配偶者や両親などが亡くなった場合、遺産相続が発生します。このとき、「遺産の相続手続きをご自身だけで行いたい」と希望する方もいるでしょう。しかし、遺産相続には煩雑な手続きが複数あるため、かなりの時間や手間がかかります。
この記事を読むと、どのような方が遺産相続の手続きをご自身でスムーズに行えるのかがわかるでしょう。また、遺産相続の大まかな流れや必要となる書類などについても触れているので、相続手続きについて知りたい方はぜひご覧ください。
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遺産相続手続きは自分だけでできるもの?
人が亡くなったときには、その方が持っていた財産(遺産)を引き継ぐために、遺産相続の手続きが必要となります。ここでは、専門家に頼らずにご自身で遺産相続の手続きができるのかについて詳しく見ていきましょう。
やろうと思えば専門家に依頼しなくてもできる
遺産相続の手続きには特別な資格はいらないため、相続人がご自身で行うことも可能です。しかし、ご自身で遺産相続の手続きを全て行うとなると、かなりの時間と労力がかかります。相続する財産がたくさんあったり相続人の数が多かったりするケースでは、専門家の力を借りた方がスムーズかもしれません。
遺産相続では、遺された財産の規模や関わる人の数をよく考えた上で、ご自身だけで手続きが行えるかどうか判断するようにしましょう。
こんなケースはOKかも!
ひとりで行うと大変なことも多い遺産相続ですが、比較的簡単に手続きを行える場合もあります。ここでは、相続の手続きをご自身だけでも行いやすいケースをご紹介します。
相続人が自分だけ・または少ない
相続人の数が少ないケースでは、比較的簡単に手続きを進めることができます。
相続人の数が多くなると、戸籍謄本をはじめ必要な書類を全員分揃える必要が出てきます。また、遺言がなかった場合には、遺産分割について、相続人全員と話し合わなくてはなりません。さらに相続する財産を分割する際には、相続人全員の合意が必要です。相続に関わる人数が多いと、その分たくさんの手間や時間がかかることになります。
相続人がご自身だけ、または少ない場合は、煩雑な作業や話し合いなどがいらないため、ご自身だけでも手続きがしやすいでしょう。
時間がたっぷりある
相続の手続きを行う場合、平日にある程度まとまった時間を取って進めなくてはなりません。
相続の手続きでは、役所に行って必要書類を揃えたり、金融機関で手続きをしたりする必要が出てきます。場合によっては、1日で手続きが終わらずに、何回も通わなくてはならないこともあるでしょう。そのため、平日に空いた時間がたっぷりある方でなければ手続きが難しいので注意が必要です。
相続する財産に不動産や有価証券がない
相続する財産が預貯金のみで不動産がない場合は、比較的手続きはスムーズです。預貯金のみであれば財産評価を行いやすいため、専門的な知識や面倒な計算などもそこまで必要はないからです。
遺産の中に土地や建物、株式などの有価証券が含まれていると、手続きの煩雑さから、ひとりでは解決しにくいケースが多々あります。また、亡くなった方が賃貸物件をいくつか所有している場合には、相続にもかなりの専門知識が必要となるでしょう。
相続する財産に不動産や有価証券がある方は、専門家の力を借りることをおすすめします。
自分で手続きするメリットとデメリット
遺産相続の手続きをご自身で行うメリットは、費用を安く抑えられることです。例えば、相続手続きのために戸籍や住民票の収集を代行してもらう場合、2〜3万円前後の費用がかかるといわれています。これをご自身で対応すれば、その分の費用を節約することができます。
しかし、ご自身で手続きを行う場合は、時間や手間がかかってしまう点がデメリットといえます。また、手続きに漏れがあった場合はトラブルにつながりやすいので注意が必要です。
相続財産に不動産が含まれると難しい!?
遺産相続に不動産が含まれると、ひとりで手続きを行うことは難しい場合があります。ここでは、専門家に依頼した方が無難なケースを見てみましょう。
相続人が多く、甥や姪などが相続人になるケース
相続人が配偶者や子どもだけではなく、兄弟姉妹もしくは甥や姪などに至る場合は、相続登記に必要な書類が膨大になります。
兄弟姉妹や甥・姪が相続に関わる場合、必要な書類は以下のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍
- 相続人の現在の戸籍
- 被相続人の親もしくは祖父母の死亡が記載された戸籍
配偶者や子どもが相続する場合は、「被相続人の親もしくは祖父母の死亡が記載された戸籍」は必要ありません。相続人が増えると、その分必要な書類が増えるため、ご自身だけで手続きすることが難しい場合もあるでしょう。
管轄の法務局が遠いケース
相続する不動産が遠方にある場合、管轄の法務局とのやり取りが難しい場合があります。遠くまでご自身で足を運べない場合は専門家に依頼する方がスムーズです。
被相続人が亡くなってしばらく経ったケース
遺産相続の手続きには期限付きのものがあるため、被相続人が亡くなって時間が経過している場合は急がなくてはなりません。
特に、不動産相続の手続きでは、相続開始を知った10ヵ月以内に相続税の申告と納付を行う必要があります。期限内に手続きができない場合、税務署から督促を受けて延滞税がかかるでしょう。期限までにスピーディに手続きしたい方は、専門家に依頼することがおすすめです。
参照元:国税庁
不動産の相続登記にかかる費用は?
不動産の相続登記を司法書士に依頼した場合、10万円前後の依頼報酬がかかるといわれています。その際、相続登記に必要な登録免許税や各種書類の発行費用が別途必要です。
代行業者に依頼する場合、相続登記にかかる書類の発行費用込みで定額サービスを提供しているケースもあります。
不動産の相続登記を自分で行う場合は?
不動産の相続登記は、複雑ではない場合であればご自身で行うことも可能です。手続きの流れについては以下のとおりです。
- 相続財産を特定する
- 被相続人の調査(戸籍や住民票の収集)を行う
- 法定相続人を確定し、必要な書類(戸籍や住民票)を揃える
- 遺言がない場合、遺産分割協議書を作成する
- 登記申請書を作成し、申請を行う
また、ご自身で相続登記をする場合は以下の書類を用意する必要があります。
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 法定相続人の戸籍謄本
- 法定相続人の住民票
- 法定相続人の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
- 収入印紙
手続きにはある程度の段階を踏まなくてはならず、必要書類も多いため、かなりの労力が必要となります。
一般的な遺産相続手続きの流れを知ろう
遺産相続には、不動産の相続登記以外にもさまざまな手続きが必要です。ここでは、一般的な遺産相続手続きの流れをご紹介します。
遺言書がないか確認
遺産相続の手続きを行う前には、遺言書の有無をしっかりと確認しましょう。もし遺言書が遺されている場合は、その内容に従って遺産相続を行います。
遺言書がある場合、勝手に開封はせず、家庭裁判所に検認手続きを申し立てましょう。検認手続きでは、相続人が家庭裁判所の定めた期日に出席して、遺言書の開封に立ち会い確認を行います。ただし、公正証書遺言の場合はそのまま相続人の調査に移行することが可能です。
法定相続人の特定
遺言書がない場合は、誰が相続人となるかを調査して特定する作業が必要です。相続人の調査は、以下の流れで行います。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本などを取得する
- 被相続人の戸籍謄本を確認して、法定相続人が誰であるかを特定する
- 法定相続人となる全員の戸籍謄本も取得する
相続人調査で必要な書類を揃えるためには、それぞれの本籍地がある市町村役場に申請する必要があります。被相続人や法定相続人が結婚や離婚、養子縁組などを繰り返している場合、複数の役所に申請しなくてはならないので注意しましょう。
相続財産の調査
法定相続人の特定と同様に、相続財産を調査することも重要になります。相続財産には以下のようなものがあります。
- 預貯金
- 株式や投資信託など
- 不動産(家や土地など)
- 自動車
- 貴金属類
また、上記以外に、住宅ローンや借金などの負債も相続財産に含まれるので注意が必要です。
遺産分割協議
法定相続人の確認と相続財産の把握が完了すれば、相続人全員で遺産の分け方について話し合いを行います。この話し合いのことを「遺産分割協議」と呼びます。遺産分割協議は、相続人全員が合意のもと出席することが必要です。ひとりでも欠けた場合、協議自体が無効となるので注意しなくてはなりません。無事に遺産分割協議が終わった後は、遺産分割協議書を作成して、具体的な内容を明記しておきます。
遺産分割協議で話がまとまらない場合は、家庭裁判所に申し立てて遺産分割調停を行うことが可能です。
相続税の申告
相続人は、相続の事実を知った日から10ヵ月以内に相続税を申告する必要があります。期限を過ぎると延滞税が発生するので、早めに相続税の対象となり得る相続財産について確認を行いましょう。遺産分割協議が完了していない場合でも、法定相続人が暫定的に相続税の申告と納付を行う必要があるため注意が必要です。
なお、相続税には基礎控除があるため、相続財産が基礎控除の範囲内であれば、相続税を申告する必要はありません。
参照元:国税庁
相続登記や名義の変更
遺言書や遺産分割協議によって相続する遺産が決定すれば、必要に応じて相続登記や名義の変更を行います。
相続登記とは、不動産を相続する際に、亡くなった方から相続人に登記を名義変更することを指します。相続登記の期限は特に設けられていませんが、そのまま放置して相続人が亡くなった場合、後々の処理に影響が及ぶので注意しましょう。
なお、2024年4月1日以降は不動産の相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請することが義務化されます。
相続放棄するなら期限は3ヵ月以内
故人の財産を受け継ぎたくない場合、相続人は3ヵ月以内であれば相続放棄の手続きをすることができます。
相続放棄とは、家庭裁判所で申述を行い、プラスとなる財産も借金やローンなどのマイナスの財産も、全て受け取らないことを指します。
また、故人の借金額が不明であったり、借金よりも財産が残る可能性があったりする場合には、限定承認という形で相続するケースもあります。
どちらのケースでも、相続の事実を知った日から3ヵ月以内の手続きが必要です。
参照元:最高裁判所
遺産相続手続きにはどんな書類が必要?
遺産相続手続きには、段階に応じてさまざまな書類が必要となります。ここでは、遺産相続で必要となる書類について見てみましょう。
遺産分割協議書もしくは遺言書
相続人が複数存在している場合、遺産分割協議書もしくは遺言書の存在が不可欠となります。
遺産分割協議書は、相続人同士が遺産の分け方を話し合い、内容について合意した結果が記載されたものです。もし有効な遺言書が遺されていた場合は、遺産分割協議を行わなくても、遺言書の内容に従って遺産を相続することとなります。
遺産分割協議書や遺言書は、不動産の相続登記や相続税の申告などの手続きにおいて、重要な役割を担います。また、遺産を巡るトラブルを避けるためにも、なくてはならないものです。
被相続人の戸籍謄本
遺産相続で法定相続人を明らかにするためには、被相続人の出生時から死亡時までを記載した「戸籍謄本」が必要です。さらに「除籍謄本」や「改正原戸籍謄本」といった被相続人の除票が求められる場合もあります。
被相続人の戸籍謄本は、以下のようなありとあらゆる場面で求められます。
- 相続人調査
- 相続登記
- 相続税の申告
- 相続放棄の申し立て
- 預貯金の名義変更
- 自動車の名義変更
なお、被相続人の戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場で取得できます。
残高証明書
遺産相続では、預貯金の額を把握するために、該当の金融機関が発行した「残高証明書」が必要になります。
残高証明書は、遺産分割協議の前や相続税を申告する前に手続きを行いましょう。
相続人全員の戸籍謄本
被相続人の戸籍謄本を確認して相続人が確定した場合、相続人全員の「戸籍謄本」も必要となります。ただし、被相続人の死亡が記載されている戸籍謄本に相続人の記載がある場合には、改めて戸籍謄本を取り直す必要はありません。
相続人全員の戸籍謄本は、以下のような場面で求められます。
- 相続人調査
- 相続登記
- 相続税の申告
- 相続放棄の申し立て
- 預貯金の名義変更
- 自動車の名義変更
戸籍謄本は、それぞれの本籍地から取り寄せる必要があります。
相続人全員の印鑑証明書
相続登記を行う際には、相続人全員の「印鑑証明書」が必要となります。なお、家や建物などの不動産をひとりの相続人だけが引き継ぐ場合でも、相続人全員の印鑑証明書が必要ですので注意しましょう。
印鑑証明書は以下のようなときに求められます。
- 相続登記
- 相続人が複数存在している遺産分割協議
- 相続税の申告
- 金融機関での払い戻し手続き
被相続人の除票
被相続人が亡くなり死亡届が提出されると、住民登録が抹消されます。除票とは、抹消された住民票のことです。
相続登記を行う際には、被相続人の情報を確認するために除票の提出も求められるケースがあります。除票は、被相続人が最後に居住していた市区町村役場で申請を行わなくてはなりません。
不動産にかかわる書類
不動産の相続登記においては、以下のようなさまざまな書類が必要となります。
- 登記事項証明書
- 登記申請書
- 固定資産評価証明書
登記簿謄本と呼ばれる「登記事項証明書」や相続登記に必要な「登記申請書」は法務局で申請を行います。登録免許税の計算を行う際に必要な「固定資産評価証明書」は、不動産の所在がある市区町村役場が申請先です。
おわりに
遺産相続の手続きには、数多くの手順や書類が必要となります。相続人の数や相続財産が少ない場合は、遺産相続の手続きをご自身で行うことも可能です。
しかし、相続人が複数いる場合や、相続財産に不動産がある場合などは、手続きが非常に困難になるケースもあります。そのような場合は、無理をせず専門家に相談してみることがおすすめです。遺産相続にお悩みの方は、ご自身のケースをよく考慮して、最適な選択をしてください。