「国際結婚をすると、お墓はどうすればいいの?」「宗教の違う2人は一緒のお墓には入れない?」などと悩んでいるカップルはいませんか。人生の終着点における悩みとはいえ、解決しておかないと不安になってしまいますよね。この記事では、国際結婚カップルが日本にお墓を用意するときの注意点や、各国の葬送事情について解説します。日本に住むカップルも、パートナーの国で暮らす日本人も必読の内容です。
この記事を読んでわかること
- 国際結婚カップルでも、宗教フリーの霊園であれば日本にお墓を持てる
- 日本人が海外で亡くなっても、日本のお墓に埋葬することが可能
- 海外の埋葬方法は宗教・宗派の考え方によって違うが、最近では世界的に火葬が増えつつある
国際結婚とは?
国際結婚とは、国籍の違う人同士が結婚することです。一般的には、日本人と外国人が結婚することを「国際結婚」といいます。
国際結婚したカップルの多くは、どちらか一方の母国に住むことになります。言葉や文化の違いに戸惑う中、愛する方や周りの方々から温かく見守ってもらい、その国の暮らしにいずれは馴染んでいきます。
国際結婚をしたカップルも、やがて年老いるとお互いの死に直面する時期が来ます。お墓をどうするか、お葬式をどんな形式にするか。いざというときになって初めて、お互いの宗教や死生観の違いに気づく夫婦も珍しくありません。
この記事では、国際結婚した夫婦がお墓を作るときどうすれば良いのか、ヒントになる事柄を解説します。日本に住んでいる場合はもちろん、海外で日本人が葬られる場合についても深掘りします。
国際結婚した夫婦のお墓事情
国際結婚をしたカップルは、死生観も宗教も違うケースが多いものです。でも、別々のお墓に入らなければならないわけではありません。また、外国人でも墓地は購入できます。それぞれ詳しく解説します。
国際結婚カップルでも同じお墓に入れる?
日本国籍を持たない方でも、一般的な手続きを行えば同じお墓には入れます。日本では人が亡くなると医師が死亡診断書を発行し、死亡診断書と一対になっている死亡届を市区町村役所に提出することで火葬許可証が発行され、火葬が認められます。これは外国籍の方であっても同様です。
火葬した遺骨を夫婦として使用するお墓に埋葬すれば、一緒に眠ることができます。
ただし、国籍によってではなく宗教上の理由によって同じお墓には入れない場合があります。菩提寺が他宗教・宗派の人の納骨を認めていない場合です。また、外国人である故人が生前に他宗教のお墓に葬られることを拒む可能性もあります。
先祖代々のお墓を使いたいと考えている国際結婚カップルは、夫婦で埋葬可能かどうか、あらかじめ菩提寺に確認しておく必要があります。もし難しいようなら、夫婦で入れる宗教フリーのお墓を契約するのがおすすめです。
外国人でも墓地は購入できる?
夫婦だけのお墓を用意したいと考えたとき、外国人が契約者になることは可能なのでしょうか。
外国人でもお墓の契約は可能ですが、霊園によって対応が違うので要注意です。登録原票記載事項証明書の掲示が必要な場合があったり、日本人のみ契約可能になっていたりします。また、寺院墓地の場合は宗教・宗派が違うと受け入れてもらえないことが多いため、あくまで宗教フリーの霊園を探す必要があります。
できれば日本人である配偶者が契約した方が、スムーズに話が進むでしょう。
海外で亡くなった場合はどうなる?
海外で生活していて、海外でそのまま亡くなった場合でも、日本の墓地に入れます。現地の方法に則って死亡手続きを行い、遺体のまま輸送するか、現地で火葬をして遺骨の状態で輸送するかを選びます。いずれの場合も一般的には空輸となります。
遺体のまま空輸するには、輸送中に遺体から体液が漏れたり、傷みが進んだりしないよう防腐処理を施すことになります。よって火葬してから遺骨で輸送するよりも費用がかかります。ただし、現地に火葬の文化がなく火葬できない場合や、日本の遺族が最後の対面を強く望む場合は、遺体での輸送となります。
海外で亡くなり、そのまま海外で埋葬されることも可能です。現地のお墓や納骨堂に埋葬されるか、散骨されることになります。現地のお墓に入れるかどうかは、配偶者の希望をもとに霊園の方針や他宗教の信者である親族らの心情に配慮しながら決めることになるでしょう。
海外のお墓の特徴
日本のお墓については漠然と把握していても、海外のお墓となるとピンとこないという方は多いでしょう。日本と比較しながら、海外における葬儀や風習、墓地の種類について解説します。
葬儀や風習
日本と海外の葬儀を比較すると、日本はより厳粛であり、海外はよりカジュアルであるといえます。日本の葬儀といえば参列者全員が喪服を着用し、しめやかな雰囲気で行われるのが一般的です。葬儀の後には会食があり、お膳やお弁当を親族らに振る舞います。
一方、アメリカやヨーロッパ圏においては、遺族こそ喪にふさわしい服を着用しますが、参列者の服装は決まっていません。黒い服を着てくる方もいますが、他の色でも構わないのです。葬儀後は改まった席を設けずそのまま解散となるか、茶菓や軽食を振る舞う程度となります。
また、中国の喪服は白であり、白い着物に白い帽子を着用します。しかし地方によっては、やはり遺族しか正式な喪服を着ることはなく、ワイシャツにチノパンというラフな格好の参列者も珍しくありません。
ガーナに至っては、黒い服の他、赤い服を着用するのも良しとされます。そして死という新たな旅立ちを祝福するため、お祭りのように賑やかに故人を送るのがしきたりです。
また、「香典」という文化がしっかり根付いているのは日本や中国、韓国といったアジア圏の国々だけで、アメリカやヨーロッパ圏ではお金ではなくお花を贈るのが一般的です。
墓地の特徴
日本では墓地といえば「怖い場所」というイメージがあります。とくに寺院の境内にある墓地は、ジメジメしていて薄暗く、子どもの頃は特に「幽霊が出そう」と感じるなどして近寄りがたい場所です。これには、日本特有の「死者は祟るもの」「静かな場所で安らかに眠ってほしい」といった考え方が反映されていると考えられます。
一方、海外の霊園は延々と続く芝生のところどころに墓碑のプレートがあり、日当たりも良く、まるで犬の散歩でもしたくなるような明るい雰囲気を持つものが多いのが特徴です。実際、散歩をしている方もよく見受けられます。
特にキリスト教圏では、死者は神のいる美しい天国へ行き、また復活のときを待っています。神の元に眠る平安を表すために、そしていずれ復活する死者のために、明るい環境を用意しているのだと考えられます。
ただし日本においても、最近では「お墓参りしたくなる墓地」として、海外の霊園からインスピレーションを受けた明るい墓地が増えてきています。
墓石のスタイル
日本、中国、韓国といったアジア圏のお墓は、縦型で背が高いのが一般的な特徴です。墓石の色は黒や灰色が好まれます。とくに先祖を大切にするため、お墓参りは大事な行事です。韓国では旧暦の正月元旦と8月15日にお墓参りを行い、中国では4月の「清明節」にお墓参りをします。
アメリカやヨーロッパなどキリスト教圏のお墓は、平面的で四角いプレート型や背の低い縦型が一般的です。黒い墓石はあまり使われず、白っぽい石が好まれます。なお、決まった日にお墓参りをする風習はあまり見られず、故人の命日といった節目に墓石へ向かって祈ります。お供え物は白い花が中心で、飲食物をお供えする習慣はありません。
各国の埋葬方法について
日本では埋葬方法といえば火葬が主ですが、世界には土葬を行っている国が多くあります。鳥葬や水葬など、珍しい弔い方も存在します。各国の埋葬方法について解説します。
日本
現代の日本では、火葬が99.9%以上を占めています。火葬をして荼毘に付し、お墓へ納骨するか、納骨堂に保管するのが一般的です。最近では、散骨を行う方もいます。
ただし少数派ながら土葬も行われています。法律で禁止されているわけではないためです。ほとんどの墓地が土葬を想定していないため、土葬ができる場所は限られていますが、火葬を行わないイスラム教の方々など、宗教上の理由で土葬をしなければならない方を受け入れる土葬墓地が存在します。
アメリカ
アメリカでは古くから火葬よりも土葬が選ばれてきました。アメリカ国民の多くが信仰するキリスト教では、復活思想があるためです。来るべき日に、キリストとともに全ての死者が復活するという復活思想のもとでは、「火葬では肉体が滅びてしまい、復活できない」とされます。
ただ、最近ではアメリカでも火葬が選ばれる傾向にあります。全米葬儀社協会の報告書によると、2016年のアメリカにおける火葬率は50.2%でした。遺体の防腐処理が必要な土葬よりも、火葬の方が葬儀代を節約できるからというのが主な理由のようです。若者の宗教離れやキリスト教以外を信仰する移民の増加も、火葬率アップに拍車をかけているといわれています。
ヨーロッパ
ヨーロッパもアメリカ同様キリスト教徒が多いため、古くから基本的には土葬が選ばれてきました。しかし現在では、国によって事情が大きく変わっています。
フランス
フランスは、伝統儀礼を重んじるカトリック系のキリスト教徒が多いのが特徴です。1963年に当時のローマ法王が認めるまでカトリックでは火葬が禁じられていたこともあり、土葬が主流です。しかし最近では火葬率も上昇しており、およそ30%が火葬を選ぶといわれています。
イギリス
イギリスは合理的な考え方をするプロテスタント系のキリスト教徒が多いのが特徴です。また土葬は広大な土地を必要とするため、土地不足も相まっておよそ70%が火葬を選ぶといわれています。
スペイン
スペインもまたキリスト教徒が多い国ですが、火葬率は40%ほどと、やはり土葬中心ではなくなりつつあります。埋葬を通じて環境対策を行う研究が盛んで、バルセロナのある墓地では生分解可能な骨壺を用いた環境保護プロジェクトが進んでいます。骨壺が完全に分解されたあと、遺灰とともに堆肥化されて新しい木を育てていくというものです。
スウェーデン
スウェーデンもキリスト教圏ですが、近年では土葬よりも火葬が中心になりつつあり、全体の70%~80%が火葬といわれています。なお散骨も可能で、散骨を希望するときは公共、あるいは民間の埋葬地で散骨することになります。
アジア
アジアにはさまざまな埋葬方法があります。国ごとに特徴的な埋葬法を中心にご紹介します。
中国
中国では伝統的に土葬が選ばれてきましたが、近年では火葬も盛んになってきており、およそ半数の人が火葬を選んでいます。土地の有効利用が叫ばれるようになってきたことがその理由とされています。
韓国
韓国でも中国同様、伝統的に土葬が選ばれてきました。しかし最近では急速な高齢化により土葬用の土地不足が深刻で、政府が火葬の利用を推進してきました。コロナの流行もあり、2021年には火葬率が90%を超えています。
インド
インドのガンジス川流域では、ヒンドゥー教徒を中心に水葬が行われています。遺体を火葬した後に遺灰を川に流します。よってお墓を作りません。生まれて間もない赤ちゃんなどは、火葬せずに水葬する例もみられます。同じインドであっても、イスラム教徒は土葬を選びます。
チベット
チベットには世界的に珍しく鳥葬の文化があります。鳥葬とは、遺体をハゲワシなどの鳥に食べさせることで弔いとする方法です。飛ぶ鳥に食べられることで、天へと肉体を還す儀式です。また、インドと同様、水葬が行われることもあります。
国籍や宗教を問わない自由なスタイルのお墓も
最近は日本に自由なスタイルのお墓が増えつつあります。仏教離れが進み、少子化によりお墓の承継者に悩む家が増えたことから、宗教フリーで承継者不要の永代供養墓がたくさん造られてきました。
墓石ではなく木をシンボルとする樹木葬は基本的に永代供養であることが多いため、国籍や宗教を問わず使いやすいお墓といえます。また、海や山に遺骨を撒く散骨はお墓を持たないスタイルのため、国籍や宗教は関係ありません。
お墓の形に悩む場合は、手元供養を選ぶという選択肢もとれます。手元供養とは、自宅で遺骨を供養することです。自宅に小さな祈りのスペースを設けて骨壺を安置したり、遺骨をペンダントに込めたり、遺灰をジュエリーに加工してもらったりすることで、故人の存在を身近に感じながら供養できます。
国際結婚カップルがお墓を用意するときにとれる選択肢は、年々増えてきているといっていいでしょう。
お墓問題に悩んだらプロに相談してみよう
国際結婚のお墓問題は、親族の意向や菩提寺の方針を考慮してやりとりしていると、どういう方法がベストなのかわからず混乱してしまうときがあります。近くに宗教フリーの霊園が見つからない方もいるでしょう。
お墓探しに悩んだら、「セゾンの相続 お墓探しサポート」に相談してみましょう。提携専門家のご紹介も可能ですので、きっと夫婦2人の希望に沿ったお墓のあり方を提案できます。「承継者のいらないお墓がほしい」「家族に迷惑をかけないようにしたい」といった悩みにも耳を傾け、サポートします。
おわりに
国際結婚カップルは問題が山積みです。なかでも葬儀やお墓のことは、人生の終着点における問題といえます。いざというときのために、できれば2人が元気なうちから方針を決めておけるとスムーズです。遺される子世代にも負担をかけずに済むでしょう。
そしてもともと文化の違う2人だからこそ、本音の話し合いが大事。できれば双方の家族と相談して、最も理想的な形を見つけてみてください。