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相続税対策には生前贈与を活用!節税方法と注意点を解説

相続税対策には生前贈与を活用!節税方法と注意点を解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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相続が発生した場合、被相続人の財産を相続する際に相続税が課される可能性があります。相続税の負担を軽減する方法として生前贈与がありますが、どのような方法なのか詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、生前贈与とは何か、基本の節税法、可能なケース、注意点などについて解説します。相続税対策のひとつである生前贈与について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

この記事を読んでわかること

  • 相続税対策としての生前贈与は有効
  • 適切な生前贈与を行わないと節税対策の効果が得られない
  • 生前贈与の取り組み方がわからない場合は税理士などの専門家に相談したほうが確実
相続税申告サポート
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生前贈与とは何か

生前贈与とは何か

生前贈与とは、存命中に子どもや孫などに財産の一部を渡すことです。生前に財産を渡して相続時の財産を減らしておけば、死後に課される相続税の節税になります。

ただし、一定の金額を超えた場合には、贈与税が課されるので注意してください。相続税対策として生前贈与を取り入れる場合は、相続税や贈与税の仕組みを理解してから取り入れることが大切です。

相続税と贈与税の仕組みについて詳しく見ていきましょう。

相続税が課税される基準

被相続人が亡くなった場合、必ずしも相続税が課されるわけではありません。相続税が課されるのは相続財産が基礎控除額を上回っている場合のみです。

相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。例えば、配偶者と子ども2人(法定相続人の数が3人)の家庭では3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除額となり、相続財産が4,800万円以下の場合は相続税が課されません。

相続税率と贈与税率の税率

相続税率と贈与税率を比較すると、贈与税率のほうが高く設定されています。そのため、節税目的の生前贈与で、多額の贈与税が課されたということがないように注意しなくてはなりません。

生前贈与を取り入れる際は、贈与税・相続税の負担をともに抑えられる手段を考えましょう。

生前贈与で相続税対策になる基本の節税法

生前贈与で相続税対策になる基本の節税法

贈与は暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つに分けられます。暦年課税制度(暦年贈与)とは、非課税枠の範囲内の贈与であれば贈与税を課されずに財産を減らせるため、将来的な相続税の負担を軽減できる仕組みです。

また、相続時精算課税制度を利用すると、贈与した財産は贈与時に価値が確定し、相続が発生した際に相続税の対象として扱われます。将来資産価値が上がると相続税の負担を抑えられる仕組みです。

これらの生前贈与をうまく用いることで相続税対策になりますが、それぞれ上限が決まっているので注意してください。各相続税対策を詳しく説明していきます。

暦年贈与による非課税枠の活用

暦年贈与の基礎控除は年間110万円です。そのため、暦年贈与を選択した場合は、毎年110万円までは贈与税を課されずに贈与できます。

非課税枠をうまく活用すれば、贈与税を課されることなくうまく資産を減らせるため、相続発生時に課される相続税を減らせるでしょう。

相続時精算課税制度の活用

相続時精算課税制度は、原則60歳以上の父母または祖父母などから18歳以上の子や孫などに対し、財産を贈与した場合に選択できる制度です。

贈与財産が2,500万円までだと、贈与税の課税対象ではなく、相続発生時に相続税の課税対象として扱われます。超過した分については一律20%の贈与税が課されます。

相続時精算課税制度を活用して不動産のように将来値上がりする可能性がある財産を贈与した場合、贈与時の評価額で相続発生時に相続税を算出するため、相続税の負担が減るでしょう。

相続税対策が可能な生前贈与のケース

相続税対策が可能な生前贈与のケース

生前贈与が必ずしも相続税対策になるとは限りません。そのため、どのようなケースであれば節税が可能なのかを事前に把握しておくことが大切です。

相続税対策が可能な生前贈与のケースとして、以下の4つが挙げられます。

  • 教育資金を目的とする生前贈与
  • 住宅購入や増改築費を目的とする生前贈与
  • 結婚や子育て資金を目的とする生前贈与
  • 夫婦間での贈与で適用となる配偶者控除

それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。

教育資金を目的とする生前贈与

教育資金を目的とする父母や祖父母などからの生前贈与については、受贈者1人につき1,500万円まで贈与税が非課税となります。令和8年3月31日までの贈与が対象です。

非課税制度の対象となるのは教育資金を目的とする生前贈与(教育資金管理契約の締結)をした日に30歳未満の子や孫などです。

住宅購入や増改築費を目的とする生前贈与

住宅購入や増改築費を目的とする父母や祖父母などからの生前贈与についても一定額までは贈与税が非課税となりますが、非課税限度額は以下のように住宅の種類によって異なります。

  • 省エネ等住宅:1,000万円まで
  • それ以外の住宅:500万円まで

令和5年12月31日までの贈与が対象です。制度を利用できるのは、贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上の子や孫などです。非課税限度額は見直しが頻繁に行われているため、非課税限度額や適用条件は最新の内容を確認してください。

結婚や子育て資金を目的とする生前贈与

結婚や子育て資金を目的とする父母や祖父母などからの生前贈与は、受贈者1人につき1,000万円まで贈与税(結婚に際して支出する金銭は1,000万円のうち300万円まで)が非課税となります。令和7年3月31日までの贈与が対象です。

制度を利用できるのは、結婚や子育て資金などを目的とする生前贈与(結婚・子育て資金管理契約を締結)をした日において18歳以上50歳未満の子や孫などです。

夫婦間での贈与で適用となる配偶者控除

夫婦間の贈与で適用となる配偶者控除は、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合に、基礎控除110万円に最大2,000万円まで控除できるという特例です。

ただし、控除を利用できるのは婚姻期間が20年以上の夫婦間に限られます。また、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、取得した居住用不動産に実際に居住しているだけでなく、その後も住み続ける見込みであるといった条件を満たさなくてはなりません。

相続税対策が可能な生前贈与のケース

相続税対策が可能な生前贈与のケース

生前贈与によって相続税対策をする場合には、課税対象となるといったように相続税対策にならないケースもあるので注意してください。

相続税対策として生前贈与する場合の注意点として、以下の5つが挙げられます。

  • 死亡前3年の生前贈与は課税対象となる
  • 定期贈与と判断されると贈与税がかかる
  • 相続時精算課税制度の利用分は相続財産に加算される
  • 受贈者の名義で預金しない
  • 贈与の過程を記録する

それぞれの注意点について詳しく説明していきます。

死亡前3年の生前贈与は課税対象となる

相続税対策として生前贈与をしても、死亡前3年の生前贈与については相続財産として相続税の課税対象となるので注意が必要です。

また、令和5年の税制改正大綱では、2024年1月1日以降の贈与については死亡前3年から死亡前7年が課税対象となることに改正されました。

生前贈与による相続税対策の効果がなくなってしまうため、早めに対策に取りかかりましょう。

定期贈与と判断されると贈与税がかかる

定期贈与とは、贈与契約書を作成して一定期間・一定の財産を贈与することです。例えば、10年間、毎年500,000円贈与するという贈与契約書を作成して贈与した場合には、総額500万円の贈与を分割して贈与したと見なされます。

その結果、1回の贈与額は基礎控除の範囲内であっても、総額500万円に対して贈与税がかかります。毎年贈与する場合は、その都度贈与契約書を作成して定期贈与とならないように注意しましょう。

相続時精算課税制度の利用分は相続財産に加算される

相続時精算課税制度を利用した2,500万円以下の贈与については贈与税が課されません。そのため、贈与税の節税効果は期待できますが、将来相続が発生した際には相続税の課税対象となる点に注意が必要です。

令和5年の税制改正大綱では、2024年1月1日以降に相続時精算課税制度を選択して、贈与した場合に年間110万円以内であれば贈与税・相続税ともにかからないという変更が加わりました。

受贈者の名義で預金しない

子や孫などの受贈者の名義で父母・祖父母などが預金をしていて亡くなった場合には、預金のお金が受贈者のものではなく、被相続人の財産として扱われる可能性があります。名義は受贈者のものでも被相続人の財産として扱われることで相続税の課税対象となるのです。

適切な贈与であることが認められた場合は非課税扱いとなるため、贈与契約書を作成して名義預金を疑われないように気をつけましょう。

贈与の過程を記録する

名義預金のように、生前贈与にて相続税対策したつもりが認められず、相続税の課税対象になっては意味がありません。

生前贈与を適切なものとして認めてもらうには贈与の過程を記録しておくことが大切です。例えば、誰に・いつ・どのような財産を贈与したのか、管理・支配しているのは誰なのかなどです。

適切な贈与ができているか不安に感じる方は税理士などの専門家に相談しましょう。

生前贈与で起こりがちな問題

生前贈与で起こりがちな問題

生前贈与では、以下のような問題が起こりがちなので注意が必要です。

  • 過度の生前贈与をする
  • 現金を手渡しで贈与する
  • 遺留分侵害額請求が起こる可能性がある

それぞれの問題を詳しく解説していきます。

過度の生前贈与をする

生前贈与で相続税対策をすることは重要です。しかし、過度に生前贈与して老後の資金が不足しては意味がありません。

高齢化によって老後に必要な生活費が増加しています。老後を安心して暮らすためにも、老後に必要な生活費を考慮して、余剰分を生前贈与しましょう。

現金を手渡しで贈与する

現金手渡しによる生前贈与であれば贈与したかどうかがわからないので、贈与税を課されずに済むと考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし、税務署の調査で現金手渡しがばれると、追徴課税されるケースがあるので注意が必要です。追徴課税された場合、当初よりも多くの税金を納めなくてはならないため、現金の手渡しではなく、履歴が残るような手段で生前贈与しましょう。

遺留分侵害額請求が起こる可能性がある

相続人の一部のみが多額の生前贈与を受けた場合には、相続時に遺留分の侵害を理由に他の相続人ともめる可能性があるので注意してください。遺留分とは、最低限保障される遺産取得割合です。

相続発生時のトラブルを回避するためにも、税理士などの専門家に相談しましょう。

相続税でお悩みの方は「セゾンの相続」までご相談ください。「セゾンの相続 相続税申告サポート」では相続税に強い税理士と提携して相続税申告をサポートしており、相続の悩みを速やかに解決できるでしょう。

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おわりに 

相続が発生した場合、相続税が課される可能性があります。相続税対策をしていない場合は、多くの税金を課されることになるため、生前贈与による相続税対策が大切です。

しかし、生前贈与は正しい知識を身につけてから取り組まないと、節税効果が得られず、税務署から指摘されて追徴課税となる可能性があるので注意してください。

生前贈与による節税対策に不安を抱いている方は税理士などの専門家に相談しましょう。

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