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子どもや孫の生活費や教育費を支援すると贈与税の対象になるか?

子どもや孫の生活費や教育費を支援すると贈与税の対象になるか?
北岡 修一(東京メトロポリタン税理法人グループ代表/税理士)

監修者
北岡 修一(東京メトロポリタン税理法人グループ代表/税理士)

西新宿にオフィスを構え、法人顧問の他、相続・相続税対策、事業承継、不動産に関する税務等に力を入れている。グループの不動産コンサル会社と連携し、具体的な対策から税務まで一貫したサービスを行っている。

子どもが就職し、家から独立してひとり住まいをするようになり、そして結婚し家庭を持つようになる…。子どもの成長を見ていくのは楽しい限りですが、同時にしっかりやっていけるのか、という心配も頭をもたげてきますね。

とくに子どもが生まれれば、夫婦2人が今までのようにフルに働けなくなったり、保育園の負担や養育費などの負担がかさんでいきます。家も手狭になり、より広い住まいへの引っ越し、場合によってはマイホームの購入なども考えているかも知れません。

そんな時、親としては頼られれば多少は支援しようと思うのではないでしょうか。かわいい孫のことを思えば、なおさらです(笑)。

さて、それが資金的な支援だった場合、すでに独立している子どもに資金支援するのは、贈与になってしまうのではないかという心配もあります。今回はこの点について、考えていきたいと思います。

扶養義務者から生活費や教育費の贈与を受けた場合

国税庁のQ&Aによると、扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるために贈与を受けた財産のうち、「通常必要と認められるもの」については、贈与税の課税対象とはならない旨が記載されています。

この扶養義務者とは、次の者をいいます。

  1. 配偶者
  2. 直系血族及び兄弟姉妹
  3. 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
  4. 三親等内の親族で生計を一にする者

上記のうち、2の直系血族とは、祖父母-父母-子-孫 というような直接血のつながりのある親族です。したがって、親から子あるいは祖父母から孫へ、生活費の支援をしたとしても、贈与税の課税対象にはならない、ということになります。

通常必要と認められるものとは?

ただし、上記文章にあるように「通常必要と認められるもの」については、という条件がついています。すなわち、「通常必要と認められるもの」に該当しなければ、贈与税の課税対象になってしまう、ということです。では、「通常必要と認められるもの」とは、どのようなものでしょうか?これも国税庁のQ&Aに次のように書かれています。

「通常必要と認められるもの」とは、贈与を受けた者(被扶養者)の需要と贈与をした者(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して、社会通念上適当と認められる範囲の財産をいいます。

簡単にいってしまえば、両者の収入や財産その他の状況を勘案して、常識の範囲内の金額であればOK、ということです。したがって、子どもが家庭を持っていて収入があったとしても、ギリギリでやっているような状況であれば、親が生活費等の支援をしても贈与税が課されることはないでしょう。

ただし、子どもに充分過ぎる収入があって、親から支援してもらったお金が蓄財に回っているような状況であれば、贈与税の課税対象になる可能性もあると思います。

生活費や教育費の範囲とは?

生活費や教育費の範囲とは?

では、生活費や教育費とは、どこまでの範囲をいうのでしょうか。これについても、国税庁のQ&Aに次のように書かれています。

「生活費」とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除きます。)をいいます。また、治療費や養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害賠償金により補てんされる部分の金額を除きます。)を含みます。

「教育費」とは、子どもや孫(被扶養者)の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費、通学のための交通費、学級費、修学旅行参加費等をいい、義務教育に係る費用に限りません。なお、入学祝等の金品は、常識の範囲内の金額のものであれば、贈与税の課税対象となることはありません。

生活費や教育費を一括して贈与した場合は?

贈与税の課税対象とならない生活費や教育費は、生活費や教育費として必要な都度、直接これらに充てるために贈与をした財産に限られます。したがって、数年間分の生活費又は教育費を一括して贈与を行い、その財産がこれらの用に充てられずに、次のような状況になっている場合には、その生活費や教育費に充てられなかった部分については、贈与税の課税対象となります。

  • 預貯金となっている場合
  • 証券投資や不動産の購入費用に充てられた場合 他

生活費や教育費の支援をする場合は、毎月の生活費は毎月振り込む、学校の授業料などの教育費は必要な都度振り込むことが重要となってきます。せっかくの支援が税金に回ってしまわないよう、是非、注意してください。

贈与税の基礎控除とは別枠

以上、見てきた扶養義務者からの生活費や教育費の贈与は、そもそも贈与税の対象となる贈与にはならないということであり、贈与税の基礎控除(年間110万円)とは別枠になります。したがって、子や孫の資力なども考慮したうえで、親が常識の範囲内で生活費や教育費の支援をしてあげることは、親の相続税対策にもなり得る、ということですね。

相続税対策が必要な場合には、別途110万円の贈与税の基礎控除枠を使って、子や孫に贈与をしていくことも考えられます。

教育資金の一括贈与非課税制度

さて、次に政策的に設けられている贈与税の非課税制度を2つ紹介します。

1つは、教育資金の一括贈与非課税制度です。4において、教育費を一括贈与した場合は、贈与税が課税されるという話をしました。この非課税制度は、教育資金を一括贈与した場合でも、一定要件を満たし所定の手続きをすれば、贈与税が非課税になるという制度です。この制度の概要を表にまとめましたので、これをご覧ください。

【教育資金の一括贈与非課税度の概要

項 目内     容
受贈者の年齢、所得30歳未満、贈与年の前年の所得が1,000万円以下
贈与者直系尊属(曾祖父母、祖父母、父母等)
非課税限度額受贈者1人につき1,500万円まで
贈与できる期間平成25年4月1日~令和5年3月31日
贈与方法金融機関に孫等の名義で口座を作って入金
届出書の提出「教育資金非課税申告書」を金融機関を経由して税務署へ提出
払い出し時の確認教育資金の支払いをしたことを証する書類を金融機関に提出
終了時①受贈者が30歳に達した場合:残額があれば贈与税が課税
②贈与者が死亡した場合:残額があれば相続税の対象となる
ただし、受贈者が次の場合には相続税が課税されない
・23歳未満である場合
・学校等に在学している場合
・教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受けている場合

住宅取得等資金贈与の非課税制度

もう1つの非課税制度は、住宅取得等資金贈与の非課税制度です。これは、子や孫が住宅を取得等(購入や建築、リフォーム)する際に、親や祖父母が資金支援する場合の贈与税の非課税制度です。一定要件を満たすことにより、一定金額までの贈与が非課税となります。要件等は以下の表のとおりです。

【受贈者の主な要件】

項 目内     容
続柄贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子や孫)であること
年齢18歳以上であること(令和4年3月31日以前は20歳以上)
所得要件その年の合計所得金額が2,000万円以下であること(取得する家屋が40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下)
取得要件贈与年の翌年3月15日までに贈与資金の全額を充てて住宅を取得する
居住要件贈与年の翌年3月15日までに居住、または翌年12月31日までに居住

【取得する住宅の主な要件】

項 目内     容
床面積40㎡以上240㎡以下(区分所有:専有部分、1棟所有:全体で)
自己の居住部分上記の1/2以上が受贈者の居住用であること
建築時期等 (いずれか)・新築
・中古(昭和57年1月1日以後に建築されたもの)
・中古(一定の「耐震基準適合証明書」等で証明されたもの) 他
増改築等の場合・自己が所有し、かつ居住している家屋に対して行われたもの
・一定の工事に該当することについて「確認済証の写し」、「検査済証の写し」、「増改築等工事証明書」などの書類により証明されたもの
・増改築等の工事費用が100万円以上であること 等

【非課税金額】

贈与の時期省エネ等住宅それ以外の住宅
令和4年1月1日~令和5年12月31日1,000万円500万円

※贈与税の基礎控除額110万円を加算した金額まで、非課税で贈与できます。

※相続時精算課税を選択する場合は、別途2,500万円までの非課税枠があります。

No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

以上の非課税制度なども活用しながら、また、自身の相続対策等も考えながら、子や孫の生活費、教育費の支援を検討してみてはいかがでしょうか。

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