人の死は、いつも突然訪れます。入院している方で、「余命〇ヵ月」などのように言われている方であっても、死のタイミングそのものは突然にやってくるものです。そのため、どれほど準備をしても、「完璧な準備」はできません。
しかしそれでも、生前にしっかり準備をしておくかどうかで、残される方の負担が変わったり、自分の心構えが変わったりします。ここでは、生前準備とは何か、生前準備で行うべきことは何かについて解説していきます。
この記事を読んでわかること
- 生前準備とは、亡くなる前に準備を行うことを指す
- 生前準備では、財産の整理をしたり、デジタルデータをまとめたり、老後~死亡後の希望を書き綴ったりする
- 生前準備は、前向きな気持ちで、優先順位を決めて少しずつ行う。また、家族に理解を得ることも必要
- 生前準備に利用できるサービスとして、遺言信託やお葬式サポートなどがある
生前準備とは?
この記事では、「生前準備とは何か」について解説していきます。まずは、「生前準備とは何か」「生前準備の必要性」について解説していきます。
生前準備って何をするの?
生前準備とは、自分の老後~死亡時~亡くなった後のことを考えて、生きているうちにさまざまな準備をすることをいいます。
かつては生前準備は「縁起でもないこと」と思われていましたが、「終活」という言葉が一般的になった現在では、多くの方がこれに取り組んでいます。
生前準備は必要?
生前準備は、「絶対に行わなければならないもの」ではありません。ただ、生前準備をしっかり行うことで、残りの人生を前向きに生きられるようになります。また、自分が認知症などを患った後に受ける医療の希望や、葬儀やお墓の希望も伝えられます。そのため、最後の最後まで「自分らしい人生」を生き抜きたい方にとって、生前準備は非常に有用なものだといえます。
加えて、生前準備を行うことで、残された方たちの負担も大きく軽減されることも忘れてはいけません。財産目録などを作っておくと、残されたご家族は「財産状況を調べる手間」を省くことができ、相続関係の手続きもしやすくなります。
生前準備でやること
生前準備の重要性を述べても、「何を記したらいいかわからない」という方も多いことでしょう。そのためここでは、生前準備で行うべきことを記していきます。
なお、生前準備を行うときには「エンディングノート」を使ってください。これは下記で紹介する財産目録や葬儀の希望などを記すものです。残されたご家族はこれを参照にしながら手配を行うことが多いので、1冊手元に置いておきましょう。
財産目録を作成する
自分の持っている財産目録を作ります。この際には、現金や預貯金などのプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産について記すことも必要です。特に借金が多い場合は、必ずこれを記します。
人は財産を相続しようとしたとき、「マイナスの財産の方が、プラスの財産よりも大きい」となったときは相続放棄という選択肢を取れますが、この選択肢が取れるのは相続開始を知ったときから3ヵ月以内と決められています。
まったく手がかりのない中で、「あるかもしれない借金」を探すための期間として「3ヵ月間」は決して長いものではないため、場合によっては相続放棄が間に合わず、単純相続(マイナスの遺産もプラスの遺産も受け継ぐ)になってしまう可能性があります。ご家族のことを考えるのであれば、この「財産目録」の作成は非常に重要です。
また、保険などについても記載しておきましょう。
身辺整理をする
必要なものと不要なものを分けて、身辺整理をしていきましょう。「いつか使うかもしれない(けれど、今は必要ではない)」と判断できるものは、積極的に捨てていきます。
また、このときに、人間関係の整理もしましょう。亡くなったときに伝えてほしい相手の名前とその住所、電話番号を記しておくと、残された家族が非常に楽になります。
口座や不動産などの生前贈与を検討する
財産目録の作成と同時進行的に行っていきたいものとして、「生前贈与の検討」があります。ここでは詳しくは記しませんが、生前贈与を行うことで相続税が発生しない(あるいはその負担が軽くなる)場合もよくあります。
また、エンディングノートに記した「遺産の分配の方法」は法的な拘束力を持ちえませんが、生前贈与ならば確実に自分が渡したい方に財産を渡すことができます。
相続人を把握する
相続権のある人を正確に把握するために、戸籍謄本を取得しておくこともおすすめします。
なお、法定相続人以外の他者に財産を受け継がせる場合は、遺言書の作成が必須であることも覚えておきましょう。エンディングノートに「この宝石は、〇〇さんに」などのように記しても、エンディングノートには法的拘束力はありません。
デジタルデータの整理をする
パソコンやスマホ、デジタルカメラのデータ整理もこまめに行いましょう。なお現在は「パソコンに一定期間触っていないと、データが消えるソフト」なども出ています。「家族であっても見られたくないデータがある」という人は、これを利用するのも良いでしょう。
また、現在加入しているサブスクサービスなどの種類を書き出し、それぞれのパスワードなどを併記しておくことも重要です。インターネットを介したサブスクは、ご家族がその存在を把握しにくく、「もう使っていないのに料金が引き落とされた」などのような状況に陥りがちです。
終末期医療について記載する
人はともすれば、「自分は死ぬまでちゃんと自分のことができて、自分で意思決定ができる」という誤解を抱きがちになります。しかし健康寿命と生物としての寿命の間には差があり、認知症などで「自分のことを自分で決められなくなる」という状況に陥ることも非常によくあります。
そのような状況に陥ったときを想定して、終末医療(ターミナルケア)の希望を記しておきましょう。延命治療の有無やその判断基準などをエンディングノートに書いておくことで、「死ぬ前の時間」を自分の希望通りのかたちで過ごせる可能性が高くなります。
葬儀の希望をまとめる
人は、人生で3回必ず主役になるときが訪れるといわれています。それが「生まれたとき」「結婚式をしたとき」「亡くなったとき」です。自分にとって最後の主役の場面となる「葬儀」の希望も、エンディングノートに記しておきましょう。
自分の信仰する宗教・宗派はどこか(菩提寺などがあればそれも)、どこの葬儀会社に依頼するのか(特に生前契約している場合は必須)、どんな葬儀にしたいのかを書いておきます。
また、遺影の生前撮影を行ったり、遺影に使いたい写真を過去のアルバムの中からピックアップしたりしておくと、ご家族の手間を軽減できます。
お墓をどうするか決める
お墓は、その方にとって最後のすみかとなる場所です。そのため、「どのようなかたちで埋葬されたいか」を記しておくことが求められます。
「先祖代々の墓でいい」「新しくお墓を建ててほしい」「樹木葬や海洋葬にしてくれ」「できる限りお金がかからない方法で葬ってほしい」などのように、具体的な希望を記しましょう。なお、すでに生前に墓地を購入しておいた場合は、その場所や連絡先を必ず記載します。
生前準備を円滑に行うコツ
生前準備は、一朝一夕ではできないものです。時間も手間もかかるものであるため、途中で面倒になってしまう人もいるでしょう。しかし以下の3つの点に気をつければ、生前準備を円滑に行うことができます。
前向きな気持ちで行う
生前準備は、「死出への準備」であると同時に、「残された時間を自分の心に沿って生きるための準備」でもあります。死のことを具体的に考えてそれに対して自分なりの答えを出していくことは、これからの人生を前向きに生きるための方法となります。
前向きな気持ちで生前準備に取りかかると良いでしょう。また、生前準備の最中に、「今まで連絡をしていなかったけれど、思い切って連絡をしてみたい」という方の存在に気づけたり、「今までは意識していなかったけれど、いろんな人に支えられてきたのだな」とい感じられたりするかもしれません。
優先順位を決めて少しずつ取りかかる
生前準備で行うべきことは多くあり、どれから手をつけたらいいかわからなくなることもあります。その場合は、優先順位を決めて少しずつ取りかかると良いでしょう。
例えば、すでに施設などに入っている方の場合は「物」の整理はすでにあらかた済んでいるため優先順位が低くなりますが、「一軒家に、自分ひとりで住んでいて、物が多い」という方の場合は物の整理が優先されます。
「不動産類はすでに処分していて、現金化している」という方は財産目録を作るのにそれほど手間取りませんが、「親や親族から不動産を受け継いでいるが、その詳細を把握していない。自分の持っている土地建物も維持管理していない」という方の場合は財産目録の作成に早めに取りかからなければなりません。
このように、「何を優先すべきか」は人によって異なります。そのあたりも考えたうえで、「どこから手をつけるか」を決めていきましょう。
家族に生前準備について知ってもらう
「生前準備をしているという情報」を、家族と共有することは非常に重要です。中には「縁起でもない」と感じる人もいるかもしれませんが、多くの場合は好意的に受け止められるでしょう。
家族が生前準備を好意的に受け止めている場合、家の片付けなどを手伝ってもらえる可能性がありますし、自分自身の意向もより伝えやすくなります。また家族と思い出話をするきっかけにもなるでしょう。
生前準備で利用できるサービス
ここからは、生前準備で利用できるサービスについて解説していきます。
遺言信託
遺言信託とは銀行が行っているもので、申し込んだ方の遺言書の作成・保管、相続に関する手続きをサポートしてくれるサービスです。「遺言書を作りたいが、その書き方がわからない」「遺言書を手元で保管するのが不安」などのような悩みを抱えている人にとっては、非常に有用なサービスだといえるでしょう。
繰り返しになりますが、エンディングノートは法的な拘束力を持ちません。法的な拘束力を持つものは、正しい書式で書かれた「遺言書」だけです。
セゾンの相続
「セゾンの相続 お葬式サポート」では、経験豊富な提携専門家のご紹介も可能ですので、ご希望に沿った葬儀プランの提案を受けることができます。お気軽にお問い合わせください。
おわりに
かつては「縁起でもない」と考えられていた生前準備も、現在では多くの方に受け入れられるものへと変化しました。また、生前準備を行うことで、「これからの人生」に対しても前向きになれます。
「残していく家族に負担をかけたくない」「最後のときまで、自分は自分らしく生きたい」「人に見られたら困るデータがある」などのような方は、生前準備を積極的に行っていった方が良いでしょう。