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共有不動産はトラブルの元。その解消方法は?

北岡 修一(東京メトロポリタン税理法人グループ代表/税理士)

監修者
北岡 修一(東京メトロポリタン税理法人グループ代表/税理士)

西新宿にオフィスを構え、法人顧問の他、相続・相続税対策、事業承継、不動産に関する税務等に力を入れている。グループの不動産コンサル会社と連携し、具体的な対策から税務まで一貫したサービスを行っている。

不動産の共有はどんなトラブルが起こるのか?

不動産を共有で持っているとトラブルが起こることが多いですね。夫婦や同居している親子の場合はそう問題はないのでしょうが、兄弟で持っていたり、親戚同士で持っていたりすると、後々大きなトラブルになってしまう可能性があります。

特に共有者のひとりが住んでいる不動産の場合は、トラブルによって住み続けることができなくなってしまう可能性もありますので、深刻な問題になりかねません。

では、なぜそのようなトラブルに発展してしまうのでしょうか。それは、不動産の管理や処分において共有者の同意が必要になってくるためです。そこで意見が合わないとトラブルに発展してしまう可能性があります。

たとえば賃貸している不動産などは、不動産管理会社の選定や諸費用の負担、修繕などの実施において意見が食い違ってしまうことがあります。賃貸そのものの可否についても意見が別れるかも知れません。また、固定資産税などは代表者に納税通知書が送られてきますので、代表者が立て替えて払っていたとしても、その負担を誰がするのかで、もめてしまうこともあります。

特に不動産の処分については、その不動産で恩恵を受けている方は売りたくないし、一方で、持っているだけで何の恩恵もない方は早く処分して現金化したいと思っていることでしょう。そこで大きなトラブルになってしまう事例が多いですね。

さらには共有者のひとりに相続が起きれば、その相続人数人が共有持分の相続権を持つことになり、どんどん関係が複雑になっていきます。このように不動産の共有は、様々なトラブルの原因になりますので、そうなる前に早目に解消しておくことをおすすめします。

共有を解消する方法

不動産の共有を解消するには、次のような方法が考えられます。

(1)共有者のひとりが買い取る(代償分割)

 その不動産を使っている、あるいはどうしても欲しい方が、共有者全員の合意により、他の共有者の持分を買い取ることができれば、最も良いのかも知れません。ただし、そのための資金が必要であり、それを用意できなければこの方法を取ることはできません。

(2)共有物の分割をする(現物分割)

 各共有者の持分に応じて共有の不動産を分割し、各共有者がその分割された不動産を取得する方法です。たとえば、1筆の土地を共有者2人で分割する場合は、土地を2筆に分筆して、それぞれを単独名義にするような方法です。

(3)共有者が持分を放棄する(贈与)

 たとえば、その不動産に居住していない共有者が、自身の持分を放棄し、居住している共有者のものとする方法です。これは贈与ということになります。

(4)第三者に売却する(換価分割)

 共有者全員で合意して、その共有不動産を第三者に売却し、売却代金から譲渡にかかった費用を控除した手取り金額を、持分に応じて分割する方法です。

(5)他の不動産と交換する(交換)

 共有者が自分の持つ他の不動産と、他の共有者の持分を交換して、共有不動産を単独名義にしていく方法です。他に交換できる不動産がある場合に考えられる方法です。価格に差がある場合には、交換差金の受払いをすることにより交換を成立させることができます。

それぞれの場合の税金はどうなる?

上記5つの解消方法を行った場合、税金はどうなるのか、下記にまとめてみました。

(1)共有者のひとりが買い取った場合

この場合は、売った側の共有者に譲渡所得税がかかります。親族だからと安く売った場合には、買った側に贈与税がかかる可能性がありますので、売却価格には注意しておく必要があります。

また、不動産を相続などで取得している場合は、購入価格(取得費)がいくらだかわからない場合があります。その場合は、取得費は売却価格の5%とする取り扱いがあります。すなわち95%は売却益になるということであり、多額の税金がかかる可能性もありますので要注意です。

 

(2)共有物の分割をした場合

共有物を分割した場合、税務上は原則として、譲渡があったものと考えます。例えば、兄弟2人で100坪の土地を1/2ずつ共有していた場合に、その土地を分筆して各50坪の土地ABにし、A土地を兄が、B土地を弟が単独所有したとします。

この行為は、兄はB土地の持分1/2を弟に譲渡し、その代わりA土地の持分1/2を取得したともいえます。弟はその逆ですね。すなわち、それぞれ譲渡をし合ったということです。

では、課税されるのかというと必ずしもそうではありません。共有のひとつの土地について、その持分に応ずる現物分割があったときには、その分割による土地の譲渡はなかったものとして取り扱うことになっているからです。

ここで重要なのは、持分に応ずる現物分割ということで、上記の例でいえばA土地とB土地の価値が同じである必要があります。同じ地積であっても、道路付けの状況などでどちらかの土地が高ければ、贈与税がかかってくる恐れがありますので、分割方法に十分注意する必要があります。

なお、共有物の分割の場合、登録免許税は固定資産税評価額の0.4%(売買や贈与は2.0%)に軽減され、不動産取得税は原則として非課税になります。

 

(3)共有者が持分を放棄した場合

他の共有者が共有持分を放棄した場合は、残った共有者にその持分を贈与したことになります。したがって、この場合には、贈与を受けた共有者に贈与税がかかってきます。

不動産の贈与は、相続税評価額で贈与税が計算されます。土地の場合は市街化地域では路線価評価となってきます。建物の評価は固定資産税評価額がベースとなります。いずれにせよ不動産の贈与は、評価額が高額になり、さらに高い贈与税率がかかってきますので、安易な放棄(贈与)を受けることは危険です。

なお、贈与税には年間110万円の非課税枠があります。その非課税枠を使って、毎年、持分の一部を少しずつ贈与していくという方法も考えられます。

 

(4)第三者に売却した場合

第三者に売却した場合は、通常の譲渡所得税がかかってきます。なお、共有者のうちに売却した不動産に居住していた方は、居住用財産の3,000万円特別控除の適用を受けることができます。適用を受けることができる方は、建物を所有している必要があり、その方が土地を所有している場合は土地の譲渡益からも控除することができます。また、要件を満たすことにより、居住用財産の買換え特例を選択することも可能です。

なお、居住はしているが土地しか所有していない方は、次の要件を満たすことにより、建物所有者が控除し切れなかった3,000万円特別控除の残額を、譲渡益から控除することができます。

・自宅の土地と建物を同時に売却すること

・土地と建物の所有者が、親族であり生計一であること

・土地と建物の所有者が、その建物に一緒に住んでいること

 

(5)他の不動産と交換した場合

交換をした場合は、共有物の分割と同様に、交換して引き渡した不動産を譲渡したものとして取り扱われます。この場合は、共有物の分割と違って、共有するひとつの土地についての分割ではないため、譲渡がなかったものとはされません。

したがって、原則として譲渡所得税の対象となってきます。ただし、所得税法58条の交換特例の要件を満たす場合は、譲渡がなかったものとされます。その要件は、以下のとおりです。

1.交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも固定資産であること

  (相手が事業者で販売用の不動産である場合などが対象外)

2.交換により譲渡する資産および取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること

3.交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること

4.交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと

5.交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用するこ と(宅地と宅地であれば同一用途)

6.交換により譲渡する資産の時価と、取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうち、いずれか高い方の価額の20%以内であること

以上、これらの方法により、トラブルの元になる不動産の共有は、是非、トラブルが起きる前に解消しておきたいですね。

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