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樹木葬で後悔する前に… 起こりやすい問題と未然に防ぐ方法とは?

セゾンのくらし大研究 編集部

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当記事をお読みになる皆様の中には、ご自分がお亡くなりの際には「樹木葬」を選択肢のひとつとしてお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、樹木葬を選んだもののさまざまな理由で後悔してしまうケースもあります。

本記事では、樹木葬に対する具体的なメリットやデメリットを解説します。樹木葬に関する詳細を知ることで樹木葬を行う、行わないを選択することができ、また行うという選択をした際にもより安心して臨めるでしょう。

この記事のまとめ

樹木葬は、ヨーロッパで1960年代に、日本では21世紀直前に始まった新しい葬法のひとつで、墓石の代わりに樹木(シンボルツリー)を植える葬法です。樹木葬は幾つかのタイプに分けられ、それぞれ費用やこだわりポイントが異なります。樹木葬は一般的な葬法に比べ費用が抑えられる傾向にあり、その他さまざまなメリットがあるので「自然に還る」志向の強い方にはおすすめですが、一方後悔してしまいメリットがデメリットになってしまうケースもあるので、お墓の継承者の方とよく話し合って決めることが大切です。

樹木葬とは?

 

樹木葬とは、一般的な墓地での墓石の代わりに樹木(シンボルツリー)を墓標としたお墓、あるいはその葬法を指します。

現代的な「自然に還る」志向の樹木葬は、1960年代頃のヨーロッパで、それまで圧倒的多数派であった土葬に代わり火葬が少しずつ広まっていったのが始まりです。

ヨーロッパの樹木葬用墓地では背の低い木の下やバラ園に骨壺に入れられた(あるいは骨壺に入れずに)遺骨が埋葬されたり、細かく粉砕された遺骨が散布されたりしています。

日本の樹木葬は、1999年に岩手県一関市の祥雲寺住職らが墓地としての行政の許可を得た里山に故人の遺骨を骨壺から出して埋葬し、地域の植生に合わせて背の低い木を墓石代わりに植えたのが第一号です。

また、遺骨を埋葬してそこにシンボルツリーを植えるタイプだけでなく、森林や緑地への散骨も広義の樹木葬のカテゴリーに入るとする区分法もあります。

なお、樹木を墓標代わりにする例は国内外を問わず火葬が普及する前から幾つか存在します。しかし、20世紀に入る前の「樹木を墓標とする」例は、現代的な樹木葬とは異なり「自然に還る」ことを志向するものではないので、樹木葬の起源をそれらの例に求めるのは決して適切とはいえません。

樹木葬の種類

現在行われる樹木葬には大きく分けて3つの種類があります。それぞれ「里山型」「庭園型」「公園(都市)型」と一般的に呼ばれますが、それらについてもう少し詳しく見ていきましょう。

里山型

里山型樹木葬は、自然の森林や里山の土地を活かして設けられる墓地及びそこへの埋葬を指します。日本初の樹木葬も、この里山型であったことは先述のとおりです。

里山型樹木葬は自然の地形や植生を活かすタイプであるため、「自然に還る」という志向がより強い方におすすめです。但し、墓石代わりのシンボルツリーには地域の植生に合致した樹木を選ぶことが生態系保全の点からも必要です。また、特に人里近いエリアの場合、現地の方からは余り歓迎されないケースもあることを理解しましょう。

庭園型

庭園型樹木葬は、洋風のガーデニング型や、日本庭園などのような「整えられた庭」に埋葬する葬法です。このタイプの樹木葬はヨーロッパで現代型樹木葬が始まった際に選ばれた葬法であり、大きな墓地の特定のエリアが庭園型樹木葬用であるケースもあります。里山型樹木葬に比べて、どんな種類の樹木をシンボルツリーにするかの選択肢が比較的自由な傾向も見逃せません。

公園(都市)型

公園(都市)型樹木葬は、散策できる広い公園のような区画に樹木葬で埋葬する葬法です。先述の庭園型樹木葬用の墓地をより大規模にしたタイプであり、「都市型」という別称の通り都市部や都市部に隣接した地域によく建てられる傾向があります。

樹木葬にかかる費用

樹木葬にかかる費用も、気になるところです。ただ結論からいうと、一般的な墓地への埋葬に比べ費用を抑えられる傾向にあります。

個別葬

樹木葬には、先述の「里山型/庭園型/公園(都市)型」という区分の他に、「個別葬/集合葬/合祀墓」というタイプ区分があり、この区分によってそれぞれかかる平均的な費用が異なります。

まず個人あるいは家族単位でシンボルツリーが植えられる個別葬ですが、この様式は一般的なお墓に近いタイプであり、約50万〜150万円程度の費用がかかります。

なお、個別葬には、納骨期間が決まっており、その期間が終わると遺骨が合祀墓に移されるシステムのところが多いのでそこは確認が必要です。

集合葬

集合葬は、一本のシンボルツリーの下に骨壺に入れられた遺骨を複数人分埋葬するタイプです。遺骨は基本的に骨壺に入った状態で埋葬されるため、後から遺骨を取り出し改葬することも可能です。費用としては約20万〜60万円程度が相場です。

合祀墓

合祀墓は、複数人分の遺骨を骨壺から取り出して一本のシンボルツリーの下に埋葬するタイプであり、集合葬とは「遺骨を骨壺から取り出して埋葬するかどうか」くらいしか違いません。費用も個別葬や集合葬より更に割安で、約10万〜20万円程度です。

合祀墓は遺骨を骨壺に納めず土に還すタイプなので、後から遺骨を取り出して改葬できないというデメリットがあります。しかし、遺骨を残さず「自然に還る」ことを強く希望する方には、費用も抑えられ大いにおすすめできる葬法といえるでしょう。

樹木葬で後悔しやすい問題点とは?

樹木葬を自主的に選択する方は増えていますが、一方で樹木葬を選んだためにお墓の継承者の方や、生前に早くから樹木葬を決めたご本人が後悔してしまうケースも時にあります。それを防ぐためにも、樹木葬のデメリットについて見ていきましょう。

アクセスが不便

樹木葬用の墓地が都心部にあることは、決して多くありません。「都市型」とも呼ばれる公園型樹木葬墓地にしても、都心部より都市近郊やいわゆる新興住宅地の近くに多い傾向にあります。

ましてや、里山型の墓地は公共交通機関も余り近くまで通らない場所にあることも多く、とにかく自宅からアクセスしにくい可能性があることを忘れてはいけません。

樹木の手入れ

多くの樹木葬では、樹木を管理するのは墓地の管理者である場合が大半です。しかし、手入れの頻度や方法は管理者によって異なり、管理が行き届かないケースもあるので、その点には注意しましょう。

また、シンボルツリーとして植えた樹木が枯れてしまった場合、新たに植樹するケースがほとんどです。しかし、自然葬の意義ということで枯れた後もそのままにしておく管理者もいるので、そのあたりは墓地を決める前に確認が必要です。

返骨ができない

これは特に合祀墓に埋葬した(あるいは所定期間が終わり合祀された)ケースや、里山型及び散骨の場合に顕著ですが、ご遺族やお墓の継承者が一般的な墓地に納骨をしたいと改葬を希望しても、返骨が困難だというデメリットもあります。

イメージとのギャップ

樹木葬は最近注目を集めている方法であるため、整備がされている庭園型や公園型の霊園も多くなっています。

しかし、樹木葬に対して「自然に還る」といったイメージが強くその点に憧れて樹木葬を希望した場合、整備された「都会的な」樹木葬墓地を実際に見学するとそのギャップに驚いてしまうこともあります。

管理費の問題

樹木葬墓地には、年間の管理費がかかるものとかからないものがあります。特に永代供養を前提とする墓地の場合、基本的に最初に支払う永代供養料に管理費が含まれるため、年間管理費はかからないタイプが一般的です。

管理が行き届いていない

先にも軽く触れましたが、墓地(の管理者)によっては樹木葬の区画や周辺の管理が行き届いておらず、最初に見学した時より荒廃した光景になってしまうこともあります。見学の際には、雑草が除草されていなかったり、枯れたり倒れたりした樹木が放置されているなどの「荒廃の兆し」がないか注意しましょう。

親族から反対されることもある

樹木葬は、一般的なお墓と比べると非常に新しい葬法のひとつです。そのため、まだ認知度が低い傾向にあり、親族の理解をなかなか得られないケースも少なくありません。その意味でも、普段から家族や親族の方ときちんと相談しておくことは大切です。

線香やお供えが禁止されている場合もある

樹木葬の霊園には、お供えや線香・ローソクなどの使用が禁止されているところも少なくありません。火災やゴミの散乱による衛生状態の悪化などを防ぐためですが、こうした従来型のお墓参りを希望する家族や親族がいる場合、樹木葬を決断する前に十分に話し合いをする必要があります。

樹木葬で後悔しないための確認ポイントは?

先ほど紹介したデメリットを踏まえ、樹木葬で後悔しないために確認すべき点について見ていきます。

墓地の場所

まず、墓地へのアクセスのしやすさを事前に確認しておくことは大切です。アクセスのしにくさがお墓参り離れを助長してしまうことは、従来の墓地(特に地方の古くからある墓地)の例を見ても明らかです。お墓の継承者にお墓参りをして欲しいなら、ある程度アクセスがしやすい場所にある墓地をおすすめします。

親族への相談

樹木葬のように新しいタイプの葬法(特に樹木葬も含めた、遺骨を残さないいわゆる自然葬)を選択する際は、普段からこうした葬儀や埋葬を余りタブー視せず、身内や親族と話し合える空気を作っておき実際に話し合うことがとても大切です。

追加費用などの詳細

樹木葬は基本的に一般的な葬法に比べて安価であることは前述しましたが、埋葬方法や埋葬する人数によって価格が大きく異なる葬法でもあります。そのため、費用の内訳や追加費用を確認しておくことも、忘れてはいけません。

お墓参りの方法

お供えや火の使用を禁止している樹木葬の墓地が多いことは先述のとおりですが、やはり遺族がいわゆる一般的なお墓参りを希望するケースもあるわけです。例えば、火の使用の場合なら火気厳禁なのか、それとも火の付いたローソクや線香を放置せずきちんと火を消せば良いのかなど、一般的なタイプのお墓参りがどの程度までできるのか確認し、家族とも情報共有しておきましょう。

日々の管理体制

樹木葬の墓地は、管理体制が整っていないとすぐに荒廃してしまう恐れがあります。そうしたトラブルに見舞われないためにも、日々の管理はきちんと行われているかの確認も忘れずに行ってください。

樹木葬のメリットは?

樹木葬を決定するためには、先述のようなさまざまなポイントがあります。しかしそれらを無事クリアして樹木葬に決定した場合には、次に述べるようなメリットがあることを思い出しましょう。

シンボルツリーの成長と共に季節や年月を感じることができる

樹木葬はシンボルツリーによって故人が亡くなってからの年月や季節を感じることができるので、特に精神的な意味で充実した供養ができるのも大きな魅力です。その意味では、家族や親族が自然の美を愛している方にも、樹木葬は向いているといえます。

宗教不問の場合が多い

樹木葬の墓地は特定の寺院あるいは教会などの管理下にある場合もありますが、宗教施設の管理下にはないところが多数派です。そのため、特定の宗教を信仰しているかどうかを問わず誰でも納骨できる(墓地が多い)点も見逃せません。

費用を抑えられる

先にも触れましたが、樹木葬は一般的なお墓と比べ購入費用が抑えられる傾向にあります。この安い購入費も、樹木葬の大きなメリットといえます。

子どもや遺族の負担を減らせる

樹木葬は永代供養であることが多いため、埋葬後の管理と供養は基本的に墓地が行ってくれます。そのため、子どもなど遺族やその他お墓の継承者の物理的な負担を減らせる点も魅力です。

ペットと一緒に入れる

近年ではペットも家族の一員と考える意識が高まり、飼っているペットとできれば一緒のお墓に入りたい方も決して珍しくありません。しかし、一般的な墓地ではそれがタブーとされることが多いのですが、樹木葬の墓地には飼い主さんがペットと一緒のお墓に入ることが可能な墓地も多いのです。

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おわりに

樹木葬は非常に新しい葬法ですが、少しずつ市民権を得て広まっています。従来のお墓にこだわらない方は、選択肢のひとつとして視野に入れておくのも決して悪くないことでしょう。

<参考文献>

加藤長『令和の葬送 戒名はいらない!』同時代社、2019

森謙二『墓と葬送の社会史』吉川弘文館、2014

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