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自筆証書遺言の書き方|作成のポイントや準備物、例文を解説

自筆証書遺言の書き方
セゾンのくらし大研究 編集部

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遺言書は相続に関わる大切なものであるため、万が一の不備や記載漏れは避けなければなりません。もし遺言書の書き方にミスがあると、相続人の間で大きなトラブルに発展する可能性もあります。相続人がスムーズに相続を済ませられるように必要事項をしっかりおさえておきたいところです。

このコラムを参考に、抜けや漏れがない完璧な遺言書を作成しましょう。遺言書には3種類あり、作成方法やその特徴がありますので、その種類や書き方について詳しく解説します。

残された家族がもめないための遺言作成

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自筆証書遺言とは

「自筆証書遺言」とは、遺言者本人が全文自分で執筆し作成する遺言書を指します。作成の際に特別な手続きや証人は不要です。自筆証書遺言は「15歳以上で遺言能力があると認められた人物」であれば、誰でも作成できます。ただし、本文・タイトル・署名・日付などを自筆する必要があり、代筆やパソコンでの作成は認められていません。

自筆証書遺言の作成にあたって、以下の要件をクリアする必要があります。

  • 「誰にどの財産をいくら相続するか」が明確に記載されている
  • 誤字脱字がない
  • 具体的な作成年月日が記載されている(5月吉日などは不可)
  • 署名・押印がある
  • 財産目録全てに署名・押印がある

一箇所でも抜けや漏れがあると、遺言書の内容は無効となるため注意してください。

遺言書の用紙に関するサイズ規定などはありません。ただし、後述の「自筆証書遺言の保管制度」を利用する場合、用紙サイズはA4と定められているので気をつけましょう。

公正証書遺言との違い

「公正証書遺言」とは、公証役場で作成する遺言書を指します。作成時は「公証人」「2人以上の証人」の立会いが必須です。

自筆証書遺言は遺言者本人が執筆するのに対し、公正証書遺言は公証人に口頭で内容を伝えて遺言書を作成してもらいます。作成した遺言書の原本は公証役場に保管されます。立会人がいるため改ざんリスクが低く、内容チェックも実施するため形式不備で無効になる心配もありません。

ただし、以下の項目で手数料が発生します。

基本手数料

遺言の目的の価額区分に応じて定めらえています。財産の相続や遺贈の場合は財産を取得する方(相続人等)ごとに、取得する財産額に応じ、下表の手数料が産出され、それを合算した額が手数料となります。

目的の価額手数料
100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下11,000円
500万円を超え1,000万円以下17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下29,000円
5,000万円を超え1億円以下43,000円
1億円を超え3億円以下43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額
3億円を超え10億円以下95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額
10億円を超える場合249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額

参照:日本交渉人連合会|公式ホームページ

遺言加算(財産金額が1億円未満の場合)

上記基本手数料に加えて、別途11,000円

用紙代

証書の枚数が4枚を超えた時は、超えた枚数1枚ごとに250円加算

出張して作成した場合の加算等(公証人を自宅などに呼ぶ場合)

 ・病床執務加算 基本手数料の10分の5を加算

 ・日 当    往復に要する時間が4時間までは10,000円、4時間を超えると20,000円

 ・交通費    実費

秘密証書遺言との違い

「秘密証書遺言」とは、遺言書を封筒に入れて封をしたうえで、公証人と2人以上の証人に遺言書の存在を確認してもらうことを指します。遺言内容を秘密にしたまま、遺言書の存在だけを周知させることが可能です。

秘密証書遺言では、遺言者の自筆の署名と押印があれば、本文等は代筆やパソコンで作成しても問題ありません。内容を知られずに作成できる反面、第三者による中身の正誤チェックは実施できないため、開封後に形式不備で無効となる可能性もあります。

秘密証書遺言は、公正証書遺言と同じく手数料(11,000円)がかかります。また、証人が必要なうえに遺言書の保管は遺言者自身で行うため、手続きが煩雑な割に作成者の負担が大きく、あまり利用されていません。

ここまで紹介した3つの遺言書の違いについて、一覧表にまとめました。

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
作成者本人本人・代理人本人・代理人
作成ルール・自筆のみ ※財産目録は各ページごとに署名
・押印することで自筆ではなくても可
公証人が記述自筆・代筆
家庭裁判所の検認必要(法務局に預けない場合)不要必要
保管本人(法務局補完制度あり)公証役場本人
メリット・好きなタイミングで書ける
・手数料等は発生しない(法務局補完制度利用は3,900円の手数料あり)
・遺言書内容の正誤をチェックできる
・改ざんのリスクがない
・遺言書の内容を秘密にできる
・遺言書の存在を証明できる
デメリット・内容に不備があると遺言書自体が無効になる
・保管場所を伝えておかないと相続時にトラブルとなる
・各種手数料が発生する
・証人が必要
・手続きに時間がかかる
・手数料が発生する
・承認が必要
・手続きに時間がかかる
・内容チェックまでは実施できない

自筆証書遺言の書き方と準備物

書き方と準備物

ここからは、自筆証書遺言を含めた遺言書の詳しい書き方や準備物、把握すべき知識について解説します。

  • 「特定遺贈」と「包括遺贈」を理解する
  • 遺言できる項目を理解する
  • 必要な書類をそろえる
  • 財産目録を別途作成する
  • 相続人の範囲を明確にする

「特定遺贈」と「包括遺贈」を理解する

遺言書の作成に当たって、以下の「特定遺贈」「包括遺贈」についての理解が必要です。

特定遺贈

相続させる財産および相続人を特定して遺言書に記載することを指します。例えば、以下の表記になります。

「妻Aには足立区◯◯町の土地を、息子Bには××銀行の貯金を遺贈する」

包括遺贈

具体的な財産を特定せず、遺言書に分割割合のみを記載することを指します。例えば、以下の表記になります。

「財産の70%を妻Aに、息子Bと娘Cに15%ずつ遺贈する」

包括遺贈では割合のみを記載するため、簡単に作成できます。ただし、ざっくりした割合しか記載しない分、遺産分割協議で具体的な分配を決める際にトラブルとなる恐れがあります。

包括遺贈では遺言者の負債も相続するため、相続人同士がスムーズに話し合うためにも、できれば特定遺贈での記載が望ましいです。

遺言できる項目を理解する

遺言書では、財産の相続配分以外に、以下の項目を記載できます。

子の認知

遺言者に非嫡出子(婚姻関係がない異性との間に生まれた子)がいた場合、遺言書に自分の子どもとして認知することを記載することで、実子同様に相続権が発生。

未成年後見人の指定

相続人が未成年の場合、遺言書で未成年後見人を指定できる。

遺贈の意志とその詳細

遺贈では、法律で定められた相続人以外にも、希望があれば遺言者の財産を分配できる。

例えば「◯◯という児童養護施設に財産の△△割を寄付する」など。

相続人の権利はく奪およびその取消し

相続人の権利をはく奪できる制度として相続廃除制度と相続欠格制度の適用が可能。

法定相続分とは異なる相続分の指定

「法定相続分」とは、法律で定められた財産分配割合を指す。遺言書に、法定相続分とは異なる割合の財産分配を記載すると、遺言書の内容が優先される。ただし、すべての内容が優先されるわけではない。

5年以内の遺産分割の禁止

遺言書では、5年以内の遺産分割を禁止できる。遺産分割ではトラブルが発生しやすいため、相続人同士で話し合える期間として設けられている。

遺産分割方法の指定

「誰にどの財産を分割するのか?」という割合や方法を指定できる。分割方法のやり方の決定を第三者に委託することも可能。

特別受益の持ち戻し免除

生前に贈与を受けていた相続人がいる場合に、特別受益分を考慮して法定相続分を修正するが、それを免除することも記載できる。

遺言執行者の指定

スムーズな財産分割のために必要な手続き等を担当する人物を指定する。遺言執行者の指定は義務ではないが、相続人同士のトラブルを防ぐ点で有効。

相続人相互の担保責任

財産に不備(負債など)がある場合は、相続人が負担しなければならない。相続人が不備の責任を負うことを「担保責任」と呼ぶ。遺言書内では、担保責任が発生するケースに備え、責任を負う相続人の指定や負担割合を指定できる。

必要な書類を揃える

遺言書作成にあたって、財産を把握するために必要な書類を揃えましょう。

一言で「財産」といっても、現金・不動産・保険など、多くの種類があります。遺言書と一緒に揃えなければ具体的な財産総額が分からず、相続人同士でトラブルになりかねません。

財産のすべてを把握しているのは遺言者なので、事前に準備しましょう。

揃えるべき書類としては以下が挙げられます。

 ・不動産の登記簿(全部事項証明書)

 ・預貯金通帳、取引明細書

 ・証券会社やFX会社、仮想通貨交換所における取引資料

 ・ゴルフ会員権の証書

 ・生命保険証書

 ・絵画や骨董品など動産の明細書

 ・その他財産を特定できる書類

財産目録を別途作成する

「財産目録」とは、遺言者が保有する財産をまとめた書類を指します。現金・不動産・保険などに加えて、遺言者が抱える負債等も抜けや漏れなどなく記載しなければなりません。

財産目録の詳しい記載方法については、法務省の公式サイトで以下のように定められています。

遺言者が多数の財産について遺贈等をしようとする場合には、例えば、本文に「別紙財産目録1記載の財産をAに遺贈する」「別紙財産目録2記載の財産をBに相続させる」と記載し、別紙として財産目録1及び2を添付するのが簡便です。このように、遺贈等の目的となる財産が多数に及ぶ場合等に財産目録が作成されることになるものと考えられます。

参照元:法務省公式サイト

自筆証書遺言であっても、財産目録は代筆やパソコンで作成できます。ただし、自筆かどうかにかかわらず、署名・押印は必須です。

相続人の範囲を明確にする

遺言書には相続人の範囲を明確に記載しましょう。遺言書に「誰にどの財産を残すのか」を明確に記載しなければ、相続トラブルの原因になります。

具体的には「娘」「兄」などあいまいな表現を使わず名前を記載したうえで、各相続人に残す財産を明確に示すことが重要です。

自筆証書遺言の書き方と例文

自筆証書遺言の書き方と例文

具体的な自筆証書遺言の書き方と例文について解説します。

遺言書の文章については、以下の要点を押さえていれば、特に規定はありません。

  • 遺言者の署名・押印がある(ペンネーム可)
  • 遺言書の作成年月日が詳細に記載されている
  • 遺産内容を抜け漏れなく正確に記載している

縦書き・横書き等も自由です。

【自筆証書遺言の例文】

c519_自筆遺言書の例文

自筆証書遺言作成時の注意点

自筆遺言書作成時の注意点

自筆証書遺言作成時は以下の点に注意しましょう。

  • 必ず自筆しなければならない
  • 加除訂正・書式のルールを守る
  • あいまいな表現を避ける
  • 夫婦共同の遺言書は作成できない

必ず自筆しなければならない

自筆証書遺言は、必ず自筆しましょう。代筆やパソコンでの作成、音声・映像による記録は法的に無効です。

手書きする際、筆ペン・ボールペン・シャープペンシルなど文具に関する規定はありません。とはいえ、シャープペンシルや鉛筆では改ざんのリスクがあるため、使用は避けるべきです。遺言書が複数枚にわたる場合は「契印」をしましょう。契印とは、複数枚の書類がすべてひとまとまりであることを証明するための押印を指します。

加除訂正・書式のルールを守る

遺言書では、加除訂正や書式に定められたルールを守りましょう。具体的なルールとしては以下が挙げられます。

  • 誤字部分は二重線で消し、押印して書き直す
  • 脱字部分に加筆する場合、加筆部分に押印する
  • 内容を修正する場合、間違えた部分を二重線で消し、正しい文言を吹き出しで書き入れる。そのうえで、余白部分に「削除文字数」「加えた文字数」を記載し署名・押印する
  • 除外部分は二重線で消す
  • 記載する日付は「実際に作成した日付」を記載する

いずれかのルールが守られていない場合、遺言書の内容は無効となります。

修正が多く文章が読めないと「記載されていない」として扱われるため、誤字脱字が多ければ新しい用紙で作成した方が無難です。

あいまいな表現を避ける

遺言書ではあいまいな表現を避けましょう。あいまいな文言で記載してしまい、複数の意味に捉えられる表現になると、相続人同士のトラブルに発展しかねません。

相続人同士のトラブルを避けてスムーズに財産を分割するためにも、以下の点に気を配りながら記載しましょう。

  • 明確に「取得させる」「遺贈する」「相続させる」などの文言を記載する(「譲る」「渡す」などは使わない)
  • 相続人は名前で明確に指定する(「息子」などの表現は使わない)
  • 預貯金を相続する場合、銀行口座番号・暗証番号など必要な情報をすべて記載する
  • 不動産関係を相続する場合、土地の住所など必要な情報をすべて記載する

夫婦共同の遺言書は作成できない

夫婦共同で一通の遺言書を作成することは認められていません。共同作成できない旨は、民放975条に以下の文章で記載されています。

遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

参照元:法令検索

どうしても夫婦で遺言を残したい場合は用紙を分け、遺言内容をすべて同じにして2通の遺言書を作成しましょう。

家庭裁判所に検認してもらう必要がある

自筆証書遺言が発見された場合、家庭裁判所に検認の申し立てをする必要があります。「検認」とは、相続人に残された遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言書の内容を明確にして、その偽造等を防止するための手続きです。検認を実施するのは、遺言者が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所の検認が必要なのは「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」です。「公正証書遺言」は、公証人が内容の正確性を認めているため、検認は必要ありません。どのような立場の人間であっても、検認前に遺言書を開封できないため要注意です。万が一開封すると、50,000円以下の罰金が課される場合もあります。

検認の際は、以下の書類等が必要です。

  • 収入印紙(800円/通)
  • 連絡用郵便切手
  • 家事審判申立書
  • 遺言者の戸籍謄本(出生〜死亡まですべて)
  • 相続人全員分の戸籍謄本
  • (遺言者の子が死亡している場合)該当の子の戸籍謄本

他にも状況に応じて必要な書類は異なります。

法務局保管の自筆証書遺言について

法務局保管の自筆証書遺言について

自筆証書遺言は原則として遺言者自身で保管します。

しかし、紛失のリスクもあるため、不安な方は2020年7月に開始された「自筆証書遺言の保管制度」を利用しましょう。

制度を利用すると法務局が遺言書を保管してくれるため、紛失したり誤って破棄したりするリスクを回避できます。さらに、遺言書が改ざんされない環境下で保管できるので、家庭裁判所での検認も不要です。

以下の手数料は必要ですが、安心して遺言書を残したい方におすすめです。

手続き手数料
保管申請3,900円/通
モニターによる遺言書の閲覧請求1,400円/回
遺言書原本の閲覧請求1,700円/回
遺言書情報証明書の交付請求1,400円/通
遺言書保管事実証明書の交付請求800円/通
申請書等・撤回書等の閲覧の請求1,700円/件

検認を受ける際、遺言書が封筒に入っていなくても問題ありませんが、二重封筒に入れて保管しておくとより安全です。

なお、保管前に法務局がチェックするのは形式のみであり、内容の正確性まで確認できません。あくまで「安全に保管できる」という点に絞った制度であると理解しておきましょう。

おわりに

自筆証書遺言は、基本的にすべてを遺言者本人が作成する必要があります。特別な手続きが不要なため、遺言者の好きなタイミングで作成できる点は魅力的です。

しかし、万が一遺言内容に不備が発生すると、せっかく作成しても遺言内容自体が無効になる恐れもあります。遺言書の内容が無効になると相続人同士の話し合いが必要となり、お互いの意見が衝突することでトラブルにもなりかねません。

相続トラブルを回避するためにも、まずは自筆証書遺言の正しい書き方を把握し、必要に応じて公正証書遺言など公的な保証を得られる制度も利用しましょう。

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