将来、お墓をどのような形にしようかと検討しているとき、「共同墓地」という言葉を目にする方もいるでしょう。共同墓地は、複数の方が同じところに納骨されるお墓という理解をしている方も多いと思いますが、具体的にどのような仕組みで、どんなメリットがあるのかまで知っている方は少ないかもしれません。
今回は、共同墓地の意味やメリットやデメリット、共同墓地を選択する際の注意点などについて紹介します。
この記事のまとめ
共同墓地は、複数の方が同じ場所に納骨されるお墓です。中でも近年いわれる共同墓地は、個別のお墓はなく、管理者によって永代供養される特徴があります。共同墓地は、個人でお墓を建てる必要がないため、一般的なお墓と比較し費用が安く、後継者がいなくても無縁墓にならないことなどがメリットです。
しかし、個別の参拝スペースがないため、故人を身近に感じにくいなどのデメリットもあります。
お墓は遺族にとって心の拠りどころとなる場所でもあるため、共同墓地を検討する際には、関係者の間でよく話し合うことが大切です。また、共同墓地を選ぶ際には、アクセスや遺骨の供養期間、供養方法なども確認しましょう。
共同墓地とは?
共同墓地には2つの意味合いがあり、「最近見られる共同墓地」と「昔からある共同墓地」に分けられます。
最近見られる共同墓地
最近見られる共同墓地は、大きなひとつの供養塔などの中に、血縁関係のない複数の方が一緒に納骨されるお墓のことです。
個々のお墓はなく、ひとつの石碑や供養塔を使用します。「合葬墓」や「合祀墓」、「合同墓」などと呼ばれることもあり、管理者による永代供養が行われるケースが多いのが特徴です。そのため、承継者の負担が少ないメリットがあります。
昔からある共同墓地
一方、元々ある共同墓地は、地域の方々が共同で使用する墓地をいいます。昔からある共同墓地は、「集落墓地」や「みなし墓地」、「村墓地」などとも呼ばれます。
公営墓地なので行政の管理下にはあるものの、実際の管理や運営は地域の住民や利用者が行っていることがほとんどです。地域に密着しているため、利用者の自宅から近いことが多くあります。また、最近見られる共同墓地とは異なり、個々のお墓があります。
永代供養墓との違いは?
最近見られる共同墓地と、永代供養墓を同じものと捉えている方もいるかもしれませんが、この2つは正しくは異なるものです。共同墓地とは、ひとつの場所に複数の遺骨が埋葬される形態を指します。
一方、永代供養墓は、その墓地がどのような形態をとっているかは関係なく、後継者に代わり、管理者が半永久的に供養するお墓をいいます。つまり、一般的なお墓にも共同墓地にも、永代供養のものがあるということです。なお、元々の意味合いでの共同墓地には、永代供養はありません。
本記事内では、最近見られる共同墓地について紹介していきます。
共同墓地にかかる費用
共同墓地は、地域や立地により異なりますが、基本的に一般的なお墓よりも安い費用で済みます。100,000〜300,000円程度で利用できるところが多く、高くても500,000円程度です。
骨壺で納骨する場合も遺骨のみ納骨する場合も、かかる費用には大きな差はありません。共同墓地にかかる費用には、以下のようなものが含まれます。
実際の費用は、共同墓地を管理・維持している施設により異なるため、事前に確認しましょう。
埋葬料(納骨手数料)
納骨手数料と呼ばれることもあり、遺骨を埋葬するために必要な費用です。埋葬料は、永代使用料や永代供養料と一緒になっているケースもあります。
永代使用料
お墓の土地を取得する際にかかる費用です。墓地の区画を使用するために必要で、契約時1回のみ支払います。
永代供養料
遺骨を永代にわたって供養してもらうための費用です。一度支払えば利用者に跡継ぎがいなくなっても、霊園の管理者やお寺に供養してもらえます。なお、民営の霊園や寺院が管理している場合は、供養が付いてくるケースがほとんどです。
管理料
墓地や霊園内において共同で使用される、水くみ場やトイレなどの維持や管理に使われる費用です。
刻字料
共同墓地に納骨したことを墓誌に刻印するためにかかる費用です。それぞれの寺院や霊園によって、デザインや材質が異なるため、金額に差があります。
共同墓地に入る5つのメリット
では、共同墓地を利用するメリットは、具体的にどのようなものでしょうか。
費用を抑えられる
ひとつ目のメリットは、費用を抑えられる点です。共同墓地の場合は、前述したように100,000円程度から使用できます。しかし、墓石を準備しなければいけない一般的なお墓は、墓石代を含めて200万円程度かかることも多く、さらに管理費が必要になるケースもあります。共同墓地の場合、定期的に管理費が請求されるケースはあまりありません。
なお、共同墓地の中でも、特に最初から合祀(遺骨を骨壺から取り出して、複数まとめて埋葬すること)するタイプの場合は、より費用が抑えられる傾向にあります。
お墓の掃除や修繕の手間が省ける
共同墓地の場合は、お墓の掃除や修繕など、管理の手間が省ける点もメリットです。個人で墓石を購入した場合、定期的に墓石周辺の雑草を抜いたり、墓石の掃除をしたりします。
また、墓石にひびが入った場合は修理が必要になります。しかし、共同墓地の場合は、管理者が清掃や管理を定期的に行ってくれるため、遺族の負担は少なくなるでしょう。
特に遺族が遠方に住んでいたり、高齢だったりする場合は、負担をかなり減らせます。
後継者がいない方でも無縁仏にならない
利用者に子どもや親族などがいなくても、無縁仏や無縁墓になることがなく、後継者の心配をする必要がありません。永代にわたり供養や管理をしてもらえるため、将来的にお墓を継ぐ方や供養してくれる方がいなくなった場合でも困りません。
宗教を問わず利用できるところが多い
寺院では宗教を確認される場合もありますが、寺院以外の共同墓地では、一般的に宗教を問われることはありません。故人が生前どんな宗教や宗派に属していたかに関係なく利用できるところが多いです。中には神道やキリスト教などを信仰されていた方を受け入れるところもあります。
さらに、檀家でなくても利用できる施設も多くあります。ただし、中には利用するための条件として、檀家になることを掲げているところもあるため、確認してみましょう。
共同墓地に入るデメリットも確認しておこう
共同墓地を検討する際には、デメリットも知っておくことが大切です。
縁のない方と同じお墓に入ることになる
共同墓地は、家族以外の方と一緒にお墓に入ることになります。故人が家族のみとひとつのお墓に入ることを希望していた場合は、共同墓地は向かないでしょう。
また、全くの他人と同じお墓に入るだけでなく、個別のお墓があるわけでもありません。清掃なども基本的には管理者が行うため、遺族ができない場合もあります。遺族が供養の意味を込めてお墓の掃除をしたいと考えていても、叶わないケースがあるため注意が必要です。
遺骨を後から取り出したくても、個別での対応が難しい
共同墓地は、ほとんどが骨壺から遺骨を取り出して埋葬する合祀の方法をとります。そのため、後から個別にお墓を建てて納骨したくても、遺骨を取り出すことはできません。中には、最初は骨壺で供養し、後々に骨壺から出し合祀する場合もあります。
その場合、骨壺のまま供養している期間なら個別に取り出せますが、期限が設けられているケースがほとんどです。共同墓地を利用する場合には、骨壺で供養してくれるのか、どのタイミングで骨壺から出されるかなどを確認しておきましょう。
個別に法要してもらうためには、別途依頼が必要
共同墓地では、管理者がお彼岸やお盆のタイミングで合同の供養をしてくれることがほとんどです。そのため、遺族が供養できない場合でも供養してもらえます。
しかし、個別に年忌法要などを行ってもらいたい場合は、別途依頼しないと行ってもらえないケースがほとんどです。
ただし、共同墓地の檀家になっている場合は、年忌法要の案内があり、個別の法要をしてもらえることもあります。個別に法要してもらえるかどうかは、利用する共同墓地に確認してみましょう。
故人を身近に感じにくい
遺族や親族によっては、故人と向き合う時間が必要な方もいます。また、お墓は心の拠りどころになる場所です。
共同墓地は、共同のスペースに遺骨を埋葬するため、従来のお墓のような故人ごとの参拝スペースがありません。他の方と一緒のお墓で、他の遺族と同じスペースでお参りをするため、個々のお墓とは捉えにくくなります。
共同墓地を選択することで、心の拠りどころになる場所がなくなってしまわないかどうか、故人を感じにくくなることが遺族の心の負担にならないかどうか、遺族間でよく検討することが大事でしょう。
共同墓地を選ぶときに気をつけること
共同墓地を選ぶ際には、以下のような点に気をつけて選びましょう。
お墓参りをする方が訪れやすい場所か確認する
共同墓地を探すときは、お墓参りに訪れる方が足を運びやすい場所かどうかを確認しましょう。共同墓地は管理者が供養してくれるので、頻繁に訪れる必要はないかもしれません。
しかし、遺族や親族がお参りしたいタイミングで気軽に参拝できることは大事です。参拝者が高齢になったときに、公共交通機関でもアクセスできるような立地を選ぶと良いでしょう。
夫婦や家族で契約する場合には、1人当たりの金額を確認する
共同墓地はひとりで利用することを想定しているケースが多く、家族内で複数の方が契約する場合、一般的なお墓を購入した方が安くなる場合があります。夫婦や家族で利用する場合は、1人当たりにかかる費用も確認しておきましょう。
「会員費」があるかどうか確認する
共同墓地によっては、新しいコミュニティを育てるために、共同墓地の利用者同士の交流を求めるところもあります。
その際、会員組織がつくられると会費が発生するケースがあります。交流を希望している方は入会しても問題ありませんが、希望しない場合は「入会しないため会費を支払わない」という旨をしっかりと伝えましょう。
また、契約料金以外に発生する可能性がある費用として、会員費の他「お布施」があります。共同墓地を利用するに当たり快く納められる金額であれば良いですが、定められているお布施が高額の場合は、他のお墓を検討しても良いでしょう。
共同墓地の周辺が整備されているか確認する
共同墓地は大切な方の遺骨を納める場所なので、できる限りきれいな場所を選びたい方が多いでしょう。
WEBサイトなどを見て雰囲気が良さそうな共同墓地を選んでも、実際に訪れてみるとイメージと違うケースがあります。共同墓地を決める際には、実際に訪れてお墓周辺の雰囲気や環境を確認してみることも大切です。
トイレや休憩所などの設備の有無があるかどうかも確認しておきましょう。また、お墓参りの際に花や線香を供える場合は、購入できる場所が近くにあると便利です。
遺骨の供養方法や期間を確認する
共同墓地は、お盆などの節目に遺骨の供養を行ってくれるところもあれば、全く行ってくれない場合もあるなどさまざまです。
また、場所によっては一定期間、骨壺で埋葬してくれるところもあれば、初めから骨壺から出して他の遺骨と一緒に埋葬するところもあります。後々遺骨を移動する可能性が考えられる場合は、一定期間骨壺で供養してくれるお墓を選ぶほうが良いでしょう。
共同墓地を選ぶ際には、故人や遺族が希望する供養方法を取り入れているかどうか、事前に確認することが大切です。
残された家族や親族で話し合いを行うことも重要
共同墓地は最近認知度が高くなりつつありますが、一般的なお墓と比較すると知られていないことも多く、後から家族間でトラブルに発展するケースも少なくありません。
お墓の利用者本人が希望したとしても、家族や親族に反対されることもあります。また、選んだときには納得して共同墓地を選んでも、後から他の方法にすれば良かったと考える方もいるでしょう。
遺族の負担を考えて共同墓地を選んだにも関わらず、親族間でトラブルになってしまっては元も子もありません。生前に相談できる場合は、本人を含め、家族や親族間で共同墓地のシステムなどをよく話し合うことが重要です。
共同墓地以外に墓石を建てない方法はある?
お墓を建てたくないという理由で共同墓地を検討している方もいるでしょう。ここでは、共同墓地以外にお墓を建てない方法を紹介します。
納骨堂に入る
納骨堂とは、屋内の施設に遺骨を安置する方法です。納骨堂は、すでに納骨するスペースがあり、お墓を建てる必要がありません。ロッカー型や神棚型、仏壇型、墓石型、合葬・合祀型、自動運搬型、位牌型など、安置方法に種類があり、利用者の希望により選択できます。なお、納骨堂の費用相場は、1人用で約500,000円です。
合祀による永代供養
永代供養とは、遺族の代わりに寺院や霊園が管理をする方法です。永代供養の遺骨は、初めから他の遺骨と一緒に供養される場合と、一定期間個別に安置し、その後、他の遺骨と一緒に供養される場合があります。
数十年個別のお墓で供養する永代供養の場合はお墓を建てることもありますが、最初から合祀する永代供養の場合はお墓を建てる必要がありません。
樹木葬や散骨などの自然供養
樹木葬とは、墓石を建てずに樹木を墓標にするものです。また、散骨は山や海に遺灰を撒く方法で、樹木葬と同様、お墓を建てません。
樹木葬や散骨などの自然供養は、自然に返す方法として最近注目されており、管理が難しくありません。散骨の場合は、お参りをする場所がなくなってしまうため、一部を分骨し供養するケースもあります。なお、樹木葬の相場は約500,000円、散骨は遺族が立ち会って行う個別散骨の場合は250,000円程度で、専門会社に委託する場合は70,000円程度です。
お墓選びには「セゾン相続 お墓探しサポート」がおすすめ
一般的なお墓以外にも、共同墓地や散骨など、お墓の形はさまざまです。また、お墓を守っていく後継者が将来的にいなくなる場合には、墓じまいを検討する方もいるでしょう。
お墓のことで悩んだ場合には、「セゾンの相続 お墓探しサポート」に相談するのもおすすめです。お墓探しの経験豊富な提携専門家のご紹介も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
おわりに
共同墓地はお墓を建てる必要がないため、一般的なお墓と比較し、費用が安いメリットがあります。また、管理や供養を行ってくれるため、遺族の負担が少ない点もメリットです。
しかし、共同墓地はまだまだ知れ渡ってはいないため、安易に共同墓地を選択してしまうと、故人を忍ぶ場が十分に得られなかったなど、後悔する点が出てくる可能性もあります。お墓は本人だけでなく、遺族にとっても大切な場所なので、よく考えて選択するようにしましょう。