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生前贈与とは?知っておくべき方法とメリットと注意点も解説

生前贈与とは?知っておくべき方法とメリットと注意点も解説
セゾンのくらし大研究 編集部

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人生100年時代といわれる現在ですが、それでもある程度の年齢を重ねると、自身の最期について考えを巡らす方もいることでしょう。そのような方は、人生の終わりに向けて生前から活動する、いわゆる「終活」を行う方も少なくありません。そして、その終活のひとつといわれているのが、「生前贈与」です。

生前贈与は、残された自身の子どもたち・孫への遺産相続をスムーズに行うための作業として、注目を集めています。このコラムは、生前贈与の特色やメリット、注意点を踏まえ、おすすめ方法について、解説していきますので参考にしてください。

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生前贈与ってなに?相続とは何が異なるのか

生前贈与とは、財産を所有している方が生きている間に、ご自身以外の方を指定して無償で財産を引き渡すことです。生前贈与では、財産を渡す方のことを「贈与者」、財産を受け取る方を「受贈者」といいます。

一見、生前贈与は、財産を他の方へ譲り渡すのだからそれは相続ではないのか、と思う方もいるでしょう。確かに、財産を引渡すという点に関しては生前贈与と相続は同じ目的ですが、この両者は厳密には異なります。その違いを以下にまとめてみました。

【生前贈与の場合】

  • 贈与者が生きている間に財産を受贈者に渡す
  • 場合によって贈与税という税金が発生する

【相続の場合】

  • 財産の所有者(相続人)が亡くなってから、被相続人が財産を受け取る
  • 相続税が発生する

生前贈与のメリットと注意点とは?

では、通常の相続と比べて、生前贈与にはどのようなメリットと注意点があるのでしょうか。次より生前贈与のメリットと注意点を解説します。

生前贈与のメリット

生前贈与のメリットは、次のとおりです。

親族以外にも財産を渡せる

通常、相続は、財産所有者の死後に法定相続人(血族と配偶者)の間で分割して相続される仕組みです。死後前に相続人が遺言書という形で具体的な被相続人を指定していても、法定相続人には最低限の相続ができる資格があります。法定相続人が相続を請求すれば、指定された人物がすべての財産を貰えないこともあるでしょう。

しかし、生前贈与は相続ではないので、法定相続人の権利は適用されません。贈与者が指定する受贈者は、血液関係がない方も指定することができます。そのため、生前贈与を活用することで、例えば、相続において法定相続人に該当しない孫にも財産を譲り渡すことができます。

相続の場合、残された遺族同士で遺産の取り合いというトラブルがありますが、生前贈与の場合は、そのようなトラブルの心配もありません。

節税対策になる

生前贈与は、財産所有者が生きている間に財産を譲り渡すので、亡くなった時点で、財産は、生前贈与する前よりも減っている状態です。そのため、遺産にかかる相続税を抑える効果もあります。また、生前贈与には贈与税という税金が発生しますが、ある一定額以内の贈与であれば贈与税は非課税対象になります。

財産がすぐに貰える

遺産相続の場合、相続人が亡くなってから初めて遺産を手にします。しかし、生前贈与だと贈与者が生きているうちに財産を贈与できるので、相続に比べて早く財産を譲り渡すことができます。受贈者側の立場からすると、その譲り受けた財産を早くから活用することができます。

生前贈与の注意点

生前贈与は決してメリットだけではありません。注意点もありますので、事前に確認しておきましょう。生前贈与に関する注意点は、以下のとおりです。

贈与者の資産が減ってしまう

相続の場合は相続人が亡くなってから他者に財産が移行するので、生きている間はお金の心配をする必要はありません。しかし、生前贈与の場合は、自らの財産を生きている間に他者に譲り渡すので、その時点で手持ちの財産が減ってしまいます。贈与する前に、今後、必要な資金について考えたうえで贈与する金額を決めるのが得策といえるでしょう。

節税が税務署に認められないケースがある

生前贈与において、その成立、節税を達成するには、いくつかの条件をクリアしないといけません。以下のような事例の場合、生前贈与は認められません。

  1. 贈与者と受贈者、両者が生前贈与を承諾していない
  2. 現金手渡し、へそくり、名義預金は、税務署は生前贈与として認めない
  3. 「定期贈与」としてみなされた場合、贈与税が課税される

生前贈与の贈与税はどのように計算するのか

生前贈与を受贈する際、どれくらい税金(贈与税)がかかるのでしょうか。贈与税は、1年間(1月1日〜12月31日まで)に生前贈与で受け取った財産から基礎控除額である110万円を引きます。そして、その金額に税率をかけて控除額を引いた金額が、その年の贈与税です。

その計算式をまとめてみましょう。

・1年間で受け取った生前贈与額−基礎控除額110万円=課税額(A)
・A×税率−控除額=その年の贈与税額

上記の計算式で出てくる税率および控除額は、その年の生前贈与の課税額の大小によって変化します。税率および控除の一覧は以下の表のとおりです。以下の表の2つのうち、1つ目は「一般贈与財産」、2つ目は「特例贈与財産」のときの税率と控除額になります。

一般贈与財産用(一般税率)

「特例贈与財産用」に該当しない際の計算に使用します。例えば、兄弟姉妹間で行う贈与、夫婦間で行う贈与、親から子どもへ行う贈与で、子どもが未成年者の場合などに使用します。

基礎控除後の課税価格200万円以下300万円以下400万円以下600万円以下1,000万円以下1,500万円以下3,000万円以下3,000万円超
税 率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円25万円65万円125万円175万円250万円400万円
一般贈与財産用(一般税率)

特例贈与財産用(特例税率)

この特例贈与財産は、祖父母や父母などの直系尊属から、その年の1月1日時点において20歳以上の者(子・孫など)への贈与税の計算に使用します。例えば、祖父から孫へ行う贈与、父から子へ行う贈与などに使用します。

基礎控除後の課税価格200万円以下400万円以下600万円以下1,000万円以下1,500万円以下3,000万円以下4,500万円以下4,500万円超
税 率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円30万円90万円190万円265万円415万円640万円
特例贈与財産用(特例税率)

国税庁:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)より

以上が贈与税の税率および控除額になりますが、相続税と比べた場合、税率に関しては贈与税の方が高くなっています。相続税の支払いを避けるために何も考えずに生前贈与をしてしまうと、多額の贈与税を取られる羽目になるかもしれないので、注意しましょう。

生前贈与をスムーズに進めるために押さえておきたいポイントとは?

メリットの多い生前贈与ですが、何も考えずにただ贈与をすると相続以上に多額の税金を支払うことになる可能性もあるでしょう。では、生前贈与をトラブルなく円滑に進めるにはどうすれば良いのか、その注意点・ポイントを次より解説します。

「定期贈与」を回避しよう!

生前贈与は、年間の贈与額が110万円以下の場合、贈与税の対象外となる仕組みです。これを利用して、毎年110万円以下の少ない金額で生前贈与を受け取れば、贈与税を支払う必要はありません。この贈与税を非課税にする方法は、暦年贈与と呼ばれています。

ただし、毎年、定額の生前贈与を行うと税務署に「定期贈与」と認定されて、生前贈与が認められないケースもあります。定期贈与とは、毎年一定額を贈与することがあらかじめ決まっている贈与をいいます。例えば、500万円を50万円ずつに分けて毎年贈与する取り決めを行い、生前贈与を行った場合は定期贈与となります。

定期贈与の場合は、毎年の贈与金額が110万円以下であっても、定期贈与の取り決めを行った年に「定期金に関する権利(10年間に渡り毎年50万円ずつの給付を受ける権利)」の贈与を受けたとして、贈与額の合計額に対して贈与税を申告する必要が出てきます。

生前贈与を定期贈与とみなされないために、必ず贈与するたびに贈与契約書を締結するようにしましょう。また、毎年違う時期に、違う金額を贈与するなども取り入れることで定期贈与とみなされないよう工夫を加えるのも良いでしょう。

生前贈与の資産が不動産だった場合は、要注意!

生前贈与の財産が不動産だった場合、他の財産の贈与より手間がかかります。不動産は他の財産よりも多額なので最大2,500万円が控除される相続時精算課税を選択する方が多いです。しかしその場合、暦年贈与を選択できません。

また、受贈者は不動産の名義変更の手続き、登録免許税・不動産取得税の支払義務などが発生しますし、不動産の保有期間中は、管理の手間も加わります。そして、不動産の資産価値は一定ではなく、見直しされます。贈与したあとに不動産の資産価値が下落する可能性も十分にあるでしょう。

​受贈者が、以上のような手間がかかることを十分に理解したうえで不動産を贈与すれば問題はありませんが、そうでない場合は生前贈与前に売却するなどして資金化する方が良いでしょう。

生前贈与の証明書、専用口座を用意しておこう!

生前贈与は、贈与者と受贈者の合意によって成立しますが、口頭で行って物理的な証拠が残っていない場合、トラブルの原因になる可能性も決して少なくありません。そのため、事前に生前贈与が成立した証拠である贈与契約書を作成しておくと良いでしょう。

贈与契約書は、書面上に贈与者と受贈者の合意が証明されていれば良く、特に決まった書き方はありません。必須事項としては、お互いの氏名などの記載と捺印、公証役場での確定日の日付を取得するのが良いでしょう。

贈与契約書は、生前贈与の証拠になるだけでなく、定期贈与の回避にも役立ちます。数年に渡って生前贈与をすると定期贈与と税務署に判断される恐れがありますが、毎年、締結済みの贈与契約書を提示すれば、あくまで定期贈与でない証拠となり、税務署の疑いを回避できます。

また、実際に生前贈与をする際「名義預金」にならないように注意することも大切です。名義預金とは、受贈者名義の預金口座を、贈与者が管理している預金を指します。この状態だと税務署から生前贈与ではないと疑われる可能性も高いので、受贈者自身で預金口座を管理しましょう。

長いスパンで余裕を持って行う

生前贈与で動く財産が少額であれば問題ないですが、先述した不動産に関すること、節税対策など、いくつものクリアしなければいけない問題があるので、すぐにすべてのことを完了させようせず、焦らずにゆっくりと一つひとつの問題を確実にこなしていくことが大切です。

おわりに

以上、生前贈与を検討するうえで必要なポイントについて解説してきました。どうしても自分ひとりだと難しいという方、お金に関する悩みがある方は、セゾンマネースクールの利用をおすすめします。クレディセゾンが認定するファイナンシャルプランナーたちは「お金の専門家」です。豊富な知識と丁寧でわかりやすい説明で、資産管理等に関する悩みを解決してくれます。

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監修者コメント

生前贈与は多額のお金に関わることなので、専門知識がなくてどうやれば良いのか分からないなどと、悩んでいる方もいるかもしれません。このコラムを参考にして、確実に焦らず生前贈与の注意点などを覚えてくれれば幸いです。

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