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自転車事故を起こしてしまったら賠償金はいくら?もしもに備えて保険に加入しよう

セゾンのくらし大研究 編集部

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自転車は子どもから高齢者までが日常の足として利用していますが、事故の加害者となる可能性は誰にでもあります。事故の加害者となれば、被害者に対して損害賠償責任を負うことになるのです。事故内容によっては賠償額が高額になる可能性もあるため、自転車に乗る方には自転車保険の加入が欠かせません。本記事では、自転車事故で加害者が支払うべき賠償金の詳細や、高額賠償の例などを紹介します。

自転車事故を起こしてしまったら

自転車事故を起こしてしまったら

自転車を運転中に交通事故を起こして加害者となってしまった場合、相手方に支払うお金はどの程度かかるのでしょうか。

自転車事故も自動車事故と同じ扱い

自転車運転中に他の自転車と衝突したり、歩行者と接触したりして他人にケガをさせてしまった場合、損害賠償責任を負わなければなりません。加害者が損害賠償をしなければならない点においては、自転車事故も自動車事故も変わりません。

自動車事故の場合、被害者が死亡するケースも少なくなく、賠償額が高額になる傾向があります。個人の経済力では負担しきれないケースもあり、自賠責保険や任意保険の制度が整備されているのです。そのため、自動車事故の被害者は加害者の経済状況にかかわらず、損害の賠償を受けられます。

しかし、自転車には自賠責保険のような制度はありません。加害者に十分な収入や財産がなく、保険にも入っていなければ、被害者は十分な賠償を受けられない可能性が高くなってしまいます。

2022年度に発生した自転車の事故は約70,000件

警視庁のデータによると、2022年に発生した自転車事故の件数は約70,000件と全交通事故件数の約23%を占めています。

以下は、自転車乗用中死者数の過去5年の推移です。

2018年447人
2019年427人
2020年416人
2021年359人
2022年336人
出典:警視庁「令和4年における交通事故の発生状況について」より筆者作成

死者数が減少傾向にあるのは喜ぶべきことですが、年間300人以上は自転車事故で亡くなっていることがわかります。

自転車は自動車のような免許もなく、子どもが事故で他人に重傷を負わせてしまうリスクもあります。また、先述のとおり、自賠責保険のような制度もありません。保険による備えのない方が自転車事故で加害者になると、損害賠償をすべて自己負担しなければならないおそれがあるのです。

自転車事故の加害者に請求されるお金

自転車事故の加害者に請求されるお金

自転車事故の加害者になったとき、被害者の受けた損害を賠償する必要があります。求められる賠償にはどのような種類があるかについて解説します。

入通院にかかる治療費や交通費

自転車事故の被害者がケガをして入院や通院をした場合、加害者は治療費や交通費の実費を支払わなければなりません。被害者は費用を自己負担し、その領収書をもとに加害者や保険会社が支払うことになります。

入通院やや後遺症にかかる慰謝料

通常は治療のためにかかったお金のほかに、入通院による精神的苦痛に対しても入通院慰謝料の請求がされます。入通院慰謝料は傷害慰謝料とも呼ばれ、金額は入通院の期間をもとに算定されます。

また、後遺症が残ってしまった場合、後遺傷害慰謝料が発生します。自転車事故の後遺障害は、自動車事故のような自賠責による障害等級の認定の仕組みがありません。このため、被害者が自分で、後遺障害の内容をもとに「障害等級〇級相当の後遺障害である」というような主張をしていく必要があります。

加害者が自転車保険などに加入している場合は、保険会社が後遺障害の審査などの方法で、後遺障害の金額を提示するのが一般的です。被害者が加入している保険によっては、被害者側の保険会社が後遺障害の認定を行う場合もあります。

事故で仕事を休んでいれば休業損害が発生

自転車事故の被害者が入院や通院のために仕事を休んだ場合、「休業損害」として仕事ができなくなっていた間の補償を求められます。

休業損害は収入のない専業主婦であっても、家事労働ができなくなったことについて請求できます。

休業損害の計算基準は複数ありますが、最低基準といわれる自賠責の休業損害額は1日当たり6,100円となっています。

重篤なケガで働けなくなれば逸失利益の請求も

後遺症が残った場合、慰謝料とは別に将来的な減収分の損害を逸失利益として請求されます。逸失利益の金額は、被害者の収入および障害の度合い(何等級に相当するか)に応じた労働能力喪失の程度と、喪失期間などによって算出します。

相手が亡くなってしまった場合は死亡慰謝料

自転車事故の被害者が不幸にも亡くなってしまった場合、加害者は死亡慰謝料を支払う必要があります。死亡慰謝料には複数の基準があります。自賠責の場合、以下のとおりです。

被害者本人への慰謝料400万円
請求者1名550万円
請求者2名650万円
請求者3名750万円
被扶養者1名当たり200万円

例えば、被害者の遺族が2人でいずれも扶養されていた場合、1,450万円(400万円+200万円+200万円+650万円)となります。

自転車事故の賠償金額は過失割合も加味される

自転車事故の賠償金額は過失割合も加味される

過失割合とは、事故の当事者間のお互いの過失の程度を数値にしたものです。通常、自転車事故では一方の当事者の過失がゼロであるケースはほとんどなく、被害者側の過失割合に応じた賠償額の調整が行われます。

自転車事故の過失割合は、事故の状況に基づいて当事者同士の話し合いで決めます。当事者同士で過失割合の調整が上手くできなかったり、トラブルになったりした場合、早めに弁護士に相談して過失割合のアドバイスを受けることをおすすめします。

自転車で事故を起こした場合に、以下のようなケースでは過失割合が高くなります。

  • 自転車の二人乗り
  • 脇見運転
  • 自転車の整備不良
  • 飲酒運転
  • 両手放し運転
  • 時速20キロメートル以上で走行
  • 夜間の無灯火走行

高額な請求となった実際の賠償事例

高額な請求となった実際の賠償事例

自転車事故の賠償額は自動車の事故ほど高くないと考える方も多いでしょう。

しかし、自転車でも死亡や重傷につながる事故は発生しており、その場合加害者の支払う賠償額も高額になります。

自転車同士の事故のケース

ここでは、自転車同士の事故を紹介します。

男子高校生が朝、自転車で歩道から交差点に無理に進入し、女性の保険勧誘員(60歳)が運転する自転車と衝突しました。保険勧誘員が頭蓋骨骨折を負い9日後に死亡し、男子高校生には3,138万円の損害賠償を命じる判決が出されました(さいたま地方裁判所、2002年2月15日判決)。

男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突しました。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残り、男子高校生には9,266万円の損害賠償を命じる判決が出されました(東京地方裁判所、2008年6月5日判決)。

歩行者との事故のケース

自転車と歩行者の間でも高額の賠償例があります。

男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂でスピードを落とさずに走行し交差点に進入したところ、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突しました。

女性は脳挫傷等で3日後に死亡し、男性には6,779万円の損害賠償を命じる判決が出されました(東京地方裁判所、2003年9月30日判決)。

男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突しました。

女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となり、男子小学生には9,521万円の損害賠償を命じる判決が出されました(神戸地方裁判所、2013年7月4日判決)。

賠償金が払えない場合はどうなる?

賠償金が払えない場合はどうなる?

自転車事故の加害者となり、損害賠償金が支払えない場合はどうなるでしょうか。

損害賠償の義務があるにもかかわらず支払わずにいると、財産や給与の差し押さえを受ける可能性があります。

損害賠償は、金額以外に支払方法を当事者間で決められます。一括払いが難しければ、長期の分割払いに代えてもらうことも考えられます。加害者に支払能力がないことがわかれば、被害者側も分割払いに応じざるを得ないでしょう。

賠償金の支払いをどうしてもできない場合、自己破産を選ぶことも考えられます。自己破産によってほとんどの債務は免除されます。ただし、自転車事故が故意または重過失を原因とする場合、損害賠償は免除されません。

いずれにしても被害者、加害者とも事故後の日常生活に重大な影響が及ぶことになります。

もしものときに備える!自転車も保険に入ろう

もしものときに備える!自転車も保険に入ろう

自転車事故の加害者になってしまったときの備えとして、自転車保険の加入が推進されています。自転車に乗る方なら必ず加入しておきたい保険です。

都道府県によって自転車保険も加入が義務化されてきている

自転車事故の加害者が多額の損害賠償の支払い義務を負うと、その後の人生設計が大きく狂います。また、被害者側も加害者に支払能力がないために、十分な補償を受けられない状況はあってはならないことです。

そのため、自転車事故における被害者救済の観点から、条例により自転車保険への加入を義務化する動きが広がっています。2023年4月時点で32都府県が自転車保険の加入を条例で義務化し、10道県が努力義務としています。

2億円以上の補償で家族全員が入れる保険がおすすめ

自転車保険は、自転車事故の補償で最も重要な個人賠償責任(被害者への補償)と自分のケガの補償がセットになった保険です。

個人賠償責任の補償の上限は保険商品ごとに異なりますが、あまり低いといざというときに不安ではないでしょうか。高額の賠償に備え、2億円以上の個人賠償責任補償があれば安心です。

また、自転車に乗る方であれば未成年から高齢者まで自転車保険への加入義務があるため、自転車を利用する家族全員を補償する保険がお得です。

「自転車トラブル安心保険」の個人賠償責任補償は最高2億円の高額補償なので、事故の加害者になってしまったときも安心できます。家族コースでは夫婦+子どもの交通事故のケガの補償も受けられます。

自転車保険にまだ加入していない方は、この機会にご加入ください。

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自転車トラブル安心保険

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おわりに

自転車事故で加害者になると、思わぬ高額の損害賠償に応じなければならなくなる可能性があります。自転車保険加入が促進されているのは、被害者救済だけでなく、加害者の経済的負担を減らす目的もあります。今後は自動車の自賠責保険同様に、自転車に乗る方の自転車保険は必須のものとされるでしょう。自転車に乗る方で自転車保険に未加入の人は、すぐにでも加入しましょう。

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