更新日
公開日

遺産相続における不動産の分け方は4種類|特徴やデメリットを把握して最善の選択を

遺産相続における不動産の分け方は4種類|特徴やデメリットを把握して最善の選択を
セゾンのくらし大研究 編集部

執筆者

セゾンのくらし大研究 編集部

豊かなくらしに必要な「お金」「健康」「家族」に関する困りごとや悩みごとを解決するために役立つ情報を、編集部メンバーが選りすぐってお届けします。

不動産を相続するときの遺産分割がわからないと悩んでいる方は、多くいらっしゃるのではないでしょうか?分割方法は4種類ありメリット・デメリットがあるため、分割方法の内容を理解しておかないと、相続時にトラブルに発展してしまうかもしれません。

本記事では、4種類の遺産分割方法や不動産を相続する手続きについて解説します。記事を読み進めていただければ遺産分割の方法がわかり、スムーズに相続が行えることでしょう。

この記事を読んでわかること

  • 遺産分割の方法は「現物分割・換価分割・代償分割・共有分割」の4つある
  • 不動産を相続するには「5つのステップ」が必要
  • 不動産を相続するときには「遺産分割調停・評価方法・寄与分」についての悩みが多い
相続不動産の有効活用
相続不動産の有効活用

遺産相続における不動産の分け方

遺産相続における不動産の分け方

不動産を相続する場合の分割方法は、次の4つのパターンがあります。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割
  • 共有分割

各分割方法には特徴があるため、内容を理解して相続しなければいけません。ここからは、不動産の分割方法について解説します。

不動産を現状のまま分ける「現物分割」

現物分割とは、不動産は不動産のまま、株は株のままなど現物をそのまま形状を変えずに相続する方法です。

土地の場合は、各相続分に土地を分割して相続させる方法も現物分割に該当します。

土地は分割しても土地のままであり、大きさが変わっただけで現物のままと判断されるからです。

現物分割のメリット・デメリットは、次のとおりです。

【現物分割のメリット】

  • 他の相続方法に比べて手続きが簡単
  • 相続財産の評価に関するトラブルが少ない
  • 不動産を残すことができる

現物分割には、不動産を換金する必要がない、分け方が単純というメリットがあります。

相続財産を細かく分ける必要がないため、詳細な相続財産評価の算出も必要ありません。また、不動産を換金しなくてもよいため、実家などの思い入れのある場所を残しておくことも可能です。

【現物分割のデメリット】

  • 分割した境界線上に建物があったら解体しなければならない
  • 分割後の形状や道路の接し方で不公平感が生まれる
  • 土地を分筆できないケースがある

現物分割のデメリットは、主に土地を分割するときに発生します。土地の分筆ラインに建物が乗っている場合には解体しなければならず、分筆後の土地の間口の広さや接道方向に不満がでるケースもあります。

また、土地の形状によってはどうしても分筆ができず、土地の売却が必要な場合もあることには注意しなければいけません。

不動産を現金化して分ける「換価分割」

換価分割とは、不動産を売却して金銭に変換し、金銭を相続持分に分ける方法です。

すべての財産を分割する必要はなく、特定の財産のみを分割して相続財産の平準化を図るのも換価分割に該当します。

換価分割のメリット・デメリットは、次のとおりです。

【換価分割のメリット】

  • 公平に遺産分割できる
  • 相続税の納税がしやすくなる
  • 売却してしまうので維持管理費がかからない

換価分割をすると、現金で相続できるため相続人全員に均等に財産を分けられます。

原則、相続税は現金納付であるため、換価分割で現金を相続すれば納税しやすくなります。

また、不動産を所有していると維持管理の費用がかかりますが、売却してしまうためランニングコストがかかりません。

【換価分割のデメリット】

  • 買い手がつかなければ売却額を下げなければならない
  • 譲渡所得税が発生する可能性もある
  • 思い入れのある建物や土地を手放すことになる

換価分割は不動産を売却するためには買い手を見つける必要があります。しかし、長期間売却できない場合、売却価格を下げなければいけないケースがあります。

そして、売却できたとしても、譲渡所得税が発生する可能性もあることには注意しなければいけません。譲渡所得税は売却金額によっては、数百万円の課税額になるケースもあります。

また、相続した財産が実家などの場合、思い入れのある不動産を売却しなければいけなくなるのもデメリットといえます。

代表で誰かが相続する代わりに資金調整する「代償分割」

代表で誰かが相続する代わりに資金調整する「代償分割」

代償分割とは、特定の相続人が法定相続分を超える財産を相続したとき、超えた部分を自分の財産で他の相続人に補填する方法です。

例えば、不動産5,000万円と現金3,000万円の相続財産を、兄弟2人で分けるとします。そして、兄が不動産、弟が現金を相続したと仮定すると、兄は弟よりも2,000万円多く受け取ることになってしまいます。

これでは不公平な相続になるため、兄は自分の財産を1,000万円分弟に渡し各自4,000万円相続するように平準化させるわけです。これが代償分割です。

代償分割のメリット・デメリットは、次のとおりです。

【代償分割のメリット】

  • 不満が出にくい
  • 不動産の資産価値が落ちない
  • 不動産を残せる

代償分割は、相続人に対して公平に財産を渡せるため不満が出にくい分割の方法です。

また、代償分割を行えば不動産をそのまま残すことができ、解体などの必要もなく資産価値を保持できます。

【代償分割のデメリット】

  • 不動産を評価してもらう必要がある
  • 不動産を相続した方に代償金の支払い能力が必要
  • 贈与税が課税される可能性もある

代償分割をするときには不動産の正確な価値を算出しなければならず、評価で揉めるケースがあります。そして、評価に納得したとしても、不動産を相続した方に代償分の資力がないと分割できません。

また、代償した財産は遺産分割協議書に「代償分割する」と記載がなければ、贈与税の課税対象になるため注意しなければいけません。

複数人が不動産の所有権を有する「共有分割」

共有分割とは、不動産を相続持分割合に応じて共有名義にして分割し相続する方法です。

たとえば、姉妹3人でひとつの不動産を共有分割したとします。このような場合は姉妹それぞれが、ひとつの不動産の1/3の共有持分を持つということになります。

共有分割のメリット・デメリットは、次のとおりです。

【共有分割のメリット】

  • 相続人それぞれの固定資産税などの支払い負担が軽くなる
  • 売却時に税金控除をそれぞれの共有者が利用できる
  • 相続人同士遺産分割の協議が困難なときに最終手段として使える

共有分割は不動産を数人で共有するため、固定資産税の支払いも分けられ負担が少なくなり、売却するときにもそれぞれが税金の特例を利用できます。そのため、税金の負担を抑えるには共有分割がよいといえます。

また、共有分割は相続の仕方としてまとめやすいため、話し合いがつかないときの最終手段として利用される方法です。

【共有分割のデメリット】

  • リフォームや売却などをしたい場合に共有持分権者の同意が必要
  • さらなる相続が発生すると持分より細分化される
  • 共有持分だけ売却される恐れがある

共有名義の不動産は売却するときには共有者全員の同意を得なければならず、共有する建物の解体や大規模修繕などをする場合は変更行為となり共有者全員の同意が必要です。もし共有者ひとりでも売却や大規模修繕に反対してしまうと、処分も維持管理も難しくなります。

また、共有持分のひとりに相続が発生すると、持分がさらに細分化されてしまい収拾つかなくなるケースも出てくるため注意しなければいけません。共有持分は単独の意思で売却できてしまうため、知らない間に共有者が知らない人になっているケースがあることにも注意が必要です。

不動産を分割して相続するまでの流れ【5ステップ】

不動産を分割して相続するまでの流れ【5ステップ】

不動産を分割して相続をするには、5つのステップが必要です。

  • ステップ1:遺言書を確認する
  • ステップ2:相続財産の内容や評価額を調べる
  • ステップ3:遺産分割協議で不動産の分け方を決める
  • ステップ4:相続登記に備えて必要書類を揃える
  • ステップ5:法務局で相続登記の手続きを行う

上記のように不動産を分割して相続するまでには、手続きや書類の準備が必要になります。

どのような手続きや書類が必要なのか、順に見ていきましょう。

ステップ1|遺言書を確認する

相続を開始するときには、まず遺言書があるか確認します。

遺言書の内容は、法定相続分よりも優先されるためです。遺言書が残されている場所はさまざまであり、どこにあるのか隅々まで探しましょう。遺言書がないと思い込み遺産分割協議を始めてしまうと、協議後に遺言書が見つかった場合には相続がやり直しになるケースもあります。

なお、遺言書が公正証書で作成されている場合は、公証人役場で存在の有無を確認できます。相続が開始されたときには、遺言書がないか公証人役場にも確認しましょう。

その他にも自筆の遺言書が見つかったときには、家庭裁判所で検認という手続きを行う必要もあります。

ステップ2|相続財産の内容や評価額を調べる

遺言書がなく遺産分割協議をすることになった場合、相続財産の内容や評価額を調べましょう。

調査するのは不動産だけでなく、預金額や有価証券の価値なども確認しなければいけません。相続をするためには、被相続人の財産の種類・価額をすべて洗い出す必要があります。

すべての財産の内容が把握できないと、公平な相続が行えないからです。

調査する財産はプラスの財産だけでなく、借金などのマイナス財産も含みます。

ステップ3|遺産分割協議で不動産などの分け方を決める

遺産分割協議で不動産などの分け方を決める

財産の範囲が確定したら、遺産分割協議を行い不動産や預金などの分け方を決めます。

遺産分割協議が整った場合には、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には相続人全員の実印を押印し、印鑑証明も全員分の添付が必要です。また、遺産分割協議書は相続人がそれぞれ原本を保管するため、協議書の数だけ印鑑届出書も必要になります。

なお、遺産分割協議では誰にどの財産をどれだけ分配するのかという詳細を記載しなければいけません。そして、代償分割や換価分割するときには、その旨も記載する必要があります。

ステップ4|相続登記に備えて必要書類を揃える

遺産分割協議書の作成が完了したら、相続登記に必要な書類を準備します。相続登記に必要な主な書類は、次のとおりです。

書類概要
登記申請書法務局で入手し、必要事項を記入する
被相続人の戸籍謄本出生から死亡までが記載されているもの
被相続人の住民票の除票登記上の被相続人と戸籍上の被相続人が同一人物か確認するもの
遺産分割協議書と
相続人全員の印鑑証明書
遺言書がない場合遺産の分割方法を確認するためのもの
相続関係説明図相続関係を表す図面
固定資産税評価証明書相続登記をするときに必要な登録免許税を計算するためのもの
最新年度の固定資産税評価証明書が必要
収入印紙相続登記に課税される登録免許税納税のためのもの
登録免許税は相続する不動産の評価額により変動する
遺言書遺言書がある場合遺産の分割方法を確認するためのもの
返信用封筒相続登記完了後に返還される書類を郵送するためのもの

相続した不動産を売却するためには相続登記が必要であり、上記のような書類を準備しなければ登記できません。

なお、相続登記は現在、義務ではありません。しかし、2024年4月1日には法律が改正され、相続登記の申請が義務化されます。

相続登記が義務化が施行されると、相続で不動産を取得したと知ったときから3年以内に相続登記をしなければいけなくなります。そして、義務化されてから相続登記を怠ると、100,000円以下の過料が科されるため注意しなければいけません。義務化される前に相続し、未登記の方も義務化から3年以内に行わないと罰則の対象になります。

遺産分割協議書の作成や相続登記の手続きについては、内容が複雑であるため専門家に任せましょう。

参照元:法務局|相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)

ステップ5|法務局で相続登記の手続きを行う

必要な書類を準備したら、法務局で相続登記の手続きを行います。必要書類に不備がなければ、相続登記の手続きは完了です。

なお、相続登記が行われるまで、おおよそ1~2週間かかります。相続登記が終わると、法務局から登記原因証明情報が交付されます。

窓口か郵送で受け取れますが、窓口の場合は登記申請したときの印鑑が必要になるため準備しておきましょう。

参照元:法務局|相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)

遺産相続で不動産を分割する際によくある疑問

遺産相続で不動産を分割する際によくある疑問

遺産相続で不動産を分割する際によくある質問は、次のとおりです。

  • 不動産の分け方で意見が割れたときは?
  • 不動産の評価方法は何が基準になる?
  • 不動産の相続でも寄与分は認められる?
  • 代償分割で実家を相続したいけれど、まとまったお金がない場合は?

ここからは、上記の質問に回答していきます。

不動産の分け方で意見が割れたときは?

不動産の分け方で意見が割れたときは、遺産分割調停を申し立てるとよいでしょう。

遺産分割調停とは、相続人どうしが裁判官や調停員からのアドバイスを受けつつ、遺産分割について相続人全員が合意を目指す制度です。

遺産分割調停を申し立てるには、家庭裁判所に必要書類と相続人1人につき1,200円の手数料を納めなければいけません。調停は1ヵ月に1回程度開催され合意まで1年以上かかることもあるため、時間がかかると考えておきましょう。

また、調停で話し合いがまとまらなかった場合は、審判手続に移ります。審判手続は裁判所が遺産分割方法を決定する手続です。

参照元:裁判所|遺産分割調停

不動産の評価方法は何が基準になる?

不動産の評価方法は、一般的に建物は固定資産税評価額、土地は相続税路線価を用います。固定資産税評価額は、自治体から取得できる固定資産税評価証明書に記載されています。

また、土地の相続税路線価は国税庁が公表している「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」で確認が可能です。路線価図で自分の土地がある場所を探し、土地の前面道路にかかれた数字と相続する土地の面積を掛ければ、土地のおおよその評価額がわかります。

たとえば、相続する土地の面積は200㎡、路線価で確認した数字は600(千円/㎡)と書かれていたとします。この場合の計算方法は、次のとおりです。

200㎡ × 600,000円/㎡ = 120,000,000円

このシミュレーション計算の場合の土地評価額は、1億2,000万円ということになります。

不動産の相続でも寄与分は認められる?

不動産の相続でも寄与分は認められます。

寄与分とは、相続人が被相続人に対して特別な寄与(貢献)をしたことにより被相続人の財産の増加・保持に貢献した場合、法定相続分を超えた金額を相続させられる制度のことです。

寄与分が認められた主なケースは、次のとおりです。

  • 長期間、農地の開拓や田畑の整備を行い、親の代わりに農作物の収穫量増加に貢献した
  • 今までやっていた仕事を辞めてまで親がやっていた家業を無償で手伝っていた
  • ヘルパーを依頼せず親の介護をしてすべて自分で行った

上記のように「特別な」貢献が寄与分として認められます。

ヘルパーを呼んで介護するなどは普通のことであり、特別と認められる事情がないといけません。

代償分割で実家を相続したいけれどまとまったお金がない場合は?

代償分割で実家を相続したいけれどまとまったお金がない場合、リースバックで相続した自宅を売却して代償金にするという方法があります。

リースバックとは、自宅をリースバック会社に売却した後も、買い取ってもらった自宅を借りて住み続けられるサービスです。

このように相続時にはさまざまな対処法があり、不動産相続の専門家に相談すれば最適なプランを提示してもらえます。相続するときに不動産の悩みがあるのであれば「セゾンの相続 相続不動産の有効活用」に相談してみましょう。

セゾンの相続 相続不動産の有効活用の詳細はこちら

相続不動産の有効活用
相続不動産の有効活用

さらに、セゾンファンデックスでは「遺産分割ローン」という金融商品を用意しています。

セゾンファンデックスの遺産分割ローンは、不動産を共有名義で相続した後、他の相続人の共有持ち分を買い取る際に利用できるローンです。

例えば、複数人で相続した自宅に相続人ひとりが住むことになったケースなどで利用できます。

セゾンファンデックスでは、相続不動産に関するお悩みを解決すべくさまざまなサービスも展開しています。相続時の不動産活用についてお悩みであれば、お気軽にお問い合わせください。

おわりに

相続時に不動産を取得する場合、次の4つの分割方法があります。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割
  • 共有分割

どの分割方法にも一長一短があるため、内容を理解して遺産分割協議を進めていきましょう。また、不動産を相続するには5つのステップを行う必要があります。

分割方法の内容や手続き方法は専門的な知識や判断が必要になることも多く、内容を理解できない場合は不動産相続のプロフェッショナルに相談しましょう。プロフェッショナルに相談すれば適切なアドバイスが得られ、相続をスムーズに進められることでしょう。

よく読まれている記事

みんなに記事をシェアする