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檀家とは?檀家の仕組みと『やめ方』。メリット・デメリットなどわかりやすく解説

セゾンのくらし大研究 編集部

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皆様の中には、特定のお寺の檀家(の家族)だという方も、そうではないという方も、はたまたよくわからないという方もいらっしゃることでしょう。このコラムでは、檀家制度の歴史的・文化的基礎知識やメリットとデメリット、檀家になる、あるいは檀家をやめるには、どんな手続きや費用が必要かということについて見ていきます。

この記事のまとめ

いわゆる檀家とは特定の寺院に所属する家のことです。檀家の家で葬儀がある場合、作法は宗派により違いがあります。檀家になるとスムーズな葬儀が行えるなどのメリットはありますが、一方で信教の自由が制限されるなどのデメリットもあります。檀家になる際、檀家をやめる際には、それぞれ費用がかかるので注意が必要です。現代では信教の自由は憲法で保障されているので、もし先祖供養にお寺が必要ではないと信じる場合には離檀を検討するのはいかがでしょうか。また、寺の檀家に新しくなることを希望する際は住職の人柄や、その土地にいつまで住むかもよく考えて決めましょう。

檀家について基礎を押さえよう!

ここでは、檀家制度についての歴史的・文化的な基礎知識を紹介します。

檀家とは

このコラムをお読みの方の中には普段、仏教に馴染みがあまりないため、「檀家」の読み方をご存じない方がいらっしゃるかもしれません。

この語は「だんか」と読み、「旦那寺あるいは檀那寺(だんなでら)」といった特定の寺院に所属する家のことを指します。檀家制度では、個人ではなく家単位での所属が前提です。なお、檀家及び檀家を構成する家族を一般には「檀徒(だんと)」と呼びますが、浄土真宗ではそれを「門徒(もんと)」と呼びます。

ご自身の家が檀家かどうかは、一家のお墓が寺院にあるか霊園にあるかで判断が可能です。ただ、特に地方のいわゆる田舎では、檀家であっても、お墓が寺院ではなく個人宅の敷地内や田畑のあぜ道、里山などにあるケースもあります。このコラムでは詳細を割愛しますが、これがいわゆる「みなし墓地」といわれるものです。

そうした場合には、寺院に一家の位牌があるかどうかでそこの檀家なのかがわかります。

檀家制度のはじまりは?

そもそも檀家制度は、江戸時代の寺請制度(てらうけせいど)が元になっています。

寺請制度とは、江戸幕府によって禁じられていたキリスト教や日蓮宗不受不施派の信者でないことを証明するため、当時の禁教の信者が幕府によって認められた仏教の宗派の信者に転向した際に、その寺院に所属することが義務付けられた制度です。これが後に、転向した元禁教信者に限らず当時の日本人全員が対象とされました。

寺院側はいわば一種の幕府のお役所として、檀家の構成員やそれぞれの生没、婚姻、移住や旅、奉公人の出入りなどを「宗門人別帳」に記録しました。

なお、法律上の制度としての檀家制度(寺請制度)は明治時代に入って廃止されましたが、慣習としての檀家制度はその後の社会や文化の大きな変化にも関わらず、良くも悪くも今なお存続しています。

ちなみに、檀家や旦那寺の語源はインドのサンスクリット語の「ダーナ(与えること、与える人=スポンサー・パトロンの意)」で、英語の「ドナー」という語のルーツもこの語です。

檀家は宗派によって違いがある 

あるお寺の檀家の構成員が亡くなり仏式葬儀を行う場合、そのお寺の宗派によって葬儀の様式や作法にも違いがあります。ここでは、特に参列者の焼香の作法に特徴のある真言宗と日蓮宗、浄土真宗の場合について、それぞれ簡単に解説していきましょう。

  • 真言宗
    真言宗では、焼香の際は抹香をつまんで額に押し頂き、その後香炉に入れます。一般に、ひとりが行う回数は3回です。
  • 日蓮宗
    抹香をつまんで額に押し頂き、その後香炉に入れます。基本的に回数は、ひとり1回あるいは3回です。
  • 浄土真宗
    浄土真宗では、本願寺派と大谷派とで若干作法が異なります。本願寺派では、抹香をつまんだ後額に押し頂かず、そのまま香炉に入れ、ひとりが焼香するのは1回です。大谷派でも抹香をつまんで額に押し頂かずそのまま香炉に入れますが、ひとり2回行います。

なお、近年では、特に参列者が多い場合、宗派を問わず抹香をつまんで額に押し頂き、その後香炉にひとり1回入れて行うことが多くなってきました。

檀家になるために必要なこと

現時点で檀家ではない家が新しく特定の寺院に所属して檀家になる場合、どんな手続きや費用が必要になるのでしょうか。

入檀するための手続き

新しくお寺の檀家になることを、入檀(にゅうだん)といいます。

入檀の際の手続きについては法律による決まりがないため、全くさまざまです。契約書を交わして入檀する寺院もあれば、口約束で檀家関係を結ぶ寺院もあります。

檀家になると発生する費用と相場

無事入檀を済ませ檀家になると、後述するようなメリットがある代わりにさまざまな費用、いわゆる「檀家料」が発生します。ここでは、檀家料の代表的な内訳と相場について簡単に触れていきましょう。

  • 入檀料
    檀家になる際に支払う費用を入檀料といいます。お寺や地域などにより差はありますが、一般的にかかる費用は約100,000〜300,000円です。
  • お布施
    法要や法事など、仏教関連の行事にかかる費用になります。個人の家の行事の場合は、内容にもよりますが、約10,000〜500,000円程度。一方、お寺主催の合同行事では約3,000〜10,000円程度が一般的です。
  • 寄付
    お寺にあるさまざまな施設の修繕や改築などにかかる費用です。あくまで「善意による寄付」という名目なので、はっきりした相場はなく、且つ常に支払わなくてはいけないという決まりはないケースも少なくありません。
  • 維持費
    寄付がイレギュラーな事態に際して求められるのに対し、維持費は日常的なお寺の運営と維持にかかる費用です。年間で約5,000円〜20,000円が一般的になります。

檀家料を払わないとどうなる?

それでは、仮に檀家料を支払わない場合にはその檀家はどうなってしまうのでしょうか。檀家料を支払わない場合、やむを得ない理由があるかもしれませんので、すぐに檀家をやめさせられるわけではありません。一般的には、檀家になって3年程度経ち、その間に檀家料の支払いがなく、支払えないやむを得ない事情もない場合、初めて問題とされることが多いです。

その場合、まず旦那寺から電話やメールなどでの連絡があり、その際に支払いがないと、書面(郵便)での通知が檀家側に送られ、その家のお墓に支払督促の看板が立てられます。

それでも正当な理由もなく支払いがない状態が1年前後続く場合、その檀家は檀家の資格を失い、お墓は撤去・処分される運びとなってしまうのです。その際、納骨されていた遺骨は合祀墓か無縁塚に改葬されて基本的に個別に取り出せなくなってしまいます。

いわゆる墓じまいは近年盛んになってきていますが、こうした形で“墓じまい”をしてしまうのは不本意にと思う方も少なくないことでしょう。それを防ぐためにも、もしやむを得ず檀家料を支払えない場合には早めにお寺に相談し、今後も檀家料の支払いが難しいと思われる場合には自主的な墓じまいを視野に入れることをおすすめします。

檀家になるメリット

特定の寺院の檀家になるメリットとしては、どのようなことが挙げられるでしょうか。ここでは、それらについて紹介します。

手厚い供養を受けることができる

檀家になるメリットといえば、まず何といっても手厚い供養を受けられるということが挙げられます。

葬儀や法事は得てして慣れないことが山積みですが、そうした供養行事の手配を任せられることは大いに助けになるはずです。また、お盆など寺院が忙しい時期に家族や親族が亡くなった場合でも、檀家個人の法要を優先してもらいやすくなります。

お墓の管理を任せられる

一般に、檀家の墓地は旦那寺にあり旦那寺が管理してくれていますので、個人的な理由でお墓参りが難しい場合も、安心して管理をお願いできます。

わからないことは相談できる

現代日本の一般市民は、仏教全般や各宗派に関するさまざまなことにあまり馴染みがあるとはいえない傾向にあります。そのため、お葬式や法事のことだけではなく、しきたりやマナーなどもわからないことが多くなりがちですが、そうしたことを本職の仏教僧侶に相談できるのは心強いでしょう。

檀家になるデメリットはあるの?

一方、檀家になるデメリットも実際には残念ながら存在します。ここでは、それらのデメリットについて見ていきましょう。

さまざまな費用がかかる

檀家になると、入檀料や寄付、各行事でのお布施などさまざまな費用がかかることは前述したとおりです。

葬儀や法要などを他のお寺に依頼できない

檀家は旦那寺、つまり特定のお寺に所属しているため、檀家の構成員が旦那寺の宗派の教えではない他の宗派の教えに強く惹かれる場合でも、葬儀や法要などの行事をご自身が傾倒した宗派のお寺には依頼できません。

お寺ごとに決まったルールがある

檀家の構成員が仏式葬儀を行う場合、旦那寺とは別の宗派の教えに強く惹かれている場合であっても、戒名や礼拝などは旦那寺の宗派でのやり方に従う必要があります。

檀家をやめることはできる?

ところで、自分の意思で檀家をやめることは可能でしょうか。

結論からいえば、基本的に可能です。檀家をやめることを離檀といいますが、ここでは、その離檀の手順や費用について見ていきます。

離檀する手順

まず、お寺に離檀の意を伝え離檀料を支払い、その後、お墓の引き上げを行います。その際の遺骨の移動には、改葬許可証が必要なので注意をしましょう。移転前のお墓のある市区町村の役所で手続きを行ってください。

離檀にかかる費用

離檀の際には、基本的に以下のような費用がかかります。

  • 離檀料
    今までの旦那寺に支払うお金です。相場は約100,000円〜200,000円になります。
  • 閉眼供養の費用
    お墓の撤去に際して故人の魂を抜く儀式の費用です。約30,000円~100,000円かかります。
  • 遺骨の取り出し費用
    遺骨の取り出し費用は、取り出しを担当した石材店に支払います。金額は、石材店によって異なります。
  • 墓石の撤去や区画の整地化費用
    墓石を撤去し、区画を整地する費用です。1平米当たり約150,000円〜200,000円です。
  • 墓石運搬費
    移転先で既存の墓石を使用する場合、墓石を運搬してもらうのにかかる費用です。基本的に約100kmの移動で約150,000円〜200,000円です。
  • 墓石建立
    移転先の墓地が他からの移転を認めていないなどの場合、新しく墓標を建立するのにかかる費用になります。墓標のタイプにより費用はさまざまです。なお、新しく檀家にならず散骨を選択する場合には、この費用は当然かかりません。
  • 開眼供養の費用
    お墓を無事移転先墓地に移した際、お墓に故人の魂を移す儀式です。約30,000円~100,000円かかりますが、移転先が宗教不問の墓地で新しく檀家にならない場合や自然葬などを選択する場合、この儀式は一般に省略されるので費用はかかりません。
  • 埋骨費用
    寺院やその他の事業者など、移転先の墓地を管轄する者及び埋骨を実際に担当する石材店に支払いますが、移転先墓地の管轄者側に一括で支払う場合も多いです。散骨など自然葬を選択する場合、自然葬を行う事業者に支払います。これも費用はさまざまです。

離檀する際の注意点

離檀の際には、お金やその他の件でトラブルが起きやすいです。離檀の方法や費用などにはお寺や地域によって差があるため、事前に確認しておきましょう。

檀家になるか、ならないか、悩んだ時は?

現代の日本では憲法によって信教の自由が保障されていることもあり、従来に比べ、檀家になるかならないかの自由度は高くなってきました。だからこそ、檀家制度のメリットやデメリットを踏まえた上で慎重に選択し、決定したいものです。

先祖供養にお寺の存在が必要かどうか

先祖を大切にする気持ちがあれば特定の宗教に頼らなくても大丈夫という方もいれば、お寺できちんと供養してほしいという方もいます。また、仏教以外の宗教を信仰する方もいらっしゃるでしょう。何よりご自身や家族はどうかなのかをきちんと話し合いましょう。その際、考えの異なる相手を頭ごなしに誤っていると決めつけてはいけません。

住職の人柄は信頼できるか

もし檀家になりたい場合、特定の宗派の教えに共感できると感じたら、その宗派のお寺が近くにないか探してみましょう。ただ、仏教に限らずどの宗教宗派でも教えは宗教家による実際の運用次第で、善用も悪用もされてしまうもの。そのお寺の住職が信頼できる人柄であることが一番大切です。

その土地にいつまで住み続けるのか

その土地に住み続けるのか、将来的に別の場所に住むのかも重要な点になります。特にいわゆる転勤族であるなど、近いうちに別の場所に移る可能性が比較的高い場合には、もし檀家になりたい場合でもとりあえず様子見に留めたほうが賢明です。

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檀家になりたい場合も逆に檀家をやめたい場合も、情報収集は大切です。

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おわりに 

近年、家単位で所属する「檀家」ではなく、個人単位の「檀徒」として所属するのを前提とする寺院も少しずつではありますが出ており、支持を集めています。もし家単位で「檀家」になったりやめたりするのが困難な場合、「檀徒」という個人として寺院に所属したりやめたりするのも、選択肢のひとつにしてはいかがでしょうか。

<参考文献>

(株)三越伊勢丹ホールディングス『三越伊勢丹の最新儀式110番 こんなときどうする?冠婚葬祭』誠文堂新光社、2016

島田裕巳『葬式は、要らない』幻冬舎新書、2010

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