「お墓を管理してくれる方がいない」「自分の子どもに迷惑をかけたくない」など、墓じまいを検討する理由は人それぞれでしょう。しかし、墓じまいをする際に気になるのがその費用です。そこで今回は、墓じまいにかかる費用の内訳や費用相場について解説していきます。費用を抑えるコツや払えない場合の対処法についてもお伝えしますので、墓じまいを検討している方は参考にしてください。
(本記事は2023年12月11日時点の情報です)
この記事を読んでわかること
- 墓じまいには「お墓の撤去」「行政手続き」「新しい納骨先の選択」が含まれる
- 墓じまいにかかる費用相場は30~300万円
- お墓の規模や立地、新しい納骨先などにより墓じまいにかかる費用は左右される
- 費用を抑えたい場合は、合祀による永代供養など料金がかからない納骨方法を選択したり、複数の墓じまい会社に見積もりを出してもらったりするのがポイント
そもそも墓じまいとは?
墓石の撤去に加えて、墓所を更地にし使用権を返還することを墓じまいといいます。近年は、少子化などの影響を受け、お墓を継承したり手入れをしたりする方がいない無縁墓が増加傾向にあります。
また、お墓が遠方にあるため管理できないという理由や、子どもに迷惑をかけたくないという考えからも墓じまいを検討する方が増えているのです。
墓石を撤去するには、お墓に収められている遺骨を取り出し、別の場所に納骨する必要があります。そのためには行政手続きをしなければなりません。墓じまいには、行政手続きや新しい納骨先の確保まで含まれると考えておきましょう。
墓じまいの費用相場は?誰が支払うべき?
墓じまいをする際に気になるのが、その費用でしょう。目安ではありますが、墓じまいにかかる費用は総額で30~300万円程度です。
費用にかなり幅があるのは、地域による相場の違いではなく、閉眼供養や離檀料などお寺に渡すお布施代や、新しい納骨先にかかる費用に大きな違いがあるためです。墓じまいにかかる費用は、大きく「墓石の撤去・処分」「新たな納骨先の費用」「行政手続きにかかる手数料」に分けられます。
墓じまいを依頼する前に、それぞれの具体的な内訳や費用相場を把握しておきましょう。
墓石の撤去や処分にかかる費用
墓石を撤去したり処分したりする際は、お墓の撤去費用、お寺へのお布施代、離檀料の大きく3つの費用がかかります。お墓の撤去や処分は石材店に依頼します。
費用相場は、1平方メートル当たり100,000~150,000円程度です。遺骨を取り出す作業も石材店に依頼する場合は、別途30,000~50,000円程度の費用がかかります。
お墓を撤去する前には、閉眼供養という儀式を行うのが一般的です。閉眼供養を行った場合は、お寺に対してお布施を渡します。さらにお墓が寺院にある場合は、檀家を離れるために寺院へ離檀料を支払うケースもあります。
離檀料は、地域性やそのお寺によって異なりますが、通常の法要時に渡す金額の2~3倍程度が目安です。これらを合わせて、200,000~500,000円程度かかると考えておきましょう。
遺骨の新たな納骨先の準備費用
遺骨を取り出した後は、新しい納骨先を探さなくてはなりません。墓じまい後に選ばれる納骨先として永代供養を選択する方が多いですが、他にも樹木葬、納骨堂、散骨などがあり、どの納骨先を選ぶかにより、費用は大きく異なります。
新しい納骨先を準備するのに必要な費用の目安は5~250万円程度です。納骨先ごとの費用相場については後述しますので、参考にしてください。さらに新たな納骨先として寺院を選択した場合には、お寺に対しお布施代も発生します。
行政手続きにかかる費用
墓じまいをする際は、行政手続きとして改葬許可を受ける必要があります。改葬許可の申請を行う際には、改葬許可の申請書の他に、埋葬証明書や受入証明書などの提出が必要です。
改葬許可の手続きにかかる費用は自治体などにより異なりますが、それぞれの書類の申請にかかる料金は無料~500円程度で、手続きは数百円~1,500円程度で行えます。
墓じまいにかかる費用を払うのは誰?
墓じまいにかかる費用を誰が支払うべきかは、はっきりとは決められていません。一般的にはお墓の承継者が支払いますが、ほかにも故人本人が支払ったり、兄弟や親族が支払ったりするケースもあります。
墓じまいはかなり高額な料金が発生するケースもあるため、トラブル防止のためには、あらかじめ話し合っておくことが大切でしょう。
参照元:お仏壇のはせがわ【公式】|お墓じまいの費用平均はいくら?総額と内訳、払えない場合の対応も解説
墓じまいにかかる費用を左右するポイント
ここでは、墓じまいの費用を大きく変動させる要因になるものとして、どのようなものがあるのか解説します。
墓じまいするお墓の規模
墓じまいにかかる費用を左右するもののひとつが、お墓の規模です。お墓が大きいと墓石やお墓の敷地が大きくなり、撤去するのに多くの作業時間が必要になります。
また人手も多く必要になるため、人件費も上がるでしょう。さらに墓石の処分にも費用がかかるため、処分する墓石の量が増えればその分費用も高くなります。
墓じまいするお墓の立地
墓じまいをするお墓の立地によっても費用は変動します。
墓じまいをするときは、墓石の解体や撤去が必要なため重機やトラックを使用しますが、道が狭かったり傾斜がきつかったりするような場所では、重機が入れず使用できないケースもあります。重機を使用できない場合は、手作業で撤去作業を行わなければなりません。
手作業による撤去作業は、手間がかかるため工事費用が高額になってしまいます。どのような工事手段を取るかは、実際に現場を見てもらわないと正確にはわかりません。
工事終了後に予定していたよりも費用が高かったという事態にならないためには、見積もりを取る際にきちんと下見をしてもらうと安心でしょう。
離檀料やお布施
檀家を離れるために支払う離檀料は、これまでの感謝の気持ちとして渡すものです。またお墓を撤去する際に行う閉眼供養の際には、先祖代々の供養をしてもらったお礼としてお寺にお布施を渡します。お寺の考えや地域の慣習によりある程度妥当な金額が定められているケースもありますが、いずれも支払いの義務があるものではありません。
お布施の費用相場は30,000~100,000円程度、離檀料は無料の場合もありますが、30,000~200,000円程度とされています。
お布施や離檀料をどのくらい用意したら良いかわからない場合は、お寺に出入りしている石材店などに聞いてみるのもひとつの方法です。ただし地域の慣習などにとらわれ過ぎず、お寺との付き合いの長さや感謝の気持ちから、上記の金額の範囲内程度で用意しておくと良いでしょう。
新たな供養方法によっても費用は異なる
墓じまいをする際には、遺骨を取り出した後、新しく供養先を探す必要があります。新たな供養先により費用は大きく左右されるため、供養方法ごとにかかる費用の目安を確認しておきましょう。
【供養方法と費用相場】
供養方法 | 特徴 | 費用相場 |
一般墓所 | 墓石を立て、その下に納骨する一般的なお墓 | 約80~250万円 |
永代供養 | 寺院や霊園が遺族の代わりに遺骨を管理するお墓 | 約5~150万円 |
樹木葬 | シンボルツリーや草花の周辺に遺骨を埋葬するお墓 | 約20~80万円 |
納骨堂 | 屋内に遺骨を納めるためのスペースがある施設 | 約10~150万円 |
散骨 | 遺骨を粉状にして海や山に撒く方法 | 約5~70万円 |
手元供養 | 遺骨の一部などを小さな骨壺やアクセサリーに収めて手元で保管する方法 | 数百円~50万円 |
供養方法によって費用には大きな差があるため、どのような形を選択するのが良いか親族間でよく話し合って決めましょう。
参照元:終活・お墓の相談所いのり|墓じまいって、いくらなのか結局よくわからない!
お仏壇のはせがわ【公式】|お墓じまいの費用平均はいくら?総額と内訳、払えない場合の対応も解説
墓じまいの費用を抑えるコツ
墓じまいには、ある程度の金額が必要なことがわかりましたが、できるだけ費用を抑えたいと考える方も多いと思います。ここでは費用を抑えるためのコツを紹介します。
複数の墓じまい会社に見積もりを出してもらう
墓じまいは依頼する工事会社により工事費が異なります。そのため、いくつかの見積もりを比較することで、費用が妥当かどうか判断できるだけではなく、無駄な出費も抑えられるでしょう。
撤去した墓石は「産業廃棄物」として破棄されるため、各都道府県で許認可の必要があります。見積もりがあまりに安い場合は、不当な処分方法をとっている可能性もあるため、依頼する墓じまい会社が許認可を取得しているかどうか必ず確認してください。
なお、霊園や墓地によっては、墓じまい会社や石材店が決められている場合もあるため、あらかじめチェックしておきましょう。
費用が安い改葬先を選ぶ
墓じまいにかかる費用のうち、金額を大きく左右するものが改葬先で発生する料金です。そのため、改葬先によっては墓じまいにかかる費用を抑えられます。
特に合祀方法(不特定多数の方の遺骨をまとめて供養する方法)による永代供養墓や散骨を選択した場合は費用が安く、50,000円程度から用意できます。
ただし、費用ばかりを重要視してしまうと、親族や家族間でのトラブルになる可能性もあるため、どのような供養方法にするのかは事前にしっかりと話し合っておきましょう。
墓じまいの費用を払えない場合は?
それでは、墓じまいをしたいが、費用を工面するのが難しい場合には、どのような対策を取れば良いでしょうか。
兄弟姉妹や親族に相談する
墓じまいをひとりでなんとかしようとしている場合には、まずは兄弟姉妹や親族に相談してみましょう。墓じまいにかかる費用は、必ずしもひとりで負担しなければいけないわけではありません。
お墓は、ご自身のものではなく、ご家族の先祖代々が供養されている場所です。相談すれば、協力してくれる兄弟姉妹や親族がいるかもしれません。
お墓の管理者に相談する
今あるお墓がお寺にある場合は、お墓の管理者である住職に相談してみるのもひとつの方法です。お金を工面できないが墓じまいを検討したいという旨を素直に話すことで、必要な費用を検討してもらえるケースもあるでしょう。
金融機関などで用意しているメモリアルローンを利用する
金融機関によっては、お墓や葬儀に利用できるローンとして「メモリアルローン」が用意されています。
メモリアルローンは、お墓を建てる際に利用されることが一般的ですが、金融機関によっては改葬に対しても利用できるところもあります。お金の工面がどうしても難しい場合には、メモリアルローンを検討し、金融機関に墓じまいに利用できるかどうか相談してみると良いでしょう。
自治体の補助金制度を活用する
一部の自治体では、墓じまいに対して補助金制度を設けているところもあるため、お住まいの自治体の窓口やホームページで確認してみましょう。補助の内容は自治体によりさまざまです。
ある自治体ではその自治体が管理する霊園を利用している方を対象に、事情によって一般墓地を返還する際に、その原状回復にかかる費用の一部を助成する制度があります。墓じまいの費用に不安がある場合には、お墓がある自治体に一度相談してみるのもおすすめです。
墓じまいしないとどうなる?
費用の工面ができず、墓じまいをしない場合はどうなるのでしょうか。
まず墓じまいをしなかった場合に、どのくらいの費用がかかるのかを確認してみましょう。お墓を維持するには、主に管理費やお墓参りにかかる費用、墓石のメンテナンス費用などで年間7,000~130,000円程度かかるとされています。約30年間お墓を維持した場合は、約21~390万円かかることになります。
墓じまいをした場合にかかる費用(約30~300万円)と比較すると大きな差はありませんが、次の世代のことまで考えると、墓じまいをしたほうがかかる費用は少ないといえるでしょう。
また、墓じまいをしないまま放置されたお墓は、「無縁墓」と認定されてしまうと、墓地の管理者により強制的に撤去されてしまうことがあります。撤去された場合、遺骨は合祀される可能性があります。
一度合祀された遺骨は取り出せないため、「気づいたらお墓を撤去されていた」とならないためにも墓じまいについてはしっかりと検討しておく必要があるでしょう。
参照元:お仏壇のはせがわ【公式】|お墓じまいの費用平均はいくら?総額と内訳、払えない場合の対応も解説
お墓にまつわる相談は「セゾンの相続 お墓探しサポート」へ
墓じまいはかなり高額な費用がかかるケースもあるため、安易に決められることではありません。しかし、子どもがいないケースやお墓のある場所が住居から離れており管理が大変な場合などは、将来的にお墓をどうするのが良いか、悩まれることもあるでしょう。
そんなお墓に関する悩みがある場合には、セゾンの相続へ相談してみるのがおすすめです。
「セゾンの相続 お墓探しサポート」は、墓じまいや改葬の悩みなどの相談に乗ってくれるサービスです。提携専門家のご紹介ができ、最適なプランを提案してくれるため、お墓選びに悩んでいる場合にも安心して相談できます。終活や相続に関するセミナーやさまざまな手続きに関する相談をすべて無料で実施しているため、気軽に利用できる点もポイントです。
おわりに
墓じまいには、お墓の撤去だけでなく、閉眼供養や新しい納骨先を探すところまで含まれており、高額な費用がかかることがあります。お金がかからない納骨方法を選べば、墓じまいにかかる費用は抑えられますが、親族や兄弟姉妹間でしっかり話し合わなければ、トラブルの原因になってしまうこともあるでしょう。墓じまいなどについてわからないことや聞いてみたいことがある場合には、専門家に相談して自分たちにとって最適な方法を選ぶのがおすすめです。