。これは、乳幼児死亡率が著しく減少したことに大きく関係しています。しかし残念なことに、慢性的な「生活習慣病」が現代に生きる日本人の健康に大きな打撃を与えています。
厚生労働省の調べによると、慢性疾患のなかでも、糖尿病、高血圧、がん、心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病は、国民医療費の約3割を占め、また死亡数割合では約6割を占めています。(※3)
長年にわたる悪い生活習慣によって引き起こされてしまうのが生活習慣病。遺伝的要素はごくわずかで、食事や運動不足、ストレス、喫煙や過度の飲酒といった生活習慣の積み重ねによって起きることが明らかになっています。加齢と不健康な習慣の組み合わせは、医療費が高くなる可能性があります。
そのため残念ながら、診察、処方薬、入院などの医療費を計画しなければなりません。この追加費用は、苦労しない老後を迎えるために必要な金額として考慮する必要があります。逆に健康維持ができれば、医療費に費やす金額も少なくてすみます。適度な運動と、健康的な食生活に気を配り、年に1度健康診断を受け、健康的な生活を送るように心掛けましょう。
参考:厚生労働省 「慢性疾患対策の更なる充実に向けた検討会 検討概要」
配偶者のために予期せぬ事態に備える
もしあなたが突然亡くなってしまった場合、あなたの奥様はこれまでの生活をそのまま送ることができますか? 仕事をしていた頃に愛する家族のために最善を尽くしてきたことと同様に、あなたが亡くなった後にも配偶者が困らないためにできる限りのことをしておきたいですよね。
そういう意味で生命保険への加入も大切な選択肢かもしれません。万が一、あなたが亡くなられた際に保険金受取人を奥様にしておくことで、奥様の生活を助けることにつながります。
小さな住居に住み替える決断
定年が近づくと、今まで暮らしていた住居からの住み替えを検討する方が増えています。これにはさまざまな理由が考えられます。子どもが独立し家を出たことで、部屋が余っていたり、老朽化によりメンテナンスや維持が大変になってきたり、2階建て以上の住宅の場合は足腰などの健康上の理由で暮らすのが不便に感じたりなどが理由として挙げられます。
大きな家から管理しやすい物件へのダウンサイジングは、維持費がかかり物理的にも手間がかかる大きな家を所有するよりは、多くの利点があります。
定年後の住み替えは、ライフスタイルをより良くするための決断であるといえるでしょう。 ただし、実用性、経済性、感情面に対する影響をすべて考慮するために、専門家にアドバイスを求めるのがおすすめです。今より安価でメンテナンスが楽な新居に引っ越すことができれば、老後の資金を長持ちさせることができ、その他の生活費に余裕が生まれます。
住み替えが適切でないと判断された場合は、現在の物件を建て替え、またはリフォームするという選択肢もあります。バリアフリー改修などをすれば、老後の心配を取り除くこともできるでしょう。
旅行は、人生を楽しく華やかに彩る大切な時間
定年後の良い点の1つは、自由に使える時間が増えることでしょう。その増えた時間で、世界中を旅行し、美味しいものを食べたり、歴史的建造物を観光したり、現地の方とコミュニケーションをとったりとすることもできるでしょう。旅行は、人生を楽しく華やかに彩る大切な時間でしょう。
在職中は、台湾、ハワイ、韓国など、限られた時間のなかで、近場の海外に行く方が大半だったかもしれません。しかし時間がたくさんある老後は、どこにでも長期旅行に行くことも可能です。
特に人気が高いのはイタリア、フランス、スペインなどの欧州です。また、定番の観光地だけでなく、世界の絶景秘境ツアーなど、行きたいと思えばどこにでも行けるのが老後の楽しみのひとつではないでしょうか。ただし旅行をするためには、十分な資金が必要です。
世界中を旅行することを夢で終わらせないためにも、退職後の資金計画の一部として「年間旅行予算」を計画しておくことをおすすめします。
老後の資金を前もって計算しておけば、旅行費用は問題にはなりません。ただし注意すべきなのは、多くの方が当初の計画よりも旅行にたくさん費用を費やしていることです。旅行だけではないですがお金を使いすぎる機会というのは、どこにでもあります。
定年退職後も仕事を続ける、セミリタイア型を選ぶ考え方
一部の方々にとって、今までのビジネスタイムから永続的な余暇の生活に急激に移行することは、気持ち的に難しいかもしれません。 しかし「0か100か」である必要はありません。完全に仕事を辞めるのではない「セミリタイア」も良い選択肢のひとつと考えましょう。継続的にいくらかの収入を得ながら、ご自身のペースで仕事を続けることも可能です。
セミリタイアというものに厳密に定義はありません。これまで働いていた企業に残り非正規雇用で短い時間働く、家の近所でアルバイト、在宅ワーク、今までの経験を生かした講師など、フルタイムの頃とは異なり、短い時間で収入を得て、ご自身の時間を多めに確保しながら生活していくライフスタイルです。
つまりセミリタイアとは、社会との接点を持ちつつ、老後の資金を考慮しながら必要な分だけ働き、できるだけ自由に生活するイメージといえるでしょう。急に仕事がなくなる虚無感や、収入がゼロになる不安がないため、企業戦士だった方には、セミリタイアの選択がしっくり来るかもしれません。
資産形成を考える
老後の資金づくりを加速させるには、貯蓄に加え、いくらか運用に回すことも考えたいところです。定年前になるとこれまでに貯めてきたお金や相続した資産など、ある程度の資金が手元にあるという方もいるでしょう。金融商品を活用すれば、その資金をより効率的に増やすことを目指せます。
預金は安全である反面、日本は0.001%と超低金利の状態が続いているので、ほとんど資産が増えません。また、今後物価が上昇していくリスク、いわゆるインフレリスクの可能性も高いです。デフレが続けば、貯金している資産の価値を守ることができますが、インフレが進めば、お金の価値が下がります。
投資信託とは、多くの投資家から少しずつ集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用プロが株式や債券などに投資・運用するものです。株式、債券、REIT(不動産)などのいくつかの種類があります。
多くの銘柄や商品に分散投資が可能であることが、投資信託の魅力の1つです。資産運用というと株式投資をイメージする方が多いと思いますが、個人で株を買う場合、ひとつの銘柄を買うためには数万から数十万円かかります。資金が少ない場合、いくつもの銘柄を買うことはできません。そして、投資銘柄が少ないと、ひとつの株価が大きく下がれば、運用成績自体に影響を与えることになります。投資信託の場合、専門家が多数の銘柄に分散投資をしています。仮に投資信託のなかのひとつの銘柄が大幅に値下がりしても、株式投資に比べたら、値下がり幅は限定的です。
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投資信託や株を始める場合、証券会社で口座を開設しなければなりません。まずは、お気に入りを見つけて口座開設から始めてみましょう。