2022年5月から、高齢者の免許更新の手続きが変更になりました。高齢になっても自動車を運転する場合、更新時に講習や検査が追加されることを認識しておきましょう。 本記事では、高齢者の免許更新の手続きについて説明します。高齢者講習や認知機能検査、運転技能検査が必要になる年齢や条件などを知っておき、スムーズに更新できるよう役立ててください。
70歳以上の免許更新の基本的な流れ
運転免許証の有効期間は、70歳未満の優良運転者・一般運転者、初回更新者と5年、70歳の優良運転者・一般運転者は4年、71歳以上の優良運転者・一般運転者は3年になります。有効期間満了時には更新手続きをしなければ、免許が失効してしまいます。
70歳未満の方は、期限までに都道府県の運転免許センターや警察署に行き、適性検査や更新時講習を受けると更新ができます。一方、70歳以上の高齢者については、講習や検査が追加されます。2022年5月の道路交通法改正により、手続きに変更があったため注意しておきましょう。
70歳以上の方の免許更新の流れは、次の図のようになります。
70歳以上の方は、「高齢者講習」を受けてからでないと、更新手続きができません。高齢者講習を受講後、高齢者講習終了証明書を提出して更新手続きを行う必要があります。
さらに、75歳以上の方は、「認知機能検査」も必要です。認知機能検査を受け、認知症のおそれがあると判断されれば、医師に診断を受けなければなりません。医師の診断結果によっては、免許が取り消しになることがあります。
また、過去3年間に一定の違反歴がある方については、認知機能検査に先立って運転技能検査を受ける必要があります。運転技能検査に合格できない場合も、免許の更新はできません。
70歳以上に受講が義務化された高齢者講習とは?
高齢化により、免許を保有している高齢者の割合は増えています。一方で、近年は高齢者ドライバーが関与する交通死亡事故が増加傾向です。
安全運転のためには、とっさの判断力や動体視力が必要です。高齢になると判断力や視力が衰えてくるため、事故を起こすリスクが高まってしまいます。
交通事故防止のためには、高齢者自身にこうしたリスクを自覚してもらったうえで、必要なアドバイスや指導を行う必要があります。
すでに認知症になっていて判断力が低下している方については、免許の更新を行うのが適切とはいえないでしょう。こうした背景から、免許更新時の高齢者講習が義務付けられるようになったのです。
高齢者講習の内容について知ろう
運転免許証を更新するにあたって必要な高齢者講習の内容や所要時間、手数料は、免許の種類などによって変わります。以下の表は、高齢時講習の種類及び概要をまとめたものです。
講習の名称 | 所要時間 | 内容 | 手数料 |
高齢者講習(普通自動車免許) | 2時間 | 座学・運転適性検査(60分)、実車(60分) | 6,450円 |
高齢者講習(原付・二輪・小特・大特のみ) | 1時間 | 座学・運転適性検査(60分) | 2,900円 |
特定任意高齢者講習 (普通自動車対応免許所持者) | 2時間 | 座学・運転適性検査(60分)、実車(60分) | 6,450円 |
特定任意高齢者講習 (原付・二輪・小特・大特のみ) | 1時間 | 座学・運転適性検査(60分) | 2,900円 |
運転免許取得者等教育 (高齢者講習同等) | 2時間以上(実車指導なしの方は1時間以上) | 座学・運転適性検査(60分以上)、実車(60分以上) | 教習所ごとに異なる |
普通自動車対応免許を更新する場合には、実車を含む2時間の高齢者講習を受ける必要があります。原付、二輪、小特、大特のみの免許を更新する場合、高齢者講習は座学・運転適性検査のみとなり、所要時間は1時間です。現住所とは別の都道府県で高齢者講習を受けることも可能で、この場合には「特定任意高齢者講習」を受けることになります。
高齢者講習には合否はありません。受講すると高齢者講習終了証明書が交付されます。高齢者講習終了証明書を提出すれば、運転免許証の更新手続きが可能になります。
高齢者講習に代えて「運転免許取得者等教育」を受けることもできます。運転免許取得者等教育とは、民間の自動車教習所等で行われているペーパードライバー教習などで、公安委員会が認めたものです。運転免許取得者等教習終了証明書を提出すれば、高齢者講習が免除になります。
受講可能期間はいつからいつまで?予約方法は?
運転免許の更新手続きができる期間は、誕生日の1ヵ月前から1ヵ月後までです。高齢者講習は、更新期間満了日(誕生日の1ヵ月後)の6ヵ月前から受講できます。
70歳以上の方については、更新手続きに先立って、高齢者講習の受講を完了しなければなりません。受講が完了していない方は、更新手続きを受け付けてもらえない仕組みになっています。
70歳以上の方には、運転免許証の更新期間満了日の190日前頃(自治体により異なる)に、「講習のお知らせ」のハガキが届きます。高齢者講習は予約制になっているため、ハガキが届いたら自分で直接教習所等に予約する必要があります。
参照:警視庁|高齢者講習(70歳から74歳までの方の免許更新)
75歳以上が免許更新時に受ける認知機能検査とは?
75歳以上の方が免許を更新するにあたっては、認知機能検査を受ける必要があります。認知機能検査とは、安全運転に必要な判断力や記憶力を調べる検査です。
認知機能検査は高齢者講習の前に行われる
75歳以上の方については、運転免許証の更新期間満了日の190日前頃(自治体により異なる)に、「認知機能検査と高齢者講習のお知らせ」のハガキが届きます。先に認知機能検査を受ける必要があるため、ハガキに従って認知機能検査の予約をします。
認知機能検査は合格、不合格を決める形式ではありません。テストの点数によって、「認知症のおそれあり」「認知症のおそれなし」のどちらかに分けられます。「認知症のおそれなし」の場合には、そのまま高齢時講習に進むことになります。一方、「認知症のおそれあり」の場合には、専門医を受診し、診断書などを提出することが求められます。
気になるテスト問題を紹介
認知機能検査の内容は、「手がかり再生」と「時間の見当識」の2つに分かれており、それぞれの問題で配点が決まっています。手がかり再生は最大32点、時間の見当識は最大15点です。合計36点以上で「認知症のおそれなし」、36点未満なら「認知症のおそれあり」と判断されます。
手がかり再生は、記憶力を検査するテストです。まず、4種類のイラストが描かれたボード4枚、あわせて16種類のイラストを見てどんな絵かを記憶します。次に、採点とは関係ない課題を行い、その後記憶した絵について回答します。最初はヒントなしの自由回答を行い、次にヒントありの手がかり回答をします。自由回答と手がかり回答の両方正答で2点、自由回答のみ正答で2点、手がかり回答のみ正答で1点という配点になります。
時間の見当識では、時間の感覚を検査します。検査時における「年」「月」「日」「曜日」「時間」を回答します。「年」を正答で5点、「月」を正答で4点、「日」を正答で3点、「曜日」を正答で2点、「時間」を正答で1点の配点です。
手がかり再生、時間の見当識の2種類の検査にかかる時間は30分程度です。手数料は実施場所によって異なるため、予約時に確認しておきましょう。
認知機能検査の内容は、全国共通です。検査に使われるイラストや検査用紙についても、警察庁のホームページで公開されています。
75歳以上で一定の違反歴がある場合は運転技能検査が必須
2022年5月13日の改正道路交通法施行に伴い、高齢者の運転免許更新に際して、運転技能検査が導入されました。運転技能検査が必要となるのは、75歳以上で一定の違反歴がある方です。対象となる方は、運転技能検査に合格しなければ、免許の更新ができません。
運転技能検査が導入された背景と内容について
高齢ドライバーが起こす事故の多くは、操作ミスによるものです。ハンドル操作を誤ったり、アクセルとブレーキを踏み間違えたりすれば、死亡事故につながることがあります。認知機能が低下していなくても、運転技能が衰えれば事故を起こすリスクがあるのです。
こうしたことから、運転技能が低下していると思われる高齢ドライバーに対しては、運転技能検査が義務付けられました。運転技能検査の対象とされるのは、75歳以上で、更新時の誕生日の160日前から過去3年間に次のような違反歴がある方です。
- 信号無視
- 通行区分違反
- 通行帯違反等
- 速度超過
- 横断等禁止違反
- 踏切不停止等・遮断踏切立入り
- 交差点右左折方法違反等
- 交差点安全進行義務違反等
- 横断歩行者等妨害等
- 安全運転義務違反
- 携帯電話使用等
実車試験と合否について
運転技能検査は、更新期間満了日の6ヵ月前から受けられます。対象となる方は、高齢者講習のハガキが届いたら、検査の予約を入れる必要があります。検査手数料は3,550円です。
運転技能検査は、コースに出て車を運転する実車試験になります。最初に検査員の説明を聞き、指示に従って課題を行います。課題の内容は、次の6種類です。
- 指示速度による走行
- 一時停止
- 右折、左折
- 信号通過
- 段差乗り上げ
- 補助ブレーキ等(検査員が危険回避のために補助ブレーキ等を操作した場合)
運転技能検査の採点は、100点満点から危険性に応じて減点される方式です。第一種免許は70点以上、第二種免許は80点以上で合格となります。合格できない場合には、免許の更新はできません。ただし、手数料を支払えば、免許の更新期間満了日まで何度でも受け直すことができます。
なお、運転技能検査を受けた方については、高齢者講習の実車指導が免除になります。
家族の万が一をカバーする自動車保険に入ろう
高齢になると、とっさの判断力や動体視力などの機能が低下し、事故を起こす確率が上がってしまいます。自動車保険を選ぶときにも、リスクに合った補償が受けられるものにしましょう。
高齢者の場合、自動車保険の保険料が高くなってしまいがちです。家族の自動車保険の補償範囲を広げることで、世帯単位で保険料を抑えられる可能性があります。
セゾン自動車火災保険の「おとなの自動車保険」は、事故率の低い世代を対象に割安で加入できる自動車保険です。自動車を主に使用される方を中心に、他に運転される方との続柄により4つのパターンを選べます。
運転者限定特約(同居の子以外補償型)や、運転者限定なし特約(同居の子年齢条件設定型)を選べば、同居の親は年齢に関係なく運転している際の事故への補償が受けられます。高齢の親のリスクが心配という方は、加入を検討してみてください。
SA2023-1123(2023.11)
おわりに
道路交通法改正により、70歳以上の高齢者が運転免許を更新する際の手続きが変わっています。70歳以上なら、高齢者講習の受講が必要です。75歳以上なら認知機能検査も必要になる他、一定の違反歴があれば運転技能検査も受けなければなりません。
高齢になったら、今まで以上に安全運転を意識しておきましょう。判断力や視力に自信がなくなったら、運転免許証を自主返納するのもひとつの選択です。運転を続ける場合には、事故のリスクを考え、自動車保険も見直してみましょう。