現在のお葬式は、一般葬ではなく家族葬が主流となってきました。近年、家族葬の需要が高まった理由や、家族葬のメリットなどをご存じでしょうか。
今回はこれから葬儀を控えている方・ご自身の終活を考えている方に向けて、家族葬の流れについてご紹介します。家族葬についてよく聞かれるお悩みの回答もまとめました。いざという時のために、ぜひチェックしてください。
(本記事は2023年12月11日時点の情報です)
この記事を読んでわかること
- 家族葬とは、故人の家族や親しい方を中心にして少人数で執り行うお葬式のこと
- 流れは一般葬と大きな違いはないが、少人数のため受付や挨拶など省略されることも多々ある
- 家族葬によるメリットは、費用を抑えられたり、故人とゆっくりと向き合う時間が取れたりすることなどがある
家族葬とは
家族葬とは、故人の家族や親しい方などが参列し少人数で執り行うお葬式のことです。家族葬に明確な定義はないのですが、一般的には参列者が30名程度の葬儀を指します。
参列者は家族だけに限らず、故人と親しかった友人・関係者などを集めて行う少人数形式のお葬式についても「家族葬」と呼びます。
一般葬との違いは参列者が家族や近親者のみである点で、流れや内容はほぼ同様です。葬儀を少人数で執り行うため、参列者一人ひとりの気持ちが反映されやすいお葬式になるのが特徴的です。
家族葬の需要が高まった理由
株式会社鎌倉新書が運営する「いい葬儀」にて発表した「第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」によると、日本で行われる葬儀の種類は一般葬が25.9%、家族葬が55.7%という結果でした。
2020年の同調査では一般葬が48.9%、家族葬が40.9%と一般葬の割合の方が高かったことから、主流となる葬儀が一般葬から家族葬へと変わり、家族葬の需要が高まったことがわかります。理由は、主に以下の3つだと考えられています。
経済的影響
家族葬が増えたひとつ目の理由は、経済的影響です。長く続く日本の経済不況は「さまざまな出費を抑えたい」といった消費者の節約志向を高めています。
一般葬は参列者が多く、多額の費用がかかるため「葬儀費用を抑えたい」といった思いから、家族葬の需要が徐々に高まっていると考えられます。
感染症による影響
家族葬の需要が一気に高まったきっかけとして、新型コロナウイルス感染症拡大による影響が考えられます。
多くの参列者が会場に集まるお葬式は、密になる環境を避けるため、人数を減らす方向に変化していきました。感染症が流行した2020年以降、大規模な一般葬を選択する方は減少し、少人数で執り行う家族葬が増えていったのです。
価値観の変化による影響
時代の流れによってお葬式に対する価値観が変化しつつあることも影響しているでしょう。一昔前までは「最後は大人数で故人を盛大に見送ってあげたい」といった考えを持つ方が多数派でした。
しかし、最近では「限られた家族や友人だけで故人を見送りたい」という価値観を持つ方が増え、家族葬が選ばれる傾向にあるようです。
家族葬の3日間の流れ
ここからは一般的な家族葬のやり方をご紹介します。
一般葬の流れと大きな違いはありませんが、少人数で執り行うことで省略される場面も多々あります。3日間の流れと家族が行うべきことについてチェックしましょう。
1日目
はじめに、1日目(ご臨終から納棺まで)の流れについて確認していきます。
ご臨終
医師立会いのもと、死亡が診断されたらご臨終となります。病院より死亡診断書を受け取ってください。死後の対応は病院によって異なりますが、末期の水(口を湿らせる)、清拭(身体をアルコール綿で拭き取る)などが行われます。家族は、手分けをして親族や葬儀会社への連絡を始めましょう。
遺体の搬送・安置
葬儀会社が遺体の運搬に来てくれます。運搬時には葬儀会社の車を使用するため、家族が行うべきことは特にありません。自宅に遺体を安置する場合は、どこに安置するのか場所を伝えたり、故人を寝かせるための布団を準備したりしましょう。
近親者へ連絡
葬儀に参列してほしい近親者へ連絡をします。学校や職場など近親者以外にも連絡が必要な場合は、家族葬であることを強調した上で最低限の連絡を行いましょう。また、このタイミングで香典や弔電について、家族で話し合う必要があります。
家族葬の場合、香典や供花、弔電を辞退するケースも増えています。受け取らないと決めた場合には、連絡の際に香典などを辞退する旨も伝えるようにしましょう。
打ち合わせ
葬儀会社との打ち合わせでは、具体的な家族葬の内容を決めていきます。家族側が確認しておくことや決めることは、主に下記のとおりです。
- 喪主
喪主を決定します。故人の配偶者もしくは長子、兄弟などが一般的です。 - 葬儀の日程や開催場所
特段の事情がない限り、ご臨終の翌日から3日後までに通夜を執り行うスケジュールで決めていきます。開催場所については、葬儀ホールで行うケースが多くなっていますが、寺院や自宅などで執り行うことも可能です。 - 宗教・菩提寺
葬儀や法要を代々依頼している菩提寺がある場合は、寺院へ連絡しましょう。 - 予算・プラン
返礼品・料理などを相談しながら、葬儀会社に見積書作成を依頼しましょう。予算を伝えれば、予算に合ったプランを提案してくれます。 - 遺影の準備
遺影で使う写真を選定し、遺影の背景カラーなどを決めます。
湯かんの儀・納棺
「湯かんの儀」とは、お葬式前に故人の身体を整えることをいいます。葬儀会社のスタッフが、遺体の硬直をほぐして清拭や化粧を行い、死装束に着替えさせてくれます。家族は、故人の愛用品など副葬品を選び、一緒に納棺しましょう。
2日目
次に、2日目の通夜の流れについて見ていきましょう。
通夜
通夜の受付は、参列者の少ない家族葬の場合には省略されるケースもあります。一同が着席したら、僧侶が入場して開式となります。一般葬で行う通夜と、読経の内容や時間に変わりはありません。読経の間に、家族は焼香を行います。
最後は喪主が挨拶をしますが、家族葬では省く場合もあるでしょう。通夜全体の所要時間は1時間程度で、その後に通夜振る舞いを行います。
通夜振る舞いとは、親族控室などで料理が振る舞われることです。精進料理が出され、食事をしながら故人の話をします。事前にプランを決めておけば、料理の手配や配膳などは葬儀会社のスタッフが行うため、家族が対応することはありません。
3日目
3日目に執り行う、告別式から出棺までの流れを確認していきます。
葬儀・告別式
葬儀と告別式の流れも、一般葬と流れは同じです。僧侶が入場して、葬儀会社のスタッフによる開式の辞で葬儀が開始します。血縁の近い順で焼香が行われ、続いて告別式に入ります。
僧侶が退場して閉会しますが、参列者は斎場に留まりそのまま「花入れの儀」をします。葬儀会社のスタッフが、祭壇から棺をおろし、飾られていた花を切り分けてくれます。親族は花を受け取り、棺に入れて故人との最後のお別れをします。この時に、故人が愛用していた物や手紙などを一緒に棺に納めることもできます。
出棺
花入れが終わったら、出棺となります。棺は霊柩車に乗せられて、火葬場へ運ばれます。出棺の際には喪主が位牌を持ち、故人と深い関わりのある遺族の方が遺影を持ちます。
火葬
火葬場では「納めの式」をします。炉前に位牌と遺影を飾り、僧侶の読経に続いて、順番に焼香していきます。火葬時間は、45分~1時間半程度です。火葬の間は、家族は控室で待機します。
火葬が終わったら「お骨上げ」が行われます。喪主から順に2名1組で、遺骨を骨壷に収めていきます。骨上げが終わると、骨壺が喪主に渡されます。火葬場のスタッフから埋火葬許可証に火葬済印が捺印されますので、忘れずに受け取りましょう。
精進落とし
家族葬では、省略されるケースもありますが、お骨上げが終わった後に「精進落とし」と呼ばれる食事の席が設けられます。
精進落としとは、葬儀後に遺族が参列者や僧侶に感謝の気持ちを伝えるための席です。本来は「精進する」といった意味合いがありましたが、現在では精進料理に限らず懐石料理や仕出し弁当などを選ぶケースも増えています。
僧侶を上座へ案内し、精進落としの食事の前に、喪主が御礼を伝え、献杯で食事を開始します。
家族葬で得られるメリット
家族葬には、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
葬儀にかかる費用を抑えられる
家族葬では葬儀の規模が小さいので、用意する食事・返礼品、葬儀会社のスタッフ人数も少なくて済みます。そのため、葬儀にかかる費用を抑えられる可能性があるでしょう。
家族葬にかかる費用の目安は、参列者が10~30名程度であれば約80~100万円といわれています。一般葬にかかる費用相場は約140万円であるため、家族葬の方がコストは抑えられるでしょう。
自分たちらしく葬儀ができる
家族葬では、親しい方たちだけでお葬式を執り行えます。そのため、周りの目を気にすることなく、自分たちらしいアットホームな葬儀を執り行うことが可能です。自由度も高いので、故人や家族が望む形で丁寧なお葬式ができるでしょう。
準備に余裕が持てる
一般葬では、参列者が多くなればなるほど準備に時間がかかります。しかし、参列者の少ない家族葬では、準備の手間を省けるため余裕を持って準備ができます。料理や返礼品の数なども、事前に把握しやすいでしょう。
ゆっくり故人と向き合える
参列者が限られる家族葬では、弔問客への対応などが軽減されるため、ゆっくり故人と向き合う時間が取れます。参列者も気心が知れている方たちだけなので、落ち着いて故人と最後のお別れができるでしょう。
参照元:
小さな森の家|家族葬の費用相場は?お葬式にかかる費用を抑えるために知っておきたい知識を解説
家族葬の香典マナー
家族葬では身内から金銭を受け取ることに抵抗があり、遺族が香典を辞退するケースも多くなっています。香典を辞退する連絡があった際には、無理に渡さないのがマナーです。
また、遺族は訃報を知らせるタイミングで「故人や喪主の意思として香典辞退する」旨を、あらかじめ伝えておきましょう。
家族葬のQ&A
ここからは、家族葬に関する疑問をQ&A形式で解説します。
どこまでの方を呼ぶべき?迷った際は?
家族葬でどこまで声をかけるべきか迷った際には「1親等から2親等までの親族」と考えておきましょう。家族葬を少人数で執り行うなら、この範囲で考えるのが一般的です。
家族葬には平均どれくらいの人数が参列するの?
「第5回お葬式に関する全国調査(2022年)」では、家族葬の平均参列人数は23名という結果になりました。一般葬の平均参列人数は79名、すべての葬儀の種類を合わせた時の平均参列人数は38名で過去最少人数となっています。コロナの影響により、参列人数は年々減っている傾向です。
参列しない関係者への連絡は?
家族葬の場合、参列しない関係者には故人の他界を事後にお伝えすることになります。その際には、お送りする手紙に「故人や遺族の意思により親近者のみで葬儀を執り行い、無事に終えたこと」を記載しておきましょう。事前にお知らせする場合には、参列のご辞退をお願いするよう伝えてください。
近親者への連絡手段は?
近親者の訃報連絡の手段は、電話が望ましいです。連絡の際には、広く知れ渡ってしまうことを防ぐため「家族葬にするので、他の人に言うのは控えてほしい」旨を伝えておきましょう。葬儀の案内や当日の流れなどを伝える場合には、伝達ミスがないようにメールを活用して連絡するのも問題ありません。
葬儀の負担をできるだけ減らすには?
小規模の家族葬であっても、喪主をはじめ家族の方々はやることが多く、とても忙しくなります。葬儀の負担を減らすには、葬儀に詳しい専門会社にサポートを依頼するのもひとつの手です。
「セゾンの相続 お葬式サポート」では、経験豊富な提携専門家のご紹介も可能です。「残された家族に、葬儀の段取りや葬儀費用など負担をなるべくかけたくない」「自分の葬儀については、自分で準備を進めたい」このような思いをお持ちの方は、ぜひご相談ください。
おわりに
家族葬の流れについてご紹介しました。たとえ家族葬であっても、葬儀を執り行うには選択事項が多くあります。葬儀に関するさまざまなことを、残された家族の方がすべて選んで決めることは非常に大変なことです。生前よりご自身で自分の葬儀について検討したり、家族に希望のプランを伝えておいたりするのも良いかもしれません。終活をお考えの方は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。
参照元:いい葬儀|「第5回お葬式に関する全国調査」