住宅の購入を検討する中で、アイランドキッチンにあこがれている方も多いのではないでしょうか。広くて使い勝手の良い点がアイランドキッチンの魅力ですが、気をつけるべきポイントもあります。
そこでこのコラムでは、アイランドキッチンのメリット・デメリットを詳しく解説します。このコラムを読んでいただければ、アイランドキッチン設置の際のポイントがわかり、後悔しないキッチンづくりができるでしょう。
アイランドキッチンとは?
アイランドキッチンのメリット・デメリットを把握するためにも、まずはアイランドキッチンの概要や、他のキッチンタイプとの違いについて解説します。
アイランドキッチンの概要
アイランドキッチンとは、アイランド(=島)の名前が示すとおり、海に浮かぶ島のように設備を壁から独立させて配置したキッチンを指します。
カウンターや作業スペースなどのキッチン設備が独立しているため、キッチンの周りを一周できる点が大きな特徴です。
ペニンシュラキッチンやカウンターキッチンとの違い
アイランドキッチンと間違われやすいキッチンに「ペニンシュラキッチン」が挙げられます。ペニンシュラ(peninsula)は「半島」を意味する英語で、壁から半島のように突き出した形をしたキッチンのことです。
アイランドキッチンとペニンシュラキッチンは、壁と接した面があるかないかで見分けましょう。
また、カウンターキッチン(別名:対面キッチン)とは、リビング・ダイニングと対面する形で設置されたキッチンの総称です。壁に向かって作業する「壁づけキッチン」と比較されます。
アイランドキッチンとペニンシュラキッチンは、どちらもカウンターキッチンのひとつです。
アイランドキッチンのメリット
アイランドキッチンの概要がわかったところで、この章ではアイランドキッチンのメリットを紹介します。アイランドキッチンの主なメリットは以下の4つです。
- 複数人で料理しやすい
- リビング・ダイニングと一体感がある
- 食事の準備や片付けが楽
- おしゃれな空間づくりができる
順番に見ていきましょう。
複数人で料理しやすい
アイランドキッチンはどの方向からでも作業できるため、複数人で料理しやすい点がメリットです。中央のカウンターを囲んで同時に調理したりお皿を受け渡したり、移動もスムーズにできます。
夫婦や家族で協力して料理をしたり、ホームパーティーをしたりと、大人数でキッチンを使うことが多いご家庭におすすめです。また、子どもの手も届きやすく、お手伝いを自然に頼みやすい雰囲気づくりができます。
リビング・ダイニングと一体感がある
アイランドキッチンは壁などの仕切りがなく、リビング・ダイニング方向を見ながら作業できる配置です。
一般的な壁づけキッチンのように背を向けて孤立しないため、リビング・ダイニングと一体感が生まれます。料理を作りながら子どもの様子を見たり、家族と一緒にリビングのテレビを見ながら洗い物をしたりと、コミュニケーションの取りやすさが魅力です。
親が家事をする姿を見て子どもが自らお手伝いを申し出る、料理に興味を持つようになるなど、教育面のメリットも期待できるでしょう。
食事の準備や片付けが楽
アイランドキッチンは仕切りのないフラットな構造のため、食事の準備や片付けがスムーズに行えます。完成した料理をテーブルに運ぶ際や、食事が終わった後の片付けなども手軽に済ませられるでしょう。
また、アイランドキッチンは作業スペースを広く取れる場合が多く、調理道具や洗い終わった食器などの置き場に困らない点も便利です。
おしゃれな空間づくりができる
アイランドキッチンはおしゃれさを理由に選ぶ方が多いです。
アイランドキッチンがおしゃれに見えるのは、空間を開放的に見せる効果があるためです。視界をさえぎる壁や仕切りがなく、数字上の面積より広く感じられるでしょう。このような理由から多くのモデルルームでも採用されています。
また、各メーカーでは部屋全体と合わせてコーディネートできるデザイン性の高いキッチンを充実させているので、好みの素材やカラーを組み合わせ、スタイリッシュなキッチンをつくってみましょう。
アイランドキッチンのデメリットとは?後悔しやすいポイント
アイランドキッチンにはメリットがある一方で、デメリットもあります。アイランドキッチンを設置して後悔しやすいポイントは以下の5つです。
- 広いスペースの確保が必要
- 収納が少ない
- 油跳ねやにおい移りしやすい
- 調理中に子どもが近寄ると危険
- 通常のキッチンよりも費用がかかる
キッチンづくりで失敗しないためにも、アイランドキッチンのデメリットを押さえておきましょう。
広いスペースの確保が必要
アイランドキッチンは四方に通路空間がある分、壁づけのキッチンに比べて広いスペースが必要です。具体的には6畳程度の広さを想定してください。一般的な壁づけキッチンは3〜4.5畳程度の広さであるため、アイランドキッチンの大きさがイメージできるでしょう。
家の大きさは限られているため、キッチンを広く確保するとリビングやダイニングスペースが狭くなり、圧迫感が出てしまいます。また、キッチン部分の面積を広く確保できたとしても、配管の都合で床に段差ができる、天井が低くなるなどの点に注意が必要です。
「求めていた開放感がなかった」と後悔する方もいるため、打ち合わせの段階で完成イメージをしっかり確認しておきましょう。例えば、完成イメージを3Dパースで提示してくれるハウスメーカーもあります。そのようなところに依頼することでミスマッチも減るでしょう。
収納が少ない
アイランドキッチンは壁から離れた配置のため、吊り戸棚を設置できません。また、カウンター下も配管などがあり、見た目ほど収納スペースを確保できない場合が多くあります。キッチンは調理道具、食器、食材、調味料など物が増えやすいため、片付けに工夫が必要です。
また、アイランドキッチンは開放感がある一方、リビング側から丸見えになる特徴もあります。見える位置に物を置くと雑然とした印象を与え、おしゃれなキッチンになりません。特に来客時などは、洗った食器やゴミ箱を隠すスペースがなく、不便に感じるケースも多いです。
油跳ねやにおい移りしやすい
アイランドキッチンは、リビング・ダイニングとの間に壁や仕切りがありません。受け止める場所がなく、油跳ねや料理中のにおいが広がりやすいのが特徴です。油汚れや洗い物の水跳ねはどれだけ気をつけていても床まで届くことが多く、こまめな掃除が必要になります。
また、料理のにおいは壁紙やカーテン、ソファに染み込むとなかなか取れません。におい対策に換気扇をつけると、今度は音がうるさくテレビの音や家族の声が聞こえなくなる問題が生じます。
おしゃれで洗練された空間を保つために、日々の手入れの負担が増える点がデメリットです。
調理中に子どもが近寄ると危険
アイランドキッチンは周囲どの方向からも近づきやすいため、小さな子どもがいるご家庭は注意が必要です。壁づけキッチンやペニンシュラキッチンなど、少なくとも一方が壁に接していればベビーゲートが有効ですが、アイランドキッチンには使えません。
また、フルフラットタイプのアイランドキッチンはフラットであるが故に物が落ちやすい一面もあります。包丁や熱い鍋などを落とすと大きな事故につながる可能性があるため注意が必要です。
トラブルを避けるためにも、子どもを近づけさせない対策を充分検討してからアイランドキッチンを採用するか決めましょう。具体的な子どもの安全対策は後述します。
通常のキッチンよりも費用がかかる
アイランドキッチンは、壁づけの一般的なキッチンよりも費用がかかります。壁から独立した位置へ水回り配管や換気設備を配置する手間がかかるためです。
天井裏や床下には梁や基礎など構造部材があり、配管の穴を開けられないことも少なくありません。リフォームでアイランドキッチンを導入する際は天井面を下げたり、床を上げたりと追加費用が発生します。
また、アイランドキッチンの換気扇は天井づけできる専用製品が必要になり、バリエーションが少なく単価が高いことも費用がかかる原因です。
さらに、アイランドキッチンは四方全てが見えるため、壁づけキッチンより表面を整える化粧材が多く必要になります。オーダーメイドキッチンで規格の部材が使えないとさらに費用がかかり、想定外の出費に後悔する方も多いです。
アイランドキッチン設置を後悔しないための対策
ここまで紹介したアイランドキッチンのメリット・デメリットを踏まえて、本章では後悔しないための対策を紹介します。
- 圧迫感の軽減対策
- 収納力アップ対策
- 油跳ね・におい対策
- 子どもの安全対策
- 費用面の対策
順番に見ていきましょう。
圧迫感の軽減対策
アイランドキッチンの圧迫感の大部分は、レンジフードとカウンターの大きさが原因です。圧迫感を軽減するためにも、以下の対策を実践してみましょう。
- コンロを壁側に配置し、中央カウンターは流し台や作業スペースのみにする
- カウンターをダイニングテーブル兼用として使う
- 部屋のインテリアデザインと統一してひとつの空間に見せる
- 膨張色(暖色系の色)を使わない
- ガラス素材や鏡面素材で抜け感を演出する
また、アイランドキッチンづくりで後悔しないためには、リビング・ダイニングを含めた部屋全体の面積のバランスも大切です。
実際の大きさをメジャーで測ったり、モデルルームを参考にしたりと、具体的にイメージしながら計画してみましょう。
収納力アップ対策
アイランドキッチンの収納不足をカバーするには、以下のようにキッチン周辺に造作収納を作る方法が挙げられます。
- 壁面収納を作る
- パントリーを併設する
- 床下収納を設置する
また、オープンタイプの吊り下げラックもアイランドキッチンと相性が良く、開放感を残しつつ収納力をアップできます。追加工事は費用がかかるため、設計段階から検討してみましょう。
キッチンをスッキリさせるには、物を増やさないことも大切です。定期的に見直し、ひとつ買ったらひとつ手放すなどのルールを設けて物の定量を決めることをおすすめします。
油跳ね・におい対策
アイランドキッチンの油跳ねを防ぐには、オイルガードの設置がおすすめです。透明ガラスであれば、アイランドキッチンの開放感を損ないません。オイルガードの掃除が面倒に感じる方は、折りたたみ式のコンパクトなレンジガードも検討してみましょう。丸ごと水洗いできて、収納場所に困らず便利です。
また、床材は油汚れがつきにくい、もしくはついても拭き取りやすい素材を選びましょう。お手入れが簡単で、劣化しても部分交換ができるフロアタイルがおすすめです。
におい対策には、パワーが強く静音性の高い換気扇を選びましょう。ガスコンロの点火と連動するタイプであれば、料理の際のつけ忘れも防止できます。
なお、換気扇は油汚れが蓄積すると換気能力が落ちるため、定期的な掃除が必要です。換気扇を選ぶ際は、カバーをワンタッチで外せるタイプやフィルターなしタイプなど、掃除の手間の少なさも重視しましょう。
子どもの安全対策
アイランドキッチンに子どもを近づけない対策は難しいため、反対に遊ぶスペースを囲う「ベビーサークル」を活用するのがおすすめです。キッチンから見える位置に設置すると料理をしながらでも子どもを見守れます。
また、安全対策を徹底するためにも、包丁などの刃物や落とすと危険な物は子どもの手が届かない場所に収納しましょう。できればアイランドキッチンの上には何も置かないことをおすすめします。
さらに、昼寝中やテレビに集中している時間など、子どもがキッチンに来ない時間帯に集中して家事をする方も多いです。アイランドキッチンを設置する場合は、子どもの1日の動きをシミュレーションしておくことでスムーズに家事をこなせるでしょう。
費用面の対策
アイランドキッチンの費用を抑えるには、以下の3つを意識してみましょう。
- 規格品で対応できるサイズにする(オーダーメイドにしない)
- リーズナブルなステンレス素材を選ぶ
- オプションを減らす
キッチンのオプションには、食洗機やタッチレス水栓、立ちあがり壁やカウンターの追加など多くの選択肢があります。市販品で工夫できるものや優先順位の低いものは削除しましょう。
なお、設計や工事手配が進んだ段階で変更すると、配管工事や部材のキャンセル手配で余計な費用が発生するため注意が必要です。
アイランドキッチンの相場は?
アイランドキッチンの価格は、メーカーやキッチンのサイズ、オプションの有無、グレードなどにより変動しますが、約150万円〜300万円が相場です。
目安として、間口が15cm大きくなると約40,000〜80,000円の増額になります。その他、付けておけば良かったと後悔する方が多いオプションの相場は以下のとおりです。
オプション項目 | 追加費用の相場 |
キッチンワークトップ素材のグレードアップ (例:メラミン→人工大理石) | 約150,000円〜 |
ガラスパネル追加 | 約50,000円 |
食洗機追加 | 約170,000円 |
キッチンコンセント追加 | 約20,000円 |
予算に合わせてこだわりたいポイントに優先順位をつけ、納得できるキッチンを作りましょう。
なお、新築時は設備費用に加えてオプション費用も住宅ローンに組み込めます。ご自身が組める住宅ローン価格によって家づくりの計画は異なるため、まずはいくらの住宅ローンを組めるのかを確認しましょう。
クレディセゾングループが提携するiYell(いえーる)の「住宅ローンの相談窓口」では、国内100社以上の金融機関と業務提携しているので、ご自身に適した住宅ローンがスムーズに見つかります。専門のローンアドバイザーからオーダーメイドの提案を受けられるため、家づくりを検討している方はお気軽にご相談ください。
おわりに
アイランドキッチンは、壁から独立しており料理動線がスムーズな点が魅力です。開放感があり、おしゃれな空間づくりのために導入する方も多いですが、狭い部屋に導入すると圧迫感が出てしまう点に注意が必要です。
また、壁と接する面がない特徴から、収納が付けられない、油跳ねやにおいが広がりやすい、子どもが簡単に近づけてしまうなど、住み始めてから不便に感じて後悔する方が多いのも事実です。
しかし、上記のような点も事前に対策を講じれば問題ありません。失敗しないキッチンづくりをするためにも、ライフスタイルに合わせた間取りや設備を計画し、事前に対策しておきましょう。