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湯灌の意味や目的は?手順やマナーについても詳しく紹介

湯灌の意味や目的は?手順やマナーについても詳しく紹介
セゾンのくらし大研究 編集部

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「湯灌(ゆかん)」とは、葬送の場で行われる儀式のひとつです。ここではこの湯灌を取りあげて、「そもそも湯灌とはどんなものか」「湯灌を行う場所・湯灌を行う人・湯灌に立ち会う人」「湯灌を行う手順」「湯灌独特の風習」「湯灌のマナー」「湯灌の費用」について解説していきます。

この記事を読んでわかること

「湯灌」とは、故人を洗い清め、あの世へと旅立つための旅支度をさせるために行われるものです。絶対にしなければならないものではありませんが、古くから受け継がれている儀式でもあります。ここでは、湯灌と死化粧・エンバーミングとの違いを解説しながら、湯灌を行う場所や湯灌を行う人、湯灌に立ち会う人などについて解説していきます。また、湯灌の手順や、湯灌のときに見られる風習、湯灌に立ち会うときのマナーや湯灌の費用について解説していきます。

お葬式サポート
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湯灌とはどんな儀式?

湯灌とはどんな儀式?

ここでは、まずは「湯灌とは何か」「湯灌と、死化粧やエンバーミングとの違い」について解説していきます。

介護施設でもこれを行うことはありますが、今回は「葬儀の場での湯灌」のみ解説します。

湯灌とは?湯灌の意味合い

「湯灌」とは、故人の体を洗い清めるために行われる儀式です。シャワーなどを使って行うものであり、専用の設備を必要とします。かつては家族の手によって行われていましたが、現在は「湯灌師(ゆかんし)」と呼ばれる専門のスタッフが担当することが一般的です。

湯灌は必ず行わなければならないものではなく、むしろ現在では湯灌を行う家庭は少数派です。葬儀会社によっても対応の可否が変わってくるので、希望する場合は葬儀会社にできるかどうかを確認した方が良いでしょう。

なお湯灌は、単純に「体の汚れを落とすためのもの」というよりも、「俗世での汚れや苦しみを取り除き、あの世に旅立つためのもの」という宗教的な意味を多分に含む行為です。葬送儀礼の多くは故人を大切に思い、家族が心に整理をつけるために行うものであると考えられますが、湯灌もそのような葬送儀礼のうちのひとつだといえます。

死化粧やエンバーミングとの違いは?

湯灌はしばしば「死化粧」「エンバーミング」と混同されますが、これらとはまったく異なったものです。

死化粧とは、故人があの世に旅立つための身なりを整えたり化粧を施したりすることをいいます。そのため、シャワーなどは使いません。

また「エンバーミング」は故人のご遺体を長く保つために行われる防腐処理であり、特別な薬剤を使って行われるものです。対して湯灌は、このような薬剤は使用しません。

湯灌の方法

湯灌の方法

ここからは、湯灌を行う場所や行う人、湯灌の立ち合いについて考えていきましょう。

湯灌を行う場所

湯灌を行う場所としてよく選ばれているのは、葬儀ホールや自宅です。

湯灌には専用の設備が必要となるため、自宅で行う場合は湯灌用の設備を搭載した車が自宅にやってくることになります。

自宅で湯灌を行う場合、使用した水やお湯はその車が回収する形態がよく取られています。

湯灌はいつ・誰が行う?

すでに述べたとおり、湯灌は湯灌師によって行われます。また葬儀会社のスタッフが行うこともあります。

昔とは異なり家族が主体となって湯灌を行うケースはまずありませんが、希望すれば多少のお手伝いが可能になることはあります。自身の手で故人の体を洗い清めることを希望する場合は、葬儀会社のスタッフに相談してみてください。

湯灌の立ち合いはどうすればいい?

「湯灌に立ち会うことができるかどうか」「湯灌に立ち会う人はどのような立場の人か」について見ていきましょう。

家族と親族が湯灌と納棺に立ち会う

同居家族はもちろん、故人と近い関係性にあった親族が湯灌と納棺に立ち会うというスタイルは、それほど珍しいものではありません。しかし葬儀のときに一般参列者として参列することになる立場の人は、基本的には湯灌には立ち会いません。

湯灌は納棺以上にプライベートなものであるうえ、故人の体が少なからず露出するものですから、立ち会えるのは少人数であるということを押さえておきましょう。

家族は湯灌から、親族は納棺から立ち会う

湯灌に立ち会うのは家族だけで、親族も湯灌には立ち会わないとする家庭もあります。なお自身が親族の立場の場合で、喪主から「湯灌は同居家族のみで行いたい」と希望された場合はそれに従います。

このようなケースでは、親族は納棺から立ち会うことが多いといえます。

立ち合いなしで行う

「湯灌はしてほしいが、立ち会うのは心理的に厳しい」などの事情がある場合は、家族・親族の立ち合いなしで湯灌を終えることもできます。

なおご遺体の状態によっては、湯灌を速やかに終わらせて、着替えなどをした状態で安置することもあります。

湯灌の流れ

湯灌の流れ

実際に湯灌を行うときは、下記の流れを取ります。ただしこのやり方はあくまで一般的なもので、実際の湯灌の流れは事業者によって多少の違いが見られます。

湯船の準備を行う

湯灌に使用するための湯船の準備を行います。湯灌ができることを謳っている葬儀ホールなどの場合は専用の湯船がすでにしつらえられていますが、自宅で行う場合は専用の湯船を持ち込みます。原則として、自宅で使っている湯船をそのまま使うことはしません。

ご遺体の硬直をほぐす

人は息を引き取ると、体が凝り固まる死後硬直が起きます。この死後硬直を解き、柔らかくするための処置が施されます。

浴槽へ搬送

湯船にご遺体をお連れします。このときに、湯灌師あるいは葬儀会社のスタッフから、改めて湯灌の意味や説明が行われることが多いといえます。

湯船を使う

湯船を使って故人の体を専門のスタッフが清めていきます。なお家族が手伝う場合は、足元から胸元にかけてお湯をかけていくというかたちをとります。

なお湯灌のときに使われるお湯の温度は通常のものよりも低く、40度以下に設定されるのが一般的です。

顔のお手入れ・全身のお清め

湯船に加えてシャワーを使って、全身をきれいに洗い流していきます。また髪の毛を洗ったり、ひげを剃ったり、顔を洗ったりといった手順も踏みます。

着付け・化粧

洗い清めが終わったらタオルで拭き上げ、着付けと化粧を行います。かつては死に装束といえば宗教・宗派によって決められたものを着用するのが一般的でしたが、現在は故人やご家族が希望する衣服を着付けられるようになっています。

また、この段階で死に化粧も行われ、髪の毛もきれいにとかされます。湯灌を行う事業者によっては、アロマなどを用いることもあります。

湯灌開始から湯灌が終わるまでの時間は、1時間~1時間半程度です。

湯灌の「逆さ水」とは?

湯灌の「逆さ水」とは?

湯灌のときの独自の風習として、「逆さ水」があります。

これは、水にお湯を足していき、適温を作るという手法です。

一般的にちょうど良い温度のお湯を作るときは、お湯に水を足して調整します。しかし湯灌の場合は逆の手順で行うわけです。これは葬儀の場に見られる「逆さ事」のうちのひとつであり、通常と逆の方法を取ることで、彼岸と此岸を区別する、此岸にある人が、彼岸に引っ張られないようにするという意味を持ちます。

なおここでは「逆さ水」を取り上げていますが、屏風を逆に立てる「逆さ屏風」や、着物の衿を右前ではなく左前にするなどの行為も「逆さ事」のうちのひとつです。

もっとも、ご家族の立場でこの逆さ水を作らなければならなくなることはありません。実際の湯灌に際しては、スタッフがこれを行います。ただ知識としては知っておきたいものです。

湯灌のマナー

ここからは、湯灌に立ち会うときのマナーについて解説していきます。

立ち会うときの服装

湯灌に立ち会うときの服装は、準喪服、正喪服ではなく平服です。ただし、湯灌の後にすぐ納棺して、通夜に入るという場合は通夜に準じた格好で問題ありません。

葬儀の場における平服は準喪服をカジュアルにした濃紺やグレー、黒のスーツや女性ならアンサンブルなどの略喪服を指し、通夜などで着用します。湯灌に立ち会う際の男性・女性・子ども、それぞれの装いを解説します。

男性

黒色やグレーなどのスーツを着用します。略喪服の扱いとなるので、目立ちにくいストライプの柄などが入ったものも許容されますが、無地のものを選ぶ方が無難です。

ワイシャツは白の無地のものを選び、ネクタイは暗い色合いで柄の入っていないものを選びます。

なお男性・女性共通の事項として、鞄と靴は黒色で、金具や光沢の入っているものを避ける、アクセサリーは原則として用いないが、真珠を使ったシンプルなカフスなどや結婚指輪は許容されるというルールがあります。

女性

ワンピースやセットアップ、アンサンブルなどを着用します。色は、男性と同じく、黒やグレー、紺色のものが望ましいでしょう。なお、葬送の場では半そでは避けます。ストッキングは30デニールまでの黒色がもっとも無難ですが、略喪服の場合はベージュのものでも良いとされます。

化粧は控えめにします。真珠を使ったネックレスなどを着けても構いませんが、その場合は必ず一連で、かつ長さも長すぎないものを選びましょう。

子ども

子どもは制服を着用します。制服は学齢期の子どもの正式な礼服であるため、通夜も、葬儀・告別式もこの装いで問題ありません。 制服がない学校に通っている子どもなら、制服によく似たかたちの服を選べば問題ありません。  

学齢期前の子どもは、白いシャツやブラウスに黒やグレー、紺色などのズボンやスカート、ワンピースに同系色もジャケットやカーディガンなどをあわせるのが一般的です。乳児も参列するときは、ベージュなどの淡い色で無地の服であれば良いでしょう。

入退室のマナー

湯灌は、喪主が招いた人で行います。喪主の立場にある場合、親族や友人から湯灌に立ち会いたい旨の打診があっても、それを断っても失礼にはならない点は覚えておきましょう。

なお湯灌はかなり時間のかかるものですが、途中で入退室してもマナー違反とはされません。

湯灌の費用、相場は? 

湯灌のマナー

最後に、湯灌にかかる費用相場について解説します。

湯灌はオプション扱いであり、通常の葬儀プランにはこれは含まれていません。そのため、追加で費用を払うことになります。

湯灌にかかる費用は、おおよそ80,000円~100,000円程度が相場です。ただし湯灌を行う会社によって金額が異なるため、事前に見積もりを取っておくと安心です。

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おわりに 

湯灌は、単純に故人の体を清潔に保つことだけを目的にするのではなく、「現世での汚れや悲しみを洗い落として、安らかに旅立ってほしい」という願いの元で生まれた風習です。現在でこそ行う家庭が少なくなった風習ではありますが、そこに込められている祈りや願いは、昔と変わっていません。

現在では湯灌は専門の事業者によって執り行われるものとなりました。これを希望する場合は、まずは葬儀会社のスタッフに打診してみるとよいでしょう。

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