檀家をやめると、離檀届が必要な場合があります。書式がなければ届書自体を作成しなければならず、書き方に悩む人も多いでしょう。また、離檀に必要なのは離檀届ばかりではありません。お墓を撤去する費用や、改葬の手続きが必要になります。この記事では、離檀の流れや費用、離檀届の書き方、ご住職や親戚とトラブルにならないためのヒントをご紹介しています。離檀しようかどうか迷っている人は、ぜひ最後までお読みください。
この記事を読んでわかること
- 檀家をやめるとき離檀届が必要かどうかはお寺による
- 檀家をやめるためにはお墓の撤去費用や先祖の遺骨の行き先を決めることが必要になる
- 檀家をやめたいと感じたらまず親族に相談するのが大事
- 檀家をやめたくてもご住職に突然「檀家をやめたい」と切り出すのはマナー違反
そもそも檀家とは
檀家とは、特定のお寺に所属し、お布施や寄進でお寺を支援する家を指します。檀家が所属するお寺のことを「菩提寺」といいます。
檀家になると、家族の誰かが亡くなった場合、葬儀を菩提寺に依頼します。そして菩提寺が管理する墓地にお墓を設け、納骨を行います。また、四十九日や一周忌に行う回忌法要についても菩提寺に依頼し、お盆やお彼岸といった節目にはお墓参りをしつつ菩提寺に立ち寄り、合同法要に参加することがあります。葬儀や法要には必ずお布施が必要です。
なお、檀家は年間管理費用を菩提寺に納め、建物の修繕や改築が必要になったときには寄進をすることで修繕費用を負担します。このように、檀家は先祖代々のお墓と供養を引き受けてもらう代わりに、菩提寺の維持に貢献するのです。
檀家をやめるとどうなるのか
遠くへ転居したり、お墓の継ぎ手がいなかったりして檀家をやめざるを得なくなるケースもあります。檀家をやめることを「離檀」といいます。
檀家をやめると元の菩提寺との関係が途切れ、葬儀が生じたら他の僧侶に葬儀を依頼しなければならなくなります。新たに別のお寺の檀家になっていない場合は、親族や葬儀社からお寺を紹介してもらうことになるでしょう。
葬儀後は納骨、四十九日法要、一周忌法要、初盆などさまざまな仏事が生じます。これらについても前の菩提寺に方法を相談したり、法要のたびに来てもらったりすることはできません。檀家をやめると、1つのお寺による一貫した手厚い供養が受けられなくなるのです。
菩提寺に墓がある場合は墓じまいや改葬も必要
檀家をやめたら、菩提寺の管理墓地内にあったお墓を移転しなければなりません。お墓を取り壊して更地にし、元の菩提寺に返還する「墓じまい」が必要になります。
墓じまいをした後は、お墓から取りだした先祖の骨壺をどうするか考えなければなりません。遺骨への対応としては、以下の4つの選択肢があります。
新しくお墓を購入して納骨する
別のお寺の檀家になるなどして新しくお墓を購入し、納骨します。ただし現代では特定のお寺の檀家にならなくても契約できる民間霊園が増えています。また、市区町村が運営する霊園は全て宗教フリーです。
合祀墓に納骨する
骨壺から遺骨を取り出し、他の人の遺骨と一緒に1つの大きなお墓へ納骨することを、合祀といいます。合祀墓を利用すれば、多くの場合は檀家になる必要がありません。
手元供養とする
お墓に納骨せず、自宅などに遺骨を安置して供養することを手元供養といいます。遺骨は必ずしもお墓に入れなければならないものではないため、仏壇などに安置して手元供養とするケースがみられます。
散骨する
遺骨を埋葬するのではなく、海や山へ遺骨を撒くことを散骨といいます。最近では、海への散骨を手がける散骨事業者が増えてきました。
離檀するときに必要な費用
離檀するときには、さまざまな費用が必要になります。檀家をやめるときには、トータルでかかる費用を把握し、離檀すべきかどうかを検討するのがおすすめです。
離檀料の目安
檀家をやめるときには、これまでお世話になったことへの感謝のしるしとしてお布施を包みます。これを離檀料といいます。離檀料の相場は5万から20万円です。お世話になった期間が長いほど、またお寺の格が高いほど厚く包む傾向があります。
離檀料の金額は家族の判断で決めて構いませんが、菩提寺から指定される場合もあります。菩提寺から提示された金額が家族にとって高額すぎると、トラブルになるケースも。しかし離檀料は、予め金額を明記した契約書などを交わしたり口頭で指定されたりしていない限り、支払い義務はありません。多額すぎると感じたら、菩提寺に交渉してよいものです。
離檀料は金封用の白封筒に入れ、「御布施」と表書きして「長い間、ありがとうございました」と挨拶しながら手渡します。
離檀料以外にも費用が必要になる
檀家を離れるときには離檀料以外にも費用が必要になります。想定されるのは以下のような費用です。
墓石の解体や撤去
離檀するとこれまでのお墓は使えなくなります。墓石を撤去し、更地にして元の菩提寺に返還しなければなりません。菩提寺が指定する石材店に依頼することになります。墓石の撤去費用の相場は、1㎡につき100,000円ほどです。重機が入れない場所や斜面、階段をかなり上がった先など、工事が困難な場所は費用がかさむ傾向にあります。
遺骨の改葬
先祖の遺骨を改葬するために新しくお墓を購入するとなると、まとまった金額が必要になります。どこかのお寺の檀家になり、家族で使える承継墓を購入すると、平均して250万円ほどの費用がかかります。合祀墓で永代供養とする場合、一体につき100,000~300,000円程度が相場です。供養する骨壺の数が多いとかなりの金額になるかもしれません。
閉眼供養
お墓を解体するときは、お墓をお参りの対象からただの石へと戻す「閉眼供養(へいがん/へいげんくよう)」を行います。閉眼供養のお布施の相場は30,000円程度です。
開眼供養
新しいお墓をつくったら、初めて納骨を行う前に、お墓をただの石からお参りの対象にする「開眼供養(かいげんくよう)」を行います。開眼供養のお布施の相場は30,000円程度です。
納骨法要
新しいお墓か否かにかかわらず、納骨するときは納骨法要を行います。開眼供養とは別にお布施が必要になり、相場は30,000円程度です。
以上のように、離檀料そのものよりもお墓まわりの出費の方が大きいため、石材店に早めに見積もりをもらうなどしてしっかり把握しておくのがおすすめです。
離檀するときの流れ
檀家をやめるときは、手順を踏まないとトラブルになる可能性があります。以下のような流れで手続きしましょう。
親族に確認
まずは親族に離檀の意思を告げ、先祖の遺骨をどうするか話し合います。なかには「ご先祖様の遺骨を移動させるなんて」「気軽にお墓参りできる場所がなくなってしまう」と離檀に反対する親族もいるかもしれません。
離檀に反対する親族には檀家をやめたい理由をきちんと打ち明けて、理解してもらうまでコミュニケーションを続けましょう。わだかまりがあるまま離檀の手続きを進めてしまうと、後で親族間にしこりが残ってしまいます。
寺院へ相談
菩提寺に檀家をやめたい旨を告げます。「年をとってお墓の管理が難しくなった」「後継者がおらず、このままでは無縁仏になってしまう」と、離檀の理由を明確に伝えましょう。
離檀が認められたら、これまでお世話になったことへ感謝の気持ちを伝えます。そして必要な書類や準備について尋ねます。
離檀届など必要書類の用意
離檀に必要な書類を準備します。必要になる書類は主に以下の通りです。
離檀届
お寺によっては離檀届を提出してほしいと言われる場合があります。
改葬許可申請書
先祖の遺骨を元のお墓から新しいお墓に移すときには、役所で改葬許可申請手続きをする必要があります。改葬許可申請書は市区町村によってフォーマットが違います。役所の公式サイトや窓口で確認しましょう。
埋蔵証明書
改葬許可申請手続きに必要です。形式は任意ですが、市区町村が用意している場合があります。また、改葬許可申請書に菩提寺が一筆サインをする箇所がある場合、他に埋蔵証明書を提出する必要はありません。市区町村のフォーマットを確認してみましょう。
受入証明書
改葬許可申請手続きに必要です。形式は任意ですが、市区町村が用意している場合があります。また、改葬許可申請書に新しい墓地の管理者が一筆サインをする箇所がある場合、他に受入証明書を提出する必要はありません。市区町村のフォーマットを確認してみましょう。
なお、改葬許可申請はあくまで遺骨を他のお墓に移動するために行うものなので、散骨や手元供養、同じ寺院内の供養塔などへ遺骨を移すときには必要ないという考え方もあります。実際、「散骨は改葬にあたりません」と、散骨時には改葬許可申請をしなくても良いと明言している自治体も見受けられます。
ただ、実際に墓じまいをする場合、改葬許可証がないと石材店が工事を引き受けてくれなかったり、散骨業者が遺骨を預かってくれなかったりします。手元供養をするにしても、後で新しいお墓を作りたくなるかもしれません。改葬許可申請は、行っておいた方が安心です。
墓じまいや永代供養など遺骨の対応
改葬許可が下りたら閉眼供養を行い、石材店に工事を開始してもらいます。そして先祖の遺骨を新しいお墓などに移します。先祖の遺骨を移し終えたら、離檀は完了です。
離檀届の書き方
もし離檀届の提出が必要になったら、菩提寺に決まった書式がないかどうか尋ねます。もし用意されていれば、書式に従って記入します。
書式が用意されていない場合は、A4判の紙に以下のような内容を記入します。
- タイトル「離檀届」
- あてさき(お寺とご住職の名前)
- 檀家をやめる理由
- 檀家をやめる旨
- 日付
- 住所
- 氏名
- 押印
【離檀届の例文】
離檀届
○○寺 住職 ○○○○様
私は、お墓の後継者不足により、本日をもって離檀いたします。
○年▲月□日
(住所氏名)㊞
以上のように、離檀届は簡単な文面で結構です。理由は「一身上の都合により」などと濁しても構いません。
円満に離檀するためのポイント
最近こそ離檀は珍しい話ではなくなりましたが、一昔前までは「お世話になったお寺の檀家をやめるなんて」「先祖の遺骨を掘り起こすなんて縁起が悪い」などと悪いイメージを持たれていました。また、お寺にとってはサポーターが減ることを意味します。わざと高額な離檀料を要求し、離檀させづらくするお寺もないとはいえません。
離檀を円満に進めるためには、ご住職をいかに納得させるかがポイントになります。ご住職が立腹して離檀を認めてもらえない、離檀料が高額になってしまうといったトラブルをふせぐため、次の注意点を意識しましょう。
いきなり「離檀したい」と伝えない
菩提寺にとって檀家は特別な存在です。年間管理費やお布施、寄進でお寺を支えてもらう代わりに、檀家の大切な先祖の遺骨を守り、供養を行ってきたという自覚を持っています。
一方、檀家の中にはお墓をただの物件と感じ、年間管理費用を「墓地を借りるためのリース料」と捉えている人も多いようです。この感覚の違いから、切り出し方を間違えると菩提寺を怒らせてしまう可能性があります。
賃貸物件の契約を取りやめるような感覚で、「来月で契約を解除します」「もう檀家をやめます」などと一方的に離檀を切り出すのはマナー違反です。
「管理できる家族がいない」など具体的な困りごととして相談する
「檀家をやめたい」といきなり切り出すのは避け、まずは「お墓を管理できる人がいなくなった」などと、具体的な困りごととして相談しましょう。
お寺としても、お墓を管理する人がいなくなってしまうのは悩ましい問題です。最近、「無縁仏」が問題になっています。無縁仏とは、誰も手入れをしなくなって放置されたお墓のこと。雑草が伸びて他のお墓に影響したり、墓石にヒビが入ったり傾いたりしても誰も修繕しないため、墓地全体の景観を損ねてしまいます。
お墓が無縁仏化すると、菩提寺はお墓の承継者に連絡を入れて注意することになります。しかしたいていは連絡を入れても反応がないか、承継者の連絡先が不明で連絡が取れません。年間管理費用も入れてもらえず、お墓は荒れていくばかりです。
このように無縁仏化はお寺にとってデメリットの大きいことなので、離檀を切り出しても「無縁化するよりは離檀してもらって、改めて墓地区画を使ってくれる人を募集しよう」と、前向きな気持ちになってもらいやすくなります。
お寺への感謝の気持ちを伝える
長くお世話になった菩提寺に向けて、感謝の気持ちを伝えるのも大事です。電話口で「今まで大変お世話になり、誠にありがとうございました」と簡単な感謝の言葉を告げた後は、できれば直接お寺に出向いたり、手紙を書いたりして感謝を伝えましょう。
とくに遠方の場合は、離檀届などを送る際に感謝の手紙を添えるのがおすすめです。先祖の遺骨を守ってきてくれたことへの感謝、葬儀のとき駆けつけてもらったときのありがたい気持ち、このたび離檀することについて心苦しく思っていることなどを伝えます。
【離檀の際に添える手紙の文例】
拝啓
○○の候、ご住職様におかれましてはお健やかにお過ごしのことと存じます。
先祖代々、○○家の遺骨をお守りいただき、葬儀や法要が生じるたび供養をしていただき、言葉では言い表せないほど感謝しております。
先般父▲▲の葬儀につきましても、逝去したのが夜中であったにもかかわらずすぐに電話応対してくださり、駆けつけてくださったのには驚きました。慣れない葬儀の準備をしなければならず緊張していた心が、ほどけていったのを覚えています。年忌法要の際にもこちらの質問に丁寧なご回答をいただき、安心して儀式を終えることができました。
今後は、子世代の近隣にある霊園内で永代供養の手続きを行うことになります。つきましては離檀届を同封しましたのでお収めください。今後、墓石の解体や遺骨の取り出しなどでご迷惑をおかけすることとなりますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
末筆ではありますが、○○寺様の益々のご健勝をお祈りしております。
敬具
離檀後の遺骨の対応に不安があればプロに相談するのがおすすめ
離檀後は、先祖の遺骨をどこかへ移し、供養しなければなりません。新しくお墓を設けたり、永代供養としたり、散骨したりとさまざまな方法があります。
「先祖の遺骨をどこへ移したらよいかわからない」「散骨したいがどんな事業者が信用できるかわからない」など悩みが生じたら、ぜひ「セゾンの相続 お墓探しサポート」へご相談ください。あなたにぴったりの供養先をご案内します。さまざまな終活分野の専門家と連携しておりますので、葬儀や相続などお墓以外の悩みも、ぜひお寄せください。
おわりに
お墓の後継者がいないなど離檀の必要性を感じたら、ひとりで問題を抱え込まずにまずは親族へ相談しましょう。兄弟姉妹のひとりがお墓の管理を引き受けてくれるかもしれませんし、意外と子世代のうち誰かがお墓を継ぐ意思を示してくれるかもしれません。
特に一家の長男としてお墓を管理してきた方は「お墓のことは自分が責任を持ってやらなくては」とひとりで悩みがちです。悩みに悩んで決断した結果、何の相談も受けていない親族から「独りよがり」と責められる可能性があります。周りに悩みを打ち明けながら、一族でお墓の問題を解決していく気持ちになれれば、親族間のトラブルを生みません。