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遺言書トラブルのよくあるパターンとは?対策法を伝授

遺言書トラブルのよくあるパターンとは?対策法を伝授
セゾンのくらし大研究 編集部

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相続について考えたとき、ご自身で遺言書を作成される場合もあるでしょう。その場合、有効な遺言書を作成できるかどうかは情報収集にかかってきます。このコラムでは、遺言書の種類やよくある記載の不備、トラブルのパターンからトラブル防止方法についてもご説明します。遺言書の作成を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を読んでわかること

  • 自筆証書遺言は記載内容によっては形式不備で無効となるケースがあり、日付、内容、氏名を自筆する必要がある
  • 遺言書のよくあるトラブルは、相続発生後に遺言書の存在や有効性を巡って相続人の間で争うケースも多い
  • 遺言書のトラブルを防ぐためには、作成する際に、相続手続きで相続人が困らないかどうかを考える必要がある
遺言サポート
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遺言書の種類

遺言書の種類

ここでは、遺言書の種類や遺言書を作成していない場合について、ご説明します。

自筆証書遺言

日付や内容、氏名を自筆する形で作成する遺言書を自筆証書遺言といいます。

自筆証書遺言に財産目録を添付して遺産の種類などを示す場合、財産目録の内容に関しては自筆ではなくパソコンで作成することも可能です。また、自筆証書遺言は手続きをすることで法務局でも保管してもらうことができます。

遺言書を作成する方はご自身のみで遺言書を完成させることができ、気軽にいつでも作成できるので遺言書の作成が初めての方でも比較的容易に取り組みやすい遺言書といえます。

公正証書遺言

遺言者が公証役場の公証人に遺言の趣旨を伝えて公証人が筆記する形の遺言書を、公正証書遺言といいます。

また、公正証書遺言の作成は遺言者が遺言内容を自筆する必要はありませんが、2人以上の証人の立会いが必要となります。

公正証書遺言は自筆証書遺言と比較すると、公証人や証人が必要となるため少し敷居が高く感じるかも知れませんが、遺言内容の記載を公証人が確認してくれるため、遺言書の形式的な不備で無効となる心配が要りません。

遺言の記載方法などで不安な方は、最も安心できる遺言書といえます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言書自体は遺言者が作成し、遺言書を封筒に入れて遺言書の押印と同じ印で封印をします。

そして、封筒には間違いなく遺言者が作成した遺言書が入っていることの存在確認を公証役場の公証人にしてもらう形の遺言書です。また、秘密証書遺言も公正証書遺言のように2人以上の証人が必要となります。

秘密証書遺言の場合は遺言書の内容を誰にも見られず作成できるので、遺言書の内容を公証人や証人にも秘密にしたい場合は有効な選択肢のひとつといえます。

遺言書がない場合は遺産分割協議

亡くなった方が遺言書を作成していなかった場合、相続人が複数人いれば、その全ての相続人が話し合って遺産分割協議を行います。

遺産分割協議では遺産の分け方などを話し合うことになりますが、相続人の中にひとりでも納得いかない方がいると協議を成立させることができません。遺産分割協議が不成立に終わった場合は、家庭裁判所に調停や審判を求めることになり、なかなか遺産相続の手続きが終了しないといったケースもあります。

この点、遺言書があれば遺言の内容どおりに遺産を分けることになり、基本的には遺産分割協議が不要となりますので、遺言書を作成しておくことは相続人間のトラブル防止のためにも有効な手段といえます。

自筆証書遺言よくある記載不備

自筆証書遺言よくある記載不備

ここでは、自筆証書遺言の作成でよくある以下6つの形式的な不備についてご説明します。

  • 日付の特定ができない
  • 遺言書の字が読めない
  • 遺産の明確な記載なし
  • あいまいな表現
  • 自筆でない部分がある
  • 署名押印がない

日付の特定ができない

遺言書に記載されている日付が特定できなければ「無効」となります。具体的には、そもそも遺言書に年月の記載はあるが日を書いていなかった場合がこれにあたります。

また、吉日などと書いた場合も日付の記載を欠く遺言書と判断され「無効」となる場合もあります。

遺言書の字が読めない

遺言書の字が汚くて読めない場合や保存状態が悪くて摩耗や破損をしてしまい文字が判読できない場合は、その部分については遺言が「無効」となってしまいます。

なお、判読できない部分があったとしても遺言書全体が無効になるわけではなく、判読できる部分のみで遺言書の形式を備えていれば、その部分は有効として扱われるケースもあります。

遺産の明確な記載なし

遺言書に記載した遺産の内容が不明確な場合は、その部分について「無効」となる場合があります。
具体的には、遺言書に「土地を相続させる」のみを記載して登記記録の情報がない場合、不動産の名義変更の際に法務局の登記官が不動産を特定できず、遺言書の内容で相続登記ができないといったことが起こります。

あいまいな表現

遺言書の内容として「贈与する」「相続させる」などの文言ではなく、単に「ゆだねる」「まかせる」「お願いする」のように、「与える」という意味内容を読み取れない場合は遺産を承継させる意思ではなく「無効」と裁判所に判断される場合があります。

自筆でない部分がある

自筆証書遺言はその名のとおり遺言者の自筆で作成する必要があります。日付や氏名、内容を自筆していない自筆証書遺言は当然のことながら「無効」となります。

また、たとえ自筆であったとしても遺言者が病気や高齢のため手が震えてしまうため、他人が手を添えて遺言書作成の補助をした場合も原則として「無効」となります。

署名押印がない

遺言書は、作成した遺言者が誰なのかを明確にするため署名押印が必要であり、作成者の署名押印がない場合も「無効」となります。

また、パソコンなどで作成した財産目録を自筆証書遺言に添付する場合、財産目録に関しても遺言者が財産目録の全てのページに署名押印を行わなければなりません。

遺言書トラブルよくあるパターン

遺言書トラブルよくあるパターン

ここでは遺言書のよくあるトラブル事例をご説明します。

あるはずの遺言書がない

自筆証書遺言書を作成して自宅で保管していたところ、遺言の内容に納得がいかない一部の相続人によって遺言書が隠されてしまうというケースがあります。この場合、他の相続人が遺言書の存在を知らなければ、相続が発生した際に遺言書が存在しないということで遺産分割協議を行われてしまい、遺言の内容が実現されないといった危険があります。また、後に隠されていた遺言書の存在が判明した場合、遺言書を隠した一部の相続人は相続欠格事由があるとして相続資格を失い責任追及されることもあります。

遺言書が無効・偽造といわれる

記載内容に不備があると見える遺言書を作成してしまった場合、遺言によって本来であれば承継するはずであった相続財産の額が減少したと考える相続人から、相続財産が増加する相続人や遺贈を受けた方に対して、遺言の無効や遺言書が偽造されたものであると主張して責任追及するケースがあります。この場合、相続人や受遺者の間で話し合いがまとまらなければ、最終的には裁判所で遺言無効確認訴訟という裁判まで発展してしまうこともあります。

遺言書を勝手に開封

自筆証書遺言の入った封筒を発見した相続人は、遺言書作成者が亡くなって相続が発生すると家庭裁判所で遺言書の検認手続きを行わなければなりません。
ここでいう検認とは、家庭裁判所で相続人が立ち会って遺言書を開封する作業のことを指します。
相続人が遺言書と書かれた封筒を発見した場合に中身が気になって封を開けてしまうケースもありますが、家庭裁判所以外の場所で自筆証書遺言の入った封筒を開封することは認められておらず、開封してしまうと5万円以下の過料を科される場合もあります。

公正証書遺言が無効になることも

公正証書遺言は、遺言者が公証役場の公証人に遺言の趣旨を伝えて作成するので比較的有効性が高い遺言書の形です。しかし、遺言者には遺言能力が必要であり、作成時点で遺言の内容や結果を理解して遺言を遺すかどうかを判断できなければ、有効な遺言書を作成することができません。

具体的には、遺言者本人が認知症にかかって判断能力が低下している状態であるにもかかわらず、周囲の者が促すなどして無理に遺言書を作成させた場合、たとえ遺言書が公正証書遺言であったとしても、裁判で遺言書が無効と判断されてトラブルになるケースがあります。

遺産分割後に遺言書の発見

遺産分割協議の成立後に遺言書を発見した場合、遺言執行者がおらず相続人全員が合意していれば基本的には遺言の内容と異なる遺産分割協議も有効となります。
しかし、遺言書の記載が特定の相続人に有利な内容であれば、その相続人は、遺言の内容を知っていれば遺産分割協議が成立していなかったとして、遺産分割の意思表示を取消すことができるケースもあります。
この場合、遺産分割の意思表示は初めから無効であったものとみなされ、遺言書の内容に沿って手続きを進めていくことになりますが、相続人の間で争いが発生することは否めません。

遺留分侵害額請求

相続が発生し、配偶者や両親、子どもや孫などが相続人となる場合、これらの方には最低限の相続財産取り分が保障されており、この取り分のことを遺留分といいます。遺留分は遺言の内容よりも優先されるため、遺言書で全財産を特定の相続人に相続させる旨の内容を記載したとしても相続人の遺留分は認められます。
そして、遺留分を侵害された他の相続人は、全財産を取得した相続人に遺留分侵害額請求をすることにより、侵害された遺留分に相当する金銭を取り戻すことができるので、遺留分の侵害に関して争いが発生するケースもあります。

遺言の執行が大変

相続が発生すると、一般的には遺産分割協議を成立させ、協議書の内容に沿って相続手続きを進めますが、遺言書を作成していれば、遺産分割協議を行わずに手続きを進めることが可能になります。
しかし、相続手続きの全てを省略できるわけではなく、預貯金の払戻しや解約、株式の移管、不動産の名義変更その他手続きに追われることになり、思うように手続きが進まず金融機関や役所の手続きの際にトラブルが発生することも少なくありません。

遺言書トラブルを防ぐ8つの方法

遺言書トラブルを防ぐ8つの方法

ここでは遺言書のトラブルを防ぐ方法をご紹介します。

元気なうちに作成

終活やエンディングノートという言葉も普及し、相続について考えることも一般的になってきましたが、実際には遺言書の完成に至っていない方も少なくありません。「まだまだ今は大丈夫」と思っていても、人はいつ判断能力が低下してしまうのか予測がつきません。元気なうちに有効な遺言書を完成させおくことは、遺言書のトラブルを防ぐ有効な手段となるのです。

様式をきちんと守る

ルールに沿って遺言書を作成していなければ、遺言書自体が無効となってしまうことがあります。
自筆証書遺言を他人に書いてもらったり、そもそも日付が空欄であったりと、作成済みの遺言書から不備が見つかることも少なくありません。作成した遺言書は必要な要件を満たしているかどうか、改めて遺言書を確認してみることも遺言書のトラブルを防ぐ手段になるのです。

あいまいな表現は避ける

遺言書の効力が生じたときに手続きを行うのは相続人や遺言執行者です。遺言書にあいまいな表現の記載があると、遺言内容の解釈を巡って意見が分かれ、せっかく作成した遺言書によってトラブルが発生してしまうこともあります。
遺言内容の表現は「相続させる」「遺贈する」「認知する」など、明確な記載にしておくことも遺言書のトラブルを防ぐ手段になります。

公正証書遺言を利用

公正証書遺言の作成で関与する公証人は、元裁判官などが法務大臣から任命されて就任しており、法律家の中でもプロ中のプロといえます。さらに2人以上の証人が立ち会うことで遺言書の高い有効性が担保されています。
遺言の様式や表現について最も安心できる形といえますので、遺言書の作成で公正証書遺言を選択するということも遺言書トラブルを防ぐ方法となります。

遺言執行者を選任

遺言書どおりに手続きを進めるのは想像以上に大変な作業です。遺言で争いを起こさないよう平等に考えて作成していたとしても、ほとんどの場合で承継する方によって遺産の内容や種類に差が生まれます。
そして、手続きの際に相続人間や、相続人と遺贈を受けた方との間で争いになることも少なくありません。

こうした争いを未然に回避する手段として、遺言執行者を選任する方法があります。

遺言執行者は遺言内容を実現させる権限があり、相続人が関与しなくても遺言執行者のみで手続きを進めることができるので、遺言執行者を選任しておくことも遺言書トラブル防止の一手になるのです。

遺留分に配慮

遺留分に配慮

前述のとおり、遺言の内容として遺留分を侵害する記載をしてしまうと、遺言の内容よりも遺留分の規定が優先されるので、遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求をして侵害された額を取り戻すことが考えられます。

遺留分侵害額請求は金銭の支払いを求めるものですので、不動産のみを相続した方が遺留分侵害額請求を受けた場合、状況によっては支払う金銭がなく争いに発展するケースも考えられます。

こうした遺留分を巡った争いの未然回避のため、遺言書作成の段階から遺留分の侵害に配慮した遺言内容にしておくことも、遺言書トラブル防止の方法になるのです。

相続税の支払いを考慮

遺産の分け方によって相続税の額が変わることがあります。相続税には「配偶者に対する相続税額の軽減」という制度があり、この制度を使えば配偶者の相続税を大幅に軽減させることができます。

遺言書があれば遺産分割協議をしなくても良い反面、相続税のことも考えておかなければ、遺言書がない場合に比べて、たくさん相続税を支払わなければならないといった事態にもなりかねません。
遺言書の作成にあたって相続税の支払いを考慮することも、遺言書トラブルを回避する方法になるのです。

相続人同士のコミュニケーションを促す

相続で争いを発生させないようにするため、しっかりと遺言の内容を検討していても、最終的には相続人間で普段から話し合いができているかどうかにかかってきます。

どれだけ入念に考えて作成された遺言書であっても、介護などを一生懸命に行ってきた相続人と全く協力せずに疎遠な状態であった相続人とがいた場合、たとえ遺産の分け方が平等であっても納得できないといった意見が出ることは不思議ではありません。こうした不満感は争いに発展することがあるので、日頃から相続人同士のコミュニケーションを促すことも遺言書トラブルを防ぐ方法になるのです。

専門家に相談

セゾンの相続 遺言サポート」では、遺言に強い司法書士と提携しているため、信頼できる専門家との無料相談や最適なプランの提案を受けることができます。ご自身で遺言書を作成する場合、遺言の種類や有効となる表現、その後のトラブル防止などを考える必要もあり、多くの手間と時間がかかります。ご自身での遺言書作成に少しでも不安を感じられる方は、一度相談してみてはいかがでしょうか。

セゾンの相続 遺言サポートの詳細はこちら

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おわりに

遺言書を作成する際は、まずはご自身と相続人の方にとって最適な遺言はどういったものなのかを検討してから行いましょう。今回ご説明した遺言の種類やよくある不備、トラブルを防ぐ方法なども参考にしてみてください。

なかなか実際の遺言書を見る機会は少ないかも知れませんが、遺言や相続に関する情報を収集して知識を整理しておくことが大切です。また、ご自身で行うことが難しい場合、専門家に相談することをおすすめいたします。

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