「先祖代々のお墓はない(あるいはそこに入りたくない)ので、自分の代で初めてのお墓を買うことになる」「従来の埋葬方法以外の埋葬方法を探している」という方は、決して少なくありません。そのような方のために、ここでは「お墓・埋葬方法の選び方」について解説していきます。
この記事でわかること
埋葬方法には、「一般墓」「樹木葬」「納骨堂」「永代供養墓」「合葬墓」が挙げられます。またそれを運営する団体も、寺院・民営・公営の3つに分けられます。ここではこれらを解説するとともに、お墓選びの流れや、お墓を建てる際にかかる費用について解説していきます。「どのような埋葬方法を選ぼうか迷っている」という方は、参考にしてみてください。なお、埋葬方法としてここでは取り上げませんが、「海洋葬」「手元供養」などもあります。
お墓の種類について知ろう
まずここでは、埋葬方法の種類と特徴について解説していきます。
一般墓
昔からある一般的なお墓のタイプが、この「一般墓」です。一般墓は代々継承されていくものなので一度お墓を建てれば跡を継ぐ方はお墓を用意する手間が省けます。しかし、継承者がいないと維持が難しいという欠点があります。
なお、現在は一般墓のデザインも多様化していて、自分の好きな詩を彫り込んだり、花などのデザインを彫り込んだりできるようになっています。
樹木葬
「樹木葬」とは、木をシンボルとして埋葬を行う方法をいいます。墓石の建立を必要としない形式であり、自然に還ることができるのが魅力です。ただし簡素なプレートなどを設置することができるようになっているものもあります。
納骨堂
建物内に納骨するためのエリアが設けられている施設をいいます。ロッカー式や自動搬送式、仏壇式などがあります。また少し珍しいところでは、墓石型もあります。
タイプによって値段は大きく異なります。ただ、いずれの場合でも「全天候型対応であり、自然災害の影響を極めて受けにくい」というメリットは共通しています。
永代供養墓
一般墓の場合は継承者がいなくなってしまったらお墓が荒れてしまうというリスクがあります。しかし永代供養墓の場合は継承者がいなくなっても、運営団体が管理し続けるためお墓が荒れることがありません。
永代供養墓はそれぞれの霊園・それぞれのプランが定めた期間経過後(33年あるいは50年のタイミングが多いが、もっと短い期間が設定されていることもある)合葬されるのが一般的ですが、なかには永遠に合葬されない永代供養墓もごく少数ですが存在します。
合葬墓
合葬墓とは個別の埋葬期間を設けず、埋葬する段階で他の方と一緒に埋葬されるお墓あるいはその形式をいいます。「墓」としていますが、樹木葬霊園でも大きな1本の木の下でみんなで眠るという形を提案しているところもあります。
合葬墓の場合、一部の特例を除き、埋葬する段階で骨壺からご遺骨を取り出して他の方と混ぜます。そのため、後で取り出すことは原則できません。ただしこの方法は非常に安価であるため、「葬儀や埋葬にお金をかけないでほしい」と希望する方にはよく選ばれています。
【種類別】お墓の費用相場
どのような埋葬形態を選ぶかで、費用は大きく変わってきます。例えば従来型のお墓の平均費用は、おおよそ170万円が相場だとされています。
樹木葬霊園の場合は50,000円~800,000円程度が目安です。ただし50,000円は合葬形式を選んだときの数字ですから、個別の場合は最低でも150,000円は見ておいた方が良いでしょう。
納骨堂は、「どのような形式か」「ロッカータイプの場合、下段か上段か」などによって異なります。安い場合でも300,000円程度、高い場合だと100万円を超えることもあります。
永代供養墓の値段を左右するものとして何年間個別埋葬を行うかがあります。個別埋葬期間が長ければ長いほど費用は高くなります。ただ、ひとつの目安として、500,000円~150万円程度と考えておくと良いでしょう。
合葬墓は非常に安く、200,000円程度の予算を見ておけば埋葬できます。場合によっては50,000円程度で済むこともあります。
埋葬にかかる費用は、単純に埋葬形態だけで決定されるものではありません。どのような立地にある霊園か、個別埋葬期間はどれくらいか、墓地の広さや収容人数の多さはどれくらいか、墓石そのものの値段などによって大きく違います。そのため事前の見積もりは必須です。
お墓を建てる際にかかる費用について
上記を踏まえたうえで、お墓を建てるためにかかる費用の内訳について解説します。
墓石代
墓石代とは、本体、外柵、納骨棺などを合わせた費用です。墓石に使われている石の種類によって費用は大きく変わるため、しっかり選ぶようにしなければなりません。また、墓石にどのような技法を使ってどのように彫り込むかでも費用は変わります。
永代使用料
永代使用料とは、お墓を建てるスペース(土地)の使用料をいいます。お墓の建てるスペースは、借りている状態なので固定資産税などは発生しません。また不要になったから売るということもできません。不要になった場合は墓石を取り壊し、運営団体に還すことになります。
管理費
管理費とは、お墓の維持費をいいます。墓地を管理するためのメンテナンス代などが含まれています。管理費用は霊園によって異なりますが、10,000円前後に設定しているところが多いと考えられます。
なお、これはあくまでお墓を建てる際にかかる費用です。そのため樹木葬霊園では墓石代はもちろん発生しません。また、管理費を必要としない霊園もあります。
これとは別に、埋葬するときにはお布施が発生する場合もあります。お布施は読経などの宗教的な儀式を行った場合に宗教者にお渡しするものです。宗教者が徒歩圏内に住んでいるもしくは喪家が送り迎えを担当する場合を除き、お車代も必要です。また、会食を行う場合はその費用も計算に入れておかなければなりません。
開眼供養や納骨式をした時のお布施など
開眼供養はお墓をひらくときに僧侶を招いて行う法要です。そのため、生前にお墓を購入しておくが、納骨は亡くなってからという場合は、購入時には費用は発生しません。
開眼供養や納骨式などの法要をは行うときにはお布施など必要で、費用は行う儀式の内容により変わります。納骨式や開眼供養を行うと、僧侶に対して読経料や会食代、お車代などがかかる場合もあるためその費用も計算に入れておかなければなりません。
どんな墓地や霊園があるの?
さて、故人が眠ることになる墓地や霊園には「管理者」がいます。どんな団体が管理者になるかによってその性質が異なるため、これについても紹介していきます。
寺院墓地
墓地は、「墓地、埋葬などに関する法律」によって「都道府県知事の許可を受けた区域」と定められています。寺院が管理している墓地は、基本的にはそこを菩提寺とする檀家のためにひらかれています。しかし現在は檀家ではない方のことも広く受け入れる方式をとっている寺院墓地も多いといえます。
寺院墓地のなかでも「生前の宗教は不問」としているところもありますが、「在来仏教の信者のみを対象とする」「当該宗派の信者のみを対象とする」としているところもあるため、寺院墓地を利用する場合は事前の確認が必須です。
民営墓地・霊園
墓地とは異なり、法律での定義はなく、霊園は、民営霊園と公営霊園に分けられます。公益法人などが運営している墓地は、民営霊園)と呼ばれています。生前の宗教・宗派を問わないところが基本となる一方で、キリスト教の信者用の墓地などを打ち出している民営霊園もあります。
公営墓地・霊園
自治体などの公的な機関が管理している墓地は、「公営霊園」と呼ばれます。公営霊園その特性上、生前の宗教・宗派が問われることはありません。
住民サービスとしての性質を持っているので利用料が安く設定されているところが多いのですが、青山霊園など一等地にある一部の墓地はその限りではありません。
お墓選びの流れ
ここからは、お墓選びの流れについて解説していきます。
お墓を建てる時期を決める
お墓は注文してから1ヵ月以上かかるため、明確にこの日までにお墓を建てたいという希望があるのなら、それに間に合うようにスケジュールを組まなければなりません。また公営霊園の場合は応募期間が決まっているものもあります。
ただ、日本の法律では死亡後〇年以内に納骨をしなければならないという決まりはありません。そのため、理想とする墓地が見つかるまで、手元供養を続けることも可能です。
お墓の場所や種類を決める
墓地・霊園の場所や、その種類を決めましょう。これは自分ひとりで独断で決めるのではなく、ご家族ときちんと相続して決めることで、その後トラブルの発生を防ぐことができます。ここをクリックしてテキストを入力してください。
なお、埋葬方法の種類として樹木葬などを挙げましたが、同じ「樹木葬霊園」に分類されるものであってもその雰囲気は霊園ごとで大きく異なります。また一般墓の場合でも、墓のデザインによって印象は大きく異なります。
そのため、自分が理想とする墓地はどんなところか、どんな形式の墓石にしたいのかなどをこの段階で考えておくことが重要です。
墓地や霊園を決める
家族と話し合った内容を元にお墓の場所や種類を決めたなら、次はより具体的にどの墓地・霊園にするかの絞り込み作業を行います。数個にまで絞り込めたのなら、実際に現地に足を運んで霊園を見てみましょう。
写真から受ける印象と実際に足を運んだときの印象が異なることも、よくあることだからです。
墓石を決め、石材店に発注する
墓地・霊園が決まったら、石材店の資料などを元に墓石を決定し、石材店に発注します。なお民営墓地の場合は、石材店が指定されていることがあるので、事前に確認をしておきましょう。
お墓を選ぶ時に重視したいポイント
埋葬場所やお墓を決める際に見るべきポイントは、「費用」「お墓のデザイン」だけではありません。下記のようなことも意識する必要があります。
宗教(宗旨・宗派)
すでに述べたように、墓地・霊園のなかには宗教・宗派を限定しているところもあります。寺院墓地以外のほとんどは生前の宗教・宗派を問いませんが、念のため確認しておきましょう。
また、宗教法人が運営している霊園では、生前の宗教・宗派は問わないが、それ以降の供養は当宗派のやり方で行う」としている霊園も多く見られるため、仏教以外の宗教の厳格な信者で、死後にお経を唱えられるのは困ると考えている方は、特にこの点に注意しなければなりません。
立地や周辺環境
埋葬場所は、何度も足を運ぶことになる場所です。そのため立地や周辺環境についてもチェックしておきましょう。
多くの墓地・霊園は、公共交通機関でのアクセスがしやすかったり、自家用車が停められる駐車スペースを設けたりしています。また、シャトルバスを運行しているところもあります。
しかし、里山型の樹木葬(あまり手を入れず、極力自然のままの野山にしている樹木葬の形式)の場合はアクセスが悪い傾向にあります。
このようなアクセスのしやすさを確認するうえでも、契約前に墓地・霊園に足を運ぶ必要があります。
墓地・霊園内の環境
墓地・霊園内の環境も確認しておきましょう。バリアフリー化がなされているか、休憩スペースは充分にあるかなどを見ておくと、足腰が弱くなった後でも通いやすいといえます。
共有部分の設備
駐車場が完備されているか、手桶や掃除道具が用意されているかなど、設備が充実しているかどうかもチェックするポイントです。また、「追善供養を墓地・霊園で行いたい」という場合は、墓地・霊園内に法要室などそれを行えるスペース(法要室など)があるかどうかも確認しておきます。
管理体制
墓地・霊園内や共用部分がきれいに保たれているかも見ておきます。それぞれの墓所は基本的にはご家族が面倒をみるものですが、共有スペースは管理団体が管理を行います。共用部分があまりにも汚れているようならば、管理体制がきちんとしていないと判断することができます。
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おわりに
お墓は一度建ててしまうとなかなか手放すことはできません。取り壊すときにお金がかかりますし、墓地・霊園は使用しなくなっても、原則として払い込んだ土地の永代使用料は帰ってこないのです。
そのため、事前に「選び方の知識」をきちんとつけたうえで、しっかり間違いなく選んでいくことが求められます。