家の名義変更を親から子にするときは、生前贈与で行うのか、相続で行うのかによって手続きや課せられる税金などが異なります。実際にどのような手続きが必要なのか、また、節税の方法について見ていきましょう。必要書類についても説明しますので、ぜひ参考にしてください。
相続税申告は、相続専門の税理士に
「相続税の負担をなるべく減らしたい」「相続税申告後、税務調査が入ると大変と聞いた…」そんな方におすすめなのがクレディセゾングループの「セゾンの相続 相続税申告サポート」です。相続税を得意とする税理士とそうでない税理士では、税金に大きな差が出ることも。セゾンの相続では、相続税に強い税理士と提携しており、無料相談や手続き依頼のご案内が可能です。相続税でお困りの方は、ぜひご相談ください。
セゾンの相続 相続税申告サポートの詳細はこちら
親から子へ家の名義変更をする2つのケース
親の名義となっている家を、子どもの名義に変更することがあります。主なケースは次の2つです。
- 親が死亡したとき
- 生前贈与するとき
それぞれ事情が異なるだけでなく、発生する税金の種類も異なります。具体的にそれぞれがどのような状況なのか詳しく見ていきましょう。
親が死亡したとき
親が死亡したときは、親の財産は配偶者や子どもなどの相続人に相続されます。ただし、親が遺言書を作成し、配偶者や子ども以外を相続人と定めているときは、指定された相続人が故人の財産を受け取ることもあるでしょう。
相続財産に家があるときは、子どもがその家を相続する可能性があります。相続人が集まって話し合い、誰が相続するのかを決めてから、相続手続きを行います。故人の子どもがその家を相続する際は、家の名義を親から子に変更します。相続する家が建っている地域を管轄する法務局で、相続することになった子どもが名義変更の手続きを行いましょう。
生前贈与するとき
財産を死後に渡すことを「相続」と呼ぶのに対し、生前に譲り渡すことを「贈与」と呼ぶことが一般的です。
相続においては、財産を所有している方が自分自身の財産が誰に相続されたのかを見届けることはできません。遺言書で意思を示すことはできますが、必ずしも遺言書に記載された内容すべてがそのとおりに実行されるとは限らないので、自身の意思どおりの相続が行われるのか不安に感じる方もいるでしょう。
自身の財産を特定の人物に渡したいときは「生前贈与」を活用することができます。確かに財産が引き継がれたことを確認できるので、相続に関するトラブルの回避にも繋がるでしょう。生前贈与によって家の名義を子どもに変更するときは、家が建っている地域を管轄する法務局で手続きを行います。
親が死亡して家の名義変更をする場合
親が死亡すると相続が発生します。故人名義の家があるときは、家も相続財産のひとつとなるでしょう。
相続人が配偶者と子どもだけの場合、死亡したときの年齢にもよりますが、家は子どもが相続することが一般的です。一次相続時点で配偶者が配偶者控除により相続し相続税負担が減っても、配偶者が死亡した二次相続の際に再度相続が発生し、配偶者控除が使えず、また相続人数が減ることにより基礎控除が減り、相続税額が高くなる可能性があります。また、最初から子どもが相続しておけば相続手続きの回数が1回で済むため、その分節税できるといわれています。
必要書類と手続き
相続のため、家の名義を親から子どもに変更するときには、次の書類が必要です。
- 相続する家の登記事項証明書
- 家の名義人が生まれてから亡くなるまでの戸籍・除籍謄本
- 家の名義人の住民票除票、あるいは戸籍の附票
- 固定資産税評価証明書
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の戸籍謄本
- 家の相続人の住民票
まずは相続する家の登記事項証明書を法務局で取り寄せ、家の名義人を確認します。故人が名義人であることを確認したら、生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本と住民票除票、あるいは戸籍の附票を準備しましょう。故人が生前異なる自治体へ何度も引越しをしているときは、戸籍謄本の取り寄せに時間がかかることもあります。
次は相続人に関する書類です。相続人が複数いるときは、特定の相続人が勝手に財産を相続することはできません。相続人全員の意思による相続であることを示すために、遺産分割協議書を作成し、戸籍謄本を添えて法務局に提出します。
また、家の相続人は、住民票や固定資産税評価証明書も必要です。自治体の役場で取り寄せてから、法務局にまとめて提出しましょう。
不動産の場合は分割が難しいため、相続しづらいケースも少なくありません。そのような場合は、一旦特定の相続人が相続し、そのあとで売却して現金として分割することも検討してみましょう。
税金の支払い
相続したときには、次のタイミングで税金を支払います。
- 登録免許税:家の名義を相続人に変更するとき
- 相続税:死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内
それぞれの税金をどのように計算するのか、詳しく見ていきましょう。
登録免許税
家の名義人を変更するときに、法務局で登録免許税を支払います。登録免許税は次の手順で計算しましょう。
- 固定資産税評価額を調べ、1,000円未満を切り捨てる
- 1で求めた金額に4/1000をかける
- 2で求めた金額の100円未満を切り捨てる
例えば固定資産税評価額が500万2,500円だったとしましょう。1,000円未満を切り捨てて、500万2,000円とし、4/1000をかけます。
- 500万2,000円 × 4/1,000 = 20,008円
100円未満の金額を切り捨てて、登録免許税額は20,000円と求められます。
相続税
相続財産ごとに相続税を計算するのではなく、相続財産すべてをまとめて計算します。まずは相続税が発生するのかどうかチェックしていきましょう。
相続財産の金額が以下の金額よりも少ないときは、相続税を納税する必要はありません。
- 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の人数
例えば法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合には、相続財産が4,800万円以下であれば相続税は不要です。しかし、4,800万円を超えるときには、相続税の申告と納付が必要になります。
なお、小規模宅地等の条件に該当する不動産に関しては、課税額減額の対象です。正しく適用することで相続税額が大幅に減るので、下記ホームページを確認しておきましょう。
参考:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
生前贈与のために家の名義変更をする場合
生前贈与のために家の名義変更をする場合は、贈与税の納付対象となります。なお、相続税に関しては相続が発生したことを知った翌日から10ヵ月以内に申告・納付しなければなりません。
生前贈与の手続きは、次の流れで行います。
- 生前贈与に必要な書類を集める
- 贈与契約書を作成する
- 家の名義変更手続きをする
具体的に必要な書類は何か、また、手続きについて詳しく見ていきましょう。
必要書類と手続き
親から子への家の生前贈与に必要な書類としては、次のものが挙げられます。
- 登記事項証明書
- 固定資産評価証明書
- 登記済権利証あるいは登記識別情報通知書
- 親の印鑑証明書
- 子の住民票
登記事項証明書は、家が建っている地域を管轄する法務局で受け取れます。また、固定資産評価証明書は対象の不動産の所在地の役場で、親の印鑑証明書は親が居住している自治体の役場で受け取りましょう。子どもの住民票は、子どもが居住している自治体の役場で受け取ります。
登記済権利証と登記識別情報通知書は、他の書類とは異なり原則として再発行できない書類です。不動産の名義人(親)がどちらかを保管しているかどうか確認しておく必要があります。書類が見つからないときは別途手続きが必要になるので、法務局に相談しましょう。
上記の書類をすべて集めたうえで、贈与契約書の作成を行います。
なお、生前贈与を行うにあたって、必ずしも贈与契約書を作成する必要はありません。しかし、作成しておくことで贈与があったことを証明することができ、相続の際にもトラブルを回避できるようになります。
贈与契約書には決まった書き方はありませんが、次の内容を含んでおくとより正確に贈与があった事実を証明できるでしょう。
- 贈与対象となる不動産の詳細情報(登記事項証明書を参考に正確に記載)
- 不動産の引き渡しが実施される日付
- 誰から誰への贈与か
贈与契約書の末尾には、親子それぞれの住所と氏名を記し、実印を押しておくと良いでしょう。贈与契約書の作成が完了したら、家の名義変更手続きを行います。家が建っている地域を管轄する法務局に出向き、登記申請書に記入して集めた5つの書類を添えて提出します。
税金の支払い
生前贈与により家の名義を変更すると、次の3つの税金が発生します。
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 贈与税
それぞれの税金を納めるタイミングや負担者、計算方法について見ていきましょう。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得したときに取得者に対して1回のみ発生する税金です。名義変更の手続きをして数ヵ月経つと、不動産のある都道府県から納税通知書が届きます。その通知書に記載された期限内に納税しましょう。
不動産取得税は、2024年3月31日までに取得した場合は以下のように計算します。
- 土地 :固定資産税評価額の3%
- 住宅用家屋 :固定資産税評価額の3%
- 住宅用以外の家屋:固定資産税評価額の4%
生前贈与を受ける前に計算し、スムーズに納付できるようにしておきましょう。
登録免許税
登録免許税は、家の名義変更手続きをしたときに法務局で支払う税金です。名義変更の原因ごとに税率が定められており、贈与・売買・財産分与の場合は以下のとおりとなります。
- 固定資産税評価額の1,000円未満を切り捨てる
- 1で求めた金額に2%をかける
- 2で求めた金額の100円未満を切り捨てる
例えば生前贈与を受けた不動産の固定資産税評価額が3,000万8,900円だったとしましょう。1,000円未満を切り捨てると、3,000万8,000円です。2%(2/100)をかけると600,160円となります。100円未満を切り捨てて、登録免許税は600,000円と求められます。
なお、不動産取得税は不動産を取得した方が支払う税金ですが、登録免許税は不動産を贈与する側、贈与される側のどちらが払っても問題ありません。
贈与税
1年間の贈与額が110万円を超えるときは、贈与税を納付しなくてはいけません。なお、贈与税は贈与を受けた側が支払う税金です。親から子どもへ不動産が贈与されたときは、子どもが贈与税を納付します。
例えば生前贈与を受ける財産が800万円の価値があるとしましょう。800万円から110万円を差し引いた690万円に対して贈与税が課税されます。
家の名義変更時に発生する相続税・贈与税を抑える方法
不動産は価値が高いことが多いため、相続する際は税金も高額になりがちです。家の名義変更時に発生する相続税や贈与税を抑える方法を2つ紹介します。適用できるかどうか検討してみましょう。
- 相続時精算課税制度
- 暦年贈与制度
それぞれの制度内容を解説します。
相続時精算課税制度を利用する
相続時精算課税制度とは、子どもや孫への贈与に対して最大2,500万円分が相続が生じるまで非課税になる制度です。また、2,500万円を超えた部分に関しても贈与税率が一律20%に抑えられます。
なお、この制度を利用するときは、贈与した年の1月1日時点で贈与する側が60歳以上、贈与される側が18歳以上でなくてはいけません。また、この制度を選ぶと、以降暦年贈与の贈与税非課税枠(年間110万円まで)は使えなくなることになっていましたが、制度改正により2024年1月1日からは利用可能となりました。
相続時精算課税制度は、「相続する時に(これまでに贈与を受けた分を)精算する課税制度」です。つまり、贈与者が亡くなり相続が発生した場合には、この制度を利用して贈与した財産は年間110万円までの非課税枠を除き、故人の相続財産に加算して相続税を計算します。
暦年贈与の仕組みを利用する
暦年贈与は贈与税非課税枠(年間110万円まで)を活用して贈与税を抑える方法です。例えば2,200万円の不動産を贈与するときは、持分を分割して110万円以内になるように贈与していきます。
暦年贈与制度を利用するときには、特別な申告や手続きは不要です。ただし、暦年贈与として認めてもらうためには、贈与契約書の作成や、時期や金額等に注意が必要です。
相続や贈与を専門とする専門家に相談する
相続・贈与を専門とする専門家に相談することで、相続税や贈与税を抑えられることもあります。また、相続や贈与の手続きを任せることもできるので、忙しい方や手間を減らしたい方も検討してみましょう。
資産の承継について専門家に相談しよう
家の名義を変更するときには、登録免許税が発生します。また、家を相続する場合には相続税、生前贈与のときには贈与税や不動産取得税などがかかることもあるでしょう。
不動産の価値が高いときには、税金も高額になります。相続や贈与を専門とする法律事務所に相談し、賢く資産を次世代に引き継ぎましょう。