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祖父名義の土地を孫が相続することは可能か?方法や注意点とは

祖父名義の土地を孫が相続することは可能か?方法や注意点とは
セゾンのくらし大研究 編集部

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相続は多くの家族にとって避けて通れない問題です。中でも争点になりがちなのが、祖父母の土地を孫に直接相続させたいという希望があった場合です。

この記事では、祖父母名義の土地を孫に相続させる方法や注意点、関連する税金や法的制約、相談先などについて解説します。相続のプロセスを円滑に進め、後悔のない選択をするためにぜひ参考にしてください。

この記事を読んでわかること

  • 祖父母の不動産を孫名義にするための手段は、生前贈与、養子縁組、死因贈与、遺言など
  • 相続の際は、相続税の加算や養子の制限、遺留分の侵害などに注意が必要
  • 相続に関する手続きの際は、司法書士、弁護士、総合サポート窓口などの専門家に相談するのがおすすめ
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祖父母名義の土地を孫に相続させることはできるのか?

祖父母名義の土地を孫に相続させることはできるのか?

祖父母名義の土地や家の相続は、多くの場合親を経由しますが、直接孫が相続するケースもあります。祖父から孫、または祖母から孫への土地相続が発生するケースにはどのようなものがあるのでしょうか。

なぜ子ではなく孫に相続させるのか?

祖父母が子ではなく孫に相続させる背景には、孫への深い愛情や節税のメリット、将来への投資など、さまざまな理由や動機が考えられます。

また、子どもたちがすでに経済的に安定している場合や、他の方法で家族の資産を受け継いでいる場合、資産を孫に相続させることで家族全体の経済的なバランスを保つことが可能です。

これらの要因は家族の状況や価値観に基づくため、祖父母の意向によって異なります。

原則孫が相続することは不可

祖父母から孫への直接の土地相続は、原則として認められません。これは、孫が祖父母の法定相続人ではないためです。法定相続人は民法で定められており、被相続人の子、直系尊属、兄弟姉妹などが該当します。

ただし、やり方次第では祖父母の不動産を孫名義にできる方法もあります。

【祖父母の不動産を孫名義にできる方法】

  • 生前贈与
  • 養子縁組
  • 死因贈与
  • 遺言

詳しくは後述します。

「代襲相続」や「数次相続」など意図せず起きるケースもある

中には、意図せず孫への相続が発生するケースもあります。それが「代襲相続」や「数次相続」が発生する場合です。

代襲相続は、親が亡くなる前に子が死亡している場合、その子の子(孫)が相続人となることです。この孫が「代襲相続人」に該当します。

一方、数次相続は、短期間内に複数の相続が連続して発生するケースです。例えば、祖父が亡くなった後、その遺産の分割が終わる前に父が亡くなる場合などが該当します。

代襲相続や数次相続については、相続手続きや遺産分割手続きの際に特別な対応が求められるため、専門的な知識と理解が不可欠です。適切なアドバイスやサポートを受けるためには、専門的な知識を持つ専門家への相談をおすすめします。

祖父母の不動産を孫名義にする方法は?

祖父母の不動産を孫名義にする方法は?

前述の通り、祖父母の不動産を孫に相続させることは原則としてできません。ただし、やり方次第では孫名義にできるケースもあります。ここでは、祖父母の不動産を孫名義にする方法について見ていきましょう。

生前贈与

祖父母の不動産を孫名義にする方法として、生前贈与が挙げられます。生前贈与は、祖父母が生きている間に孫に土地を無償で移転する方法です。ただし、贈与税に注意しなければなりません。

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、選択によって非課税の上限が異なります。

暦年課税では年間110万円まで、相続時精算課税では2,500万円までが非課税です。ただし、相続時精算課税の適用は、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫への贈与に限られ、2,500万円を超える部分には20%の贈与税が課されます。

また、贈与者である父母または祖父母が亡くなった時に、その贈与財産(贈与時の時価)と相続財産の合計額から相続税額を計算することになります。

養子縁組

孫と養子縁組することも、ひとつの方法です。養子として迎えた孫は法律上実子と同じ扱いとなり、相続の際にも実子と同等の権利を有します。そのため、養子となった孫は、実子と同じ法定相続分で財産を相続することが可能です。また、孫を養子にすることで、相続税の基礎控除額が増加し、節税の効果も期待できます。

ただし、注意点もあります。養子縁組によって孫が実子と同等の権利を有することになっても、相続が発生した場合に孫の相続税額はその額の2割が加算されます。また、実子と養子縁組した孫の間でトラブルになるリスクも考慮しなければなりません。

孫と養子縁組をする場合は、メリットとデメリットをよく理解し、適切に判断することが重要です。

参考:国税庁|No.4170 相続人の中に養子がいるとき国税庁|No.4157 相続税額の2割加算

死因贈与

死因贈与は、ある方の死を条件にした贈与契約です。例えば、祖父が亡くなった際に不動産を孫に譲る契約などがこれに該当します。死因贈与の契約は口頭でも成立し、18歳未満の孫であっても親権者の同意があれば契約は可能です。

贈与は無償での財産の移動を意味し、死因贈与は死亡を条件とした贈与です。実際の取引では、後のトラブルを避けるため書面による契約が推奨されます。

参考:e-Gov法令検索|民法第554条

遺言

孫への土地相続は遺言を通じてでも可能です。ただし、法定相続人でない孫への土地の移転は「遺贈」として扱われますが、他の法定相続人の遺留分を侵害することはできません。

遺留分とは、民法で定められた相続人の最低限の相続分のことです。例えば、「孫に全財産を相続させる」という内容の遺言書を作成した場合、それに納得できない相続人が遺留分侵害額請求を行う可能性が高いでしょう。

トラブルを避けるためにも、どの財産を孫に譲るのか具体的に明記し、遺留分に配慮した遺言内容にしておくことが大切です。

祖父母の不動産を孫が相続した場合に負担する主な税金

祖父母の不動産を孫が相続した場合に負担する主な税金

祖父母の不動産を孫が相続する場合、さまざまな税金がかかります。

【祖父母の不動産を孫が相続した場合に負担する主な税金】

  • 相続税
  • 不動産取得税
  • 登録免許税

どのような税金なのか、それぞれ見ていきましょう。

相続税

相続税は、亡くなった方の財産を相続や、遺贈で取得した際に課される税金です。現金や不動産、株式などさまざまな財産に対して適用されます。

相続税の計算は相続開始日における財産の価額を基に行われ、税率は課税遺産総額によって段階的に変動します。

相続税には、法定相続人の数に応じて非課税となる「基礎控除」という制度があります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で求められます。

例えば、法定相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円、3人の場合は4,800万円までの財産は非課税となります。

相続税の申告期限は、被相続人が死亡した日の翌日から10ヵ月以内です。遅れると罰則が科せられるため、注意が必要です。

不動産取得税

不動産取得税は、土地や建物を取得した際に課税される税金です。不動産取得後に自治体から納税通知書が届き、都道府県の税事務所で手続きを行います。

税額の計算は「課税標準額×税率」で行われ、課税標準額は固定資産税評価額を基にします。

税率は原則として4%ですが、2024年3月31日までの取得については、土地や住宅は3%に軽減されています。不動産の購入時だけでなく遺贈、生前贈与などで土地や建物を取得した場合にも不動産取得税が課税されますが、相続による不動産取得には課税されません。

なお、相続時精算課税制度を適用して生前贈与を行った場合、相続とみなされず不動産取得税がかかるので、その点に注意してください。

登録免許税

不動産の名義変更時には、登録免許税がかかります。登録免許税は不動産の固定資産評価額に基づいて計算され、取得方法によって税率が異なるため注意が必要です。

具体的には、相続による取得の場合は税率0.4%、遺贈や死因贈与などでの取得では税率2.0%です。

例えば、固定資産税評価額が1億円の場合、相続での税額は40万円、遺贈での税額は200万円となります。

祖父母名義の不動産を孫が相続する場合の注意点

祖父母名義の不動産を孫が相続する場合の注意点

祖父母から孫への直接の相続には、一般的な法定相続人関係にある親子間の相続とは異なる特有の注意点があります。特に、不動産の相続においては複雑になることが多く、実子の理解や適切な計画が必要です。

ここでは、祖父母名義の不動産を孫が相続する際の注意点を詳しく解説します。

【祖父母名義の不動産を孫が相続する際の注意点】

  • 相続税額が2割加算される
  • 相続税の計算の際、法定相続人の数に含める養子の数が制限される
  • 基礎控除額は増えるが相続分は減る
  • 実子ともめる可能性もある
  • 遺留分の侵害に気をつける

相続税額が2割加算される

孫を養子にすると、法律上、実子と同じ扱いとなり相続の際に相続人として認められます。養子縁組により、相続税の基礎控除額が増加する一方、養子となった孫に対する相続税額にその相続税額の2割が加算されるので、注意が必要です。

具体的には、「養子となった孫」「配偶者、被相続人の一親等の血族でない相続人」に対して、相続税額の2割が加算されます。ただし、代襲相続の場合にはこの加算は適用されません。

相続税の計算の際、法定相続人の数に含める養子の数が制限される

民法の原則では養子縁組の回数に制限がないため、養子を多数迎えることはできます。しかし、相続税対策として養子縁組を検討する場合は、注意が必要です。

相続税の計算をする際に、法定相続人の数に含めることのできる養子の数には制限が設けられています。相続税額を不当に低減させないためです。

具体的には、被相続人(祖父母)に実子がいる場合は法定相続人に含める養子は1人まで、実子がいない場合は2人までと制限されています。

参照:国税庁|No.4170 相続人の中に養子がいるとき

基礎控除は増えるが相続分は減る

養子縁組は相続対策のひとつの方法ですが、デメリットもあります。

養子を迎えることで法定相続人が増えるため、基礎控除額は増加しますが、相続財産の分配は法定相続割合に基づくため、実子の取得する相続分は減少する可能性があります。

そうすると、相続人である実子が「養子縁組をして、意図的に私の相続分を少なくしたのではないか」と疑念を抱き、対立が生じる事態を招きかねません。

実子ともめる可能性もある

相続対策として養子縁組を考える際、養子が法定相続人に含まれると実子との間で財産の分配に関するトラブルが生じる可能性があります。また、養子が財産を不適切に使用するリスクも否定できません。

これらの問題を回避するためには、養子縁組を行う前に実子としっかりと話し合い、養子縁組の意図や財産の管理方法を明確にすることが重要です。その上で遺言書を作成し、将来のトラブルを未然に防ぐことを検討する必要があります。

遺留分の侵害に気をつける

相続対策として養子縁組を考える場合、遺留分の侵害のリスクがあります。前述の通り、遺留分とは民法で定められた相続人の最低限の相続分のことです。遺留分の割合は被相続人との関係によって変わります。

養子縁組を行うと、養子も法定相続人として扱われるため、実子の遺留分についても減少します。

養子縁組はひとつの選択肢に過ぎません。他の相続対策も検討し、最適な方法を選ぶことが大切です。

祖父母名義の土地を孫に相続させたい場合の相談先は?

祖父母名義の土地を孫に相続させたい場合の相談先は?

祖父母名義の土地を孫に直接相続させる際には、多くの法的手続きや注意点が伴います。適切なアドバイスやサポートを受けるために、専門的な知識を有する専門家への相談が不可欠です。

ここでは、土地の相続に関する相談先をご紹介します。

【祖父母名義の土地を孫に相続させたい場合の相談先】

  • 司法書士
  • 弁護士
  • 総合サポート窓口

司法書士

司法書士は、登記などの法律事務の専門家であり、知識と経験を活かした適切なアドバイスやサポートを受けられます。司法書士に相談する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 相続に関する専門的なアドバイスを受けられる
  • 相続登記や遺言書の作成など手続きの代行を依頼できる
  • 相続における遺産分割や贈与の問題などさまざまなトラブルを予防できる

相続登記や遺言書の作成などの手続きを適切に行うための相談先として、経験豊富な司法書士はおすすめです。

弁護士

祖父母名義の土地を孫に相続させる際には、煩雑な法的手続きを踏まなければなりません。また、トラブルが発生する事態も想定されます。

円滑に相続手続きを進め、トラブルを回避または解決するためには、訴訟まで対応可能な法律の専門家である弁護士も、適切な相談先のひとつです。

弁護士に相談する主なメリットは、以下のとおりです。

  • 相続に関する複雑な問題に対して的確なアドバイスを受けられる
  • 相続人間での遺産分割などによるトラブルを未然に防ぐ手助けになる
  • 相続登記や遺言書の作成、遺留分の侵害対策などトータルサポートを受けられる

費用が高額になる傾向にありますが、法律に関するアドバイスや相続のトータルサポートを受けたい場合には弁護士に相談することをおすすめします。

総合サポート窓口

祖父母名義の土地を孫に相続させる際、相続対策サポートや不動産相続のプロが運営する相談窓口に相談することも有効です。専門家が法律や税金の複雑な手続きを明確にアドバイスし、トラブルを予防するためにサポートしてくれます。

セゾンの相続 相続対策サポート」では、提携専門家のご紹介が可能ですので、相続対策や不動産相続についてご相談できます。お客様一人ひとりのお困りごとに対して最適な解決策をご提案しますので、ぜひご活用ください。

セゾンの相続 相続対策サポートの詳細はこちら

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おわりに

祖父母名義の土地を孫に相続させるための方法として、生前贈与や養子縁組、遺言などが考えられますが、それぞれ税金が課される、あるいは法的な制約が伴うため、注意が必要です。相続の手続きや疑問点については、司法書士や弁護士、総合サポート窓口に相談しながら進めることをおすすめします。

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