生前整理と聞くと、高齢者がするものと思いがちですが、実は若い世代でも検討する方は少なくありません。結婚して子供ができたときなど、万が一のことを考えると、生前整理の必要性を理解できるでしょう。また、若いうちの生前整理ならではのメリットもあります。このコラムでは、30代で生前整理をする場合の進め方や、注意点などについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- 体力気力がある30代のうちに生前整理を行うことで、主に5つのメリットが得られる
- エンディングノートや遺言をすることで、家族に伝え遺すことを明確にできる
- パソコンやスマホのデジタル資産は、家族でも探すのは難しい
- 自分でできない場合は、後回しにするより専門家への相談がおすすめ
生前整理における30代の関心度はどれくらい?
2023年に実施された楽天インサイト株式会社の「終活に関する調査」によると、終活の実施意向(実施している・近いうちに始める予定・予定はないが時期が来たら始めたい人の合計)は、30代で男性52.2%・女性73.0%でした。
また、「終活」で今後する予定があること、興味があることとして、荷物の整理が最多であり、続いてパソコンやスマートホンなどのデータ整理が挙げられます。
30代が生前整理しておきたいものランキング
マイナビライフサポートの調査による2020年のデータによると、特に生前整理したいもののランキングは以下の通りです。
1位:銀行預金 44.8%
2位:自分の部屋にある持ち物 25.7%
3位:PCデータ 7.5%
4位:ネット口座 7.2%
5位:携帯データ 6.0%・SNSアカウント 6.0%
7位:車・バイク 1.6%
8位以下省略
銀行口座は複数持っている場合もありますので、あまり使っていない口座などは管理しやすいようにまとめることも検討する必要があるでしょう。
参考記事:マイナビライフサポート編集部
生前整理を30代で行うメリット
病気や事故で万が一の事態というリスクは年齢関係なく誰にでもあり、それに備える生前整理には体力も必要です。30代と若いうちに行うことによるメリットも少なくありません。
【生前整理を30代で行うメリット】
- 判断力や体力があるうちに実施できる
- 暮らしやすくなる
- これからのライフプランが明確になる
- 万が一のときの家族の負担を減らせる
- 親と一緒に生前整理ができる
判断力や体力があるうちに実施できる
高齢になってからの生前整理だと、整理すべきものの種類や量も多くなりますので、判断力や体力の低下によりなかなか終わらない可能性があります。また、いざやろうと思っても億劫になり、なかなか始められません。高齢になると、記憶も曖昧となるため自分では整理できなくなることもあるでしょう。
若いうちから整理しておけば、簡単に終わらせることができ、整理された状態を保つことができます。大量にたまった子供たちの思い出の品などを動かそうとして腰を痛めたりしては大変です。体力・気力のある30代のうちから整理を始めることをおすすめします。
暮らしやすくなる
生前整理ができれば、万が一のときの準備がある程度できた状態になります。30代のうちに生前整理をしておけば、その後は万が一のことがあっても、家族の負担が少なくて済むでしょう。
また、生前整理により無駄なものを持たないミニマリストになれば、量より質を重視した豊かで快適な生活を送ることができるかもしれません。
これからのライフプランが明確になる
30代は、平均的には結婚して子供が生まれる年代です。独身時代は将来設計も自分だけで良いですが、家族ができれば全員のライフプランを考えなければなりません。
また、親世代がリタイヤする時期も迫ってきますので、ご自身や配偶者の親の老後についても考える時期です。生前整理を通して、30代でライフプランを明確にすることができるでしょう。
万が一のときの家族の負担を減らせる
病気や事故で万が一の事態に陥るリスクは、年齢に関係なくあり得ます。若いうちに万が一の事態が起これば、子供の教育費など、家族の負担が大きくなるでしょう。
経済的負担に関しては生命保険などで対策するのが一般的ですが、生前整理までしている人はまだ多くはありません。
生前整理をしておくことで、万が一の事態が起こった場合でも、「どこに預金があるのか分からない」「知らないところから請求書が来た」「保険の請求はどうすればいいのか分からない」といったトラブルを回避することが可能です。
親と一緒に生前整理ができる
30代だと親が60~70代であることが多いでしょう。親が生前整理をしていない場合、ご自身に大きな負担がかかってくる事態になりかねません。しかし、親に生前整理を勧めるにあたっては「亡くなったときに家族が困らないように」と伝えるのは憚られます。
しかし、生前整理をした子からメリットなどを聞けば、親もやろうという気持ちになりやすいでしょう。体力が必要な荷物整理などは協力してすることも可能です。親の晩年をどのように支えるかなど、家族で検討するきっかけになるかもしれません。子が生前整理を実践して見せると、親も納得して生前整理に取り掛かれます。
生前整理の一般的なステップ
生前整理をしようと思い立ったとき、何から手を付けようか悩む方は少なくありません。生前整理は一般的に以下のステップを踏みます。
【生前整理の一般的なステップ】
- 必要なものと不要なものを分ける
- 貴重品をまとめる
- 財産目録を作る
- スマホやPCなどのデータ整理
- 価値のあるものは買取に出す
- エンディングノートを活用する
- 遺言書を書く
それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
必要なものと不要なものを分ける
必要なものだけを残すことが、生前整理のスタートです。片付けが下手な人は、先に物の保管場所を考え、棚や箱などを準備して仕分けしていきますが、それでは物が減らずにいつまでたっても片付きません。整理整頓の順番通りに、まずは整理(物を減らすこと)から手を付ける必要があります。
不要な物を捨てる際には、まずは使っていない物を集め、「1年使わなければ捨てる」「自分が死んだら捨てる」などルールを決め、少しづつでも減らしていける体制を作ると良いでしょう。整理した後で整頓するのがおすすめです。
貴重品をまとめる
貴重品の置き場所はあらかじめ決めておきましょう。
ばらばらに保管すると、自分でもどこに何を置いているか分からなくなりがちです。万が一のときに、家族が家中を探し回らなければなりません。見つけてもらえなければ、財産を承継できなくなる事態も考えられます。
家族に見つけてほしいものは、探さなくても済むように一か所にまとめておくことが大切です。
財産目録を作る
財産については、目録にしておきましょう。財産として価値のあるものを一覧表にまとめます。高齢で仕事をリタイヤした後であれば財産の変動はあまりありませんが、現役世代では財産の変動がありますので、定期的に更新してください。
自分が亡くなった場合、財産は相続財産となり相続人に引き継がれます。法定相続人で相続財産を分けますが、財産内容が明確になっていると相続人の話し合いの負担が軽減され、相続トラブルの予防につながります。
スマホやPCなどのデータ整理
最近問題になっているのが、デジタル遺品と言われる個人情報等の取り扱いです。
デジタル遺品の例として、ネットバンキング口座やネット証券口座、有料会員サービスなど経済的価値のあるものや、SNSやメールのアカウントなどが挙げられます。請求書などが郵送されないことも多く、家族にとって分かりづらくなりがちです。
亡くなった後も有料サービスの料金を払い続けることなどないよう、そして大切な財産が円滑に承継されるよう管理方法を明確にしておき、エンディングノートなどに記載しましょう。
価値のあるものは買取に出す
ご自身が不要と判断した物でも、必要とする人がいるなら買い取りしてもらうのがおすすめです。使えるものは使ってもらうことで環境保全にも貢献できるでしょう。
一般的な品物ならリサイクルショップなどで買い取ってもらい、特殊な物や趣味の要素が強い物は、専門の買い取り業者に査定してもらうのがおすすめです。
価値のある品物でも、その価値が分からなければごみと評価されることもあります。マニア垂涎のクラシックバイクでも、価値を分からない家族が廃車費用を支払って処分する事態になることも少なくありません。
エンディングノートを活用する
自分の終末から死後についての意思を伝えるために記すのが、エンディングノートです。
エンディングノートには法的効力はありませんが、その分自由に自分の伝えたいことを残すことができます。銀行口座や保険・株式など財産状況から、お世話になった方への感謝など伝えた方が良いと思うことまで、何でも書き記しておきましょう。いつでも自由に書き直すことも可能です。定期的に更新して、最新の意思を確認してもらえるようにしておくことをおすすめします。
遺言書を書く
エンディングノートと異なり、遺言書は法的効力を有します。
相続が発生した際に、遺言書がなければ相続財産は法定相続人が遺産分割協議を行って分け方を決めますが、遺言書があればそれにしたがって遺産が分割されます。相続人が話し合う必要がなくなるのが、遺言書の最大の効力といえるでしょう。
特に、30代で亡くなった場合、未成年の子が法定相続人となることが想定されます。未成年は遺産分割協議に参加できません。配偶者も法定相続人ですので、親権者として代理することもできず、家庭裁判所に特別代理人を付けてもらうなど複雑な手続きも必要になります。
遺言書を作成しておくことで相続手続きの手間が省けますので、遺された家族の負担を軽減できるでしょう。
生前整理をスムーズに進めるコツ
片付けが苦手な人だと、何から手を付ければ良いのか悩んで進まないことも多いかもしれません。スムーズに進めるためには、コツがあります。
【生前整理をスムーズに進めるコツ】
- 生前整理を前向きなこととして捉える
- 周囲の人と一緒に取り組む
- 日常的に行う
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
生前整理を前向きなこととして捉える
生前整理は、これから先の生活を豊かにするための作業です。無駄を整理して万が一の心配を小さくできますし、早く実行することで長期にわたって安心な生活を送ることができます。
生前整理を死ぬ準備とみなして嫌がる人もいるようですが、実際には豊かな人生を送るための作業といえるでしょう。気力・体力も必要なので、若いうちにやる方が楽に済むとポジティブに考えて行うことをおすすめします。
周囲の人と一緒に取り組む
自分の物であっても、ひとりで処分を決めるのが難しいこともあるかもしれません。将来、誰かが使うかもしれない物については、身近な人の意見を聞くことで決断が楽になります。
生前整理は周りの人にもメリットがありますので、ひとりで決められない場合は家族などを巻き込んで一緒に作業すると良いでしょう。
日常的に行う
きれいに片付いた家は、毎日の掃除や片付けで状態を保っています。生前整理においても、一度やったら終わりではありません。定期的な更新作業が必要です。
物は購入すれば増えますし、財産の状況も変わります。親の認知症や介護、子供の独立など状況が変われば、それに応じて遺言やエンディングノートの内容を変更する必要も出てくるでしょう。生前整理は、定期的に行うべき作業と考えてください。
生前整理ができていなくてトラブルになった3つのケース
2021年11月 株式会社林商会「終活瓦版」にて、相続時のトラブル事例が紹介されています。その中から3つの事例を取り上げ、生前整理のトラブル予防効果について見ていきましょう。
【生前整理ができていなくてトラブルになった3つのケース】
- 葬送法でもめた
- 残された遺品が多くて困った
- なかなか遺影が決められなかった
葬送方法でもめた
【トラブル事例】
生前、祖父は「お墓はいらない。散骨してほしい」といっていたにもかかわらず、家族は「お墓を作りたい」といってもめた事例です。散骨するにもどこに散骨したら良いのか決めきれなくて困りました。
【生前整理による予防効果】
お葬式や埋葬に関するトラブルは増えています。親族だけの家族葬や散骨などを希望する人が増えてきましたが、従来型の葬送を行いたい人がいると、意見がまとまりません。口頭で伝えるだけでなく、遺言やエンディングノートで散骨の方法や場所まで具体的に希望を残しておけば、個人の意思による葬送として散骨できたかもしれません。
残された遺品が多くて困った
【トラブル事例】
母の遺品整理をしたときに、大量の着物が出てきました。しかし、亡くなった後にその着物をどうしたら良いのか伝えておかなかったため、遺族が処分方法に困った事例です。
【生前整理による予防高価 】
預貯金や不動産などは遺産分割協議により法律上の手続きで分けますが、遺品整理も大変な作業です。物によっては財産価値のある場合もありますし、思い出という評価し難い価値もあります。これも、エンディングノートなどに希望する分け方や処分方法を記載していれば防げるトラブルです。
なかなか遺影が決められなかった
【トラブル事例】
ずっと元気だった母が突然亡くなり、亡くなった後のことを何も話していなかったため、遺影も撮影しておらず困った事例です。
【生前整理による予防効果】
遺影は、葬式の参列者に故人の元気なときの姿を想い出してもらうための写真ですが、多くの写真から1枚を選ぶ際に意見がまとまらず、なかなか決められないことは少なくありません。エンディングノートを作成して遺影も決めていれば、故人がお気に入りだった写真が遺影となったでしょう。生前整理は、家族が亡くなって精神的に疲れている家族の負担を減らすことにもつながります。
生前整理のQ&A
「生前整理」「老前整理」「遺品整理」は何が違うの?
生前整理は、生前に本人が快適に過ごすために物の処分を行い、エンディングノートや遺言書などを作成することです。
老前整理は老いてからする生前整理で、家族に手伝ってもらわないとできないことが増えます。
遺品整理は、本人が亡くなった後に遺族が物の処分や相続手続きをすることです。
整理するタイミングによって、作業内容が変わってくることに注意が必要です。若いうちに生前整理ができていれば、万が一の際のトラブルを予防できます。安心して過ごせるとともに、家族の負担を軽減できる効果も期待できるでしょう。
忙しくて生前整理ができないときは?
生前整理をしたいけれど量が多すぎる、仕事が忙しいなど、ご自身でできないケースは少なくありません。そのような場合は、専門の会社に頼むのがおすすめです。一度きちんと整理をすれば、その後はその状態を維持するだけで済むでしょう。
忙しくて生前整理ができないなどご事情がある場合は、「くらしのセゾン 遺品整理・生前整理」の無料見積もりを利用してみてはいかがでしょうか。遺品整理には遺品整理士が対応いたしますので安心して任せることができます。
おわりに
生前整理を老前整理と同様、高齢になってからやれば良いと考える人もいますが、若いうちにすることで得られるメリットも少なくありません。30代で行う生前整理は、子供が未成年、配偶者も若いなど、高齢になってからの生前整理とは異なる注意点もあります。ご紹介したポイントに注意しながら進め、無駄を減らしてすっきりとした生活を手に入れてください。