土地を売りたいと考えているものの、何から手をつけていいのかわからない。このように思っている方は多いのではないでしょうか。初めて土地を売却する際は、最初に全体の流れを把握すると、不安なくスムーズに手続きを進められます。本記事では、土地売却の手順だけでなく、売却時に必要となる費用や税金についても紹介します。多くの方の関心事と思われる高く売るコツも解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事を読んでわかること
土地を売る手順は「売り出し前」「売り出し中」「売り出し後」の3段階に分けて考えることで、ポイントを漏れなく押さえることができます。売却後に課せられる税金では、利益に対して課税される譲渡所得税が大きな負担となる場合があります。特例を活用することで納税額を抑えられる可能性もありますので、ぜひ確認してください。土地をできるだけ高く売るには、1~3月など不動産が売れやすい時期を選ぶこと、土地の売却を得意とする不動産会社を選ぶことなどが重要です。自ら相場を把握し、物件をきれいに保ち、アピールすべき特徴を整理しておくことなども、希望する額の売却を実現するのに大切です。
土地を売る流れを把握しておこう
初めて土地を売却する場合は、まず土地を売る流れを把握することが大切です。土地売却は個人間でも可能ですが、ノウハウと実績がある不動産会社に仲介してもらう方がスムーズに進み、トラブルの心配も軽減されます。
ここでは、不動産会社に売却を依頼することを前提に、「売り出し前」「売り出し中」「売り出し後」の三つのタイミングに分けて、個人が土地売買を行う際の流れを解説します。
売り出し前
土地を売り出す前の流れは次のとおりです。
- 希望条件を整理
- 物件価格を査定
- 売り出し価格を決定
- 媒介契約を締結
売り出し前には、自分で売却価格や引き渡し時期など希望条件を整理した上で、不動産会社に査定を依頼します。複数社の意見を参考に適正な価格を把握したら、売り出し価格を決定しましょう。
その上で、実際に売り出す際に販売活動をしてもらう不動産会社と媒介契約を結びます。
媒介契約は、買主探しや売買契約の調整など、取引の仲介を不動産会社に依頼する契約です。媒介契約には、複数の不動産会社に仲介を依頼できる一般媒介契約と、仲介を1社に絞る専任媒介契約、専属専任媒介契約があります。
一般媒介契約は、複数の不動産会社に依頼でき、自分で買主を探すこともできる一番自由度の高い契約です。反面、販売報告の義務がないため状況が把握しにくい面もあります。
選任媒介契約は、契約を結べるのは1社のみですが、自分で買主を探すことはできます。また、レインズへの登録や依頼主への報告も義務づけられています。慎重に不動産会社を選ぶことが重要です。
専属専任媒介契約は、選任媒介契約と同様に1社との契約ですが、売主が自ら見つけた相手とも売買契約を結べない形態です。制約もありますが、不動産会社からの手厚いサポートが受けられるメリットもあります。どの契約形態にするかしっかり検討しましょう。
売り出し中
売り出し中の流れについて、「売却活動」「売買契約」の2つのフェーズに分けて説明します。
売却活動では、不動産会社がWEBサイトや店頭、チラシなどで土地を広く宣伝し、購入者を募集します。
物件の特徴や価格、立地条件などを的確に伝え、可能な限り多くの買主候補にアピールすることが大切です。媒介契約を依頼した不動産会社は、見学対応や質問への回答など、買主候補と接する重要な存在になります。
売却活動の結果、購入希望者が現れると購入申込書が届きます。買主との間で価格や手付金の額、引き渡し時期など詳細が折り合えば、売買契約に移ります。売買契約書は、売主と買主のそれぞれが保管するために1部ずつ作るのが一般的です。内容を確認の上、署名捺印しましょう。
売り出し後
売買契約締結後は、決済と物件引き渡しが行われます。土地の売却代金の支払いは、通常、売買契約を結んだ日と物件引き渡し日の間に行われます。契約締結と同時に物件価格の5~10%程度の手付金が支払われ、引き渡し直前に残金の決済が行われるのが一般的です。
決済を確認したら、売主は買主に隣地との境界などが分かる確定測量図や、建物がある場合は図面などの必要書類を引き継ぎます。売主から買主に物件を引き渡す際には、再度土地の状況を見て、問題がないことを確認しておくことも重要です。
決済と引き渡し完了後、物件の名義を買主に変更する所有権移転登記が行われます。土地売買の登記手続きは、専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。
土地売却で発生する費用と税金
土地を売る際には関連する費用がかかり、利益などに対して税も課せられます。ここでは、土地を売る際にかかる費用や税金について詳しく解説します。
土地売却の際にかかる費用
土地売却の際にかかる主な費用は次のとおりです。
費用の種類 | 金額の目安 | 内容 |
仲介手数料 | 「売却価格の3%+60,000円+消費税」など | 不動産会社への報酬 |
確定測量費用 | 500,000円程度から | 土地の境界を確定 |
ローン一括返済手数料 | 30,000円程度 | 住宅ローンがある場合の一括返済手数料 |
解体費用 | 木造で1坪20,000~40,000円など | 建物の解体が必要な場合の費用 |
仲介手数料は売買を仲介した不動産会社に支払う報酬です。売却価格が400万円超の場合、売却価格の3%+60,000円に消費税を加えた額が上限となります。
確定測量は隣地所有者らの立ち会いの下、正確な面積を測定して境界を確定させる作業です。不動産売買では、境界が明確にされていることが重要であるため、売主から買主に確定測量図を引き渡すのが一般的です。費用は土地の状況にもよりますが、50万~100万円程度を要します。
物件を取得時に借り入れたローンが残っている場合は、一括で繰り上げ返済を行う必要があり、通常、手数料がかかります。金融機関によって異なりますが、住宅ローンの場合は30,000円程度に設定されていることが多いです。
解体費用は、土地に建物があり、解体が必要な場合に発生します。費用は建物の大きさや構造、廃棄物の処理方法などによって変動します。木造なら1坪当たり20,000~40,000円、鉄骨造なら30,000~40,000円、鉄筋コンクリート造なら40,000~60,000円などが目安となるでしょう。
土地売却の際にかかる税金
土地を売る際には、費用の他に税金もかかります。土地売却で納めるべき税金は次のとおりです。
税金の種類 | 金額の目安 | 内容 |
印紙税 | 数万円 | 契約書に印紙を貼付する |
登録免許税 | 不動産1件につき1,000円 | 抵当権がある場合の抹消登記 |
譲渡所得税 | 個人なら譲渡所得の約20%か約40% | 土地を売却して得た所得にかかる所得税や住民税など |
印紙税は不動産売買契約書などに課される税金です。契約書に印紙を貼る形で納税します。
電子契約書の場合は課税されません。不動産売買契約書にかかる税額は記載する売買代金によって異なり、1,000万円超~5,000万円以下なら1通につき20,000円、5,000万円超~1億円以下なら1通60,000円などとなっています。
なお、2024年3月31日までの間に作成される不動産売買契約書については、印紙税の税額が軽減され、1,000万円超~5,000万円以下なら1通10,000円、5,000万円超~1億円以下なら1通30,000円などです。
物件に抵当権が設定されている場合は、抵当権抹消登記が必要になり、登録免許税が課されます。抵当権抹消にかかる登録免許税は、不動産1件につき1,000円です。土地に家が建っている場合は、合わせて2,000円納税することになります。
登記は司法書士に依頼することも可能で、その場合の報酬は10,000円ほどが目安となるでしょう。
譲渡所得税は、土地売却で利益が出た場合に個人が支払う税金です。売却価格から、土地の取得費用に売却時の諸経費を加えた金額を差し引き、譲渡所得を計算します。
所得がプラスの場合、確定申告の上、納税します。譲渡所得税は、所得税と住民税、復興特別所得税を合わせたものの総称です。税率は所有期間で異なり、約20%か約40%です。節約にもつながるため、詳細は次の項目で詳しく解説します。
参照元:国税庁|「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
売却する時にかかる税金を節税する方法はある?
売却時にかかる税金を節約する方法は、大きく分けて2つあります。ひとつは、所有期間5年超の物件を売却することです。
個人が譲渡所得税を計算する際、税率は所有期間によって異なります。売却した年の1月1日時点で5年以下なら「短期譲渡所得」として39.63%となりますが、5年を超えていれば「長期譲渡所得」となり20.315%まで下がります。急いで売却する必要がなく、もう少しで5年経過するという場合は待つのが得策です。
もうひとつは、特例控除を利用する方法です。特例にはさまざまなものがありますが、ここでは、住んでいた家を解体して土地を売却する場合と、2009年から2010年にかけて取得した土地を譲渡する場合について解説します。
参照元:国税庁「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」
参照元:国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」
住んでいた家を解体して土地を売却した場合
住んでいた家を売却した場合は、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。この特例は、家を解体した後の土地だけを売った場合でも一定の条件を満たすことで適用可能になります。特例の適用を受けるための条件は、次のとおりです。
- 解体した日から1年以内に土地を売却する契約を結んでいる
- 家に住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する
- 解体してから土地を売る契約をした日まで、貸し付けなどで使用していない
参照元:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
参照元:国税庁「No.3320 マイホームを取り壊した後に敷地を売ったとき」
2009~2010年に取得した土地を譲渡した場合
2009年に取得した土地を2015年以降に譲渡した場合と、2010年に取得した土地を2016年以降に譲渡した場合に、その土地に係る譲渡所得の金額から1,000万円を控除できる特例があります。2008年9月のリーマン・ショックで経済情勢が不安定化したことなどを背景に導入されました。
親子や夫婦など特別な間柄の方から取得した土地ではないこと、相続や遺贈、贈与などで取得した土地ではないことなどが適用条件となります。
参照元:国税庁「No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除」
ケース別でみる土地の売却方法
次に、実際に土地を売却する方法について、ケース別に内容と注意点を見ていきます。家が建っている土地を売りたい場合、相続した土地を売りたい場合、田舎の土地を売りたい場合の3つのケースを解説します。
家が建っている土地を売りたい場合
家が建っている土地を売りたい場合は、古家つきで売るケースと、解体して更地にした上で売却するケースがあります。いずれのケースも一長一短があり、適切な売却方法は土地や市場の状況などさまざまな要素を考慮する必要があります。
古家つきで土地を売る
土地に古家が建っている場合、減税措置が適用されて土地にかかる固定資産税を抑えられるメリットがあります。
そのまま売る場合は家を解体する必要がないため、解体費用を抑えられるのも利点です。ただし、購入者が家を使わない場合は、購入者側で解体の必要が生じるため、売却価格が安くなったり、買い手が見つかりにくかったりする可能性があります。
更地にして土地を売る
建物を取り壊し、更地にして土地を売ることで、買主が土地をすぐに活用できます。これにより、買主が見つかりやすく、相場並みの価格で売ることも期待できるでしょう。しかし、家の解体コストがかかります。木造で30坪の家の場合、100万円以上要することもあります。
さらに、解体後に売却する場合、売却時期によっては、譲渡所得税を計算する際に3,000万円を控除できる特例が利用できない可能性があります。道路幅4m以上の道路に間口が2m以上接していなければならない「接道義務」を満たしていないなど、建物を再建築できない再建築不可物件の場合も注意が必要です。
相続した土地を売りたい場合
相続で取得した土地を売却する際には、物件の名義を被相続人から相続人の名義に変更する必要があることに注意してください。
また、相続で取得した土地や建物などの財産を譲渡する場合、譲渡所得税の計算で特例が適用されることがあります。具体的には、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算して譲渡所得税を抑えることが可能です。
田舎の土地を売りたい場合
田舎の土地を売りたい場合には、地元の不動産会社に依頼することをおすすめします。地方では交通利便性や生活インフラが都市部に比べて劣るため、需要が限られます。
大手の不動産会社に依頼しても市場動向に疎い可能性があり、売却活動が長期化する恐れもあるでしょう。地元の動向を熟知している不動産会社に依頼することで、そのエリアにマッチした販売戦略を立てることが可能となります。
土地をできるだけ高く売るためのコツ
土地を売却する際、いくつかのポイントを押さえることで、希望の金額で契約に至る可能性が高まります。ここでは、土地をできるだけ高く売るためのコツを解説します。
売れやすい時期を狙う
土地をできるだけ高く売るためのコツのひとつは、売れやすい時期を狙うことです。土地の売却価格は、売却時点の不動産市場の需要と供給のバランスに左右されます。1年でみれば、新年度が始まる4月を控えた1~3月は人の動きとともに不動産売買が活発化します。
中長期的な視点では、景気が上向きで人々の購買意欲が高まっている時期、あるいは低コストで融資を受けられる低金利下では、不動産が売れやすくなるでしょう。
土地の売却に強い不動産会社を選ぶ
土地の売却に強い不動産会社を選ぶことも、できるだけ高く売るためのポイントです。不動産会社はそれぞれ、エリアや物件タイプなど得意とする分野が異なります。
売却したい土地をより好条件で売れる不動産会社を選ぶことが重要です。物件のあるエリアに営業所はあるか、土地売買の実績は豊富であるかなど、複数の不動産会社の情報を収集したうえで、仲介を依頼する不動産会社を決めましょう。
土地の相場を調べておく
物件を希望価格で売却するには、周辺の相場を自ら調べておくことも大切です。相場を把握しておくことで、売り出し時の価格を妥当な範囲内に設定できます。
一般財団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」で土地の路線価を調べたり、国土交通省の「土地総合情報システム」で実際の取引事例を確認したりして周辺相場を把握します。その上で、売却したい土地の立地条件や面積、形状などを考慮して、売却可能額の概算を把握しておくのが理想です。
参照元:一般財団法人資産評価システム研究センター「全国地価マップ」
参照元:国土交通省「土地総合情報システム」
土地をきれいにしておく
土地を購入する側からすると、見た目も重要な要素です。雑草が伸びていたり、ゴミが放置されたりして荒れ放題では、減額交渉される場合もありますので注意してください。
現地案内の前に土地をきれいにしておくことで、購入を検討している方の印象が良くなるでしょう。
土地のアピールポイントをまとめておく
不動産の売却において、土地の特徴を整理し、魅力を最大限にアピールすることが重要です。所有者だからわかる地域の特色や利便性などの価値を購入者にしっかり伝えましょう。
静かで緑が豊かな環境である、日当たりや風通しが良い、交通利便性が高いといった情報は、購入者にとって価値ある情報となり得ます。季節による景色の変化や、近隣で定期的に開催されるイベントなど、その土地ならではの魅力を強調することも有効です。
土地の売却はどこに相談するのが良い?
土地を売ることは個人間でも可能です。しかし、金額が大きい不動産売買では、契約をめぐってトラブルに発展することが少なくありません。こうした事態を回避するためにも、不安がある場合には専門家に相談することをおすすめします。
基本的な売却相談は不動産会社へ
不動産会社は、土地売却をめぐる煩雑な手続きを専門的な知識と経験でサポートしてくれる存在であり、基本的な売却相談をまず行うべき相手です。
売却価格の査定に始まり、販売ネットワークを活用した買い手探しや、契約書の作成、契約手続きなど、網羅的なサポートが期待できます。
空き家の相談なら自治体
空き家がある土地を売却する際は自治体に相談してみることも有効です。空き家問題の深刻化を受けて空き家バンクを設置する自治体が増えています。空き家バンクは、家を貸したい方や売りたい方が登録し、借りたい方や買いたい方に情報提供を行う仕組みです。
また、空き家を解体する際に、自治体から補助金を受けられる可能性もあります。空き家が放置されることによって、倒壊の危険や周辺環境への悪影響が懸念されるためです。土地売却前に空き家の解体を検討している方は、ぜひ物件が所在する自治体に相談してみてください。
土地の登記の相談は司法書士
登記に関する相談は、専門家の司法書士に行います。土地を売却する場合、所有権移転登記は買主側で行うのが一般的です。売却する側で必要になるのは、物件に抵当権を設定している場合の抵当権抹消登記になります。また、個人間で売買する場合には、司法書士に引き渡しの立ち会いを依頼すると安心です。
相続問題や土地売買のトラブルが発生したら専門家に相談
相続問題や土地売買をめぐるトラブルが発生した場合は、法律の専門家に相談しましょう。売買契約の不履行や、物件に補修の必要性が生じた場合の費用負担、契約書の解釈の相違など、買主側と問題が生じた場合には、弁護士にサポートを求めてください。
遺産分割協議で親族の関係がこじれた場合や、相続財産に多額の債務があるケースなども経験豊富な専門家の存在が助けになるでしょう。
お悩みや問題を抱えている場合は、「セゾンの相続 相続手続きサポート」への相談もおすすめです。相続手続きサポートは、相続手続きに強い司法書士と提携していますので信頼できる専門家との無料相談や問題解決に向けたプランの提案が受けられます。ぜひお気軽に連絡してみてください。
おわりに
土地を売却する際には、費用や税金、節税策などについて正確な情報を押さえることが大切です。できるだけ高く売るためには、売りに出す最適なタイミングを意識することや、相場の見極めが欠かせません。適切な不動産会社に依頼する、土地をきれいにしておく、土地のアピールポイントを的確に整理しておくなどのポイントも重要です。適宜専門家のサポートも受けながら、希望に沿った形での売却を実現させてください。