葬儀のときは香典を持参します。金額をいくらにするか悩みがちですが、香典の金額には故人との関係性や自分の年齢によって相場があります。相場から大きく離れない金額であれば安心です。この記事では香典の金額相場や香典袋の選び方、表書きの書き方、香典の包み方、受付への渡し方まで、香典に関するあらゆるマナーを解説します。葬儀に参列する予定のある方は、最後まで読めば香典に関する不安を一挙に拭い去ることができます。
この記事を読んでわかること
- 香典金額の相場は一般参列者が5,000円、一般親族が10,000~30,000円、近親者が30,000~100,000円
- 香典の表書きは浄土真宗以外なら「御霊前」で浄土真宗は「御仏前」、神道は「御玉串料」、キリスト教は「御花料」
- 香典はふくさに包み、受付に渡す直前までふくさから出さないのがマナー
香典とは
香典とは、故人に供える金品を指します。現代では、葬儀の際に受付へ差し出す金銭として広く知られています。まずは香典の詳しい意味や、香典金額の相場について解説します。
香典の意味
香典の基本的な意味は「線香」や「供物」です。
親しい方に不幸があったときや本人が亡くなったとき、故人にお供えする線香やお供え物を表しています。昔は供養の意味でも、亡くなった方の臭いを和らげるためにも、大量の線香を焚いたものでした。葬儀には線香がたくさん必要なため、親しい方たちは線香を持ち寄り、遺族を金銭的に助けました。
また、昔は故人宅で葬儀や会食が行われ、食事も近隣の方々などのお手伝いによる手づくりだったため、大量のお米や野菜、調味料が必要でした。そのため参列者はお米や野菜を供物として持ち寄りました。
現物ではなく、お線香や供物の代わりとなる金銭を不祝儀袋に入れて差し出すのが、現代の一般的な「香典」です。香典には故人の冥福を祈り遺族を気遣うお悔みの気持ちと、「葬儀代の足しにしてください」という思いが込められています。
香典の金額はどうやって決める?
香典の金額は故人との関係性や自分の年齢によって変わります。また、地域の慣習によっても違ってきます。ここでは一般的な香典金額の相場について解説します。
前提として、自分が喪主や遺族である場合は香典を用意する必要はありません。例えば親元を離れてひとり暮らしをしている大学生は遺族とみなされるため、香典を負担する必要はありません。社会人になりたての方など判断しづらい場合は、香典を出すべきかどうか喪主に当たる方に相談してみましょう。
故人が父母(あるいは配偶者の両親)のときの香典
故人が父母、あるいは配偶者の両親であるときは、自分も葬儀代金の一部を提供して遺族を支えなければならない立場です。自分の年齢が上がるにつれ、香典によって負担すべき金額は違ってきます。
【故人が父母(あるいは配偶者の両親)のときの香典金額相場】
自分の年齢 | 香典金額相場 |
20代 | 30,000~100,000円 |
30代、40代、50代、60代~ | 50,000~100,000円 |
故人が兄弟姉妹(あるいは配偶者の兄弟姉妹)のときの香典
故人が兄弟姉妹のときは、故人が父母の場合よりもやや少なく包みます。兄弟姉妹が複数いるときは、事前に相談して香典金額を揃えましょう。
【故人が兄弟姉妹(あるいは配偶者の兄弟姉妹)のときの香典金額相場】
自分の年齢 | 香典金額相場 |
20代、30代、40代 | 30,000~50,000円 |
50代、60代~ | 50,000~100,000円 |
故人が親戚(いとこなど)のときの香典
故人が叔父叔母、いとこといった親戚のときは、年代を問わず香典金額相場は10,000~30,000円です。特別に親しくしていた場合は多く包むなど、関係性によって金額を変えても良いでしょう。
また、精進落としに参加する場合は家族の人数分の飲食代を意識して多めに包むのがマナーです。例えば1人だけ参加する場合は10,000円でも、夫婦で精進落としに参加するときは追加の飲食代として5,000円程度をプラスします。
故人が仕事関係の方の場合の香典
勤務している会社の上司や同僚、部下の葬儀に参列する場合は、5,000円から10,000円が相場です。ただし、社内で規定が存在する場合もあるため、参列前に総務や上司に相談し、確認するのがおすすめです。
取引先の葬儀に参列する場合は必ず上司に香典金額の相談をしましょう。取引先との関係を踏まえた会社としての判断を仰ぎます。自己判断で金額を決めると、後で問題になってしまうかもしれません。
故人が友人、知人、ご近所のときの香典
自分が親族ではなく一般参列者にあたるときは、5,000円が香典金額の相場です。ただしご近所に香典を渡す場合は、念のため近隣に金額について相談しましょう。自治会のルールとして香典金額が決められていることがあります。
おさえておきたい香典マナー
香典には一定のルールとマナーが存在します。面倒と思われるかもしれませんが、一度経験してしまえば、あとは簡単です。香典の書き方や包み方のマナーをご紹介します。
香典袋の種類
香典袋にはさまざまな種類があります。葬儀の宗教や宗派によって使い分けが必要です。
仏教の香典袋
仏教の香典袋は、白黒あるいは双銀の水引があしらわれた不祝儀袋です。袋の右下に蓮の花が描かれていることもあります。
中に入れる金額によって、香典袋の種類を変えます。水引がプリントされているシンプルな不祝儀袋は、5,000円程度の金額を入れるために使います。実際に水引があしらわれている香典袋は、10,000~30,000円程度の金額を入れるときに使います。30,000円以上の高額を包む場合は、大判サイズの香典袋を選びます。
なお、地域によっては黄色と白の水引があしらわれた香典袋を使います。特に関西地方の人は、香典袋を購入する前に親族などへ確認してみましょう。
キリスト教の香典袋
キリスト教の香典袋は白無地の封筒か、右肩に十字架があしらわれた不祝儀袋です。百合の花がデザインされたものも、キリスト教用です。
水引があしらわれたもの、蓮の花が描かれたものは避けましょう。
神道の香典袋
神道の香典袋は、基本的には仏教と同じです。白黒、あるいは双銀の水引があしらわれた不祝儀袋を使います。ただし、蓮の花が描かれた袋は仏教専用なので避けましょう。
香典の表書き
香典袋の上半分に書く「御霊前」などの文字を「表書き」といいます。葬儀の際の表書きは、薄墨の筆ペンを使うのがマナーです。薄墨を使うことで「涙が流れ、墨が薄くなってしまった」ことを表すためです。薄墨の筆ペンは、コンビニやスーパーの文具コーナーで手に入ります。
香典の表書きは、宗教宗派によって違います。
【香典の表書きと宗教一覧表】
宗教 | 表書き |
---|---|
仏教 | 「御霊前(ごれいぜん)」(浄土真宗以外) 「御仏前(ごぶつぜん)」(浄土真宗の場合) 「御香料(ごこうりょう)」 「御香典(ごこうでん)」 「御悔(おくやみ)」 |
キリスト教 | カトリック 「御花料(おはなりょう)」 「献花料(けんかりょう)」 「御ミサ料(おみさりょう)」 プロテスタント 「御花料(おはなりょう)」 「献花料(けんかりょう)」 「弔慰料(ちょういりょう)」 |
神道 | 「御神前(ごしんぜん)」 「御玉串料(おたまぐしりょう)」 「御榊料(おさかきりょう)」 |
無宗教・不明 | 「御香料(ごこうりょう)」 「御香典(ごこうでん)」 「御香資(ごこうし)」 |
名前の書き方
表書きの下段には、香典を贈る人の名前を書き入れます。個人や連名、会社関係の場合について、それぞれ解説します。
個人の場合
自分の名前をフルネームで書き入れましょう。
連名の場合
夫婦連名にしたい場合は、中央に夫のフルネームを書き、左側に妻の名前だけを添えます。友人との連名の場合は、3名までであれば右側から50音順に記載します。3名以上の場合は代表者名を中央に書き入れ、左側に「他●名」「外一同」などと書き添えます。そして別紙に全員の氏名と住所、金額を記載して香典袋に入れましょう。
会社関係の場合(勤務先)
勤務先の上司や同僚にあてる香典袋の表書きは、会社関係者であることがわかるよう社名を書き入れるのが基本です。会社一同で香典を出すときは中央に「〇〇株式会社一同」、部署ごとに香典を出すときは右側に「〇〇株式会社」と書き、中央に大きく「〇〇部一同」と書きましょう。
会社関係でも個人名で香典を出す場合は、香典袋の中央に自分のフルネームを書いた後、右側に「〇〇株式会社〇〇部」と所属を書き入れます。
会社関係の場合(取引先)
取引先に贈る香典は、基本的に代表の名前で出します。香典袋の中央に大きく代表のフルネームを書き、右側に「〇〇株式会社 取締役社長」などと肩書を添えます。ただし取引先との関係性によっては他の役員の肩書で香典を出す場合もあるため、必ず総務に確認しましょう。
住所と金額の書き方
多くの香典袋には内袋がついていて、内袋の中に金銭を入れます。この内袋の裏側左下に、住所氏名を書き入れましょう。そして表側に金額を縦書きで書き入れます。住所氏名の下もしくは右側に金額を書き入れる欄がプリントされていたら、そこへ書き入れます。
香典袋に書く金額は、通常の漢字を使いません。「一」を改ざんして「二」や「十」にされたりするのを防ぐためです。金額はそれぞれ、以下のように書きましょう。
- 3,000円→金参仟圓也
- 5,000円→金伍仟圓也
- 10,000円→金壱萬圓也
- 50,000円→金伍萬圓也
なお、内袋がついていない香典袋の場合は、袋の裏側左下に住所氏名を書き入れ、その右側に小さく金額を書きます。
香典の包み方
香典のお金は、お札を裏にして印刷されている人物の顔が上にくるように入れます。帳場の人が封筒を開封したとき、金額の数字と人物の肩がチラッと見えるような形です。
内袋に金銭を入れたら、外袋で包みます。最後は、折り込み口を上から下へかぶせるように折りましょう。上下に余った和紙の部分を、下部分から先にたたみ、上部分をかぶせます。これは「涙が流れていく」ことを意味しています。
香典を郵送する場合
葬儀に参列できず香典を郵送する場合は、現金書留が便利です。郵便局に香典袋とお悔やみの手紙を持参し、現金書留用の封筒を購入して香典袋と手紙を入れ、封をして発送します。
香典袋のみを送るのではなく、お悔やみの手紙を入れるのがマナーです。手紙では葬儀に参列できなかったことを詫び、香典を送る旨を書きます。便箋は必ず1枚にとどめましょう。2枚以上の手紙は「不幸が重なる」ことを意味するためです。
香典で気をつけたい金額
香典を包むときは、お札の枚数などにマナーがあります。きちんと意識することが大切です。
新札を使わない
折り目が一切ついていない紙幣を、新札といいます。葬儀では新札を使いません。新札は金融機関で出してもらう必要があるため、不幸を予想し準備していたことを連想させるためです。
かといって、皴のたくさんついた古い紙幣を使うのも失礼です。新札を一度2つ折りにして折り目をつけたものを使うのが理想的ですが、新札がなければなるべく新しい紙幣を使います。
偶数や忌み数は香典にふさわしくない
偶数は不幸が連続することを連想させるため、香典にふさわしくありません。また、奇数であっても「9」は「苦しむ」を連想させるため、やはり弔事には向かないといわれています。「1」「3」「5」「7」「10」のいずれかの数字になるよう、香典金額を決めましょう。
「15,000円」など紙幣の枚数が偶数になってしまうときは、可能であれば全て5,000円札にするなどして奇数の枚数にします。ただし、紙幣の持ち合わせがないときなどは、無理に奇数にしなくても構いません。
お葬式での香典の渡し方
香典は、渡し方にも作法があります。受付できちんと振る舞えるよう、予めマナーを確認しておくと安心です。
香典はふくさに包んで持参する
香典は「ふくさ」に包んで持参します。ふくさとは小さめの風呂敷状の布で、贈答品を包むものとして用いられています。
ふくさはそもそも、貴重品が入っている入れ物に埃よけとしてかけておく風呂敷のことでした。いつしか贈答品を運ぶときにもふくさをかけるようになり、現代では広く金封を包む布という意味合いを持つようになりました。
よって正式なふくさは一枚の布ですが、包み方が難しいため、金封が挟み込めるポケットがついた長財布状の「金封ふくさ」も販売されています。初めてふくさを使う人は、金封ふくさの方が使いやすいでしょう。
ふくさには弔事用と慶事用があり、葬儀や法要などの弔事では紫や紺、灰色といった寒色系のふくさを使います。結婚式などの慶事では、赤やピンク、オレンジ、紫といった暖色系のふくさを使います。紫色のふくさは慶弔両用なので、一枚持っておくと便利です。
布状のふくさも、金封ふくさも、香典袋の包み方にマナーがあります。
金封ふくさの使い方
金封ふくさは長財布状で、香典袋がそのまま挟み込めるポケットがついています。ポケットにふくさを挟み、ふたになる部分を上からかぶせて持参します。
弔事のときの金封ふくさは左開きにするのがマナーです。右手にふくさのポケット部分を持ち、左側から香典袋を挟み込み、ふたの部分をかぶせます。ふくさを開けるときには、ふくさを右手に持ち、左手でふたの部分を開くようになります。これが左開きです。
慶事のときの金封ふくさは右開きになります。
布状のふくさの使い方
布状のふくさも、金封ふくさと同様、弔事では左開きにするのがマナーです。ふくさの中央に香典袋を置き、図のように右・下・上・左の順番で端をたたみます。
香典を渡すときの作法
香典は通夜や葬儀の受付で渡します。香典を差し出すときまで、ふくさの中から香典袋を出さないのがマナーです。
受付に到着して初めて「このたびは…」とお悔やみの言葉を述べながらふくさを出し、香典袋を取り出します。そして「ご霊前(ご仏前)にお供えください」と言って、香典袋を両手で差し出しましょう。
不測の事態に普段から備えておくことが大切
香典は急な出費です。親族への香典となると高額になり、さらに自分が喪主になると考えたときには葬儀費用が必要で、かなり出費がかさみます。葬儀をはじめとする冠婚葬祭費をどのように用意しておけばよいか解説します。
訃報など急な出費に備えておく
参列者の香典金額相場は5,000円です。高齢になるほど葬儀に参列する機会は増えます。個人差はありますが、年に数回は冠婚葬祭の機会があると考え、急な出費やまとまった出費用の口座を作るのがおすすめです。計画的に貯金をすることで、いざというとき慌てずに済むでしょう。
できれば毎月コツコツ貯金するのが理想的ですが、自分にお祝いごとや不幸があったとき贈られた金封をそのまま口座に入れるようにすると、無理なく費用の確保ができます。結婚、出産、法要などの際にいただいた金封のうち、諸費用を差し引いた金額は、家計に入れてしまわず貯金に回すようにしましょう。
互助会で積み立てておく
冠婚葬祭専用口座を作ることに併せて、互助会に加入するのも良い方法です。互助会はいざというとき葬儀や婚礼のサービスを利用するため、共同で毎月掛け金を積み立てる仕組みのことで、毎月1,000円から5,000円程度の範囲で掛けることができます。
互助会は保険とは違い、満期に保険金が下りることはありません。いざというとき、積み立てたお金を葬儀費用の一部にあてるなど、掛け金の金額に応じた儀式サービスを受ける仕組みです。費用が手軽なのはもちろん、サービスが割安になることや、不安に感じることを気軽に相談できるのが互助会のメリットです。冠婚葬祭が生じたときに、疑問や不安をしっかりサポートしてくれます。
「セゾンの相続 お葬式サポート」では、「互助会に入るかどうか迷っている」「自分にぴったりの葬儀社を選びたい」などの相談を受け付けています。経験豊富な提携専門家のご紹介も可能ですので、お気軽にお電話ください。
おわりに
香典の金額や表書きの書き方など、葬儀マナーは慣れないことだらけで不安になりがちです。相場や一般的なマナーをしっかり押さえた上で、それでも疑問に思うことがあれば親族やご近所に相談しながら準備を進めましょう。
特にご近所付き合いが濃密な地域では、香典の金額や袋、表書きの書き方に決まりがある可能性も。トラブルにならないよう、「このあたりでは、香典の金額が決まっていたりしますか?」などと、まずは率直に尋ねてみるのが正解です。