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樹木葬のデメリット・メリットとは?費用の相場や選ぶ際にポイントも解説

セゾンのくらし大研究 編集部

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このコラムをお読みになる皆さまの中には、ご自身やご家族がお亡くなりの際には「樹木葬」を選択肢のひとつとして考えている方もいるでしょう。ただ、ご心配の点が多かったり、あるいは後々どうなってしまうのかが気になるなど、お悩みの方は少なくないかもしれません。

このコラムでは漠然としたイメージや憧れだけでなく、具体的なメリットやデメリット、デメリット(の一部)の回避の仕方について解説しております。皆様の悔いのないご決断の一助になれば幸いです。

この記事のまとめ

樹木葬は新しい葬法のひとつで、墓標として樹木(シンボルツリー)を植える葬法です。樹木葬はいくつかのタイプに分けられ、それぞれこだわりポイントが異なります。樹木葬はまだ必ずしも一般に理解されているとはいえず、またさまざまな縛りがありそれがデメリットになってしまうこともあります。一方で、一般的な葬法に比べ費用が抑えられる傾向にあったり、その他のメリットも少なくないので、親族やお墓の継承者の方とよく話し合い、また墓地のルールをよく確認して決めることが大切です。

樹木葬とは?

樹木葬とは、「墓地・埋葬等に関する法律(いわゆる「墓埋法」)」に基づいて許可を得た区画に樹木を墓標としたお墓を作り、遺骨を(一般に)土に還す埋葬方法、あるいはそうした墓地です。

こうした葬法は基本的に遺体を火葬することが前提なので、ヨーロッパでは1960年代頃、日本では21世紀直前に始まりました。

樹木葬を行う主な場所

現在の日本で行われる樹木葬は、大きく分けて2種類あり、「里山」型と「霊園・寺院」型に分けられます。ここでは、この二つのタイプの樹木葬を簡単に紹介します。

ただし、後述の「霊園・寺院」型をさらに「公園(都市)型」と「庭園型」の2種類に分類(公園(都市)型は他のタイプの樹木葬墓地に比べ、比較的都市部あるいは都市近郊でも見られます)して3種類とする見方もあります。

里山

里山型樹木葬は、山林の一角を霊園として登録しそこに埋葬(あるいは散骨)する樹木葬です。なお、日本初の樹木葬もこのタイプです。

里山型樹木葬墓地には、里山として管理されているため、遺族その他の継承者による墓としての継承を必要としないものもあります。

霊園・寺院

先述のように公園(都市)型と庭園型に分けることができますが、墓標の役割のある樹木の根元に遺骨を埋葬(あるいは散骨)するシステムであることは共通です。

このタイプは公営霊園、民営霊園、寺院境内などさまざまです。

樹木葬の埋葬方法

樹木葬の主な埋葬方法について解説します。

合祀

このタイプでは墓標となるシンボルの樹木(シンボルツリー)のそばに納骨室(カロート)を設置し、そこへ骨壺から遺骨を取り出して納めます。合祀型には納骨室を設けず直接遺骨を土に還す、後述の直接埋葬タイプのものもあります。

個別埋葬

このタイプはシンボルツリーのそばに納骨室を設置し、基本的に骨壺のまま納めます。ひとつのお墓に埋葬されるのは原則としてひとりです。

複数埋葬

複数埋葬タイプは、樹木葬にはしたいが配偶者や家族と一緒に納骨されたい、しかしいわゆる他人と一緒には若干抵抗があると考えている方に向いています。

先述の個別埋葬と似た仕組みですが、複数人(基本的に配偶者や家族)がひとつのお墓に埋葬されます。近年ではいわゆる家族親族に限らず、友人や同じ価値観を持つ人々同士でこれを選択するケースもあります。

直接埋葬

里山の再生を目指した樹木葬の場合、骨壺から遺骨を取り出し直接土の中に埋葬(あるいは散骨)します。また、後述しますが、都市部の樹木葬墓地ではスペースの確保のために直接埋葬がルールである場合もあります。

樹木葬のデメリット

ここでは、デメリットとして以下について解説します。

  • 新しい埋葬の形であるため理解されにくい
  • 粉骨が条件となっている施設がある
  • 線香、ロウソクの使用が禁止されている場合がある
  • 埋葬後の遺骨の移動や取り出しが難しい
  • アクセスがしにくいケースもある

ただし、デメリットとされる事柄も場合によっては話し合いなどで打開の可能性もありえます。さらには価値観次第では問題にならないか、逆にメリットになることもあるということを忘れないようにしましょう。

新しい埋葬の形であるため理解されにくい

樹木葬は近年になって増えている新しい埋葬方法です。家族やお墓の継承者にいわゆる「代々継いでいく」タイプの伝統的なお墓(実際には、このスタイルのお墓は江戸時代後半に誕生し近現代に入って定着した比較的「新しい伝統」というべきものであることは、よく指摘されていますが)を希望する方がいる場合、意見が分かれてしまうケースがあります。

いざというときに争わないよう、普段から葬儀やお墓についての話題をタブー視せずオープンに話し合い相手の考えを頭ごなしに否定しない空気を作っておくことが求められます。

粉骨が条件となっている施設がある

都市部や都市近郊の霊園にある樹木葬墓地には、スペースの関係で粉骨(遺骨を細かくパウダー状に粉砕すること。近年では専門の会社も存在する)および直接埋葬が条件になっている霊園があります。

また、里山型樹木葬では里山再生のために遺骨を粉骨して直接埋葬(あるいは散骨)するのが決まりとなっている場合もあります。

そのため、遺骨の形が残っているのを望ましいと思う方や今後の改葬の可能性が高い方にとっては、このタイプはやはり抵抗感があるでしょう。

線香、ロウソクの使用が禁止されている場合がある

樹木葬の霊園は屋外にあり、多くの場合、豊かな自然に恵まれたエリアにあります。そうしたことから、山火事やゴミによる衛生状態の悪化を防止するため、お供えや線香、ロウソクの使用を禁止している場合があります。

そのため、お供えや線香を使わないとまともなお墓参りとはいえないと考える方には樹木葬はおすすめできません。

ただ、近年では一般的な墓地でもそうしたルールが適用されるケースが多く、特に比較的若い年齢層を中心にあまり気にしないという方は少なくありません。

埋葬後の遺骨の移動や取り出しが難しい

先述の粉骨など典型的ですが、樹木葬ではほかにもシンボルツリーを傷つけないようになど、さまざまな理由で埋葬後に改葬や墓じまいを希望し遺骨を取り出したくなっても対応できないことが多いため、注意しましょう。

とことん自然に還ることを志向する故人や遺族の方にとっては、これはメリットといえます。

アクセスがしにくいケースもある

特に里山型の樹木葬は呼称でもわかるとおり都市部に設置することが不可能なため、どうしてもアクセスが悪くなってしまいます。

また、「都市型」の別称もある公園型(寺院・霊園など)も実際には都市部というよりやや近郊に設置されることが多く、都心部に比べアクセスは劣りがちです。

ただこちらも、そうした樹木葬墓地の「ご近所さん」やあるいはこれから引っ越しでそうなる予定の方で樹木葬を希望する方にとっては、(別の場所での樹木葬を希望しない限りは)メリットといえるでしょう。

樹木葬のメリット

一方、樹木葬にはメリットというべき点も複数あります。ここでは、そうしたメリットについて紹介します。

施設がお墓の管理をしてくれる

樹木葬の墓地は永代供養をしているケースが多く、そうしたタイプの墓地では、基本的に管理は全て霊園や寺院など施設側が行ってくれます。

コストが抑えられる

一般的なタイプのお墓のように、個別に墓石を準備するにはそれなりに高額な費用が必要ですが、樹木葬ならそれよりも割安で購入できる(詳しくは後述)ことが大きなメリットです。

遺族の負担を軽減できる

ご希望の樹木葬墓地が永代供養型であれば、従来のような頻度でのお参りやお墓の掃除をする必要はないので遺族の負担が軽くなります。

宗教宗派の関係がない

樹木葬は従来の宗教ではなく「自然の中に眠る」「自然に還る」ことが基本思想のため、特定の宗教とは関係のない管理者の場合はもちろんのこと、寺院や教会など宗教施設が管理者になっている墓地でも宗教宗派を問わず埋葬できるところがあります。

したがって、そうした宗教宗派不問の樹木葬では宗教によるしきたりにも縛られません。

木の成長とともに月日の流れを実感できる

お参りに来た方がシンボルツリーの成長を見て月日の流れを実感するとともに自然の一部となった故人のイメージを重ねたり、見守ってくれているという感覚を抱いたりすることも少なくないはずです。

ペットと入れる樹木葬もある

近年ではペットも家族の一員とする考え方が強くなったとはいえ、一般的なお墓では飼い主とペットが一緒に入ることはまだタブー視されるケースが大半です。

しかしながら樹木葬では「自然に還る」「自然の一部になる」ことを強く志向するため、人間と他の動物を峻別する発想はあまり強くないので、ペットと一緒に埋葬あるいは散骨されることが可能な樹木葬もあります。

樹木葬の費用の相場

樹木葬にかかる費用の相場はタイプによって差があるため約5~80万円と幅があり、樹木葬ではないタイプの永代供養墓も費用の相場はほぼ同じといって良い程度です。

なお対比のため、その他の主な埋葬方法の相場の例を以下にいくつか挙げておきます。

  • いわゆる一般的な(永代供養でないタイプの)お墓:約100〜300万円
  • 樹木葬以外の自然葬(海洋散骨など):約1〜40万円
  • 特殊なタイプの散骨の一種である宇宙葬:約10〜200万円
  • 手元供養:さまざまなタイプのものがあるため幅があるが、約5千〜50万円

樹木葬の施設選びのポイント

後悔のない樹木葬を行うために是非知っておきたい、施設選びのポイントについて見ていきましょう。

家族や親族と事前に話し合う

申し込みの前には、必ず家族や親戚などと事前に話し合いましょう。樹木葬も含めたいわゆる自然葬がスムーズにできるケースは、普段から家族・親族・友人間で死や葬儀・埋葬についてオープンに話し合える間柄である方が多いようです。若く健康なうちから、そのような話題を話し合える空気を作っていくのがよりベストでしょう。

立地を確認する

お墓参りをする方たちのことも考える必要があります。そのため公共交通機関のアクセスが良く、最寄駅からの路線バスなどの交通手段があるかどうか(可能ならば路線バスの1日の便の数はどれくらいか)、また送迎バスの有無および送迎バスがある場合の便の数や時間もチェックしておきましょう。

管理費の有無で選ぶ

樹木葬の場合、管理費が必要な霊園と不要な霊園があります。これは毎年かかる費用なので、契約前には忘れないよう確認が必要です。

合祀までの期間を確認しておく

最初から合祀あるいは直接埋葬・散骨するタイプを希望する方もいますが、そうでないタイプの個別埋葬や複数埋葬が希望の方もいます。そのタイプを希望する場合、何年後に合祀されることになるのかは必ずチェックしておきましょう。

シンボルツリーの意図を明確にする

墓地だけでなく、墓標となるシンボルツリーの選定も案外重要なものです。美しい花を咲かせるバラや一年中緑が美しい常緑樹などが人気ですが、他にも例えば故人が好きだった木や訪れる方になじみ深い木などといった、シンボルツリーとなる木を植える意図を明確にするとよりお墓参りするときの思いが深まります。

また、里山型樹木葬の場合には里山の自然再生という目的も含まれるケースが多く、そこの植生に合わせたシンボルツリーの選定が必要になりますが、そうした自然再生の目的ということまで考えてこのタイプを選ぶのも、明確な意図のある自然葬の選択といえるでしょう。

樹木の管理体制が整っているか確認しておく

多くの樹木葬墓地(特に霊園・寺院墓地タイプ)では管理者側が樹木を管理してくれていますが、時として管理が行き届いておらず荒廃したようになってしまっているケースがあります。

また、特に里山型樹木葬ではあくまで全てを自然に還すという考えが強いケースがあり、枯れたり折れたりしてしまったシンボルツリーを新しく植え替えたりせずそのままにしておくシステムを採用している場合もあります。

こうした樹木の管理面で自分のイメージと違ってしまい後悔してしまうのを避けるためにも、契約前には現地を訪れてきちんと確認し、疑問点はきちんと質問しておきましょう。

お墓選びは、「セゾンの相続 お墓探しサポート」がおすすめ

現在日本で行われている樹木葬にはさまざまなタイプがあります。個々人の価値観や宗教的信条などの違いにより、適しているタイプの樹木葬も当然違ってきますが、そのための情報収集でもしお困りのことがありましたら、「セゾンの相続 お墓探しサポート」にご相談ください。樹木葬の経験豊富な提携専門家のご紹介も可能です。

おわりに

最後に、樹木葬に関するトリビアをひとつ紹介します。

前近代、特に中世の日本のいくつかの地域や中国北部のいわゆる旧満州地域では、墓に松を植える習慣(墓松)があったことがわかっています。

また、南北戦争以前のアメリカで奴隷身分にあった黒人が亡くなった際には石の墓標を建てることは認められなかったが、代わりに木材の墓標や生きた樹木を墓標にすることが認められていたという報告もあります。

このように現代型樹木葬が始まる前の時代に墓地に樹木を植えた、あるいは樹木を墓標にした例は他にもいくつかありましたが、それらの例を樹木葬の始まりとみなす考え方もあるようです。

しかしながら、こうした現代型樹木葬が始まる前の例のほとんどは「自然に還る」ことを志向したというよりも、単純に「本来なら石の墓標を建てたいが、それは事情により叶わないので樹木を墓標にした」ケースというべきなので、これらを「元祖樹木葬」とみなすのはいささかこじつけが過ぎるといえるでしょう。

<参考文献>

加藤長『令和の葬送 戒名はいらない!』同時代社、2019

勝田至編『日本葬制史』吉川弘文館、2012

鈴木岩弓、森謙二編『現代日本の葬送と墓制 イエ亡き時代の死者のゆくえ』吉川弘文館、2018

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