5~6月頃に鮮やかな花をたくさんつけるサツキは、日本各地に自生しており、丈夫で育てやすいのが特徴です。しかし、正しく剪定しないと花が咲かなかったり、害虫や病気の原因になってしまったりする恐れも。
そこで今回は、サツキの正しい剪定方法をご紹介します。剪定の時期や必要な道具、剪定方法まで詳しく解説するので、ご自宅でサツキを育てている方はぜひお役立てください。
この記事を読んでわかること
- ツツジ科ツツジ属のサツキは品種が多く、丈夫で育てやすいのが特徴
- サツキは生長が早く見栄えが悪くなったり、害虫や病気が発生しやすくなったりするため剪定は欠かせない
- サツキの剪定には木バサミなどの道具を用いて、イメージよりひと回り小さく刈り込んで樹形を整えるのがポイント
- サツキは乾燥に弱く適度な水やりと、年に3回の肥料やりが欠かせない
サツキの基本情報
正式名称は、「サツキツツジ」であるツツジ科ツツジ属のサツキは、4月末~5月に見られるピンクや紫など色鮮やかな花が特徴です。その歴史は長く、古くは江戸時代頃から品種改良されてきたといわれています。
関東地方よりも西側で広く分布しているサツキは、本州から離れた屋久島などの離島で見かけることも珍しくありません。耐寒性があり環境への順応性が高く、庭木や生垣でも力強く育てられるため、園芸初心者にもおすすめの品種です。
また、遊歩道の花壇で栽培されているケースも多いため、道端で見かけたことがある方も多いでしょう。
ツツジとは違う?
ツツジ科ツツジ属のサツキはツツジに花や葉が似ていることから、同じ品種だと思われていることも。学術的に同じ仲間であり、一見同じ品種に見えますが、よく観察すると葉の大きさや質感が異なることがわかります。
ツツジの葉は大きいサイズで10cmほどになりますが、サツキの葉はツツジよりも小さめなのが特徴です。また、ツツジの葉裏には細かい毛が生えていますが、サツキの葉はなめらかなため触るとすぐに違いがわかります。
サツキの木は剪定しないとどうなる?
サツキの木に剪定が必要な理由は大きく以下の4つがあげられます。
- 見栄えが悪くなる
- 成長を妨げてしまう
- 害虫が発生したり病気にかかりやすくなったりする
- 新しい花芽が出にくい状態になる
サツキは生長が非常に早く、剪定をしないとモサモサと枝葉が伸びて見栄えが悪くなります。伸びた枝を放置していると、成長を妨げてしまったり、風通りが悪くなって害虫や病気の被害に遭ってしまったりする恐れもあります。
そうなってしまうと、新しい花芽がつきにくくなり、サツキの美しい花が見られなくなってしまいます。丈夫に育てて開花させるためにも、サツキの木は剪定が欠かせません。
サツキの主な品種について
江戸時代頃から品種改良されてきたサツキの種類は、自然発生も含めると2,000種を超えるともいわれています。赤や紫、白などさまざまな花の色や、覆輪や底白など多彩な柄があるのが特徴です。また、ひとつの枝にこれらの花々が咲き分けるなど花芸のバリエーションもさまざま。
サツキの代表的な品種には、公園や歩道沿いなどにも植えられている大盃(オオサカズキ)や、その枝変わり品種の鹿山(カザン)・珍山(チンザン)などがあります。
サツキの剪定に適した時期
サツキは剪定するタイミングが遅れると、次の年に花が咲かない可能性もあるため、剪定の時期は非常に重要です。サツキが鮮やかな花を咲かせるのは5~6月頃で、花の見頃が過ぎるとすぐに次の年に咲く花の芽を作り始めます。
サツキは枝の先端に花を咲かせるため、次の年に咲く花の芽も枝の先端に作られるのが特徴です。そのため剪定のタイミングを誤って、先端を揃えるように刈り込み剪定を行うと、次の年に全く花が咲かないといった事態が起こることも考えられます。
サツキの新しくできた花の芽を剪定してしまわないよう、花が咲き終わる6月下旬頃に剪定するのがいいでしょう。目安としては、8割ほどの花がしおれてきた頃が剪定の目安です。
まだ花が咲いているのに切り落とすのはもったいないようにも思いますが、しおれていく花をそのままにしておくと見栄えが悪くなってしまいます。さらに、早めに剪定してあげることで、樹木の体力温存にもつながるので、次の年に花付きがよくなる効果も期待できるでしょう。
サツキの剪定作業に必要な道具
サツキの剪定は、剪定する範囲や用途によってさまざまな道具が必要になります。ここではサツキの剪定に使用する主な道具と、あると便利な道具を見てみましょう。
木バサミ
片手でも扱える木バサミは、直径1cmほどの細い枝を切るときに使います。普通のハサミに比べると形が独特なため、慣れるまでは扱いにくく感じるかもしれません。木バサミを選ぶ際は、自分の手にフィットする扱いやすいものを選びましょう。
目安としては自分の手首から指先までの長さと同じくらいのサイズ感が扱いやすく、女性は18cm以下、男性なら22cm程度が目安とされています。自分の手にフィットする木バサミなら、作業しやすく手の皮がむけたりマメができたりしにくいでしょう。
剪定バサミ
木バサミでは切れない太めの枝や幹を切るために使用するのが剪定バサミです。握力の弱い女性や年配の方でも楽に切れる構造になっているため、挿し木などを作るために根元から切り取る場合などにも使えます。
力を加えなくても切れるので、長時間使っていても手が疲れにくく、効率よく細かい部分まで剪定できるのが特徴です。枝葉の多いサツキの剪定には欠かせない道具ともいえるでしょう。
刈り込みバサミ
刈り込みバサミは樹木全体の造形を整えたりするときに使う道具です。柄と刃の長い両手で使うタイプは、効率よく剪定ができますが、扱いが難しく慣れるのに時間がかかる場合があります。
片手で使うタイプは細かい作業もしやすく、扱いがラクですが広範囲の刈り込みには時間がかかってしまうので、用途に合わせて使い分けるのがおすすめです。
その他にあると便利な道具
その他にもエンジン式や電動式で刃を動かし、樹木全体を効率よく刈り込める剪定バリカンがあると広範囲の剪定作業が楽に行えます。こちらもさまざまなタイプが販売されていますが、初心者でも扱いやすい軽量タイプの電動式がおすすめです。
また、あらかじめ剪定シートを敷いておくと、剪定時に切り落とした枝葉の掃除が楽になるのでこちらも用意しておくと良いでしょう。また、サツキの剪定時には革製の手袋を装着すると、とがった枝や虫などから手を守れるので用意しておくと安全です。
サツキの剪定方法
ここではサツキの剪定方法やポイントについて解説します。
刈り込み剪定で樹形を整える
サツキは生垣用に四角くしたり丸くしたりと、自由に刈り込むことができます。ご自身がどのような樹形にしたいかをイメージし、そのイメージよりも一回り小さくなるように刈り込み剪定を行うのがポイントです。
まず、枝を短くしていくように、小枝の手前で太めの枝を切り戻しします。全体的に切り戻しができたら、イメージしている樹形になるよう、刈り込み剪定を行って整えていきましょう。新しい花の芽の位置を確認して、どのように花が咲くかイメージしながら剪定作業をするのがコツです。
透かし剪定で不要な枝を取り除く
刈り込み剪定で理想のイメージよりひと回り小さく剪定し、樹形が整ったら、内側の不要な枝を取り除く透かし剪定を行います。枯れた枝や絡み合った枝などを、根元から切り落としていきましょう。内側の不要な枝を切り落とすことで、健康な枝や葉などに養分を行き渡らせることができます。
また、風通しが良くなることで、病気や害虫対策にもつながるでしょう。透かし剪定は枝の太さに合わせて、木バサミと剪定バサミを使い分けると細かい部分の作業も楽に行えます。透かし剪定が完了したら、仕上げに外観を刈り込みバサミで整えましょう。
太い枝などがある場合は剪定バサミで切り落とし、ときどき遠目から樹形全体を見て、イメージに沿って刈っていくとキレイな樹形に近づけることができます。
サツキの木は強剪定をなるべく避ける!
サツキの木は、枝を根元から切り落とす「強剪定」を行わないようにしましょう。刈り込んだばかりの株を強剪定すると、枯れてしまう恐れがあるからです。しかし、年々大きくなるサツキの木の剪定は時間も労力もかかり大変でしょう。
そんなときは、プロの剪定業者に依頼することもおすすめです。くらしのセゾンが提供する「庭木のお手入れ」サービスなら、出張見積もりを無料で行ってくれます。ご自身で追加の要望をしない限り追加料金なども発生しないので、必要な剪定や伐採のみ依頼することができます。
庭木の専門知識や資格を所有した職人に任せられるので、安心して依頼できるのもうれしいポイントです。また、防虫や消毒なども依頼できるため、庭木の害虫にお悩みの方にもおすすめします。
サツキを剪定する時の注意点!
サツキの剪定での注意点は、前述したように剪定を行う時期を間違えないことです。サツキは花が落ちてから、新しい花の芽をつけるまでの期間が短いため、剪定のタイミングが難しいといえます。
とはいえ、生長の早いサツキを剪定しないままにすると、大きくなり過ぎた枝葉が密集し見栄えが悪くなってしまうでしょう。また、風通しが悪いと害虫や病気の原因にもなりかねません。そのため、サツキはタイミングを見計らってきちんと剪定しましょう。
サツキの花をキレイに咲かせるための手入れポイント
毎年多くの花をつけるサツキは、なんといっても見応えのある開花が魅力です。ここではサツキをキレイに咲かせるための手入れのポイントをご紹介します。基本となる土づくりや水やり、サツキの肥料のやり方なども詳しく解説するので参考にしてみてください。
土づくりと苗選び
サツキは川辺などの湿った場所にも自生する植物で、土が乾いていると株が弱ってしまいます。しかし、排水性が悪くても根腐れを起こしてしまうため、水もちも水はけも良い土を用意しましょう。
地植えの場合は、酸度未調整ピートモスや腐葉土を混ぜて耕します。このとき、水はけが気になったら鹿沼土などを混ぜてあげると良いでしょう。
土づくりができたら、サツキの苗選びです。サツキの苗を選ぶ際は、花や葉の形、花の色などからご自身が好むサツキを選びましょう。5~6月の開花時期に選べば、花の様子がわかりやすいのでおすすめです。枝ぶりが良くて、全体がつややかで元気なものが育てやすいでしょう。
また、購入時に虫がついていないか、病気になっていないかをチェックすることも重要です。
植えつけ
サツキの植えつけは開花している時期を避け、3~6月、9~10月にするのが適しています。鉢植えの場合は、植えつける前に根鉢をほぐして、土を1/3ほど落としましょう。鉢に苗を移したら少しずつ新しい土を入れて植えつけます。
サツキは細い根を土の表面に近い場所へ張り巡らせるため、深く植えないよう注意しましょう。
地植えする場合は、元肥としてマグァンプK大粒を混ぜた土を10cmほど盛ります。そこへ、根をほぐして古い土を半分ほど落とした苗を植えましょう。鉢植えと同様に深植えしないよう注意してください。植えつけが完了したら、たっぷり水をあげましょう。
根が張るまでは土が乾燥しないよう、最低でも2週間は様子を見ながら水やりをこまめに行ってください。水やりの際に、根がしっかりと張るよう、希釈した植物用活力液を与えるのも効果的です。
肥料
サツキは開花後のお礼肥と、秋と冬に1回ずつ肥料を与えるのが望ましいでしょう。まず、開花後の7月までに、1㎡当たり150g程度の肥料をお礼肥として与えてください。そして9月下旬から10月に1回、2月頃に1回与えましょう。
1年で3回に分けて肥料を与えることで、肥料不足になることなく栄養分が土に行き渡り、新芽や花の芽を増加させたり、根張りを強化させたりする効果が期待できます。また、サツキの株を植え替えた際は、植え替えから3週間ほど経ってから施肥するようにしてください。
水やり
前述の土づくりでも説明した通り、サツキの木は土が乾燥すると弱ってしまいます。鉢植えの場合、水切れを起こしやすいため、土が乾く前に水をあげるように気をつけましょう。地植えの場合は、雨が少ないとき以外は水やりする必要はありません。
ただし、夏季は地面の温度があがり、昼間に水やりをすると根腐れしやすくなってしまいます。そのため、気温の低い朝や夕方を見計らって水やりをしてください。
増やし方
サツキは比較的簡単に挿し木で増やすことができる植物です。まず、開花後に伸び始めた新梢が硬くなったところで、枝を15cmほどの長さに切り取ります。そして、鉢植えの土に水をたっぷり含ませて挿し木しましょう。
土が乾燥しないよう日光が当たり過ぎない場所へ置き、こまめに水やりをしてください。花が単色や覆輪、絞りなど咲き分ける品種の場合、親株のような変化が出ない場合があるので枝を見極めて挿し木しましょう。
害虫と病気
サツキに発生しやすい害虫は、ツツジグンバイムシ、ハダニ、ベニモンアオリンガなどといわれています。ツツジグンバイムシやハダニは、乾燥しやすい時期に発生し、サツキの葉の汁液を吸い、葉を白く変色させるのが特徴です。
ベニモンアオリンガという蝶の幼虫は4~6月、9~10月に発生し、新芽やつぼみの内部を蝕んでしまいます。そして、サツキに起こりやすい病気が葉に褐色の斑点が出る「褐斑病」です。これらの虫や病気の発生に気がついたら早急に対応する必要があります。
まず、被害を受けた部分や症状が見られる部分を切り落とします。そして、害虫用スプレーや治療剤をサツキ全体に散布してください。ご自身での対処が難しい場合は、プロに害虫駆除を依頼するのがおすすめです。
おわりに
丈夫で育てやすく、挿し木で簡単に増やせるサツキは、園芸初心者にもぴったりです。しかし、剪定するタイミングを誤ってしまうと新しい花の芽も切り落としてしまうため、花が落ちる6月下旬を見計らって剪定するよう心がけましょう。
庭木を美しく彩ってくれるサツキを植えるのであれば、樹形にもこだわって素敵なガーデニングライフを楽しんでみてはいかがでしょうか。