相続などによって空き家を取得した方の負担になるのが、固定資産税や都市計画税などの税金です。また、空き家は維持管理の手間もかかるため、建物を解体して更地にしようと考えている方も多いでしょう。
しかし、空き家を解体したり、維持管理をせずに放置したりすると固定資産税の軽減措置がなくなり、納める税金が増えてしまう恐れがあります。
そこで、このコラムでは空き家と固定資産税の関係や、空き家を所有するリスクについてご紹介します。
この記事を読んでわかること
- マイホームだけでなく、空き家にも税金は課される
- 更地にしたり、特定空き家に指定されたりすると固定資産税が最大で6倍になる
- 空き家を所有すると防犯面のリスクや倒壊の不安がある
- 早い段階で売却や賃貸、管理委託、土地の活用を考える必要がある
空き家にかかる税金
現在住んでいる住宅だけでなく、空き家にも税金が課されます。対象となる空き家の税金は以下のとおりです。
- 固定資産税
- 都市計画税
それぞれについて詳しくご紹介します。
固定資産税
固定資産税とは、以下のような固定資産を所有している方に課される税金です。
- 土地:田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、その他の土地(雑種地)
- 家屋:住家、店舗・工場(発電所・変電所含む)、倉庫、その他の建物
- 償却資産:構築物、機械・装置、工具・器具及び備品、船舶、航空機などの事業用資産
参照元:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|固定資産税・都市計画税の概要
不動産の場合、土地や建物が課税対象となりますが、空き家の場合も同様です。なお、納税義務があるのは1月1日時点の所有者になります。
固定資産税の計算式は以下のとおりです。
- 土地:課税標準額×税率1.4%
- 家屋:固定資産税評価額×税率1.4%
- 償却資産:課税標準額×税率1.4%
ただし、住宅用地には課税標準の特例措置が設けられており、税負担が軽減されます。
区分 | 固定資産税 | |
小規模住宅用地 | 住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分 | 価格×1/6 |
一般住宅用地 | 小規模住宅用地以外の住宅用地 | 価格×1/3 |
軽減措置の特例は建物が存続する限り継続して適用されます。
都市計画税
都市計画税とは、都市計画法による市街化区域内に所在する土地・家屋の所有者に課される税金です。主に都市整備などの費用に充てられます。
都市計画税の計算式は以下のとおりです。
- 土地:課税標準額×税率0.3%
- 家屋:固定資産税評価額×税率0.3%
税率は自治体によって異なりますが、上限は0.3%に設定されており、固定資産税同様に住宅用地には課税標準の特例措置が設けられています。
区分 | 都市計画税 | |
小規模住宅用地 | 住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分 | 価格×1/3 |
一般住宅用地 | 小規模住宅用地以外の住宅用地 | 価格×2/3 |
空き家の固定資産税について
固定資産税・都市計画税の概要が分かったところで、ここからは空き家の固定資産税の詳細についてご紹介します。納税義務者や滞納した場合の罰則、軽減措置について理解を深めましょう。
納税義務者は所有者
空き家に課される固定資産税の納税義務者は、1月1日時点の所有者です。
年末までに相続などで取得し1月1日を迎えた場合、新所有者がその年の納税義務者となります。複数人で所有している場合、持分の割合に応じて負担するのが一般的です。納税通知書は代表者にしか届かないため、未払いなどが発生しないように、所有者同士で事前に打ち合わせを行いましょう。
なお、年の途中で売買した場合、年間の固定資産税を引き渡し日に日割り精算するのが一般的です。
滞納した場合はどうなる?
固定資産税を滞納すると、以下のようなペナルティを受けます。
- 延滞金が発生する
- 督促状が届く
- 差し押さえを受ける
固定資産税の延滞金は以下のように設定されています。
- 納期限の翌日から1ヵ月を過ぎる日まで:年率2.4%
- 納期限の翌日から1ヵ月経過した日以降:年率8.7%
納期限を過ぎると本来より多くの税金を納めなければならない点に注意しましょう。
納期限から20日程度で自治体から督促状が届きます。この段階で納付すると高額な延滞金は発生しませんが、督促状を無視すると不動産の差し押さえを受ける可能性があるため注意が必要です。
最悪の場合、不動産を手放さなければならなくなるため、固定資産税は滞納せずに納期限までに支払いましょう。もしも納期限までに支払えない事情がある場合は、事前に自治体の窓口に相談するのがおすすめです。自治体によっても対応は異なりますが、分納が認められる可能性があります。
空き家でも住宅用地の特例は適用される
住宅用地には課税標準の特例措置が適用されるとお伝えしましたが、適用されるのはマイホームだけではありません。通常の空き家であれば、同様に固定資産税の軽減が受けられます。
土地に住宅用家屋がある限り、継続して軽減措置が適用されると考えましょう。
更地にすると特例措置はなくなる
住宅用地の特例措置が適用されるのは土地に住宅用家屋がある場合のみです。建物を解体して更地にすると特例措置を受けられなくなります。
そのため、空き家の維持管理が大変という理由で解体してしまうと、固定資産税が増えてしまう点に注意しましょう。
小規模住宅用地の場合、課税標準の1/6に、都市計画税は同じく1/3にそれぞれ軽減を受けているため、更地にして特例措置が受けられなくなると固定資産税はこれまでの最大6倍の金額を納めなければなりません。建物の解体を検討している方は、それぞれの費用が家計に与える影響を踏まえて判断しましょう。
固定資産税が6倍になる?「特定空家」とは?
通常の空き家は住宅用地の特例措置を受けられますが、「特定空家」に指定されると特例措置を受けられなくなります。最大で固定資産税が6倍になるため、どのような基準で特定空家に指定されるのかを把握しておきましょう。
ここからは特定空家についてご紹介します。
- 空き家との違い
- 特定空家に指定される基準
- 指定された場合のデメリット
- 指定後の流れ
それぞれについて見ていきましょう。
空き家との違い
「空き家」とは、文字通り所有者がいるにも関わらず人が住まず利用されていない家を指します。空き家の定義は幅広く、単に居住者がいない状態を指すだけであり、空き家の期間や建物の状態に関する要件は定められていません。
一方、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づいて定義されているのが「特定空家」です。適切な維持管理がされておらず、周囲に対して問題を引き起こす可能性が高いと判断された場合に、自治体によって特定空き家に指定されます。
特定空家に指定される基準
特定空家に指定される基準は以下の4つです。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
このように空き家の管理状態に加え、周辺環境への影響を踏まえて特定空家として指定されます。
指定されるとどうなる?
特定空家に指定された後すぐに固定資産税の特例措置が受けられなくなる訳ではありません。以下の手順を踏むため、いつから空き家の固定資産税が最大6倍になるのかを把握しておきましょう。
- 空き家の調査
- 特定空き家に指定
- 自治体からの助言・指導
- 自治体からの勧告
- 住宅用地特例の対象から除外
特定空家に指定されると、助言・指導を受けます。助言・指導とは、空き家の現状を踏まえ、特定空家の指定を解除するために必要な事項を告知する行為です。
自治体の助言・指導を受けて適切に改善することで、特定空家の指定を解除できます。反対に、助言・指導を受けて改善を行わないと勧告を受けることになり、その時点で住宅用地特例の対象から除外されるため、税金が増えるのです。
勧告後も改善がみられないと?
特定空き家に指定され、助言・指導を受けたにもかかわらず、空き家の改善措置を行わなければ、勧告を受け、住宅用地特例の対象から除外されます。さらにその後も改善を図らないと以下のような罰則を受けるため注意しましょう。
- 命令
- 行政代執行
命令とは、相当の猶予期限を設けて、勧告に係る措置を取るように自治体が命令を出すことです。命令に従わないと50万円以下の過料を科され、最終的には行政代執行を受けます。行政代執行とは、所有者に代わり行政が建物の解体など適正な管理に向けた取り組みを行うことです。
なお、行政代執行でかかった解体費用などは所有者が負担しなければなりません。行政は安い解体事業者を選んで依頼する訳ではないため、通常の価格よりも割高になる可能性があると考えましょう。
「特定空家」に指定されないための対処
特定空家に指定されないための対処法は以下のとおりです。
- 賃貸に出す
- 売却する
- 管理会社に依頼する
- 更地にして活用する
それぞれについてご紹介しましょう。
賃貸に出す
遠方に住んでいる、管理する時間がないなど、空き家の維持管理が難しい場合は賃貸に出す方法があります。知り合いに貸したり、不動産会社を通じて借り手を探したりと、空き家を使用してくれる方を見つけましょう。
借り手が見つかることで、その方が適切に維持管理を行ってくれるため、所有者の負担が軽減されます。また、固定資産税や都市計画税の支出が発生するだけの空き家から、家賃収入を生み出してくれる資産になるでしょう。
売却する
将来使用する予定がない場合は、売却も選択肢のひとつです。
売却することで維持管理の手間がかからないことに加え、固定資産税や都市計画税など支出もなくなります。ただし、長年放置され荒れている空き家などは買い手が見つからない可能性もあるでしょう。
売却する際は相場よりも安い価格になるかもしれないことを念頭に置いて計画を立てます。まずは不動産会社などに査定を依頼して、そのエリアの相場を把握することが大切です。
管理会社に依頼する
ご自身で管理する時間がない方は、管理会社に依頼する方法もあります。
依頼内容にもよりますが、管理会社に任せることで草刈りや清掃など、定期的なメンテナンスによる維持管理が可能です。不審者が出入りしていないか、敷地にゴミが捨てられていないかの確認にもなるため安心でしょう。
更地にして活用する
空き家を解体したうえで、土地を活用する方法もあります。
例えば、駐車場経営や資材置き場としての賃貸などです。まとまった土地の広さがあればアパート経営やマンション経営なども選択肢に入るでしょう。
更地にすると固定資産税が上がってしまいますが、土地を活用することで収入を得られます。エリアによってどのような需要があるかは異なるため、その土地に適した活用方法を考えましょう。
空き家を所有するリスク
空き家の処分方法や活用方法が分からず、放置してしまう方も少なくありません。しかし、空き家を所有し続けると以下のようなリスクがあります。
- 税金や管理費用の負担が大きい
- 防犯面のリスクがある
- 倒壊や近隣トラブルの可能性がある
今後の方針を定めるためにも、各リスクへの理解を深めましょう。
税金や管理費用の負担が大きい
空き家は所有しているだけで固定資産税や都市計画税などの税金が毎年課されます。また、建物のメンテナンスや庭の手入れなど、維持管理の手間や費用がかかる点も大変な部分です。
とくに空き家が遠方にある場合は、定期的にメンテナンスすることは難しいでしょう。放置すると庭木の越境やゴミの廃棄などで近隣トラブルが発生する恐れもあります。
また、建物が劣化すると賃貸や売却の難易度も上がるため、早い段階で今後の方針を定めましょう。
防犯面のリスクがある
空き家は人目に付きにくいため、不審者の侵入や浮浪者による不法占拠、ゴミの投棄といったトラブルが生じる恐れがあります。とくに長年放置された空き家は狙われやすいため注意が必要です。
庭の手入れをしたり、ポストの中身を回収したりと定期的に人が来ている様子が伝われば、そのような被害に遭う可能性も低くなるため、定期的なメンテナンスを心がけましょう。
遠方で管理を行うのが難しい場合は管理会社への依頼がおすすめです。
倒壊や近隣トラブルの可能性がある
長年放置された築年数の経過した空き家は倒壊や漏電による火災などの危険があります。
倒壊や火災が発生すると所有者だけの問題だけでなく、近隣の住宅にも被害が出るため、損害賠償責任が生じる可能性もあるでしょう。そのようなトラブルを引き起こさないためにも、維持管理や売却など早めの判断が大切です。
不要になった空き家の有効活用はプロに相談するのがおすすめ
空き家を所有すると、金銭的な負担や防犯面の不安、倒壊などの可能性が伴います。所有すること自体にリスクがあるため、早めの処分や有効活用を検討しましょう。
しかし、土地勘がないエリアや遠隔地にある場合などは、どのように活用するべきか判断できないケースがあります。そのような際は、不動産のプロへの相談がおすすめです。
また、2023年12月には「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」が施行予定です。特定空家になるおそれのある空き家(管理不全空家)に対しても指導・助言があり、勧告を受けると特例が解除され固定資産税等が最大6倍になる可能性があります。
不動産のプロに相談することで、具体的な活用方法や処分方法がわかるため、今後の方針を定められるでしょう。「セゾンの相続 相続不動産の有効活用」では経験豊富な専門家をご紹介可能なため、一人ひとりに合った最適なプランの提案が受けられます。
無料で相談できるため、今後の活用方法や処分方法に悩んでいる方は、ぜひお気軽にご相談ください。
おわりに
空き家の所有者は居住していなくても毎年固定資産税や都市計画税を納めなければならないため、金銭的な負担が生じます。また、特定空家に指定されると、住宅用地特例の対象から除外され、固定資産税が最大で6倍に増えるため注意が必要です。
そのようなことにならないためにも、早い段階で売却や賃貸、管理委託、土地の有効活用など、今後の方針を定めましょう。具体的に何をすれば良いか分からない方は、不動産のプロへの相談がおすすめです。